スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

web拍手
posted by: スポンサードリンク | - | | - | - |

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 EVANGELION:3.0 YOU ARE (NOT) REDO./巨神兵東京に現る 劇場版

みてきましたヱヴァQ!
エヴァに関しては分析とか考察とか理解とかするつもりは元々なくて、けれど到底答えの分からないものをうだうだ考えるのは楽しいので、ぐだぐだ書く。

ネタバレだらけ。
続きを読む >>
web拍手
posted by: mngn1012 | 映像作品 | 22:34 | - | - |

ヤマシタトモコ「BUTTER!!!」5

ヤマシタトモコ「BUTTER!!!」5

高岡に提案された大会に出ることを、二宮は決めた。けれど彼女の気持ちは変わらない。勉強しなくて成績が悪い状況を特に気にせずやりすごしているように、彼女の中には「ダメかもしれないことに尽くす」のが「不毛」だという考えが根付いている。これまで固辞してきた大会に出ることを渋々決めたところで、その考えは変わらない。
けれどこれまでのようにそれに合わせる高岡ではない。何かと「明日」に回そうとする二宮の提案を、かれは理詰めで否定して譲らない。二宮は変わらないけれど、高岡は変わった。

それによってぎこちなくなる先輩たちの空気に、一年生達も引きずられる。しかし二人きりではないことがいいのか、単純に友人関係であるから言いたいことが言えるのがいいのか、かれらの仲はこじれない。寧ろそれぞれの立場からの意見を出し合って、今後のことを考えるようになる。まだなんとなく、勧誘されて入った新人、の意識があるかれらだけれど、いつまでもそう言ってはいられない。
覚えが早い人間とそうではない人間、色々なことが出来る人間、仕切るのが上手い人間、アイディアはあるけれどまとめることが不得意な人間、色んな子がいるからこそ揉めるけれど、だからこそ一人では思いつかない新しい解決策が見つかる。

二宮の鬱屈した気持ちはどんどん追い詰められる。くすぶっている彼女は不満げな顔をして、何かと消極的な発言をする。大会に出ることを撤回はしないものの、やりたくないという態度が全面に出ている。
帰ろうとする二宮を引き止めて、夏は「先輩たちが勝つとこ見たいです」と言った。単純でまっすぐで計算のできない彼女特有の、思いついたまま取った行動だ。けれどそれは結果的に、他の一年メンバーの中にあった気持ちの代弁でもあった。
しかしそれは二宮の感情を逆撫でする。勝ち負けを考えること、競うこと、結果が見えないものに対して挑むことは、彼女がもっとも避けてきたことだ。彼女にとって「負け」はイコール「損」なのだ。努力した結果負けたら損をする。だから努力せず、戦いを放棄する。それが二宮のスタンスだった。そのことを一番理解して、なんとか改善させたいというのが高岡の願いだったはずだ。
二宮はわがままだ。損をしたくない、だから負けるかもしれない戦い(殆どの戦いは負けるかもしれない戦いである)に出たくない、そのために頑張りたくない。でも高岡が頼んだ大会参加を撤回はしない。どころか、高岡が強引に押し切るのではなくて最終的に二宮の判断に委ねることを「ずるい」「優しくない」と言う。
高岡の本気が二宮にはわかる。これまで全てにおいて自分を優先してくれた高岡の最初の願いをかなえてやりたいと思ってもいるだろう。そしてたぶん、ずっと自分がこのままではいけないという気持ちも、皆無ではないはずだ。
けれどこれまで長い間無気力というスタンスを保ち続けてきた二宮には、いきなり始まった新しい在り方に対応できない。二宮にとって一番つらいことは、同じレッスンを繰り返すことや、苦手なところを重点的にやり直すことではなく、それらの努力を「自分が選んだ」という現状だろう。目の前に突きつけられた決死の二者択一だったとはいえ、大会に出ることを決めたのは二宮なのだ。それが彼女の負担になっている。
クラスメイトに「(高岡に)告白されたら付き合うしょ?」と聞かれた二宮は、戸惑いつつも、「されたら…そりゃ…」と返事した。彼女の基本的なスタンスはここに帰結するのだろう。無理やり出さされた試合ではなく、自分で決めて出る試合。それは二宮にとっては大きなプレッシャーになっている。

