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薄桜鬼 碧血録 第十三話「焔の如く」

薄桜鬼二期開始!「薄桜鬼 碧血録」としては1話なんだけど、「薄桜鬼」としては13話目という若干ややこしい話数で始まる。

戦いに敗れ仲間を失い指針としていた将軍が逃げ出した今、疲弊した新選組は江戸へ拠点をうつす。土方たちにすれば江戸へ「戻る」ことになる。
羅刹になったにも関わらず、昼夜働きづめの土方は見るからに疲れている。近藤が怪我により動けない今、組をまとめて率いるのは土方だ。近藤というカリスマを頭に据えて裏で暗躍するのではなく、かれ自身が先頭に立たねばならない。うまくいっていない戦況の中、大役を担う土方は登場シーンからすでに目の下に隈をつくっている。気遣う千鶴に返す言葉は疲労と苛立ちによって険を孕んでいる。こういう些細な変化にいちいちはっとさせられる程度には三木さんの演技が好きだよ!

忙しく次から次へと働いている土方の心労は計り知れないが、一方、待機させられている隊士達も決して冷静な精神状態ではいられない。普段は馬鹿をやっているが、本来は非常に冷静で頭の回転も速い新八は、既に戦が銃主体になりつつあることに気づいている。刃物では銃にかなわない、と原田ともども分析する。一方羅刹隊の一員として、山南と接することの多い平助は、夜中に一人で行動することの多い山南を尾行する。

羅刹になったことが嘘のように働き続ける土方だが、実際かれの肉体には綻びが出始めている。部屋に戻ってひとりになると、思わず羅刹化してしまう。しかし千鶴の声がして、かれは根性と精神力で正気を取り戻す。こういうところが土方だなあ。誰にも知られないように発作を起こし、誰にも気づかれないうちに一人で抑えてしまう。心配されていること、気遣われていることは知っているけれど、誰の助けも受けない。かれにとってはもはやそのことが自然だし、そのことがかれを保っているのだろう。
土方を心配し、土方の役に立ちたいと千鶴は頭を下げる。頼ってもらえるのなら、仕事を少しでも分担してもらえるのならと頭を下げる千鶴の根性もなかなかのものだ。本人は無意識というか真剣なんだろうが、そこまでされては適当に流しにくい。けれどそれに対する土方の対応もさすがで、隊のことを思っての願い出であるなら、「私欲でないなら」頭を下げるな、とかれは言う。頭でも下げなきゃ話を聞かないだろ、といいたくもなるが、この気位の高さは土方ならでは。
しかし私欲か否かという問答はよく分からなかった。新選組に助けてもらったから今度は恩返しがしたい、自分が新選組を助けたいという願いは私欲ではないのかな。自分はやりたくないけど政治的見地から助けるべきだと判断したので助ける、なら私欲ではないと思うけれど。生きて欲しいから、大切だから役に立ちたいというのは、見返りを望まないにしても(いやそもそも仕事を分担するかわりに少し相手が楽になる、というのは見返りだと思うけれど)、私欲だと思う。個人的にはここで千鶴が「私欲です!」って言い切ってくれたほうが好きだけど、考えているうちによくわかんなくなりそうなので考えないことにする。
やり取りを聞いていた平助が陰から出てきて土方に発作を抑える薬を渡す。土方は要らないと突っぱねるけれど、土方の性格も、羅刹になったときの発作の苦しさも重々承知している平助は、結局強引に渡す。こればっかりは平助にしかできないことだ。

屯所を移し、秋月邸へ。
鬼である千鶴の血が、羅刹の発作の抑制に使えるのではないかと思った山南は、千鶴に血を分けるよう襲い掛かる。土方の助けによって事なきを得るけれど、責任感がつよい千鶴のいる前で彼女の情が揺らぐようなことを言う山南は流石だ。新選組で羅刹について一番研究しているのが山南であることは明らかだし、実際現時点で羅刹の発作を抑える効果的な方法は存在しない。土方や平助たちが苦しんでいる中、自分だけが無傷で守られていて良いものかと、千鶴が考えるよう差し向けているようにすら見える。
いきなり刀を向けてくるのではなく理路整然と頼まれていたならば、血を研究に使うことくらい大きな問題ではないように思えてしまうのは麻痺しているのかしら。まあでも血を見たら一気に我を忘れた過去を持つ山南なので、そうそう簡単に了承もできないか。効果が出たらそれ以降はひたすら血を搾取され続けるだろうし。

沖田は病床で刀の手入れをしている。着物から覗く鎖骨が痛々しいほどに浮き出ており、隈もひどい。誰がどう見ても体調が良くない病人の顔をしたかれは、それでも復帰することばかり考えている。自分には人を斬ることしかとりえがないと考えている沖田にとって、今の状況は耐えられないほど辛い。今の自分は「近藤の傍にいる価値がない」と考えている。こういう描写はゲームより遥かに濃厚に、残酷になされている。こういうところが薄桜鬼アニメのすきなとこです!

復帰した近藤は意気揚々と次の戦いに向けての士気を高めようとするが、隊士たちとの間にあった感覚のズレが、以前よりひどくなっている。我が身可愛さでいち早く逃げ出した将軍にもはや尊敬も信頼も向けられないと不信感を表に出す新八・原田に対しては「勝てる勝てないの問題ではない」と言い切る。それだけならまだしも、自分が大名格になったことに舞い上がり、手柄を上げたものは家来として取り立ててやる、と笑顔で言った。近藤にしてみれば、多摩の小さな道場主だった自分が大名になったということは信じられないほど凄いことで、同じ道を歩いてきた仲間ならばその凄さが分かってくれると思ったのだろう。一緒になって喜んでくれる、そして自分の背中を目指して気持ちを持ち直してくれると考えたのだろう。けれどそれは大きな誤算だった。近藤の鈍感さや的外れなところは往々にして愛すべき魅力であり、おおらかなかれの長所であった。しかしそれはここへきて意味合いを変える。その鈍さが時勢を読めない愚かさになり、権力に踊らされる醜さになった。
「俺は新選組の組長だ、あんたの家来になるつもりはない」と最初に言ったのは新八だった。それに誰も賛同の声をあげはしなかったが、内心同じように思っていることは、その場の空気が何よりも雄弁に語っていた。

ともあれ近藤の指揮のもと甲府へ向かうことになったかれら。二期の目玉のひとつであろう洋装の時間が!洋装の時間がやってきたよ!きっちり尺を取って、足元から舐めるように上がっていくアングル…分かってるなあ。
洋装といえば絶対にはずせないのが斎藤の釦エピソードです。もちろん組み込まれています。釦を掛け間違えていることを千鶴に指摘されて照れる斎藤さん。はい、赤面いただきました!更に幼くなる平助や、動きにくいといいながらストレッチしている新八、飄々とした原田もきっちり抑えて、しんがりが土方。意味もなく座ってポーズをとっている土方。初めて着たであろうくせに、驚いている千鶴に向かってしれっと「どうした」なんて言う土方。土方はこのしれっと感がモテ男ならではの余裕と狡さの表れですばらしいね!
そして部屋には一着あまった洋服。それは勿論沖田の分だ。「いつ戻ってきてもすぐ参戦できるように」準備したのだという土方の言葉に迷いはない。けれどその反面、これほど冷静にものごとを判断するかれが、沖田の完全復帰を確信しているとも思えない。戻ってきて欲しい気持ちはあるだろうし、戻ってこられればいいと心底思っているだろうけれど、遅れてくるかれへの至急品というよりは願掛けのように思えてしまう。

ともあれ甲陽鎮撫隊、甲府へ。
アニメは二期もいい感じに原作を重んじつつ補完してて満足です。

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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 19:32 | - | - |

「薄桜鬼 随想録 ポータブル」沖田総司ルート

二人目は沖田。

「随想録」で主人公が最初に顔を合わせる沖田は、眠っている彼女の部屋に起こすという名目で入ってきて、彼女を見下ろしている。目を覚ますと嫌味そうに笑って、酷いことを言う。さすが!料理が出来ない・味付けが致命的というのは納得できるような意外なような。

猫の事件では主人公ともども猫を探しに出る沖田。猫を逃がした八木家の子供にも容赦ないかれは本当に大人気ない。一方で、猫の抱き上げ方を主人公に注意されて素直に謝るあたりも子供。子供の意地悪さと子供の純粋さの両方をかれは持っている。それが表につよく出るのはプライベートなとき、心の許せる相手といるときだ、という自覚がどれくらいあるのかな。

新選組・中でも近藤の悪口を言う子供への対応もまた大人げない。組のことも近藤のこともよく知らない子供が言うことなどたかが知れている。誰かの受け売りだ。そしてそれにいちいち反応する主人公の態度が面白いのだ。
沖田はそういうことも分かっているはずだ。子供に確固たる信念などあるはずがないことを分かっていて、それでもかれは容赦しない。主人公のように誠意を持って説くようなことはしない。恐怖でかれらの言動を支配しようとする。口角は上がっているのに目が笑ってないスチルがいい。

島原で変装した主人公への憎まれ口もなかなか。沖田の「化けるもんだね」は「可愛いよ」と同意語である。
浪士たちの話を聞いた主人公は屯所で待機している沖田に手紙を出す。まだ企みの詳細は明らかになっていないとは言えこれは確実に緊急事態だ。それでも沖田からの返事は飄々としたもので、「いい子にして待ってて」とある。混乱している主人公へのかれらしい遠まわしな気遣いと、そんな浪士ごとき何でもないと言わんばかりの余裕と、あとはもともとの性格かな。
島原に到着したあとの態度なんかも、命がけの戦いなのに憎まれ口を叩いているし、喰えない人物だ。しかも「今の可愛い君なら守り甲斐ある」と、さらっと「可愛い」って言うんだこの男は!

