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2013.03.29 Friday
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「国家 偽伝、桓武と最澄とその時代」@新国立劇場小劇場 13時公演
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作・演出:松枝佳紀
広野のちの最澄:遠藤雄弥
山部のちの桓武天皇:河合龍之介
陽射/泰範:本仮屋リイナ
信念:山田悠介
安殿のちの平城天皇:真山明大
その名の通り、桓武天皇や最澄が生きていた時代についての舞台。チラシのインパクトと、日本人以外の血が入った天皇と高僧という異端の二人についての物語、という説明に惹かれて見に行った。
休憩なしで三時間ほどの物語。会場の中央に舞台を設置し、前と後ろというよりは右と左から見られるようになっている。舞台のところ狭しと沢山の出演者がいくつもの役で出たり入ったり。
白い衣装をまとった出演者たちがほぼ勢ぞろいで登場し、めいめいに話だす。異端の天皇、異端の僧の物語。過去のかれらの判断が、行動が正しかったのか、それを「ここにおられる八百万の神々に判断して頂きたいのです」とかれらは言う。観客であるわれわれは、歴史を見つめ・判断する「神」に役割を与えられる。おおお期待できそう。
と思ったところで、歴ドル小日向えりが、ショートパンツにネイビーのジャケット姿でiPadを抱えて登場。彼女は現代に生きる「小日向えり」自身として舞台に上り、色々なシーンに現れては舞台の説明をする役。「このあと○年後に、XX事件が起こりました」「この行動がきっかけで▼▼はXXを成功しました」というような、本当のナレーション役。バスガイドみたいな立ち位置。
歴史的な出来事への理解、という意味では非常に効果的な役どころだが、物語の余韻をぶち壊してしまうので良いのか悪いのか微妙なところ。当然ながら彼女の知識でアドリブで話すわけではないので、普通に役者さんが担当したほうが聞きやすかったとは思う。
この小日向えりの役どころと、物語の進行具合が相俟って、なんというかNHKの歴史番組のような舞台だった。再現ドラマ多めでお送りする歴史の学習、という感じ。
ひとつひとつのドラマは非常に魅力的なんだけれど、それらを繋いで一本の糸で結ぶために、司会者を入れてしまった。勉強にはなると思うよ…。
朝鮮人の妾を母に持つため、兄でありながら弟・他戸に皇位継承権で負けている青年、山部。かれに「臭き血」が流れているため、他戸に媚びへつらう人間たちは山部を見えないものとして扱うことも多い。しかし他戸は自分にはない強さと明るさ、視野の広さを持つ兄を慕っており、山部も他戸を可愛がっている。いずれ弟が天皇になった時に良い政治をしてほしいと、世間を教えているのだ。
しかし息子たちの気持ちなど、両者の母親は無視する。天皇の正妻である他戸の母は、愚かな部下たちの意見を真に受けて、戸籍のない人間の首をはねることで他戸の目を覚まさせようとする。日本人ではないことで辛い目に会い続けている山部の母は、なんとかして皇后を出し抜いて自分の息子を次の天皇にしようと画策している。
結果、朝廷の権力者である藤原百川にすり寄った山部の母が勝利し、「臭き血」のものだと非難され続けた、混血の山部が桓武天皇となる。
死期が近いことを察している百川には、混血の天皇であれば、腐敗しきった朝廷と奈良の貴族との癒着を断ち切れるのではないか、という希望があった。実際に桓武は朝廷をまともに機能させるべく、長岡京へ、そして平安京へと都を遷す。
先祖に中国・唐の人物を持つ青年・広野は、戸籍のない少女・陽射と出会ったことで人生が変わる。広野は陽射を「救ってやりたい」と考え、彼女とその家族に戸籍を作ってやろうとする。しかし戸籍を目の前にした陽射の母が実の娘である陽射を利用しようとしたり、陽射の暮らす集落が朝廷から派遣された兵士たちによって襲撃される様子を見たことでかれは絶望する。
絶望した広野は行表という僧のもとへ行く。「救ってやりたい」と思いながら、自分が陽射の存在に救われていたことを知った広野は、行表に弟子入りする。この腐敗した世界で「最も澄んだもの」であるようにと「最澄」という名前を貰ったかれは、俗世を離れて修行に励む。