しかしとうとう二宮は覚悟を決める。まだ遠慮のある高岡や後輩たちと違い、異性である宇塚とも違い、宇塚のダンスパートナーである理佐は二宮に躊躇いなくダメだしをする。彼女の傲慢さ、卑怯さを言い当てる。痛いところをつかれた二宮が逃げ出さなかったのは、それが真実であることと、何より彼女自身がどこかで変わりたいと思っていたからだろう。彼女が苛立っているのは、彼女に「損」するかもしれないことを持ちかける連中ではなく、それを「損」だと思ってしまう自分なのだ。
二宮のその考えには、独善的な彼女の父親の影響が大きい。何をしても決して二宮を褒めず、自分の思うがままに扱おうとする父の重圧を受け続けてきた彼女は、努力しないことで褒められない哀しみを感じないようにした。頑張らなかった、挑まなかった、だから結果は出ない。褒められないけれど、期待していないから悲しくない。自分がやったことを褒めないなら、父親が褒めるようなことも一切やらない。それが彼女の自己防衛だった。
けれど高岡の存在によって二宮は一歩を踏み出す。損すするかもしれない挑戦も、決して一人でやるわけではない、と知ったからだ。高岡が一緒にいてくれる。だから彼女は自分がやりたいと思ったダンスを「マジでやる」と決めた。

とはいえすぐに何もかもが楽しくなるわけではない。けれどぶすっとした顔で、それでも自分が不得意なところを繰り返し練習する彼女はふっきれたのだ。
そして二宮は知る。一生懸命やると、緊張すること。怖い、と感じて手が震えてしまうこと。それでも全部が楽しいこと。
宇塚がかつて二宮について語った「納得してないのに反抗しないなんて 何やっても楽しいわけない」がここで利いてくる。父親に反抗して、死に物狂いでダンスの練習をして、楽しいことを彼女は知ったのだ。
正直高岡でなければここに至るまでに投げ出してしまいそうな二宮の面倒くささ、わがままさだ。それをかれがゆっくり、けれど確実に変えた。彼女がこのままではいけないという、周囲の大人が持っていた意見もあるのだろうけれど、やっぱり恋の力じゃないのかな。頑なな二宮のコンプレックスも、踊って廻って、バターのように溶けた。
web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想 | 20:06 | - | - |

清水玲子「秘密-トップ・シークレット-」12

清水玲子「秘密-トップ・シークレット-」12
追い詰められていた薪のもとに青木が現れる。子供のような顔をする薪を抱きしめて、青木は「あなたが好きです」と繰り返す。「自分を赦してあげてください」と。その単純な抱擁と言葉が、薪を現実に連れ戻す。
姉夫妻を失った青木にとって、薪は唯一の光・希望だった。狂ってしまった青木の世界の中で、薪と薪が指揮する「第九」の存在が、かれに正気を保たせていた。そして今、薪にとって青木がその存在になっている。青木の言葉、青木から向けられる純粋な好意が、薪をとどめている。

青木の姉夫妻惨殺事件、何度となく描かれたチメンザールの反政府軍リーダーの報道、「カニバリズム事件」、かつて小学校で少年が亡くなったときに話題に出た根室沖大地震、度重なる薪への脅し、滝沢幹生、石丸大臣の死の真相、薪が一人で見せられたレベル5の「秘密」。それらがようやく繋がった。無関係に見えた事件も、たしかに関係していたのだ。
絡まっていた糸が解けて、真相が明らかになっていく。岡部の解説というかたちで非常に分かりやすく順を追って語られるので、多少拍子抜けというか、想像以上に親切だった。黒幕でもっと引っ張るかと思ったらそうでもなかったし。こいつだったのか!みたいな展開になるのかと思ったら、さくっと説明されていた。
ただそこに含まれるドラマは非常に秀逸。

