スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

web拍手
posted by: スポンサードリンク | - | | - | - |

五百香ノエル 「運命はすべて、なるようになる」上

五百香ノエル 「運命はすべて、なるようになる」上
あらゆる経歴が謎に包まれている日本人テニスプレイヤーの桧堵瑛輝は、帝王ワーグナーとの対決の日を迎える。元々ワーグナーに憧れてテニスを始めた瑛輝だが、意識されたいがためにとった不遜な態度の所為でワーグナーは自分の存在を認めてはくれない。更にかれの気を重くするのは、瑛輝が現在もなお、高級男娼として数名の好事家に支配されているという真実だった。

容姿端麗清廉潔白でファンサービスも完璧な国民的スター・ワーグナーは、瑛輝にだけはいつもの紳士的な態度を崩す。それは決して根も葉もない噂を信じて毛嫌いしているのではない。数年前に関係者のみの集まりで、いきなりかれが傲慢な態度をとったからだ。今まで誰かに悪意や軽蔑の念を示されたことのないワーグナーは、卑屈で傲岸な瑛輝の態度に驚き、気分を悪くした。年齢も成績も圧倒的に上の自分が寛容な態度に出ても全く応じることのない瑛輝は、初めて口を聞いたとき以降、ずっとワーグナーに突っかかってくる。

父の借金をかたに、ヤクザ経由で香港の女衒・劉大人の元に売られたとき、瑛輝は10歳だった。返還前の香港で圧倒的な力を持つ劉大人の英才教育をうけたかれは、比類のない「商品」になった。いまや瑛輝は世界に名だたる男ばかり、四人のパトロンを持つ高級男娼だ。
政財界に幅をきかせる男たちの前でも瑛輝は必要以上に媚び諂ったりしない。芝居めいた甘い言葉も使うけれど、嫌なことは嫌だと言うし、我儘な主張もする。そういうところがまた、男たちを魅了する。

けれど本来のかれは、憧れているスターを目の前にして何を言ったらいいのか分からずに動揺する、ただの子供だ。ワーグナーの試合を偶然テレビで見たことがきっかけでテニスを始めた瑛輝にとって、ワーグナーは唯一無二の憧れの存在だった。しかし世界ランク1位のワーグナーにしてみれば、自分に憧れている選手も、自分を見てテニスを始めた選手も、覚え切れないほどに存在する。瑛輝はそれがいやだった。他の選手と同じくくりにいれられるくらいなら、十把一絡げの賞賛者になるくらいなら、誰もかれに対してとらないような態度に出て意識されたかった。その結果ワーグナーが他の誰にも見せないような嫌悪を向けられることになるのだから、瑛輝の目論見はある意味で成功し、ある意味でこれ以上ないくらい失敗した。
素直になれず、気になる子を苛めてしまう子供のように瑛輝は幼い。その幼さはかれがさばを読んでいない真実の年齢相応ともとれるけれど、その一方でかれは体を武器にして、最高の設備とコーチのもとでテニスを続けるための膨大な金を稼ぐ男娼でもある。そのアンバランスさが可笑しくて、哀しい。

瑛輝をこれ見よがしに嫌悪し、無視するワーグナーもまた、瑛輝の存在に葛藤している。なぜ瑛輝がこんなにも激しい敵意を向けてくるのかが分からないし、何故自分がこんなにも冷静に聞き流すことが出来ないのかも分からない。そんなワーグナーを見つめる妻ダフネは、夫が気づいていないかれ自身の心情に気づきはじめている。美しい若者が、見た目通りの美しい環境にないことに対して、かれの美しさに魅了されていた夫は傷ついているのだ。そして嫌悪というかたちであれ、穏やかで優しい夫が、並外れた情熱を瑛輝に向けていることにも、気づいている。