その一部始終を見ているのが薫だ。主人公が一人で薫助けに行くと、丁寧に下手に出ながら、痛いところを的確についてくる。沖田が傍に居ればそうはならないのだろうけれど、ひとがいい主人公一人ではうまく立ち回れない。薫の不自然なまでの落ち着きにも隠された悪意にも、気づけない。

労咳だと松本先生に宣告されているところを聞いてしまった後、主人公は、風呂あがりに髪も乾かさず外に出ている沖田を見つける。死への憤りや諦めはまだ薄く、器用に隠してはいるけれど、どこか自棄になっている様子が伺える。
その気持ちは病状の悪化とともに強くなり、かれは感情をうまく押し隠すことが出来なくなる。体が思うように動かないことは、近藤の「刀」としてかれのために人を斬ることができないということだ。そのためだけに生きているかれは、生きながらに自分が死んでいくような焦りを感じているのだろう。
沖田の様子を見にかれの部屋を訪れた主人公は、その憤りをぶつけられる。しかし怒るでも嘆くでもなく、優しく根気良く接してくれる主人公に沖田も緊張を緩め、食べたいもののリクエストをしてくる。この時の頬を赤らめた沖田のデレっぷりは見事だ。ツンデレの分かりやすい例として後世に伝えて行きたい。

このあとはスーパーデレ沖田タイム突入。憎まれ口ばかり叩いていたかれだけれど、決して口下手なわけでも羞恥心が強いわけでもないので、いざスイッチが入ると甘ったるい言葉や態度が出るわ出るわ。寂しいから添い寝しろとか近くにおいでとか守るとかそういうデレ期が続く。本来その間には沢山の別れや傷があるので、そう思えばこれらはしばしの休息であり、滅多にない穏やかなひとときなのだろう。実際けれど立て続けにこればかり来るとちょっと疲れるというか、食傷気味になってしまう。存在価値とか刀でありたいとか豊玉発句集丸暗記とか労咳とか羅刹とか黒猫の名前は歳三だとか、そういう話が好き…!
近藤の思い出話もすこし。

素直になってしまった沖田は物足りない気持ちもあるんだけれど、主人公に対して気持ちを言葉にするシーンは結構好きだ。
自分よりもっと他にいい人がいるかもしれない、自分は困らせたり振り回してばかりだ、でも手離せない、と沖田は言う。それは何もかれの性格の話だけではない。沖田は自分が主人公を思っているように、彼女もまた自分を思っていることを知っている。自惚れや慢心でなく身に沁みて理解しているからこそ、寿命の長くない自分と生きていくことがどれほど彼女にとって辛いのかが分かる。彼女よりももっと、彼女のことを分かっているのだ。遠くない未来に自分がこの世を去るときに彼女がどんなに傷つくか、そのあと彼女がどれほどの寂しさに耐えなければならないのか分かっている。分かっているけれど、もう戻れない。彼女にとって傷が浅いうちに手を離すという選択肢を、沖田は選べない。それが自分のエゴだということも分かっているかれは、「それでも、君は僕を許す?」と聞く。 芯の強い彼女の返事を分かっていて、それでも聞きたくて、問うたのだと思う。

故郷での戦いのあとはこちらもプロポーズ。斎藤のあとに沖田ルートをプレイすると、素面でさらっと言ってくる沖田の格好よさが半端ないな。
探していた父も、存在すら知らなかった兄とももう二度と会えなくなった主人公に、沖田は新しい家族を与えてくれる。かれ自身が家族になってくれる。それがひどく短い時間かもしれないことは二人とも承知のうえだ。

手紙も、身近にある死と向き合った上で書かれていていい。沖田ルートはどうしたって死の影から逃げ切れない、翌朝かれが眼を覚まさないかもしれないという儚さが好きだ。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 18:31 | - | - |

「薄桜鬼 随想録 ポータブル」斎藤一ルート

「薄桜鬼」のファンディスクという立ち位置のゲーム「薄桜鬼 随想録」がPSPに移植。
乙女ゲームに限らずほぼゲームをしないので、実際このファンディスクというのがどういうものなのかいまいちわかっていないのだけれど、「随想録」に限って言えば、本編の間を補完する複数のエピソードがある。あの頃実はこういうことがあったんだよ、こういうやり取りがあって二人は距離を縮めていったんだよ、という感じ。「随想」というよりは「回想」、だけど「随想」のほうがかっこいいしね!

共通エピソード「事件想起」と、キャラごとのエピソード「恋愛想起」に分かれており、本編のどの時期に起きたことなのかがわかるよう、年表を埋めるかたちで振り返っていく。事件想起で選択する項目によって、恋愛想起のキャラが変わる。っていうか「想起」でくくるなら想起録でいいんじゃないの…だけど「随想」のほうがかっこいいしね!

***
沖田に起こされた主人公は慌てて目を覚まし、食事の支度をするために台所に向かう。沖田と斎藤と一緒に今日は彼女が料理をする番だったのだ。襷がけしてお料理する斎藤さんの真剣な目が可笑しい。そのあとは料理が出来たので色々な隊士を呼びに行くのだが、土方の謎のサービスショットに吹いた。なんというラブコメ!
料理を運んでいるときによろめいた主人公は原田と新八に助けてもらうのだが、新八に味噌汁がかかってしまう。熱い!と言っただけで新八は許してくれるけれど、デフォルトの格好が半裸なのでものすごく熱いんじゃないの。それを許す新八の懐の広さよ。もしくは鈍さよ。

軟禁されている部屋にいる彼女は、騒がしい物音をきく。猫を追いかけている斎藤と沖田。このスチールの斎藤が全く焦った表情をしていないところが超斎藤。内心必死なんだろうけれど、ぼーっとしているようにしか見えない…。
猫の所為で食事が無駄になったりとてんやわんやの屯所。このままではいけない、と主人公は斎藤たちと猫を探しにいく。いくら猫が可愛いからと言って、組のためにならない存在を置いておくわけにはいかないから捨てる、という斎藤。誰にどう思われるか、主人公がどう思うのか、ということをかれは全く念頭においていない。まだ彼女のことなど意に介していないというのもあるけれど、取捨選択を躊躇わないところ・躊躇っている様子を見せないところがいい。     
かと思いきや、夜通し必死に言葉の通じない猫に向かって出て行くよう説得している斎藤。斎藤の捨てるは戻ってこられないくらい遠くへつれていくとか、始末するとかじゃなくて理詰めなのか。猫に向かって、主人公に言うのと同じ「あんた」を使う斎藤。彼女は猫と同程度というべきか、猫にも人と同じように接するというべきか。
食事から猫の事件までが「事件想起」の一つ目にあたる。新選組がまだ上っていく途中の非常に良い状態であり、京もまだ平和なので、みんなが穏やかでどこかのほほんとしている。一つのシーンにしてはちょっと長くて、二人目以降弛んでしまうのだけれど、なんでもない一日のエピソードとしてはとてもいい。

斎藤の魅力はおそらく、冷静沈着に見えて実は結構ずるかったりまぬけだったり天然だったりするというギャップと、冷酷に見えて本当はやさしいというギャップ、そして何を考えているのかわからないように見えるけれど内面には誰よりも熱い武士としての心を持っているというギャップなのだと思う。かれと接するうちにそれらのギャップが見えて、主人公は斎藤を知り、惹かれてゆく。恋が進んでいく過程を主に描いた「随想録」は、そういう斎藤のギャップ大集合、である。

猫に続いて、刀剣屋でも普段は見せない一面を見せてくる斎藤。このあたりで既に斎藤が主人公を下の名前(千鶴)で呼んでいるのにちょっと違和感が。あれ、こんなに早く呼んでたっけ…?個人的にはずっと「あんた」でいい。