史実がどうなのかは知らないが、この「混血の天皇」と「外国の血を引く有名な僧」という設定はセンセーショナルで面白い。そういう立場だから出来ること、出来ないことがある。そういう立場の人たちが後々に繋がる大きな事柄を為した、というのもシニカルで良い。
ただ前半大々的に繰り返されていた、かれらが混血であるという話が後半に行くと一切話題にならなくなる・問題視されなくなるのは拍子抜け。結局桓武の古くからの部下はかれと同じく混血であり、かれの息子たちも当然混血になるので、桓武が珍しい存在ではなくなってしまうのだ。
桓武と最澄。
最初の出会いのとき、人々と芋掘りをしていた最澄に向かって桓武は、自分も芋を掘ると言った。やったことがないからどうしたらいいかと聞くと、最澄は「芋の気持ちになれ」と言う。その抽象的な言いまわしに周囲の人間は笑ったが、桓武は真面目に芋の事を考え、優しく土を触って芋を無傷で獲りだした。
正体を隠して、有名な僧侶最澄のもとを訪ねた桓武。その男が帝だと知りながら、一般の客人のように扱う最澄。二人はすぐに意気投合した。桓武は最澄を気に入り、最澄も桓武を慕った。最期の瞬間まで、その友情は変わらなかった。死期の近い桓武は最澄の元に現れ、体調がすこぶる悪いと言ったうえで、「だがまだこの芋、食えるぞ」と笑うシーンが好き。
久々に河合さん見たけど、屈折した部分と子供みたいに純粋な部分、カリスマ性のあるいい桓武天皇だった。こんなにいい声だったっけ、と思った。
D-BOYSを卒業して以来初めて見る遠藤は坊主頭で舞台をかけずり回っていて、こういうお芝居がしたかったんだろうなあ、楽しいんだろうなあ、というのがひしひし伝わってくる。くせのある話し方と籠ったような滑舌が元々あまり得意ではないんだけど、最澄ではあまり感じなかったな。これからも頑張ってほしいなー。
(余談だけど遠藤たちの卒業、柳下のD☆DATE加入によって、結構長い間会員だったDボのFCをとうとう継続しませんでした。芝居を見たい人がどんどんいなくなる・芝居の頻度が下がるんだもん!)
桓武が即位したのち、信念という僧が中国から帰国する。他戸の配下にいたかれは、他戸が排斥されて山部が天皇となったことに深い憤りを感じる。そしてかれは、色々なところで暗躍し、歴史を大きく変えてゆく。
笑顔で人を騙し、残酷な手口で人を追いやる復讐鬼と化した信念に山田悠介。やっぱり巧いなー。声がいいのと、極端な役どころが似合う。信念が種継夫妻を殺し、薬子の心身にに一生消えない傷を残したシーンのインパクトがとても強い。
信念に目の前で父母を殺され、親指を切り落されたことで藤原薬子は心を閉ざしてしまう。元々幼さが残るというか、知的障害があるような感じも匂わせて描かれていた彼女は、天真爛漫で裏表のない少女だった。しかし父母の一件以降、彼女は心から笑うことがなくなった。
そんな彼女の変化を最も嘆いたのが、桓武の長男である安殿だ。薬子が好きだった安殿は彼女をなんとか笑わせたいと願い、彼女の幸福や平穏のために動くようになる。安殿からは、感情の起伏が激しく暴力的な気質が垣間見える。(もう一人の息子・神野はお人よしの平和主義だけど、馬鹿ではない青年で、桓武の性質が二つに別れて息子に遺伝したような感じがする。)
薬子の絶望に引きずられたか、急激な変化に対応できなかったのか、安殿の精神も次第に破綻し始める。特に父の桓武亡き後は絶対に不可能な命令を下したり、むやみに部下を処刑したり、自身が処刑したばかりの部下を呼びつけようとする。常軌を逸していく安殿と薬子の夫妻がたまに見せる冷静な言葉や判断に背筋が冷やされる。
アテルイたち蝦夷の物語も切ない。アテルイ役の藤波心ちゃんがちょっと特徴的な話し方なんだけど、それが年の若い少女であり首長である、という役にマッチしていて魅力的だった。自分の親ぐらいの年齢の人々に「お前たち」「〜しなさい」と指導する口調が優しくていい。アテルイを少女にした、というのも「偽伝」らしくて面白い。
最澄については後半ちょっと説教くさくなってしまった印象。そもそも陽射一人を救いたかった最澄は、行表に弟子入りしたことでそれだけではいけない、と感じる。かれは自分の暮らす寺を訪れるわずかな人々に教えを伝えて、修行の中で生きていくことを望む。