「第九」について世論の評価が高まる一方で、滝沢の脳を破壊した薪への処分が必要だと警察局長は考える。薪が大事な手がかりを壊しただけでなく、これまで自分が心血を注いできた第九の仕事を否定したことにかれは憤りを感じている。滝沢にも情をかけてしまった薪を「甘い」と局長は評価する。
薪のあのきれすぎるほどにきれる頭と辛辣な口調、人の裏をかく策略からは想像できないけれど、かれは確かに「甘い」のだ。優しさ、弱さとも言い換えられる薪の甘さは、捜査の上では命取りになる。けれどその薪の「甘い」部分があったからこそ、情を重んじるところがあったからこそ、今の第九があるのだ、と岡部は確信している。

ひと段落ついたあと、雪子と青木はお茶をしている。薪が好きだったと素直に打ち明ける雪子と、鈴木という大きすぎる存在に焦って早々にプロポーズをしたのだと打ち明ける青木。付き合っている当時はいえなかったことをさらっと語れるのは、かれらが恋人同士じゃないからだ。けれど、これから恋人同士になること、はできる。「最初からやり直そう」と雪子は微笑む。

薪の辞表届は受理されず、かれはNYに異動となった。空港まで車で送る青木に、薪は「結婚して家族を持て」と言った。結婚できない仕事であるのはおかしい、「終わりにしなくては」と。
まだ若い青木が結婚して子供を持てば、他のメンバーの刺激にもなる。そういう意味でも、薪にとって青木は希望なんだろう。鈴木が果たせなかったことを、青木に果たしてほしいと、そして他の第九のメンバーに果たして欲しいと願っている。
薪が最後に言った言葉は、青木には聞こえなかった。薪がNYに持っていく「秘密」だ。

薪は第九を家族のようなところだった、と後に語る。だからこそ離れても皆の様子が気になるのだろう。家族が距離や時間にその絆を左右されないように、第九が全国展開したあとも、かれらは繋がっている。
九州に異動になった青木のデスクには、最低でも三枚の写真が飾られている。「第九」の面々の写真、薪にも送った舞と自分と猫の写真、そして、黒田洋と旧姓三好雪子の(おそらく)結婚写真。最初からやり直した二人は、結局違う道を選んだようだ。
最終ページにおそらく黒田洋と思われる相手と雪子の結婚式姿、そこに参加している薪と青木のイラストがある。この推定黒田洋が、11巻冒頭で薪に倒されていた警備員に似ているんだけれど、メインキャラ以外の顔が結構雑な清水さんなので何とも言えない。
どういう過程を経て二人が別れ、雪子が黒田と結婚したのかは分からない。けれど、一時期は婚約までしていた女性の結婚写真を飾っていて嫌味な感じがしないのは青木ならではだなあ。素直に幸せを祈っているんだろうな、と思わせてくれる。
薪さんにチャンスが!とも思わせてくれ…なくはない。

「秘密」はわたしが読んでいる作品の中で一二を争う傑作だ。そして、一二を争うくらい落ち込む作品でもある。気軽に読めない。読んだあとは数日引きずって落ち込む、それでも続きを熱望してしまう作品だった。面白かったー!
スピンオフもたのしみ。
web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想 | 21:18 | - | - |

清水玲子「秘密-トップ・シークレット-」11

清水玲子「秘密-トップ・シークレット-」11

警備員を倒して傷を負わせ、持ち出し不可のデータを複数持ち出して、薪が姿を消した。防犯カメラには、ご丁寧にカメラ目線の薪が映っており、指紋もべたべたと残されている。疑いようのない行動に、本部内手配ならびに拳銃使用許可が出る。部下の家族が殺されたことで、以前からの脅迫に屈したのだろう、と警察内部は推察する。つまり青木の姉夫妻が殺されたことで、薪は警察を、「第九」を裏切ったのだ、と。
動揺する第九の面々の中に滝沢がいないことに気づいた青木は、薪を探しに行く。かつて鈴木と雪子と三人で出かけて写真を撮った場所。薪がいるのは全国展開する第九の施設が建設される予定地にちがいない、と青木は考える。

青木の予想は正解だった。青木がたまに見せる鋭さや、薪のことを思うあまりのひらめきだった。けれどその反面、ある程度薪のことを知っていれば想像できる場所を薪が選んだ、ともとれる。薪が本気になれば、青木に永遠に見つからないように逃げることは可能だろうから。
実際、薪の失踪は本気ではなかった。それは、常日頃からかれを脅し、ついには青木の家族を奪った相手をあぶりだすための囮捜査だったのだ。相手は即日拳銃使用許可を出し、SATまで投入してデータごと薪を消し去ろうとしている。つまり黒幕は、警察内部、それもかなり高位にいる。