新選組、ひいては幕府に楯突く浪士たちの情報を探るべく、女物の着物に着替えて島原へ潜入操作することになった主人公。ドラマCDなどでも散々回想されており、アニメでも長々と尺をとって描かれたこのシーンは、それぞれの反応が見もの。さらっと似合ってるよ、と言える隊士、下心なく素直に興奮して褒めてくれる隊士、照れて動揺する隊士などいろいろ。こういうところで恋愛偏差値が浮き彫りになって面白いなあ。飽くまで上から褒めてくれる土方の百戦錬磨っぷりを支持する。モテ男モテ男。
浪士たちの会話を聞いた千鶴は慌てて斎藤に報告する。用心棒として潜入していた斎藤は、重要な連絡を受けたにもかかわらず、主人公の方を見ない。普段とは違う姿の彼女に思いっきり動揺し、何か言うべきなのかそうではないのか言うとしたら何を言えば良いのかと葛藤中。ここの長いにも程がある独り言が鬱陶しくて面白い。
更なる情報を得るべく浪士たちの座敷に上がる主人公。酔った浪士たちに絡まれそうになったところで現れた斎藤に助けられる、までは良かったのだが、事情がわからず激怒している浪士たちの言葉を一切聴かない斎藤。先ほどは脱落したけれどやはり褒め言葉を言いたい、と思い直したかれは、必死に頭の中を整理して言葉を捜し始める。浪士たちに背を向け、主人公に向き合って葛藤する斎藤。浪士たちの様子が見えている主人公は気が気でないのだが、結局ぶつぶついいながら無意識のうちに浪士たちを倒す斎藤。結局事件が片付いてしまって言えないまま、その夜が終わる。
数日後に思い切って言うも勘違いされてしまった斎藤は、訂正する勇気などもちろんなく砕け散るのであった。

御陵衛士として斎藤は新選組を離脱してしまう。その時期に風邪で寝込んでいる主人公は、斎藤の幻を見る。自分を看病してくれる斎藤の幻に、主人公は、会えて嬉しい、この夢がさめたらと伝える。もともと素直な性格だけれど、こんなことを躊躇わずに言えたのは、高熱の所為と、目の前にいる男が幻覚だと思っていたからだろう。斎藤が動揺せず、優しく接してくれたのは彼女が病人であることと、彼女が自分を夢だと思っていたからだろう。斎藤本人でないのなら、普段は照れるようなことも言える。出来る。

次第に風向きは悪くなっていく。意欲を削がれた隊士に渇を入れる土方の言葉に、斎藤もまた立ち上がる。行動原理を近藤や自分自身においている土方と違い、斎藤は武士として守るべきものにおいている。これから先それが傷つけられたとき、土方の言葉でまた斎藤は救われるのだろうか。いつか、土方の言葉で奮起できなくなったら誰が斎藤を救うのだろうかと主人公はぼんやり不安を覚えている。

一方で、羅刹化した斎藤との行動は彼女の精神も追い詰める。太陽の下、江戸に向かう道中苦しそうな斎藤を見ては、自分が招いた事態なのだと思ってしまう。自分を責める主人公の考えを否定したい、泣いている彼女を慰めたいと思いながらも、斎藤はうまい手段を見つけられない。見つけられなくて彼女を抱きしめる。褒め言葉一つ出てこない口下手の斎藤らしい方法というか、色々すっ飛ばしというか。

時代は急速に動き、あらゆるものが変わってゆく。新選組もこの国も、短い間にずいぶん変わってしまった。仕方がないと思いながらもどこか寂しくやるせないものを覚えている斎藤は、昔自分がやった桜の花びらをずっと持っていると千鶴に見せられて、変わらないものの存在に気づく。ずっと傍にあった変わらないものを知った斎藤は、組や会津の命令ではなく、土方の命令でもなく、自分自身の命令で主人公を守ることを決意する。主人公が憂いていた、支えを失ったあとの斎藤は、寄る辺を自分と、彼女に見出した。

そして戦いが終わり、二人が一緒に暮らすようになってからの話。
一緒に暮らしながらも関係に確固たる名前がつけられていないことを周囲に責められた斎藤が、主人公にプロポーズする、のだが、これがもう信じられないくらい回りくどくて長くて鬱陶しくて、自分が選んだという事も忘れて、よくこの子はずっとこの男と一緒にいたな…苛々しないのかな…と感心してしまった。斎藤鬱陶しい萌え!
さらに下の名前で呼んで欲しいという要求をするのにも、すっごい回りくどい斎藤さん。鬱陶しい萌え!二回言っておく。

エンディングを無事迎えると、攻略キャラからの手紙が届く。名前が文字になっても一切音にならないゲームとは異なり、ここでは普通に「千鶴」と声に出して読まれていた。わたしはデフォルト名でプレイするので問題ないのだけれど、違う名前でやってると違和感があるのかな。
手紙は出会いからエンディングまでを、キャラが振り返ってくれるもの。あの時内心こう思ってたんだよとか、この頃から気になってたんだとか、甘酸っぱく教えてくれる。キャラがいつどういう理由でプレイヤーに好感を持ったのかが分かりにくい「薄桜鬼」なのでいい補完になる。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 20:36 | - | - |

「薄桜鬼 随想録 ポータブル」限定版特典ドラマCD「幸運のわらしべ長者」

「薄桜鬼」のファンディスク「薄桜鬼 随想録」のPSP移植版が「薄桜鬼 随想録 ポータブル」である。限定版にはドラマCDと金属製の栞が封入されている。刀と桜が刻まれている栞はこの際おいておくとして、ドラマCD。
しかし店舗特典が、店舗別のドラマCDとかじゃなくて本当に良かった…グッズはスルーできる。

***
・「幸運のわらしべ長者」
タイトルコールは新八。
給金の日まであと十日はあるというのに、既に金が底をついた新八。自分を置いて呑みに行く平助・原田の態度に拗ねた新八は、食事までの間ひと眠りする。

次の瞬間から、場面はどこかの村へ。
自警団に入ってはいるけれど殆ど活躍の場がない平和な村で、ろくに働きもせずだらだらと過ごしている新八は、金がないことを近藤観音に相談する。悟りを開いた近藤からの提案は、最初にふれたものを手にして、ひたすら物々交換を続けよ、というものだった。

「わらしべ長者」のパロディらしく、最初に新八が触れたものは勿論藁だ。それをきっかけに、道を行く仲間たちと新八は物々交換を繰り返す。それぞれのキャラクターらしい持ち物だったり、交換の理由だったりするのが可笑しい。
物々交換に乗り気ではないが近藤の名前を出されるとひくにひけない平助とか、語り部であるはずの近藤に説得されて応じる沖田とか、貰いものとは言え何も受け取らずに持ち物を与えようとする斎藤とか。斎藤が天然キャラにされるのはもう慣れっこなんだけれど、源さんは何を考えて斎藤にあんなものをあげたのだろうか…源さんも天然なの?寧ろ斎藤を騙そうとしているの?いびられてるの?こわい!斎藤の土方(このシチュエーションでは副長じゃないのでただの「土方さん」である)への忠誠はどんな場であれぶれないのもいい。侍じゃない斎藤さんは無自覚のままのたれ死にしそうなので土方さんにフォローしてほしい。
一番見せ場があったのは原田かな。出番としては他のキャラと大差ないのだけれど、原田の言動が異様に男前。働かずに成功しようとしている新八を、皆呆れ半分憎めなさ半分で見ている。だからこそ窘めるようなことも言うし、そう簡単にかれに良い思いをさせないようにしている。ろくに労働もしないかれを甘やかすのはかれのためにならないからだ。けれど原田は新八に優しい。いつも優しいわけじゃなく、甘いわけでもなく、思わず背筋が伸びてしまいそうなほど男気のある態度でかれに接する。
伸びないのが新八だけど。
隣の村の金持ち息子という設定の風間は、相変わらずちょっと電波なイタい人でいい。雪村さんちの娘さんを見染めて、必死に言い寄っているあたりは変わらず。おそらく全く相手にされていないだろうに、かれは彼女の気持ちが自分にあると疑わない。押したり引いたり、ひとりで駆け引きめいたことをしている風間がかわいそうでいい。
土方のもとに行った新八の、風間の真似が可笑しかった。結構似てる。風間の恋文がまたイタい。
そして土方さんは安定感のある格好良さ。安定感のある忙しさ、も併設。

ラストの二段オチも含めて、新八が主人公らしい物語だった。まだ全部をクリアしたわけではないのだけれど、悲壮感の漂う本編とは違って明るく楽しい場面の多い「随想録」の特典にふさわしいコミカルさで良かったと思う。CDディスクにもいない新八が主人公というこの不可思議さもまた、新八ならでは。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 22:24 | - | - |

アニメ『薄桜鬼』キャラクターCD 幕末花風抄 斎藤一

アニメ「薄桜鬼」キャラクターCD、斎藤一編。
語り二曲とドラマが一本。あとは語り曲のインストが二曲。

***
・「一以って之を貫く」
とにかく武士であることにこだわり続けた斎藤が抱いている、武士の在り方について。武士とはかくあるべきものなのだ、それを自分はまっとうするのだという決意。
生まれつき利き手が左であったゆえに剣術においても非難され、正当な評価を得られなかった。それが斎藤にとって最初の挫折であり、怒りであり、疑念であった。右利きの相手にいくら勝っても認められないという事実はかれにとって不条理であった。武士の在り方とは、武士の優劣とはそんなところで判断すべきではない、とも感じた。
そういうかれに居場所を与えたのが試衛館であり新選組であり会津藩だ。武士として行動できる場所、利き腕で力を尽くして戦うことが出来る場所。そこでかれは武士として再び生まれなおす。