しかし師匠に世間を見るように指導されたことで、最澄は都を見る。そこでは大勢の人が貧困や病に苦しんでおり、自分や仲間の僧侶だけではどうしようもないということにかれは気づく。貴族と懇意にしている僧侶からは、どうせ全員は救えないのだから権力のあるものを優先すべきだ。かれらが救われることが政治に影響を及ぼし、いずれ一般の人々も救われるようになる、と言われるも、最澄は納得できない。
最澄は納得しなかったし、決して正しい意見ではないのだろうけれど、この都の僧の言葉は興味深かった。かれが悪人なわけではない。かれだって全ての人間を救えるのならば救いたいだろう。けれどそれは物理的に無理なのだ。無理なことに挑戦して誰も救えないより、救う相手を絞って集中したほうがまだましだ。誰に絞るのか。勿論かれの中に保身や立身出世への欲がないわけではないだろうが、どうせ絞らざるを得ないなら、貧しい者でも富んだ者でも同じことだ、とも思う。富んだものを救うことが世界全体への救済につながる、というのはある意味間違っていない理屈だろう。
更に最澄は後年、招かれて行った田舎の集落で、人々は「すぐに救われる」ことを願っていると知る。そのために人々が欲したのは、意味を理解しないまま唱えられるお経だった。これを唱えればいいのだ、という精神状態がかれらを生かす。それは最澄が望んだ在り方ではなかった。絶望の中で最澄は実感する。自分が二人いれば、三人いればもっと多くの人が救えるのに、と。そこでかれは、かつて師匠が零していた言葉を思い出す。「人が足りない」
最澄よりも大分若く、センセーショナルな登場をした空海もまた、同じことを考えていたのかもしれない。かれは自分と同じ「空海」を弟子に名乗らせ、各地に派遣した。各地で空海伝説があるのは、そのためだと言われている。最澄が人の足りなさを嘆いているように、空海も同じことに気づき、自分の分身たる弟子の空海たちを生んだのではないだろうか。
空海がチャラい天才として書かれていて面白かった。
ひとつひとつのドラマ自体は面白かった。ただ最初に「八百万の神々」みたいなことまで言われたのに、特にそれについては触れられないまま、小日向さんの「これにて一巻の終わりです」という口上で終わってしまったのには驚いた。教育番組みたいだ…。
本編のあとはトークイベント。
自由席なので空いてるところにつめていいよ、というアナウンスが入って驚いた。自由!
小日向えり司会で、河合龍之介(桓武天皇)・真山明大(安殿)・坂口りょう(坂上田村麻呂)・神木優(神野)・平子哲充(藤原種継)という桓武サイドの五名によるもの。
安殿が薬子を笑わせるシーンはアドリブだとか、この日の朝急遽変更になった演出があって皆がその確認にわたわたしていたとか、そういう話。
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2013.03.26 Tuesday
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2月ごはん
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・たるたるホルモン わ西原理恵子の作品によく出てくる吉祥寺のホルモン屋、「わ」。ずっと気になっていたので連れて行ってもらった!壁中に漫画家やミュージシャンのサイン・イラストが描かれている。ホルモンも肉も、机の前の七輪で焼いて食べる。大体全部塩味なのかな。たれなどもなく、塩でひたすら。美味しいけれど、塩だけで全てが賄えるほどずば抜けて美味しい!ということでもなかった。雰囲気込みでの満足感はある。・一芯二葉店内がとってもかわいい。アリスとクラフトエヴィング商會とプラネタリウムと…かわいらしいもので出来上がっている。スコーンもハート型!紅茶も美味しかった。・ポムドテールベーグルすきすき。・ライヴの前にともだちとランチ。ラフォーレに行くために原宿で待ち合わせをしたらラフォーレが休館日で、何のために原宿へ…と途方にくれた日であった。ランチはふつうです。・本陣もんじゃが食べたくなってライヴ後にもんじゃ。もんじゃは撮影をはばかられますね。