薪と顔をあわせた滝沢は、レベル5のデータならびにそのデータを見た鈴木の脳のデータを要求してくる。薪がデータチップを差し出すと、かれは既に完成された施設の中でそれが本物であるか確認を始める。コピーでもとられていては意味がない。
それは薪の敗北に見えた。どれほどの脅しにも屈せず、己の正義に従って「第九」での仕事を続けてきた薪。弱点となる家族を敢えて作らず、仕事に全てを捧げてきた薪が、暴力の前で正義を曲げた。
しかしそれは誤解だった。滝沢が確認のために再生したレベル5のデータは。薪の指示した細工のせいで、機密情報匿名告発サイトに動画として上げられた。薪が命がけで守ってきた「秘密」、黒幕たちが手を血で染めながら奪おうとしてきた「秘密」は、世界中の誰もが見られるかたちになった。

滝沢は絶望する。もはや薪を殺しても何の意味もない。レベル5のデータを見た薪の脳を壊しても、取り返しがつかない。そしてかれは、青木の姉夫妻を殺したスキンヘッドの男の銃弾を受ける。
滝沢の最期は興味深かった。かつて薪が鈴木を撃った日、不要だという薪に拳銃を渡したのは滝沢だった。その銃にそもそも細工をしていた、薪が鈴木の足を打てば上半身に弾が行くような仕掛けをいれておいた、と滝沢は自白する。鈴木の命を奪った弾を撃ったのは薪に変わりないが、薪もまた滝沢に嵌められた被害者だったのだ。
薪自身も後で語るように、それが真実なのかは今となっては分からない。どちらにせよ鈴木はかえらないし、薪は一生鈴木殺しの責を背負って生きてゆくだろう。けれど滝沢の言葉によって、ほんの僅かな救いを与えられたのかもしれない。
実際滝沢は薪を殺すことができた。たとえかれの狙いが外れても、騙しうちにあった怒りや悔しさから薪を痛めつけることは、かれの体格と所持している銃があれば簡単なことだった。むしろもはや何の駆け引きも必要ない分、薪を思うがままに傷つけられると言える。けれど滝沢はそうしなかった。できなかったのだろう。貝沼が歪んだ愛情を薪に向けたように、滝沢も薪に、何ともいえない情を持っていたはずだ。

「第九から殉死者は出さない」という薪の願いは股叶わなかった。さらに、胸のあたりを撃たれた滝沢の最期願いを受け、薪はかれの頭を撃ち抜く。第九の責任者が、これまでに多くの犯罪に加担してきた男の脳を、故意に破壊した。
薪が破壊したのは、既に絶命した男の脳、というだけではない。沢山の犯罪に関与し、そのすべてが明らかになったわけではない男の脳だ。謎の多い事件の解決への手掛かりを、証拠を、かれは破壊したのだ。警察の人間として、何より色々なバッシングにあいながらも続けてきた「第九」の人間として、かれはやってはいけないことをした。滝沢への情と、混乱がかれを追い詰めた。
かねてから精神状態が非常に危うかった薪だが、もはや限界寸前まで追い詰められている。そこに現れるのは、勿論青木だ。
web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想 | 20:51 | - | - |

えすとえむ「Golondrina-ゴロンドリーナ-」2

えすとえむ「Golondrina-ゴロンドリーナ-」2

いきなり家を訪れて「闘牛を教えてくれ」と言い出した見習い闘牛士・ヴィセンテの申し出を、アントニオは受けた。有名な闘牛士の息子であり、既に人気者のかれは、偉大な父を越えるために父以外の人間の意見を取り入れたいと考えたのだ。その気持ちを知ってか知らずか、アントニオはかれのフォームを見て色々とアドバイスする。
チカにはそれが面白くない。自分にはろくに教えてくれないアントニオが、よそものの願いをすぐに叶えてやることが彼女を苛立たせる。
チカは経験どころか知識もろくにない素人で、ヴィセンテは見習いとはいえ場数を踏んでいるのだから、そもそも同じ土俵に立って比較すること事態がおかしい。けれどチカは怒りを露にする。
チカの衝動はいつだって、たったひとつの事柄に起因している。「私を見て」だ。
出て行ったまま戻らない母、気分にむらがあってたびたび暴力をふるう父、優しかったけれどある事故の後手のひらを返すような態度をとり続けた義母。そしてマリア。決して満たされないチカの欲求が、アントニオの態度に過剰に反応する。