「一以って之を貫く」は論語だけれど、斎藤の名前ともリンクしていてぴったり。

・「蒼樹の庭」
隊士達と共にひとときの穏やかな日常を過ごしている斎藤は、充足感を覚えている。楽しげな仲間の傍らにいつものようにそっといて、会話に混ざるでもなく黙って聞いている。一見そのようには見えないけれど、それで確かに斎藤は幸福だと感じているのだ。
仲間といて心が落ち着くのは、皆の価値観が同じだからだ。同じものを目指し、同じものを夢見て生きているからだ。一方、その関係が永劫に続けられるとも思っていない。色々なことがめまぐるしく起こるこの世界で、生まれも育ちも年齢もばらばらのかれらが、いつまでもひとつでいられるはずもない。いつか袂を分かつ日が来るかもしれないと、かれは知っている。確信にも似た強さで。
けれどそれでもいいと斎藤は思っている。冷めているのではない。いつか他の道を進むことがあっても、木の根のように繋がりは絶たれないと感じているのだ。葉のように風に吹き消されてゆくものがある一方で、幹のように揺らがないものもある。根のように決して離れないものもある。
未来が別であっても、今共に在ることは変わらない。一度結ばれた絆はいつまでも残る。「一以って〜」で沈黙、闘志、刀の他には何も要らないと言っていた斎藤だけれど、かれはそれ以外にも大切なものを手にしている。

・ミニドラマ「鈴の音」
ある夏の日、斎藤が一人素振りをしているところへ、かれと同じく料理当番の沖田が現れる。準備にかかる時間だからと斎藤を呼びにきた沖田に、斎藤は開口一番かれの体調を心配する。そんなところまで土方に似てきたと、嫌そうに、けれど笑って言う沖田。そんなところ「まで」って何だ、「まで」って…。
アニメでその様子が描かれて、ちょっと驚いた幹部隊士の料理シーンだけれど、斎藤本人は料理は苦ではないようだ。大雑把な仲間と比べて、腕も悪くないと思っている。
沖田と斎藤が料理をしていると、千鶴が設置しておいた風鈴が鳴る。暑い京の夏、火を使うから更に暑くなる厨房で少しでも涼やかな気持ちになってもらおうと、千鶴はそっと飾っておいたのだろう。誰に言うでもなくそういうことをして、誰かに褒められることなど最初から考えてもいない、彼女のそういう心配りに二人は束の間癒される。

癒されたからなのか、熱で正気を失ったのか、沖田に向かって「総司が掃除か…」と言った斎藤さんのことを応援したいと思う。沖田に「ポチ」と揶揄して呼ばれたときに「わん」と返事して周囲を凍りつかせた過去のある斎藤らしい、屈託のない駄洒落であった。

健康を気にした料理につとめる斎藤に、そんなものを気にしてどうするんだろうかと沖田は呟く。斎藤の誠意を否定するでも傷つけるでもなく、ただ純粋に、明日とも知れぬ武士の生活において健康に気をつけることの有用性を疑問に思っている。こういうところが純粋で、こどもだ。
斎藤は寧ろ、そういう仕事だから・任務だからこそ健康であるべきだと考える。何がどうなるか分からない政局、いつどんな任務が課せられるか、誰が攻め入ってくるか分からないからこそ、常に健康でいる必要があるのだ。体調管理も仕事のうち、タイプ。
好きなものを好きなだけ食べて死ねたらいい、なんて、かれが言うと笑えない希望を沖田は口にする。かれらは皆、死と非常に近いところで生きているけれど、沖田は更に肉薄している。かれらが簡単に口にする死はとても遠いけれどとても近くてやるせない。

沖田がたらふく食べたい好物が金平糖だったり、調味料を計量するのが嫌でいつも味付けは賭けに出ているとか、土方の好物である沢庵を切りながらいらいらするとか。沖田のCDのドラマで登場した、千鶴が作ったおにぎりを平助と食べた話もあった。基本斎藤は沖田に相槌を打ったり、言葉少なに問いかけたり、あとは一人でもくもくと料理をしている。いつものこと。
いつものことだけれど、比較的斎藤のモノローグは多めか。しかしその多めのモノローグの大半が料理についての斎藤の意気込みや自信、こだわりだった辺りが可笑しい。かれの性格が出ていたという意味ではこの上なく斎藤らしかったのだけれど。

そして最後は千鶴の普段の心づかいに感謝し、自分たちがいかに彼女の存在に救われているのかを再認識する。これも結構いつものこととと言うか、お馴染みの展開なんだけれど、味噌汁のくだりは少々強引だったかな。「鈴の音」っていうか「味噌汁」なミニドラマ。

***
3トラックを通じてさすがの恋愛要素の薄さ!
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 19:45 | - | - |

薄桜鬼 第十二話「剣戟の彼方」

最終回の舞台は、鳥羽伏見の戦いの真っ最中から幕を開ける。
千鶴は懸命に看病をして回る。心配でいても立ってもいられない彼女を落ち着かせるべく、かれらは本物の武士なのだから大丈夫だ、と井上が言ってくれる。しかし時代は既に、武士に優しい時代ではなかった。かれらが井上の言う「ほんものの」武士か否かに関わらず、敵の最終兵器である大量の銃に圧されていった。
それはまさに土方が吐き捨てた「もう刀や槍の時代じゃねえってこと」を意味している。悔しい思いは当然あれども即座にそう判断できるかれの冷静さ・明晰さがとても好きだけれど、同じくらい哀しい。
武士の命といわれる刀にすら固執しないようにみえる土方の行動は、百姓上がりだから・武士じゃないから、と言われることもあるだろうけれど、かれはそれを上回るくらい頭がきれるのだと思う。

一端撤退して、淀城へ援軍を頼むことを計画する土方。援軍を要請する役を買って出たのは千鶴だった。皆が命を賭けて戦っている中、安全な場所で看病をしている自分が、なにもしていないように感じたのだろう。戦いに疲れた面々をたとえ一時でも休ませたいという希望もあったのかもしれない。自分の身すら守れない少女の少々無茶な発案は、井上が同行することで許可された。
しかし淀城は既に寝返っており、かれらの味方にはなりえない。そのことを察知した井上は、即座に退却しようとするが、ここで千鶴が二の足を踏む。淀城に援軍を出してもらうことが、この敗北寸前の戦いの決定打になると分かっていたからこそ、彼女はすぐに戻れない。この場にいたって、たとえ彼女が説得したって何かが変わるわけではない。そのことは千鶴だって気づいている。どころか、銃をこちらに向けた男が淀城の中にいる。それでも駄々をこねる子供のように逡巡する千鶴を、井上が叱責した。千鶴の動揺を止めるために怒鳴ったあと、いつもの穏やかな声音に戻って彼女を納得させようとした井上が、そのとき、撃たれる。
井上の羽織からふたりが新選組だと判断した三人の男たちは、止めをさそうと近づいてくる。千鶴を逃がそうと前に出た井上は、もう自分が生きて帰れないことを知っている。彼女を守るために戦うのではなく、彼女を逃がすために時間を稼ぐのだと決意している。土方への伝言と言う名の遺言を遺して、かれは背を向ける。
源さんの殺され方も結構ムゴい。わたしはこのシーンで、命を賭けて逃がしてもらったにも関わらず逃げずに立ち尽くしている千鶴に対して、そんな簡単に逃げられるものではないと思いつつも結構苛立っていた。深手を負っているとはいえ、死と引き換えに井上が作ってくれた逃げ道を拒んだことだけでなく、二人とも死んでしまえば援軍を待っている隊士達への伝令がかなわなくなると彼女が考えないことにも、複雑な思いを持っていた。それは見殺しにできないという彼女の優しさだし、人の死や争いにそう簡単に順応できるものではないことも分かるけれど、腑に落ちないものがあった。しかしこの殺されるシーンを見ると、そりゃ逃げられないよな、と言う気持ちが改めて強くなる。仲間が、今さっきまで厳しく優しく接してくれていたひとが、三人がかりで惨殺される。簡単に走って逃げられるものではない。
井上を殺して自分に近づく男たちに、千鶴は刀を向けた。わたしたちは誰かの助けが必ず入ることを知っているけれど、当然千鶴本人は誰かが助けてくれると思っているわけでもない。それでも彼女は戦いに挑む。無茶だけれど。
助けに入ったのは風間だった。いとも容易く男たちを斬り捨てて千鶴の命を救った風間は、別に恩着せがましいことを言うわけでもない。わけあって薩摩についているかれは、薩長が官軍となったことを千鶴に伝える。嫌味な口ぶりではあるけれど、別にかれは薩摩の味方でも薩摩が好きなわけでもない。新選組が、人間が嫌いなだけだ。「所詮戦は略奪の大義名分だ」という風間の言葉からは人間に対する嫌悪と、失望が滲んでいる。