・バレンタイン前だったので、新宿駅の地下でブラックサンダーの無料自動販売機(なので販売機ではない)が設置されていた。スタッフが持っているQRコードにその場でアクセスしてアンケートに答え、その画面を見せると無料で自販機のボタンを押させてもらえる。そしてブラックサンダーが3個入ったこの缶がもらえる、というシステム。味はいつものブラックサンダー。おいしい。・星乃珈琲店ずっと食べたかったスフレパンケーキに挑戦。分厚い!こんなの。でも案外ぺろっといけてしまい、上品ぶってシングルにせずダブルにすればよかった、と反省。ふわふわで、見た目よりかなりソフトというか軽い。美味しいけれどパンケーキというか名前の通りのスフレだ。メニューに記載されている上、オーダーした時にも改めて言われるのでスフレパンケーキが20分かかるのは構わないのだが、先にコーヒーが出てきてパンケーキが来ることには冷えているのは腑に落ちない…一緒に出して…。・オーケストラジャズと紅茶とカレーのお店。結構しっかりスパイスがきいていて辛め。ペーパーナプキンでつくられた踊り子たち。すごい。・ワイアードカフェ友人と0歳児と三人でランチ。子供に食べ物アレルギーが出ているため、母乳で育てている友人も食事制限があるとのこと。ワイアードは表記や対応が比較的しっかりしているので、という彼女のリクエストで行ったのだが、確かに。いくつかアレルギーが出ているそうなのだが(そのうちのいくつかは治ったらしいが)、小麦が一番つらいと言っていた。パンアウト、麺類アウト、だもんなあ。「一番問題のない外食は牛丼」と笑いながら言う彼女の目がしっかり母親で感動した。写真はバナナアーモンドトーストのアーモンド抜き。抜いてすいません。・はらドーナッツ久々に食べた。シュガーコーティングされたドーナツがあまり得意ではないのでこういう素朴なドーナツがすき。「おとぎ話のゆくえ」を思い出すね。・クロワッサンのチョココーティングお菓子。見た目の通りの味であった。クロワッサンはぽろぽろこぼれますね。・物豆奇屋号やばい!外観やばい!入ってみたら内装もやばい!な喫茶店。サブカル!コーヒーは普通においしく、ケーキは特筆することのないケーキであった。・つばめグリル友人ふたりと三人でランチ。越してきたわたしの要望を聞いてくれるのはありがたいのだが、新宿で何が食べたいか聞かれても浮かばない…ひねりにひねってつばめグリル(新宿以外にもある)…でも行ってみたかったんだもん。つばめグリルって、つばめの平仮名とグリルのカタカナのバランスが絶妙にかわいいよね。名物ハンバーグではなくサーモン。ぷりぷり。・赤坂ブリッツのあと、直近のお店で。世界のビールが色々あるお店。日本のビールも好きだけど、海外のビールも大好き!そしてビールと言えばソーセージです。・パパパパパインパイン入りスープ、パイン味で煮込んだ半熟卵、缶づめパイン。パインだらけのラーメン。ソースもチャーシューも美味しいんだけど、何故パインを入れたのだろう…。誰かが行きたいと言えば同行するが、自ら率先して再び行こうとは思わないかな。パインだらけの内装がすごい。・JUHA静かで流れてる時間が外よりだいぶゆっくり、な気にさせてくれる。雰囲気が良い。・カンラン広島焼き中心の鉄板焼き店。何度か混んでいて諦めたんだけどようやく行けた。美味しかったー!そして自分が牡蠣が食べられることが判明した。生はまだ挑戦していないが、怖いので特に積極的にはチャレンジしないつもり。・にぎにぎ立ち食い寿司のお店。立ってると酒もまわるし早くお腹が膨れる気がする。お寿司おいしい。・spoonフレンチカレー。まろやかでスパイシーでこりゃ美味しい。お肉もとろとろ!・立吉新宿の串カツ屋。嫌いな食材を先に聞いて、それ以外を揚げていくおまかせ串カツ。座ったら問答無用で展開される感じだったが単品もあったのかなー。でもあれもこれも美味しかった。串カツって場末のものばっかり食べていたので、こういう洗練されたものは新鮮。おいしかった。・表参道ヒルズ7周年パーティに行ってきた。招待制。どういう条件かは分からないが、ヒルズのポイントカードを持っている&それなりに使ってポイントを貯めたからなのかな。開始時間からしばらく経過してから行ったので、お酒も食べ物も殆どなくて、微妙なビアガーデンの終盤のようだった。