興奮した瑛輝は、自分がいかにワーグナーに憧れているのかを、まるで喧嘩でも売るように打ち明ける。それほどまでに憧れているからこんな態度を取っていること、憧れているからこそ嘘をつきたくないことを必死に叫ぶ瑛輝の言葉は刃物のようだ。
かれはワーグナーが何故自分を避けているのか知っている。莫大な金や贅沢な生活を引き換えに、複数の男に体を明け渡す行為を、敬虔なクリスチャンであり常識人であり、貧しい生まれの中で必死に努力して成功したワーグナーが認められるはずがなかった。
しかし瑛輝の今の生活は、かれが望んだものではない。かれの自業自得ですらない。まだ10歳だった少年に出来る抵抗などたかが知れている。どうせ逃げられない生活であれば少しでも楽しむように発想を転換したことはかれの処世術だ。そもそもただの商品だった瑛輝に、目標を与えたのはワーグナーだ。テニスに一瞬で魅了された瑛輝はテニスを習うためにパトロンと駆け引きし、テニスプレイヤーを目指すことを劉大人に了承してもらうために、これまで拒んでいた行為も受け入れた。かれにとってテニスは「精神を保つため」に必要な唯一のことだったのだ。
そんなことをワーグナーは知るよしもない。コートに立つ事なく死んでいればよかったのかと詰め寄ってくる瑛輝の言葉が切ない。コートに立たないということは瑛輝にとっては、何の目標も喜びも見出せないと言うことだ。
だからと言ってワーグナーは簡単に瑛輝を受け入れられない。その一方でかれは思い始める。瑛輝のテニスに感動していたからこそ、かれの環境が許せないのだ。かれの環境が気にならないと言うのは、かれを軽んじている者だけなのだ、と。

パトロンを喜ばせる手練手管に長けた瑛輝は、恋というものを知らない。どうすればワーグナーが自分を見てくれるのか、自分に優しくしてくれるのか知らない。自分の気持ちを伝えることで頭が一杯で、考えることもできない。初恋の相手の前で興奮している瑛輝の主張は冷静さを欠いていて、辻褄が合っていない。その不器用な、手法ともいえない手法がせつない。先走ってばかりの言葉と態度から、とにかく好きなのだという気持ちがにじみ出ている。駆け引きの全くない、命がけの好意。瑛輝は強すぎる思いで相手を振り回して、その自覚すらない。一度は魅せられた相手にそんな気持ちをぶつけられて、ワーグナーはとうとう自分の気持ちを認めた。折れたのでも流されたのでもなく、もともと惹かれていた思いを受け入れた。

ジェットコースターのようにものすごいスピードで上下する瑛輝の気持ちと言葉に翻弄されながら、どうなるのか全く見えてこない先を目指して読み耽った。
男娼はもはやBLではお馴染みの存在だけれど、お馴染みであることがかえって物語を陳腐にしてしまうこともある。性別を問わず、子供たちが(大人たちも)その性を目的に売買されている事実もあるのだが、幸か不幸か現実味の薄い男娼という言葉が独り歩きして、物語を円滑にもしくはドラマティックに進行するための便利なファクターとして多用されすぎている。ポルノの意味も含んだそのファクターを決して否定はしないし、実際に面白いものも沢山あるのだけれど、使われすぎて疲弊していると感じることもままある。
瑛輝もまた、BLとしての男娼の域を逸脱しているとは思わないが、かれが現在の位置にくるまでの流れに説得力がある。なにより、かれがワーグナーにベッドの中で語った、逃亡したときの話がいい。瑛輝があっけらかんと語るほど、その凄絶さが刺さる。そしてもはやかれの人生から、肉体を売って対価を得ることは切り離せないのだとも思わされる。

過去と現在が行き来する中で描かれる、既婚のテニスの帝王と、若手テニスプレイヤーの恋愛。ちょっと懐かしいJUNEの匂いもして、面白い。
web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 21:15 | - | - |

aie birthday night “ALL TOMORROW'S PARTY 2010"@高田馬場CLUB PHASE

名古屋が生んだスーパースター(らしい)aieさんの誕生日前日に行われたイベントに行ってきた。誕生日イベントという名古屋らしくないイベントを、別にきりのいい年齢になるわけでもない今年にいきなり開催することも面白ければ、タイトルも面白い。以前Donuts Recordが開催していたライヴイベント、「ALL TOMORROW'S PARTY」をそのまま引っ張ってきたというわけだ。ATPの文字と、2010という数字がミスマッチこの上ない。

優先チケットはふざけていることこの上ないハガキ。そのハガキを提示すると、代わりに同じハガキの新しいものと同じくふざけた柄のステッカーが貰える。

会場に入ってだらだら友達と雑談してて、フロアに流れているBGMに気づく。Lamielやkeinの「クランケ」はまだしも、音源になっていないdeadmanの「エンジェルハート」まで流れている。あわわわわ。
皆で「君の心電図!」とかはしゃぎつつ開演を待つ。
そうです今日は同窓会です。