闘牛場で死ぬために闘牛士になるというチカに、ヴィセンテは静かに怒る。そこはかれらが「生きる場所」であり、不純な考えてその場に立つチカの血で汚されていい場所ではない、というのがかれの考えだ。
そういわれて黙ってしまうのが、自殺しきれずに死に場所を探している、いわば死ぬまでの期間を自主的に延長し続けているチカの限界だな。本当に死にたいのなら、本当にマリアにあてつけてやりたいのなら、いくらでも他に方法はあるのだ。それを選ばないのは、降ってわいたアイディアに酔いしれているのもあるだろうが、今すぐ死ぬだけの思い切りがないのだろう。
そのことを多分みんな分かっている。わかっているから、物騒なことを言うチカを止めない。叱りつけたあと、自分の闘牛のチケットを渡す。自分のことで頭がいっぱいの彼女の視野を広げてやろうとしている。彼女はまだどうしようもないほど子供なのだ。

表紙のあらすじでは「恋人」と紹介されているマリアだが、チカが一方的に好きなだけで友人にしか見えない、と1巻の感想で書いた。2巻を読むと、ふたりが単なる友人ではなかったことが明らかになる。
牛と相対するかたちで描かれる、チカの深淵に入り込んでいくモノローグが好き。彼女が「チカ」と名乗ったとき、わたしは何の違和感も感じなかった。日本ではよくある女性の名前だし、遠くはなれたスペインでも偶然女性の名前として使われているのか、彼女が日系人か何かなのか分からないけれど、とくに疑問を抱かなかった。けれど「チカ」は彼女の名前ではなかった。「女の子」を意味するその名前は通称でしかなく、本当の名前はマリアと言う。そう、マリアだ。チカを捨てて男と恋をした少女と同じ名前。そして、父親の再婚で義理の姉になった少女とも、同じ名前。
それぞれ少女の連れ子がいる男女の再婚は、偶然にも同じ名前の姉妹を作ることになった。義母になる女性が最初に会ったときに「あなたもマリアなのね」と言っていたので、もしかしたらそんな話題から二人は距離を縮めたのかもしれない。年下だからという理由でチカは「マリア・チカ(小さいマリア)」、そして「チカ」と呼ばれるようになった。姉のマリアが病弱であること、妻となる女性への気遣いから父が機転を利かせたのであろう。
このときから、マリアはチカ、すなわち「女の子」と呼ばれる漠然としたものになった。他意はなかっただろうが、マリアは消されてしまった。
そして消されたマリアの代わりにその家で「マリア」と呼ばれる娘になった少女も、数年ののちにいなくなってしまった。家にいた二人のマリアが、両方ともいなくなったのだ。

家を出てクラブに出入りするようになったチカは、そこでもチカと名乗り続けた。もうマリアはいないのに、彼女はマリアに戻らなかった。もういないからこそ、戻れなかったのかもしれない。マリアを自分の過失でなくしてしまった彼女にとって、「マリア」と呼ばれ続けることは耐え難い罰になったはずだ。
そしてチカは新しい「マリア」に出会う。姉と間違えて呼び止めた少女が、偶然にも「マリア」という名前だったのだ。チカと名乗ると、マリアは「誰だか分かんない感じでかっこいい」と笑った。それはチカにとって、長らく受けてこなかった好意であり、肯定であり、賞賛だった。
同じような年齢ですぐに意気投合したふたりは、いつも一緒に行動するようになる。まだ子供の彼女たちは特異な場所に出入りする中で男というものを嫌悪するようになり、友達以上の関係になった。愛情を受けてこなかった子供が慰めあうような、恋愛というよりはもっと幼くて、それだけに必死な関係にみえる。
「ずっと一緒」と言ったマリアは、チカの知らない男と恋に落ちた。マリアはまた裏切られ、捨てられた。
牛の仮面を被った人間達がマリアの周りを囲みながら、めいめいに発言するシーンも凄く好き。