そして土方登場。ここでかれがひとり、他の仲間よりもかなり早く現れたことの理由は分からない。戻らない二人の様子を見に来たにしては少し早いし、そうであれば単身乗り込んでくるのはあまり賢明ではない。それほど必死だった、ということにしておくか。
井上の姿を見た土方は、風間を問い詰める。濡れ衣を着せられても風間が動じず、どころか肯定するような挑発をしたのは、かれが土方に負けるはずがないと確信しているからだ。そしてきっと、面白いから、どうでもいいから。
井上を無駄死にと言われた土方は激怒し、風間を追い詰める。その気迫に一瞬圧された風間は、鬼の姿を現した。姿だけでなく、強さも鬼と化した風間に、土方は太刀打ちできない。けれど、そこで引き下がるかれではない。懐から変若水を出してきた土方を見て、風間は更に軽蔑の色を濃くする。愚かだと言われた土方は動じない。これまで変若水を飲んできた連中がどうなったのか、知らないかれではない。自分だけは大丈夫だなんて思えるほど愚かでも楽観的でもない。それでも土方は迷わない。
「元から愚か者どもの集団だ」、「馬鹿げた夢を見てここまできた」のだと土方は笑う。井上が千鶴に託した土方への伝言にも、夢を見られたことへの謝意が込められていた。この時代、本来ならばかれらは夢を叶えることのまえに、夢を見ることすら叶わなかった人種なのだ。井上の言葉はまだ千鶴のもとにあるけれど、土方も同じ気持ちを抱いている。
「まがいもの」と侮蔑された土方は変若水を飲んだ。若干スーパーサイヤ人のような羅刹化を遂げたのち、「鬼のまがいもの」になったかれは、「散々武士のまがいものとして扱われてきた」自らを振り返る。どんな働きをしようと結果を出そうと、かれらは結局壬生狼と呼ばれ続けた。百姓あがりと馬鹿にされ続けた。その一方で、かれらは自らが侍であるという、揺らぐことなき自覚を持っている。武士たらんと振舞い続けた結果、真になったのだ。この一連の台詞は本当にすごく好きなので、アニメでも残っていてよかった。
苛烈になるばかりの戦いに、第三者が介入する。風間を制したのは天霧だった。そして山崎は、土方を身を賭して止めた。手足である自分達と違って、頭である土方がこんな体たらくでどうするんだと、体を張って深手を負って、それでも笑いながら山崎が土方を諌める。天霧の制止もあって、刀をしまった風間は、山崎について何か言うことはしない。かれの誠意を笑うことも侮蔑することもなく、「お互い」命拾いしたようだ、と言った。かれもまたぎりぎりのところで戦っていたのだ。こういうところで虚勢を張らないのが風間だ。嘘をついても刀を交えた土方には分かるし、なにより、偽りで固めたものに何の意味もないと知っているのだろう。

重傷を負った山崎を人に託したあと、土方たちはその場を掘り始める。志半ばで死んでいった仲間を埋める墓だ。おそらくそのあたりにある石で土を掘る隊士たちの顔は真剣で、けれどどこか慣れた風情がある。これが初めてではない、かれらの日常の中の一こまなのだと分かる。

淀を諦めたかれらは大坂へ。土方を待っていたのは、少しばかり回復した近藤と、既に将軍は江戸へ逃げていること、羅刹隊の多くが、銀の弾丸によってやられてしまったという暗い報告だった。羅刹が銀の弾に弱いということは、この攻撃によって得た知識のようだ。敵のほうが先に知っていたことになる。羅刹について、研究していた山南よりも詳しい人物が敵方に存在するということになる。

江戸へ向かう船の中。自分を看病してくれる千鶴に、山崎はこれから先の隊士の体調管理を委ねて、この世を去った。水を汲むために千鶴が背を向けた瞬間に、かれは逝った。そして振り返った千鶴の涙も叫びも、音にならない。
ここからの演出が更に重い。包帯で全身を巻いた山崎を、海へ流す。かれが水葬されたという話は「薄桜鬼」に限らずよく聞くけれど、実際に絵で見るとなかなか凄絶だ。腕を吊った近藤、平助に肩を借りた顔色の悪い沖田が甲板へ出てきて見送る姿もある。言葉を発するわけでもなく、土方や千鶴の後方にちらりと見えるだけの沖田だが、その顔色の悪さと表情から、かれの体調が悪化の一路を辿っていることが良く分かる。もう自分の力だけでは、立ち上がることも歩くことも難しいのだろう。

千鶴の眼は土方を追っている。泣きそうな、けれど決して泣かない土方の曖昧な表情もまた切ない。自分を庇って死んでいった男。自分の命令に忠実で、危険な偵察も、医療への転身もこなした男。その男が死んで、海の藻屑になっていく様子を、かれはどんな思いで見たのだろう。
犬死にだ、と悔しそうに言う新八に、千鶴は反発した。犬死になんかじゃないと主張するのはやりきれないからだ。自分が、なにより土方が。
不気味なほどにきれいな海を見て、喧嘩のやり直しだ、と土方は言う。「喧嘩」という響きはかれの本音だろう。幕府のために生きているわけでも、戦っているわけでもないと言い続けた土方の、新選組の本音だ。敵がいるから戦う。売られた喧嘩はどこまでだって買ってやる。ただ、それだけ。

***
いいアニメだった。ゲームが止め絵な上に非常に繊細できれいな絵柄であるので、作画がどうなるかと思ったりもしていたけれど、悪くなかった。何より、ゲームでは補いきれなかった各ルートのエピソードをうまく整合させ、かつ新しい細やかなエピソードで補完する流れがとても良かった。「薄桜鬼」を、そしてこの時代を理解して、愛している人が作っていると思わせてくれる構成だった。華やかだけれど浮ついていない、地に足のついた細かい改変はどれも原作を貶めるものではない。どころか、原作のもつ魅力を十二分に発揮させるものだった。面白かった!

案の定と言うべきか、秋から二期。洋装土方に胸が高鳴ったけれど、実際はこのあとどんどん暗く重くなる話である。仲間も減って行くし、近藤との別れだってあるのだろう。心して待とうと思う。

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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 01:56 | - | - |

アニメ『薄桜鬼』キャラクターCD 幕末花風抄 沖田総司

アニメ「薄桜鬼」キャラクターCD、沖田総司編。
こちらも語り二曲とドラマが一本。あとは語り曲のインストが二曲。

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・「紅の雨」
嵐の前に散るであろう桜の花と、そう遠くない未来に消えてしまうであろう自分を重ねている沖田の心情を綴っている。「もうすぐ僕も散るよ」なんて、恨みがましくも嫌味たらしくもなく、さらっと言ってしまう辺りが非常に沖田だ。聞いている方は、それが真実であるゆえに何の言葉も返せないのだけれど。でも本人が「運命と笑えばいい」と言うのだ。桜が、天候の前で無力であるように、沖田もまた、自分を襲う病魔の前ではどうすることもできない。ちょうど雷がかれの上で落ちようとも、ようやくつぼみが開いたかと思ったら強い風が吹き荒れようとも、そこから逃げるすべはないのだ。

不治の病を前にした沖田の心はふたつだ。もはや恐れも迷いもない、来るべき死を受け入れるだけだという心。もうひとつは、かれが自身の存在価値だと思っている「敵を斬ること」を果たしてから死にたい、という心。それは決して両立できない望みだ。最後に残されたたった一つの願いさえ、病の前では叶えられない。そのことすら、沖田は知っているだろう。やるせない。

自分の名前も存在も忘れていいと言いながら、沖田は生きた証を残そうとする。それは新選組の、近藤の敵を自らの手で排除することに他ならない。あまり幸福な環境ではなかった幼少時代、かれを支えたのは近藤たちだ。そしてその後もずっと、沖田の支柱にあったのは近藤であり、新選組だ。それは間違いない。けれど、「僕には新選組があった」という語りはさすがにストレート過ぎるきらいがある。個人的にはもうちょっと遠回しというか、比喩っぽいほうが好き。

・「茫漠たる闇」
こちらも沖田が死を見つめている語り。「紅の雨」よりももっと病気が進んでいるのか、もはや戦いのことすら口にしなくなっている。穏やかな曲に合わせて、迫りくる死との対話。

死は闇で、その中に薄く残る光は、いずれ闇に飲みこまれる生命だ。闇を照らす力をもはや持たない僅かな、今にも消えてしまいそうな光は、沖田に自分を連想させる。もうすぐ闇に飲まれる自分を知っていて、それもいいと思い始めている。今のかれが抱えている、墨絵のような懊悩ごと闇は飲んでしまうだろう。
そうすればかれは楽になれる。

この曲だけでなく、沖田だけでなく全体的に言葉を飾る傾向にある「薄桜鬼」だけれど、この曲の語りはその特徴がかなり顕著だ。さすがにちょっとやりすぎというか、過剰かな、と思ってしまった。バンギャルが言うんだからよっぽどですよ!
かと思えば、自分の中にある感情が光によって明らかにされることを恐れ、「どうか照らさないで」とも口にする。打って変わって飾り気のない言葉、幼い子供の祈りのような口調も出る。同じことを何度も口にするかれの苦悩は素直でかわいい。
誰にも知られたくないと必死になって隠す、それを消せるのであればいっそ早く死んてしまいたいとすら願う、沖田の懊悩とは何なのか。生への欲求か、武士としての価値か、それとも。
普段ほとんど本音を口にしない沖田らしくないけれど、その一方で非常にかれらしくもある吐露。

・ミニドラマ「握り飯」
既に松本先生により病名を告知された沖田は、子供たちと遊ぶ約束を入れているが、体調が芳しくない。何とか起き上がって部屋から出ると、そこには千鶴が作った握り飯が用意されている。沖田が子供たちと遊ぶ予定があるのを知っている彼女が、子供たちの分も一緒に作ってくれたのだ。告知された瞬間を聞いてしまった千鶴が、動揺しながらも何か沖田の心を慰めようと考えたのだろう。その気遣いに少々癒された沖田は、平助と偶然顔を合わせる。

平助に予定を聞かれた沖田は、いつもの通り子供たちに「遊んでもらう」のだと言う。今更なので平助も、一応は突っ込むものの相手にしない。しかし千鶴の握り飯には思いっきり食いついた。子供の分を差し引いてもまだ余りがあると聞いた平助は、沖田の分になるであろうそれを賭けて勝負をしようと言ってくる。数に余裕があるので、一つ分けてくれって言えばいいのに…独り占めしたいのか。というか千鶴に作ってくれって言えばいいのに…言えたら平助じゃないよなあ。おくておくて!新八あたりは即座に頼み込んで作ってもらいそうです。
ジャンケンのようなゲームで勝負するのだけれど、ここで出てきた「国姓爺合戦」の単語に噴いた。教科書でしか見たことないよ!