***
・the god and death stars
(vo&gu:aie ba:hati dr:大嵩潤)
めいめいに襟ぐりを切った白の勇者Tで三人が登場、拍手が起こる。今日のあいえさんは黒のぱっつんでサイドが顎くらいまでの長さ、襟足はワカメちゃんばりに切りそろえられているカツラ。
サイドふたりがドラムセットの前に立って、ギターの音が鳴って、すぐに「もっかい!」とやり直し。ゆるい空気の中ライヴが始まる。
ずっと見る機会がなくて初めて見たごっつぁんは、初期から見ていたひとびとの嘆きの印象が強かった所為なのか、思っていたよりずっと良かった。aieさんのヴォーカルだいぶいいよ。もう少ししたらもっと良くなるんだろうな、と思わせてくれるだけの勢いもある。そして全曲超aie。ひーたそが言っていたのだが、aieさんが書く曲は(厳密には表に出ている曲は)どれもいい。どれも一定以上だ。すごくいいとふつう、しかない。いまいちとかよくない、がない。15年くらいバンドやっててそのポテンシャルが続いているってちょっと怖い。

「どうも、ごっどあんほにゃらsだsだしゃpsだフィーチャリングhatiです」という、hatiがいることしか伝わらない挨拶でMC幕開け。「今からやる曲は、一番古い曲なんだけど、ちょっとLUNA SEA復活を感じさせるアレンジに…」という謎の紹介で曲開始。やっぱり言葉選びがいちいち面白い。あとは次回ライヴの告知のときに、「ベースはhatiじゃなくて元蜉蝣のキングカズです」とか。
そして現在音源がないバンドなので、「何かいい曲だなーとか思ったら物販買って帰ってください。皆の小銭が俺たちを支えている」と身も蓋もない宣伝。この後もひたすら物販の宣伝は続く。

毎回見たい遠征してでも見たい、とは思わないのが本音だけれど、コンスタントに見られるといいな。小銭がたまったら音源も出して出して。

・highfashionparalyze
(vo:真 gu:aie)
真さんとaieさんが組んだ、という話を聞いたときは物凄くぶったまげた。とうとうそこまで到達したか…という謎の感慨深い気持ちもあったし、盲点だったけれど凄くいいものになるんじゃないかと言う思いもあった。反面、どうなるんだろうという想像のつかなさもあった。

さっきまでの和やかな雰囲気を掻き消すようなSEが流れ、腰までの黒髪に黒ずくめの真さんがすっとステージに出てくる。かれを最後に見たのが2004年の3月だったので、6年半ぶりだったのだが、すごく相変わらずの真さんだった。勿論6年分の変化はあるんだけれど、相変わらずの長い髪と気だるい雰囲気だ。

その隣に立ってギターを弾く以上、主役であっても勇者Tシャツを着るわけにはいかない。白のインナーにジャケットを羽織ったaieさんがギターを鳴らし始める。こんなに神妙で真剣な顔つきで俯いてギターを弾いてるaieさんはひっさびさに見たよ…。
ギターが鳴らされて、歌とも語りとも呻きともつかない真さんのヴォーカルが入る。あの、形容しようのない甘ったるい毒みたいな声がする。

どこまでが一曲なのか何曲やったのか、すら分からなかった。全て合わせて一曲です、と言われても納得する。何の打ち合わせもしていなくて即興でやったんです、と言われてもやっぱり納得するだろう。鳴り響くギターとヴォーカルはほとんど絡み合うようなことがない。お互いが好き勝手にやっているような、1+1のままのような感じがする。ステージにいるのはただの真とaieでしかない。けれどたまに、極たまに、それがうまく噛み合う瞬間がある。ステージを支配するのが二人の個人ではなく、ひとつのバンドになる。

とっても前衛的。メリゴってすっごくキャッチーで分かりやすかったんだね!と思えるくらい。でもやっぱりこういうの嫌いじゃない。出来ればぎゅうぎゅうのハコではなく、空いたハコで壁に凭れてお酒を呑みながらのんびり見てみたい。

・vo:漾 gu:aie ba:seek dr:Toki
黒のタンクトップで、短髪のTokiさん登場に沸く会場。黒のハットのseekさんも出てきて、続いてaieさん。「派手にやろうぜ」と、文字だけ見れば非常に客席を煽っているようだが、実際はぼそっと呟いただけのMCのあと、鳴らされた音に会場から悲鳴が上がる。
黒スーツの漾さんが出てきて、そのままdeadmanの「25」へ。漾さんの再現度が高すぎて、泣いていいたら笑っていいやら。実際は爆笑しつつ大盛り上がりで必死で振りやったよ…。