ヴィセンテの闘牛を見たチカは、それまでの自問もあり、ようやく闘牛そのものに向き合いはじめる。まだ周囲の人間に言わせると「勇気」がないらしいが、それでも彼女は前を向き始めた。感情の起伏が激しく、すぐに行動にうつす彼女がうるさいから、アントニオは闘牛場で映える名前をつけてくれた。「ゴロンドリーナ」、つばめの意だ。
今となっては色々な思い入れがありすぎて使えないであろう本名と、それをかつて消してしまった「女の子」という通称。そんな彼女に、アントニオが新しい名前をくれた。彼女という存在を見て、よくもわるくも認めてくれた。屈託のない嬉しそうな顔が微笑ましい。
web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想 | 08:52 | - | - |

松井優征「暗殺教室」1

松井優征「暗殺教室」1
月の七割を爆発させ、来年三月には地球を爆発させる予定の生物は、椚ヶ丘中学校3年E組の担任として子供たちの前に現れる。落ちこぼれが集まるE組の生徒たちは、先生を暗殺すれば100億円を与えるというミッションに立ち向かうことになる。

来たぞ!殺せんせーだ!
月の七割を爆発させ、月を常時三日月にしてしまった謎の生物。色が変わる皮膚、服の下から出てくる無数の触手、マッハ20での飛行。何もかもが理解できない、名前すら持たない未知の生物は、なぜか「椚ヶ丘中学校3年E組の担任教師ならやってもいい」と言い出し、実際にそうなったのである。

のちに生徒によって殺せんせーと名づけられ、それを気に入っているきらいのあるその生物は、非常に頭がいい。物腰が柔らかく、理性的で、理論立てて会話をする。
地球を爆発するという予告が決して冗談や誇張ではないことが明らかな殺せんせーは、「生徒には絶対に手を出さない」という条件を飲んで、担任に就いた。馬鹿馬鹿しい話である。地球を壊せる存在との約束にどんな効力があるのか。たとえせんせーが条件を破っても、誰も制裁を加えられない。加えられないから、せんせーは生きてここにいるのだ。
つまり生徒に手を出さないという条件は意味を成さない。それでも周囲の大人たちがせんせーの希望を飲んだのは、そもそも圧倒的な力を持つ存在を前にして拒否権など最初からなかったというのもあるだろうが、「E組」が取るに足らない、守るに値しない存在だったというのもあるだろう。
マンモス校である椚ヶ丘中学校において、大人たちは、生徒の自尊心や学力や友人関係を安定して保つため、落ちこぼれの集団=E組を作った。あからさまな被差別対象を作ることで、他の生徒たちは理想的な生徒であろうとする。そのストレスは、公然と非難できるE組にぶつけられる。実際、暗殺が成功したときの報酬である100億も、用意されているか・支払われるかは疑わしい。
つまり条件は落ちこぼれの生徒たちを多少なりとも安堵させ、疑問を抱かせなくするためのものであり、守られるかどうかは問題ではなかった。しかしその反面、殺せんせーなら守るだろうな、とも思えてくるから不思議だ。条件を守った上でのフェアな戦いを望んでいるように見えるし、子供たちの模範となるべき教師として、一度決めたことは守らなければならないと思っているようにも見える。ある意味で、殺せんせーはどんな大人よりも信用できる、とも言えるのだ。

分かりやすい授業や穏やかな休憩時間と、暗殺。常にせんせーの命を狙う生徒たちと、その殺意を背中に感じて嬉しそうに昂揚しながらかわしつづける先生。
そんな関係なのに、生徒たちはきちんと学校に通って授業を受ける。先生の話を聞いて、会話する。地球を壊すかもしれない、つまり家族や友人や自分たちを殺すかもしれない相手と、生徒たちは非常に和やかに向き合っている。授業のマナーを守らないと先生が怒るというのもあるが、その罰が怖くて従っているという感じではない。かれらはこの異様な日常を、それなりに緊張しながらも楽しんでいるように見えるのだ。共通の目標を持った「エンドのE組」は、諍いはありつつも非常にいいクラスになってきている。まるで、合唱コンクールや体育祭といったイベントに燃える、文化祭前のクラスのようだ。