握り飯を賭ける沖田に対して、最初、平助は何も賭けなかった。勝負の前に沖田に問われた平助は、負けないからいいんだ、と子供の理論を振りかざしただけだ。原田あたりなら聞いてくれるかもしれないが、通常の沖田であればそれを簡単に受け入れるとは思いがたい。
負けに負けた平助に対して沖田はひとつの条件を提示した。自分の言うことを一つきく、というものだ。性格がよろしくない沖田の出す命令は、勿論生易しいものではない。到底平助が出来そうもないものを羅列して困らせるだけ困らせたあと、かれは、「僕の代わりに子供たちと遊んでよ」と言った。それまでに挙げたことに比べればなんでもない、何てことのない課題だ。平助にしてみれば助け船のようなその提案は、それでも沖田には叶えられない願いだった。
沖田はこのために、最初の段階で賭け対象について言及しなかったのではないかとすら思えてくる。体調が悪くて遊べそうもないけれど、約束を楽しみにしている子供たちがいる、当日いきなり中止にはできない、だから代わりに遊んでほしいと頼んでいたら、きっと平助は引き受けただろう。沖田の病気を知らなくても、かれの調子がずっと芳しくないことは平助だって分かっている。平助が駄目でも他の誰かは、きっと代わってくれただろう。たとえ冗談で恩着せがましいことを言ったとしても、本心からそう思うような連中ではない。けれど沖田はそうしない。かれらが気のいい仲間だと知っていて、それでもこういう方法を取った。それはかれのプライドであり、気を使わせないための方法だ。食えない男。

平助と子供が遊んでいるのを沖田は見ている。普段の生活が嘘のように平和で、穏やかで、ゆっくり流れる時間は、これまでに何度もかれを救ったのだろう。「嘘みたいに」平和なひとときを実感することで息抜きをして、同時に、それを真実にすることを心に誓っていたのだろう。人を斬ることしかできないと嘯いていたかれが呟く理想にはっとさせられる。
平助との遊びを楽しみながらも、子供たちは沖田と遊びたがる。そしてかれは子供たちに、「よくなったら遊ぼ」と、叶わない約束をする。

店舗特典のドラマCDなどの沖田は大抵、しれっと余計なことを言ったり、悪びれずにひとの地雷を踏んだり、土方の俳句をからかったり土方の俳句を暗記して朗誦したり土方の俳句集を盗んだり土方の俳句集を餌に人を操ったりしている。かれのポジションは物事を引っ掻き回す悪ガキだ。そういう役回りになることが多いかれなので、迫ってくる死を受け入れながら生きている様子ばかりが描かれているのは珍しいと思う。集団の中にいて、次第に弱っていく沖田を描いているアニメ派生のCDならではかな。重いけれど好きだ。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 21:14 | - | - |

アニメ『薄桜鬼』キャラクターCD 幕末花風抄 土方歳三

ゲームではなく、アニメ「薄桜鬼」のキャラクターCD。とは言え顕著な差はジャケットがアニメ絵なことくらいだ。主人公の名前が千鶴で確定しているのは、ゲーム派生のCDでも存在していたし。

そもそもゲームからの派生で、「薄桜鬼」はキャラクターCDのようなものを出している。攻略キャラ六名を三名ずつに分けて、それぞれが二曲ずつ担当するミニアルバム「薄桜鬼 回想録」上下巻だ。それぞれの二曲のうち一曲は全員が語り、もう一曲は語りの人と歌の人がいた。語りを担当したのは、言ってしまえばそれほど歌が得意ではないひとたちだが、他の作品でキャラクターソングを歌っているので、誰がどういう理由で語りと歌を分けたのかははっきりしない。ただとりあえず、「薄桜鬼」では歌っていないひとと歌っているひとがいる。だからこそ、アニメからキャラソンCDが出ると聞いたとき、どうするのだろうかと思ったのだ。それぞれが一人ずつCDを出す場合、歌うひとと歌わないひとが出てくるのはバランスがよろしくない。
結果としては、歌っていたひとも含めて全員歌わない、語りのCDだった。
「回想録」に入っていた曲には結構好きなものもあったので、歌がまったく聞けないのは残念だけれども、まあそれも「薄桜鬼」らしいのではないかと思ってしまった。この不親切さ、与え過ぎなさがまた「薄桜鬼」だ。

***
収録内容は語りが二曲とドラマが一本、語りのインストが二曲。
・「犬返し」
犬すらも通れないような険しい道、断崖絶壁、土方が自ら選んで歩むのはそういう道だ。立ち止まることも引き返すこともできない、逃げ場はない、一瞬の気の緩みで足を滑らせれば全てが終わる。前に向かってただ進むしかない。そういう道だと知っていて、知った上で選んだのだ。その先に得られるものが何なのかも、そのために得られないもの・諦めなければならないものが何なのかも知っていて、土方は犬返しを進む。
しかし死と隣り合わせの犬返しにも桜は咲く。新選組にいきなり現れて、皆の心に入って行った千鶴は、まさにその桜だ。ひっそりと可憐で、くどい自己主張はないけれど、凛として咲き誇っている。それに足を止めて見入るものも、手を伸ばそうとするものもいる。けれど土方はそうしない。それはかれが犬返しをゆくために諦めたものだ。
端から手に入れようなどと思っていない。ただ、桜が咲いている。風に流され散っていっても、また、来年花をつける。その姿を来年確認することが叶わなくても、花をつけることは分かっている。それでいい。それだけあればいい。
それを胸に進んでいく、と土方は言う。それさえあれば、かれはどこまでだって進めるのだ。

ゲームでの土方は、千鶴に思われていることを把握しながらそれを避け続け、受け止められないと一端拒絶し、それでもついてくる彼女に最後に折れた。そのあとは甘い恋人関係が続けられたので、土方が千鶴への秘めた想いを胸にしまって戦いに出るような箇所はない。どちらかと言えばこういう行動に出るのは斎藤では、と思う。けれどこれはこれでいいかな。

・「焔消えず」
「犬返し」が千鶴への想いを綴っているとすれば、こちらは対風間の感情を描いたものだ。
自身が鬼であることに誇りを持っている風間は、自分は本物の鬼なのに対して羅刹をまがいものの鬼だと呼んだ。なんども繰り返し、隊士たちを挑発しようとする風間に、しかし土方は乗らなかった。
ゲーム本編で、羅刹になった自分を嘲笑した風間に、土方は「まがい物は貫きゃ真になるはずだ」と言った。百姓から武士になった土方らしいその信念が、この曲でも語られている。

俺の眼を見ろ、と土方は繰り返す。かれの眼は、「熱い血の通った人間の眼」だ。たとえ肉体は人間であることを手放しても、眼は人間のままだ。鬼に比べれば遥かに短い生を必死に生きる、圧倒的な力を持たないからこそ足掻く、人間の強い眼だ。風間が鬼であることを誇るように、土方は人間であることを誇っている。人間であることを誇ることと、羅刹になるべく変若水を口にしたことは矛盾しない。かれは人間で、守りたいものがあって、勝たなければいけない戦いがあるから、強さを求めたのだ。なったものが人間以外のものであっても、それを選んだかれの心は人間のものだ。どちらか片方におさまらない、「まがいもの」としての在り方がいい。

・ミニドラマ「月下の茶話」
事務作業をしている土方のもとを訪れた斎藤との会話劇。仕事を背負い込みすぎる土方を気遣うあまり、強引になる斎藤に土方が苦笑する、というのはWEBラジオの最後に流れるミニドラマや、購入特典などで何度もみられたやりとりだ。土方が尋常ではないくらい仕事を抱えているのは勿論なのだが、それを諌めるのが、これまた仕事しかしていない斎藤だというのが可笑しい。休みが出来てもすることがない、やりたいこともなく、気づくと仕事をしている斎藤を土方は気にしている。そういう男だと理解はしているが、他の隊士のように息抜きに出ればいいのにと、こちらも自分を棚に上げて思っている。お前が言うな、と両者に突っ込みたくなる自覚のないワーカホリックふたりのやり取りは微笑ましいけれど、前述の通りテンプレになりつつあるので、前半ひたすら繰り返されるこの会話は多少食傷気味かな。
そこに千鶴の話が匂わされるのもお約束。最初は彼女がいるから屯所を開けられない、見張る必要がある、なんていっているけれど、後半は彼女の細やかな気遣いを認識してみたり。愛キャッチの花が咲きましたよ!