こんなの。・オステリア吉田パスタバー昔「ダウンタウンDX」で高嶋兄が絶賛していたパスタが食べたくて行ってきた。これ!超!おいしかった!!パスタの量が少ないなーと思っていたのだが、ソースが濃厚で具だくさんなのでお腹が膨れる。ハヤシライスに生麺が入れられているような感じ。クレームブリュレ。机に運ばれてから火をつけられてぼわっ。パフォーマンスとしては良かったけれど、このブリュレ自体はそんなに好きでもなかった。パスタとサイドメニューは凄い美味しかったよ!店員の説明の押しつけがましさも許せるくらい美味しかった。・ヴィレッジヴァンガードダイナー食べづらいんだけど美味しかった!オシャレすぎない程度にオシャレ。・amar出張にきた友人とご飯。クスクスたぶん初めて食べた。こういう奇妙なメニューがすきである。美味しかった。ブランコの席があったので、久々にブランコなど堪能してきました。酒飲んで乗るものじゃないと思います。
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2013.03.15 Friday
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ミュージカル「スリル・ミー」14時公演@銀河劇場
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原作・音楽・脚本:ステファン・ドルギノフ
演出:栗山民也
私:良知真次
彼:小西遼生
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ピアノ一台、演者ふたりのミュージカル。沢山うたっているのだけれど、なぜかストレートプレイのような匂いもする濃厚な心理劇だった。
1924年にアメリカで起きた、恋愛関係にある二人の男性が犯した少年誘拐殺人事件「レオポルド&ローブ事件」をもとにしたフィクション。
無期懲役刑を宣告され、30年以上牢獄で過ごしている50代の男。もう五度目になる仮釈放を申請する場で、男はかつての犯行について語る。何故、恐ろしい事件を起こしたのか。現在の男の吐露と回想を交えて物語は進んでいく。
同じ学校に通い、同じく成績優秀で飛び級して高校を卒業し同じ大学に通っていた二人の男。しかし「彼」は「私」に黙って、いきなり別の大学に移ってしまう。
その後再会した二人。大学でニーチェの超人思想に傾倒した彼は、自分が「超人」であることを確信する。その証明のため、そしてスリルを味わいたいという欲求のため、完全犯罪の実行を考えるようになる。そして彼にどれほど冷たくされても好意を抱き続ける私の気持ちを利用して、彼は私に犯罪の手伝いを強いる。
彼に見放されるのが嫌だという一心で悪に手を染める私だが、犯罪の悪質さが増すに連れて躊躇するようになる。そこで彼は、お互いの要求に全て応じるという誓約書を交わすことを提案する。彼の愛を求めるあまり、応じる私。
そしてとうとう二人は殺人を計画する。何の関わりもない少年を誘拐し殺人と死体遺棄を実行した二人だが、これまでの事件と異なり、警察に犯行を暴かれてしまう。そのきっかけは、犯行現場に残された私の眼鏡だった。
役名が「彼」と「私」なので感想が書きにくい!いちいちカギカッコつけると読みづらいかな、と思ったのでそのまま書きます。なので男性の代名詞としての「彼」や、ブログエントリ筆者の一人称としての「私」はここでは使わってない。はず。
彼に恋をしている私と、その好意を知った上ですげなくあしらったり、適当に相手をしてやったりと態度を変えて私を弄ぶ彼。自分に手を伸ばしてくる私の手を無視したり、近付いてくる私を押しのけたりするのはまだ良いほうで、心理的にも揺さぶってくる。いきなり熱烈なキスをしてくるのに、驚いた私がそっと体に手をかけるとすぐに離れて「これで満足か」「こうしてほしかったんだろ」と冷たく言う。それなりに親しげに会話している中で私が手を伸ばして「触って」と言えば、伸ばされた手を冷たく一瞥したあとで「ちゃんとお願いしろよ」と支配・被支配関係を示してくる。読書をしている彼に私が何を読んでいるのかと問えば、もう読み終わったからと本を閉じて手渡そうとし、すんでのところで床に落とす。手渡しはしない、床から拾え、と暗に言っているのだ。