とんでもない設定に、多少伏線を見せられつつも現時点ではさっぱり明らかにならない殺せんせーの正体や目論見といった異常な事態の中で、かれらは気恥ずかしくなるような青春を謳歌している。内容が自身の暗殺ではあるが、殺せんせーは間違っている生徒を叱り、諦めそうになる生徒を鼓舞し、生徒がつけたあだ名を大切にし、兄のようにはしゃいだり、大人として寛大に受け止めたりしてくれる、理想的な教師だ。
とんでもない設定の中で描かれるからこそ際立つイイ話、と言うべきか、それともこのイイ話を今描くためにはこれくらいの歪んだ設定が必要だ、と言うべきか。真正面から描かれていたら話題になることも人気が出ることもなく、言ってしまえばサムい時代遅れの熱血教師もので終わったであろうエピソードが、特異な設定の中では輝いている。穿った見方だろうけれど、「バクマン。」で言うところの、「邪道な王道」のひとつだと思う。
個人的にはその「イイ話」部分がむずがゆくて物足りない。もっと酷くてもいいのにな…って話が変わってしまうか。

殺せんせーの地球爆発のリミットが3月=卒業シーズンなあたりは何らかの思惑があるんだろうな。ともあれ次巻に期待。
web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想 | 09:39 | - | - |

10月ごはん

・グランパ

凄く久々の友人と中野でランチ。小さなお店で、平日なのにすごく混んでいた。パスタもサラダもいたって普通だけど、特に不満はない。

・cinquante cinq


カジュアルフレンチのお店。上が前菜盛り合わせかな。お店を用意してくれた人おすすめのパテが超おいしかった!気負いせずに食事できるので凄くいいなー。おいしかったです。

・カポ・ボイ

こちらもカジュアルなイタリアン。パスタおいしかった!(でも写真はデザート!)



知ってるか…ハリーウィンストンはチョコとコラボとかしてるんだぜ…。
ロゴ入りのチョコ。ふつうにおいしいチョコでした。

・T's たんたん

東京駅の改札の中で、ラーメンでも食べたいねーと看板に吸い寄せられていったお店。オーガニックのお店なので一切肉などが使われていない、ということは後で知った。わたしは思想のない偏食なので、おいしく食べられたら何でもいいです。普段から野菜の摂取量が少ないし、どうせならカロリーの低いものを食べたいので美味しく堪能。
というか年々こってりラーメンからあっさりラーメンに嗜好が移っているのでちょうどいい。

・三条バール

適当にランチタイムにおなかがすいて入ったバール。もちろんビール頼んだぜ…。
サフランライスに牛すじ煮込みカレー。可もなく不可もなく。

・RIVER CAFE

梅田駅の中にあるカフェ。名前の通り、店内に川(を模した水)が流れている。インテリアもいいし、非常に広い店なのだが、なにせ並んでいる。混んでいて並ぶのはいいのだが、店内は空席がたくさん。店員が足りないのか何なのか、案内待ちの客をまわせないのだ。ようやく席に案内されたら、メニューにでかでかとおすすめ表記がされているタピオカ入りドリンクが全て完売とのこと。飲むつもりなかったけど、どうなってるんだこの店は。
梅田はこういう店多いな…。

・ひょうたん食堂

さて誕生日ということで、友人とひたすら飲み歩き。テレビ番組「吉田類の酒場放浪記」が好きで、かつて彼女に紹介したことがあったのだが、彼女から渡されたプレゼントに同封されていた手紙には、その「酒場放浪記」をパロった一枚のチラシが。カウンターで酒を持っているのは、わたし。彼女が希望して、彼女の夫がわたしの写真を切り貼りしてパソコンでフライヤーを作ってくれていたのだ。ばかだなー!超うれしい。
ということで放浪記、立ち飲み屋。オイルサーディンがあつあつで美味しかった。小骨もばりばり頂きましたが、ちょっと危険かも。