こんな時ばかりは普段の距離を忘れろという土方と、そうはいかないと立場を守る斎藤。でも、馬鹿がつくほど正直で頑固な斎藤に、苦笑しつつ譲ってやるのは土方だったりして、微笑ましい。

自分に対する評価が低い(というよりは自分を評価することすら必要としていない)斎藤を、土方が面と向かって褒める。千鶴との恋愛でもそうだけれど、土方はこういうときも全く照れがない。土方が斎藤に、「近いうち、お前に頼む仕事が出てくるかもしれねえ」と言う。他の誰でもなく、斎藤にしかできない仕事がある、と。内容も時期も一切語らないまま、その時はよろしくと言う土方の言葉を、それ以上追及しないまま斎藤は了承する。どんな内容であれ、それが命令であるか否かは問わず、土方の提案ならば斎藤は受ける。だから、かれが話さないことをわざわざ問い詰めたりはしない。
具体的なことは語られないけれど、これはおそらく御陵衛士への潜入操作のことなのだろう。その少し前に伊東の名前が出ていることからも、かれが新選組に身をおいていた時期だということが分かる。新選組を割ろうとしているかれの動向を探るためについていくことは非常に危険な上、仲間からは裏切り者だと思われ、すべてが明らかになれば平助からも裏切ったと思われる。最終的に隊に戻ってきたところで、これまでのような環境に戻れる保証はない。命も名誉もどちらも捨てる羽目になるかもしれない。けれど遂行しなければ、組の存続そのものが危ぶまれる。そんな仕事は、斎藤にしか出来ない。
斎藤が御陵衛士になったくだりはゲームではあっさりと描かれていたけれど(そのあっさりさもまた斎藤らしいといえばらしいのだけれど)、いくつかのドラマとアニメで補完されたことで奥行きが出てきた。序盤はぬるっとしたドラマだけれど、中盤からのシリアスな内容はとても良かった。

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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 21:34 | - | - |

薄桜鬼 第十一話「零れ落ちるもの」

物語は佳境に入り、どんどん面白くなる。
天霧に致命傷を食らわされた平助のもとに駆け寄ることもままならない隊士たち。圧倒的な数の差に加えて、天霧・不知火という実力者を抱えた集団相手では勝てそうもない。もはやここまでか、というところで現れたのは斎藤だ。かれが無傷でここへ来たというのは、千鶴を先に行かせたあと、大勢の御陵衛士をひとりで片付けてきた、ということだ。「すまん遅れた。ここは俺に任せろ」と言う斎藤には相変わらず気負いがなくて、それだけに剣士としての斎藤の立ち位置が見えてくる。これだけ人数に差があれば、普通は一人増えたところで事態が変わりはしないのだけれど、前回の描写があるので、斎藤が「普通」ではないのだと分かる。

そして舞台は屯所へ。
憤りを隠そうとしない新八は、羅刹というものに対してずっと思うところがあったのだろう。「切った張ったやってりゃ切られることだってある」と当たり前のように言う新八がいい。理屈としては自明だが、実際にその立場にあってなお、それを当然のこととできるからだ。殺すか殺されるか、いつだってかれ(ら)はそういうところで生きている。だからこそ、相手に敬意を払いながら殺し合うのだ。だからこそ、磨かれる技があるのだ。後悔しないように生きようとするのだ。狂っていると思うけれど、そういう時代だ。
その理を新八は疑わない。武士道として美化しているというよりは、かれにとってはそれが理以外の何ものでもないのだ。そして羅刹や羅刹を生み出す変若水は、かれの理を崩すものだ。「死ぬことも許されねえのか」と、やりきれない思いを吐き出す新八がすごくいい。
新八よりは幾分か冷静な原田は、羅刹になることを決めたのは平助自身の意志だと言う。けれどかれにも普段の溌剌さはない。新八の目を見ないまま、「そんなふうに怒れるお前が羨ましいよ」と続ける原田もやりきれなくていい。
平助が死ななかったことは嬉しいことだ。けれど、平助がこれから先羅刹となっていき続けることは、必ずしも嬉しいことではない。いつも一緒に行動していた平助が生きてくれることと、かれが侍として人間として死ねることを天秤にかけて、新八は後者を取った。原田は多分どちらも取れずにいる。だからこそ、新八が羨ましいのかな、と思ったり。
なんだかんだでこのゲームにおける一番の武士は新八なんじゃないかなあ。恋愛に揺れることも羅刹になることもないから、というのもあるが、それ以外の面でも実感する。

夜に目を覚ました平助は、庭にいる千鶴のもとへやってくる。自分を庇った所為で羅刹になったと謝罪する千鶴に、平助は自分の弱さが悪いのだと笑う。やり残したことがある、と言う平助の目には、最近のかれが抱えていた迷いはない。出会ったころの平助のようだ。変若水を飲んだと聞かされていなければ、いや聞かされている今でも、平助は何ら変わらない。そのことが千鶴を安堵させる。
しかし次の瞬間、彼女の安堵は引き裂かれる。破片で切れた千鶴の手のひらの血を見た瞬間、平助は発作を起こし、羅刹になる。慌てる千鶴のもとに現れた山南は、血を飲むように平助を煽る。平助の苦痛を取り除くための助言とは到底聞こえないそれに平助は必死で抵抗する。血を飲むなんて人間のすることじゃない、と、山南と自分に言い聞かせる平助に山南が言った言葉が刺さる。あなたはまだ自分が人間だと思っているのか、と。
それは山南から見れば諦めの悪い平助に対する嘲りであると同時に、過去の自分を見るやるせなさでもあるようだ。山南もまた悪人ではないのでやるせない。結局発作を抑える薬を与えられて平助はひとまず理性を取り戻す。
山南は単身、巡察へ。

体調が相変わらず優れない沖田は、薫に渡された変若水を眺める日々だ。そこへ近藤が見舞いに来る。どこまでいっても沖田に対して親戚のお兄ちゃん・近所のお兄ちゃんのような態度が取れない近藤は、自分の上着を脱いで沖田に羽織らせる。
雑談しているところへ土方が現れ、仕事のために近藤を呼び出す。デフォルトで苛々している土方も、普段は土方の顔を見れば余計なことを言う沖田も、不気味なほどに穏やかで、いやな予感がする。

再度屯所へ現れた千姫と君菊は、土方に話を持ちかける。羅刹という、千姫曰く「失敗作」たちが辻斬りをしているのだと言う。そんな場所へ千鶴を置いておけないと思う彼女は、千鶴に、自分たちと来るよう改めて勧誘する。千鶴がいなければ新選組にも不要な争いがなくなる、本来の戦いに専念できると言う千姫の言葉は、この間天霧が言ったものと同じだ。勿論彼女を迎えたあとの待遇は全く異なるだろうが、こういうところで、千姫もやはり鬼なのだと思わされる。
一度天霧に言われているとはいえ、そういわれると千鶴は言葉に窮してしまう。迷惑をかけてるという実感があるからこそ、それでもここにいたいと自分からは言えない。その機微を察した土方は、「出て行きたきゃねえんだろ、ここにいりゃあいい」と言う。ここで「行くな」と言わないところが土方だ。自分や他の隊士が引き止めるからではなく、千鶴自身の意志としてそれを叶えさせようとしている。
そして千姫には土方が好きなのだと見抜かれる千鶴。ここまでの過程で、千鶴がいる土方を好きになったのかが、殆ど見えてこないところが薄桜鬼!

二条城から屯所へ戻る途中、近藤が狙撃された。山崎を中心とした面々がなんとか介抱するも、安心できる状態ではない。山崎が近藤の傷口を焼くシーンなどは一切ゲームではなかったのだが、生々しくていい。その様子を、騒ぎを聞きつけたであろう沖田が必死のていで見に来るところもリアル。もはやかれは屯所の中を移動することすら辛いのだ。
近藤を傷つけた相手を許せるはずもない沖田は、誰とも知れない仇を討つべく刀に手を伸ばす。しかし、いくら怒りに満ちているとは言え立ち上がって剣を振るうなど今のかれに出来るはずもない。今のかれに出来ないということは、永遠に出来ないということでもある。沖田は変若水に手を伸ばし、それを飲んだ。ゲームでは自分のためと千鶴のために変若水を飲んだ沖田だけれど、アニメでは近藤のために飲むことになる。しかしそこに一切不自然な点がないあたりがうまい。

屯所に向けられた威嚇射撃の音が鳴り響く。顔を上げた千鶴は、白髪の沖田が羽織を羽織って走る姿を見た。慌てて追う彼女と偶然ぶつかった山南・平助は、千鶴が射撃に動揺しているのだと思う。しかし彼女から沖田の名前を聞いて、共に追いかける。