サディスティックな態度、意地悪な行為と言うよりは、調教に近いと思う。コンスタントにそういう態度を見せることで、二人の関係性を何度も私に再認識させるのだ。対等ではない、と繰り返し刷りこもうとする。恐怖で支配し、自分に従順な私を作り上げようとしているという意味ではDVに近いのかな。その辺りは疎いのでうまくカテゴライズできないが。
私を抱きしめるときもキスするときも命令するときも、彼は煩わしそうだ。神経質そうな顔には少しの煩わしさ意外の表情がない。そんな、何も感じていないかのような彼の顔が、放火をした時に変化する。
ひどく昂揚した彼は、歪んだ笑みを浮かべている。一方で歌詞にあるように、気持ちが落ち着いているようにも見える。久々に見たこにたんは顔つきが変わったように思ったのだが、単なる経年変化ではなく、役柄の所為なのだろう。何とも言えない、けれどどこか違和感を感じる顔は「彼」の顔なのだ。美しいのに美しくない、ねじの外れた男の顔をしている。
こにたんは黙っているとマネキンのような造形だからこその恐ろしさ、残酷さがある。それに存在感が強まり、持ち物である肉体を使いこなす術も増えてきている。独特の歌声も健在で魅力的だった。
彼は弟に何らかの劣等感ないしは嫌悪感みたいなものを抱いていた。最初は、金と引き替えに自分の情報を私に売ってしまうことへの憤りだと思っていたが、どうやらそれだけではないようだ。最近「ケチになってきた」父の金庫の暗証番号は「どうせ弟の誕生日だろう」と吐き捨てるように言う彼。単に父の経済観念が変化したというよりは、彼に金を使わなくなった・お気に入りである彼の弟に使うようになった、という感じがする。父の中で兄である彼よりも弟のほうが優先順位が上のようだ。実際にそういう態度に出ているのか、彼の思いこみかは分からないが。
だからこそ彼は最初に殺人を口にしたとき、自分の弟を殺そうと言った。しかもそれによって父がショックを受けること、父が死ぬことも喜ばしい、という。弟が亡くなることで父のものが全て自分のものになるという狙いもあったようだが、単に弟を消したいという願いがあるようだ。彼と弟の間に、もしくはそこに父を入れた三人の間に何があったのか。語られないままだ。
一方私は名家の息子で、非常に可愛がられて育ったようだ。三人しか持っていない眼鏡フレームを買い与えてくれた父は、息子の裁判に際して非常に腕利きの弁護士を雇ってくれた。そのおかげで二人は絞首刑を免れたようなものだ。
しかし皮肉にも、その父親の愛情が犯人特定につながった。彼にとっては残念なことに、しかし私にとっては幸いなことに、だ。
裁判が終わり、99年の懲役を科せられた二人は護送車で刑務所へと送られる。その中で私は真実を明かす。わざと眼鏡を犯行現場に落とし、これまでの事件も含めてあらゆる指紋を拭き取らず証拠を残してきたこと。その理由は、彼と一緒にいたかったから。彼と二人で絞首刑になっても、彼と二人で懲役刑になっても、私はどちらでもよかったのだ。いや、本当はかれと生きてゆきたかっただけだろうけれど、大学の時みたいにいきなりいなくなってしまうかもしれない、不特定多数の(ないしはたった一人の)女の子と遊んでいる彼を見るよりも、あらゆる自由のない場所で二人きりになることを願った。
そのことを告げる私の顔は歪んでいる。嬉しそうに打ち明ける口元は歪み、目もうまく笑えずにひきつっている。けれどこれまでのどんなシーンよりも強気で、自信に満ちている。誇らしげだと言ってもいい。全てを手にしたかれは、それが失われないことを知っている。移動の自由を制限されているし、本当はとても弱い彼が、知らない人間ばかりの刑務所で唯一知っている私をむげにできないことも、死を選ぶようなことができないことも、既に私は知っているのだ。
彼は本当は情けない男だ。自分に警察の容疑が向くといきなり脅え始めたり、助かるために私に縋ってくるような男だ。裁判の判決が出る前日、一人きりの拘置所で怖いと言って泣いていたような男だ。それでも私は彼が好きだった。彼の本質を知った上で好きだからこそ、こういう方法に出たのだろう。