・costa Vasca

スペインバルで、生ハムやパテの前菜盛り合わせを食べつつワインをいただく。
おいしいーしあわせー。

・flute flute
北新地にある、醤油とワインのお店。
どういうことなのか、と店に入ったら

こういうことでした。カウンターにずらっと並べられた醤油・醤油・醤油。
全国の珍しい醤油を集めているそう。サービスでいただけるオリーブも勿論醤油付け。しかも席に小皿が積んであって、気になった醤油の味見もし放題。
気軽な気持ちで「おすすめの醤油ありますか」と聞いたところ、物腰の柔らかい店員さんに、微笑みながら、「メニューやお酒によって合う醤油というのは違うので、すべてがおすすめです」と返事をされた。大変失礼しました…。

「直江だよ!撮らなくていいの?」といわれた程度には直江好きが浸透している…。

オムレツ。このメニューにはこのお醤油で、と薦められた醤油で頂く。おいしかった。
あと「面倒くさい卵かけごはん」というメニューがあって、どういうことなのかと聞いたら、ひと口ごとに醤油を変えて食べるシステムになっている卵かけご飯らしい。たしかに面倒くさい!

・立ちぶどう

ここも立ち飲みーすごい混んでました。おさかなおさかな。

・UOMO

ラストは海老料理が中心のお店。

世界で一番好きな具は海老です。美味しかった!
海老メニューばっかり頼んで帰った。

・ジャンポールエヴァン

友人が誕生日プレゼントと一緒にくれたマカロン。エヴァンのマカロンが一番好き!!

・グラマシーニューヨーク

これは別の方から頂いたお菓子。モエを使ったお菓子らしい、が、よく分からなかった…。
おいしかったことはたしか。

・イノダコーヒー

ホットカフェオレ頼んだら煮えたぎったような熱さで出てきたでござる。

・TAWAWA


百貨店に期間限定で入っていたtawawaのデザート。カボチャの器に入ったカボチャプリンと、梨をそのままくりぬいてジュレが入っているもの。すっげー美味しそう!と思って買ったのですが、どちらもぱっとしなかったです…。

・マールブランシェ

元々あったリーフパイのパッケージデザインが変更されたもの、らしい。元々味は美味しかったのだけど、このパッケージ素晴らしくかわいい。紅葉!


商品買ったら30周年の感謝アイテムということでお菓子頂きました。カシュカシュ自体は普段から売ってるのです。あくまで安値で販売されている「まかない」おやつなので進物にしづらいのだが、超おいしいです。

・ソワレ

土曜に行ったらものすごい混んでたソワレ。

・京都ホテルオークラ

ケーキもらった!マンゴー!

・クアアイナ

長らく行っていなくて、凄く恋しくなったのでクアアイナへ。アボカドバーガートマト抜き。
バーガーも美味しいと思うけど、とにかくここのポテトが好きなのよねーポテトだけでもいいかも。
ハンバーグちょっと焦げてた。

・井筒屋
花見小路の料亭。
両家の顔合わせをここでやりました。
味も普通に美味しいんだけど、何よりロケーションが素晴らしい。前々から京都に思いを馳せていたらしい義母が、花見小路に入った段階でテンションを二段階ほど上げ、店の前で更に興奮し、ひたすらはしゃいでいたのでここにしてよかったと思いました…。なんというか「京都にいない人が思い浮かべる京都」のひとつの完成形だと思う。
京都にいる身としては「おいでやす」「おこしやす」に始まる京ことばが過剰で背中がむずむずするんだけど、メイド喫茶における「おかえりなさいませ」や執事喫茶における「お嬢様」みたいなことでしょう。世界観の構築!
しかし父と店員の方の「焼酎ください」「芋と麦とどちらがよろしおすか」「芋で」「お芋さんどすな」というやり取りには吹いた。芋焼酎はお芋さんではない!気がする!

・栞屋
知り合いの方々にお祝いの飲み会を開いて頂く。
久しぶりの人もいて楽しかったなー。不思議な内装の居酒屋。味はおいしい。

・権之介
お仕事飲み会。前日に肉離れをおこしたという人が足を引きずりながら遠路はるばるいらっしゃって、皆で心配しつつも散々ネタにして飲む。平和。



トマトとエビとタマネギのパスタ。おいしい!

web拍手
posted by: mngn1012 | 日常 | 19:53 | - | - |