狙撃する男たちを切り捨てる沖田がすごくいい。銃にも人数にも負けないかれの圧倒的な強さは、もはや人間離れしている。殺した敵の腰に刺さっている刀を抜いて他の敵を攻撃し、次から次へと息の根を止める。溢れる血にも興味を示している様子はない。こんな状況なのに、ひどく冷静に見える。
そして薫が現れる。男の服装、男の言葉で沖田と剣を交える薫には、もはやもったいぶったところがない。沖田に変若水を飲ませるという目的が完遂した以上、かれには何の駆け引きも必要ないのだ。近藤を狙撃させたのも自分なのだとおかしそうに言ったかと思えば、千鶴への恨みも吐き出し始める。それはひとつも千鶴に非のない、彼女ではどうしようもないことばかりだった。逆恨みによって正気を失っているかれの安い挑発に乗らない沖田に苛立ったのか、最後には、変若水で労咳は治らないと言い捨てて、薫は消えた。

追いかけてきた千鶴が走ってくる様子を、振り返って見た沖田は、気づいてしまう。彼女や後ろにいる隊士たちを狙うべく、銃を構えている男がいる。急いで沖田はそちらへ向かい。銃の前に立ちはだかった。そこで男や銃を刀で切るではなく、ただ自分が前に立った。間に合わなかったのか、それとも、羅刹は銃の傷もすぐに治癒するからか。銃声が鳴り響く。

屯所へ連れ帰られた沖田の体内から、銃弾は取り除かれた。しかしそれでもかれの受けた傷は一向に治らない。普通であれば弾さえ取れば治るのだと、誰よりも羅刹に向き合ってきた山南が首をかしげるくらいだから、ここにいる誰にも、答えが出せるはずがない。近藤ともども沖田は大坂へ運ばれることになる。

アニメ誌を見ていると12回で終了らしい。どこでどういう風に終わらせるのかな。結構人気があるので二期とか、一期が終わる前から期待しちゃっていいっすかね。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 20:02 | - | - |

薄桜鬼 第十話「絆のゆくえ」

新しく移動した屯所の前を掃き掃除している千鶴に原田が話しかけてくる。寒いという話をしていると割って入ってくる新八が、いつもの半裸スタイルなのが地味に可笑しい。永倉さんさすがです。

御陵衛士ともども新選組を離れた斎藤は、薩摩訛りの男と伊東の会話に聞き耳を立てている。坂本竜馬という男に対する不審や不満が主な会話だ。そして斎藤が仕入れた情報を新選組へ運ぶのは、乞食に身を窶して路上で座り込んでいる山崎だ。桝屋のときもそうだったけれど、こういう細かい描写がいい。

隊へ戻ってきた山崎は、千鶴に沖田の病の話をする。自分も含めた一部の隊士は知っていると匂わせた上で、「知っているな?」と半ば確認のような質問をした山崎に、それでも千鶴は知らないと答えた。それは山崎にとって、彼女の評価を上げる答えだ。「俺に何かあったら沖田さんのことを頼む」と千鶴に告げるかれは、なにかこれまでよりも不穏で危ない情報を得たのだろう。
勿論これまでだっていつ死んでもおかしくない状況に身を置き続けてきたのだけれど、悪化する沖田の病と情勢に、山崎は保険をかけた。

坂本竜馬が斬られた。現場には、原田の鞘があったのだと言う。
勿論原田の仕業だなんて微塵も思っていない仲間たちは、気安く話のネタにする。原田もそれに笑って応える。かれの鞘は、今かれの手元にあるのだ。笑っているけれどかれらは薄々気づいている。誰かが原田を犯人に仕立て上げようとしたのだと。本気であれ警告であれ、原田を嵌めようとした人間がいるのだ。
戦いの場には参加できない沖田も、こういうところには顔を出す。安静にしていなくていいのかと問われたかれの「少しは起きてないと寝た切りになっちゃいますよ」と言う答と、目に見えてやつれている姿がまた、笑えない。

幹部隊士が集められ、斎藤が間者として御陵衛士に参加していたこと、そしてかれが掴んだ伊東の動向が報告される。羅刹隊を世に公表するつもりでいること、原田に坂本殺しの濡れ衣を着せたこと、そしてなによりかれらが許せなかった、近藤の暗殺。
導き出された答えはひとつ、土方が言った通り「伊東さんには死んでもらうしかない」というものだ。わたしはこの時代物でよく見る、「死んでもらう」という言い回しが妙に好きだ。それが「国のため」であれ「組織のため」であれ「俺のため」であれ、自分たちの手を汚して相手の命をとることを、ちょっと婉曲的に言う。
それについては満場一致だ。しかし、斎藤が仲間として戻ってきた、もとより仲間でなかったことは一度もなかったのだと分かった今、かれらの中に燻る懸念はたったひとつだ。それを口にしたのは新八だった。「平助は」とかれは言った。皆が聞きたかったことであり、答が分かるから聞きたくなかったことでもある。出来ることなら考えたくなかったことだ。「刃向かうようなら斬るしかねえだろ」という土方の答えは、やはり誰もが想定していたことだ。既にかれは袂を分かった存在なのだ。 お茶を入れて戻ってきた千鶴は土方の言葉を聞き、いつになく慌てて声を上げた。思慮深く遠慮がちな彼女には珍しく、「皆さんは平気なんですか?」と、よりにもよってな質問をした。いつもの彼女ならそんなことは言わなかったはずだ。けれど思わず冷静さを失ってしまうくらい、平助の存在は彼女にとっても大きいのだ。思わず責めるような口調になった千鶴に返事したのは、近藤だった。どんなときでも明るく優しい近藤が始めて見せた険しい表情と、低く厳しい声だった。そして彼女は自分がいかに愚かな質問をしたのか、一瞬で悟る。誰も千鶴に当たらないし、千鶴を叱りもしない。そのことが余計に辛い。

表面上は友好関係にある新選組と御陵衛士である。口実を作って伊東との酒の席を設けた近藤・土方が、かれをとにかく酔わせようとする。ゲームだとここに千鶴もついていって、酒を注ぐシーンがあったのだけれど、アニメではなくなっていた。
伊東に酒を注ぐということはかれを酔わせるということで、かれを酔わせるということはかれを前後不覚にさせて殺しやすくするということだ。伊東に酒を注ぐことは、伊東暗殺の立派な片棒を担ぐということだ。それを自覚して、思わず酒を注ぐ手が震える千鶴がすごく好きだったので残念。

しかし彼女は他の役を斎藤に与えられていた。彼女にしかできないその任務は、平助に戻ってくるよう説得することだった。斎藤ともども、伊東の狙いを告げ、必死で戻るように言う千鶴に、平助は戸惑う。かれはそれまで信じていたものの足元がぐらついて、何が正しいのか分からなくなった。そのときに聞いた伊東の言葉は、平助にとっては自分が進むべき道を示しているように思えたのだ。しかし斎藤と千鶴の真実を聞けば、その伊東すら信じられなくなる。
揺れている平助の元に仲間が駆けつける。伊東が殺されて、死体が油小路に打ち捨てられているという言葉を聴いた平助は、千鶴を振り切るようにして走り去った。
残った御陵衛士たちに囲まれた千鶴を庇うところが斎藤さんの見せ場!斎藤を一人に出来ず逡巡している彼女に「早く行け」と言うのだが、「行け」が「いけ」じゃなくて「ゆけ」なのがまた斎藤さん。

屯所で安静にしている沖田は、ひどい咳をしている。それでも自室に向かうなにものかの気配に気づいて、刀に手を伸ばす辺りがすごくいい。
現れたのは薫だった。元々不信感を抱き、それを隠そうとしない沖田に対しては、薫も今更取り繕う気はないらしい。それでも、以前助けてもらった礼だとして、変若水を差し出してくる。
何故これを持っているのかと問う沖田に、薫は真実を話す。綱道は自分の父でもあること、千鶴は自分の双子の妹であること、自分も鬼であること。勿論いくつもの大切なことを敢えて隠しているけれど、基本的に薫が話していることはどれも事実だ。おそらく沖田は話の真偽を本能的にかぎ分けることに長けている。だからこそ敢えて薫は真実を口にした。混ぜた嘘に気づかれないように。
そのままでは戦えないでしょう、と挑発的な言葉を残して薫は去る。

伊東の死体に群がる御陵衛士を囲む新選組、その新選組を囲む天霧・不知火と薩長の隊士たち。圧倒的な数の敵に囲まれた新選組を見た天霧は、千鶴を渡せば戦わずに帰るという。かれの巧いところは、それを千鶴に言うところだ。自分のために誰かを傷つけるわけにはいかないと思う彼女は、自ら鬼のもとへ向かおうとする。
しかし、それで黙って行かせる原田・新八ではない。かれらしい気障な、格好つけすぎの見栄を切った原田を揶揄しつつ、新八は平助に「何やってんだ」と声をかける。左之にだけ格好つけさせる気か、と。戻って来い、とは言わない。お前は昔も今も俺たちの仲間なのだと、言外に滲ませた新八の言葉に、平助も乗った。嬉しそうでいい。しかしかれは、千鶴を庇うために自分の刀を投げ、素手になったところを天霧に攻撃される。

アニメ誌の今後の予定を見ると、どうも12話で終わるようなのだが、どうやって決着をつけるのかな。このまま行くと沖田も平助も変若水を飲むことになるんだろうか。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 20:07 | - | - |