再会したあと最初の犯行、放火の現場で、彼は私を久々に呼び名で呼んで「昔のレイのままだ、幼い」とからかった。さっきまで脅えながらガソリンをまいていた私は炎を見て落ち着いたのか、冷静なトーンで「どれだけ成長したか見せてやるよ」と返す。このシーンだけ、妙に私が彼に対して対等というか普通の口を聞いている。
そのあと「触って」「ちゃんとお願いしろよ」「…触ってください」という調教にうつるのでそれほど気にしていなかったけれど、あとで思えばこれは、私の計画の布石だったのではないだろうか。かつて彼にいきなり置いて行かれた私が「どれだけ成長したのか」を、護送車の中で彼は知ったのだ。
これはラストを見た上で、もう一度最初に巻き戻って私の行動を見直したいなー。犯行に脅え、彼の命令に従い、何度も彼の計画を辞めさせようとした。眼鏡を失くしたかもしれないと不安がって彼に何度も電話をかけたりした。そういう全てが、彼の自尊心を高めて注意力を散漫にさせるための、裏切るための、そして手に入れるための芝居だった。
純朴で臆病で気弱(に見えていた)私が、一気に本性を見せる。野暮ったさすら感じる良知くんの私が開花する瞬間の歪み方がとてもよかった。それまでが物凄く健気だったので、余計に一瞬の変化が映える。
刑務所で「99年」一緒にいることが確約されたことについて「奇妙な鳥が2羽、籠の中で飼われているみたいに」と私は言う。バード・ウォッチングが好きな私ならではの言いまわしだろう。永遠に出られない「籠」に、彼を連れて飛び込んだ私。羽根をもがれて永遠に飛べなくても、幸せなのだ。
己の優秀さを証明するため、そしてスリルを求めて、彼は犯行を繰り返した。私は彼を愛していたからこそ犯行を手助けした。彼こそが、私にスリルを与えてくれる、Thrill me=ぞくぞくさせてくれる相手だったからだろう。更に、自分の優位に立っていると確信している彼を裏切るための算段を立てて、気づかれないようにじわじわと追い詰めていく行為も、きっと私にスリルを与えたはずだ。
でもそれと同じくらい、私にはそのことそのものが悲しかっただろうとも思える。ただ彼が好きで、彼を手に入れたくて協力しただけの私は、彼に愛される道を探していただけだ。彼を裏切りたかったのでも、貶めたかったのでもない。けれど他に道がなかったのだ。彼を諦める、という選択肢を選ばない以上、こうするしかなかった。その結果私は彼よりも一歩上を行き、彼よりも「超人」と呼ばれるにふさわしい人間になってしまった。
自分を超人だと信じて疑わなかった男がはめられ、その男と共に生きたかっただけの男が超人となった。自分の人生をすべて賭けて、通りすがりの子供を「犠牲の仔羊」にして、凡人の男を手に入れた。
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カテコは3回?かな。最後、良知くんが右隣にいるこにたんに手を出すも無視される。そのままハケようと移動したこにたんがちょうど自分の左側に来たときに、再び手を出すも無視される良知くん。最後はちょっと小走りでかけよって、無理やり気味に肩に腕をまわして二人でハケていった。
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「超人」とか「力への意志」が言葉のままで受け取られすぎている、ということへの突っ込みはおいておく。その解釈も含めて「彼」は愚かで未熟で高慢であったのだ。
劇場内のバーではキャラクターごとのイメージカクテルが販売されていた。あと、缶バッジのガチャガチャが一回300円で販売されていたあたり、客層マーケティングが完璧だと思いました…おたくは缶バッジがだいすき…。
それはそれでいいので、せめて日本語の戯曲を出してください。英語の脚本はさすがにハードルがたかい!
ちょうど二日ほど前に、twitterで話題になっていた「クズ彼☆スキャンダル」という、攻略対象キャラがクズ男ばかりの乙女ゲーム妄想をたのしく読んだばかりだったので、ときどきそのことが頭をよぎってしまった。「彼」はクズ彼なんだよ!でもそんなクズ彼がクズだと分かっていて、それでも別れられない「私」もまたクズなんだよ!
Togetter クズ彼☆スキャンダル
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