告知があるはずもないバンドです。愛犬もちおのステッカーでも買って行ってくれ、という販売促進MCと、Tokiさんが3日前からaie宅に泊っていて、ついに一人でも愛犬もちおに吠えられなくなった、という小話を挟んで「桜と雨」へ。漾さんに似合うにもほどがある。漾さんにdeadmanの何の歌をうたってほしいかって聞かれたら、「桜と雨」って答えると思うもの。凄く良かった。漾さん喉の調子もよくて、もはや何度目なのか分からない円熟期に入られたようです。
「quo vadis」の最後に、ミッキーマウスばりの高い声で「see you~」って言うところまで完璧で噴いた。

25
raison d'etre
blood
桜と雨
溺れる魚
quo vadis


漾さんだけがハケて、三人は残る。この時点でちょっと、「順番から行けば次はHitomiさんが出てきて、もしかしてkeinか…?」とか思ってしまいました。すいませんでした。叶わぬ夢でした。だって絶対似合うんだもん。

この話が出たときTokiが乗り気だったので、仲良しのseekにも話を持ちかけた。そしてもう一人、deadmanを歌いたいと言ってる人がいると言う話のあと、曲へ。

・vo:Hitomi gu:aie ba:seek dr:Toki
「rip roll soil」のイントロと同時に、手拍子しながらHitomi登場。衣装は名古屋と同じ。HitomiさんはHitomiさんらしいdeadmanだった。選曲は誰がしたのか知らないけれど、これまた似合う選択だ。いつもの後ろ体重でマイクスタンドを引き寄せて、手拍子を客席に求めて歌うところが様になりすぎている。

「というわけでHitomiくんです」と紹介されたHitomiさん。「飲む機会があって今日のことを聞いて、『ずるい』と」思ったらしい。「Hitomiくんは自分に電話があると思ってたらしい」と苦笑するaieさんに、「いっつも好きだ好きだ言ってるのに!」と笑うHitomiさん。だから出演の発表が他のひとより大分後、優先チケット申し込みがとっくに終わってからだったのね…。
しかしその酒の席がなければ、その時にこの話が出なければ、Hitomiさんは出ないままだったのか。偶然ってすごい。
本人たちとやれて嬉しい、と言うHitomiさんが上手を見て「本物!」とにこにこしながら叫ぶ。そのあと下手を見て「偽物!」と。悪気のないところがHitomiさんのいいところであり、言葉の選び方をたまにしくじるところも多分Hitomiさんのいいところだと思います。

客席の熱気が凄い、と言うHitomiさんの言葉を受けて、汗をかいたら風邪をひく、皆のことが俺は心配なんだ、と嘘くさい演技を始めるaieさん。勿論オチは「Tシャツ買ってくれよー」でした。

「この曲で最後です。続きはアンコールで」というaieさんの言葉に続いて演奏されたのは「additional cause of sorrow」だった。この曲はdeadmanの後半につくられた曲の中で凄く好きな曲なので、聴けて凄く嬉しかった。
Hitomiさん曰く「にせもの!」が二人いるdeadman。半分だけが「本物」のdeadman。解散ではなく活動休止だけれど、きっと前みたいな活動をする日は訪れないであろうdeadmanの半分と「にせもの」が演奏したdeadman。それはdeadmanであってdeadmanじゃないし、deadmanじゃなくてdeadmanなのだと思う。眠らせるほかにない曲たちが、一瞬だけでも、他のひとの力を多分に借りてでも甦るのなら、それはきっとすてきなことなのだ。

色あせない曲を聴き返して嘆くこともできる。形を失くしたものを思い出して泣くこともできる。そう言った哀しみや喪失の再現を緩和しているのが、aieさんの守銭奴的MCであり、ふざけた雑談なのだろう。グッズ買ってください、誕生日祝ってくださいと提示することで、過去に引きずられることから少しばかり逃れられる。

rip roll soil
additional cause of sorrow


***
そんなこんなで強制されたアンコール。
「俺と北村さんがやってたのはdeadmanだけじゃなくて。かれこれ1998年頃かな、名古屋を代表する漆黒のバンドがありまして」という語りだしに胸がざわつくざわつく。「今からやろうとしてる曲は俺の曲じゃないんですけど、代表曲かなっていう」勿体ぶる勿体ぶる。もはや何の曲か大体見当がつくその曲は「お客様からお金をとるものとして初めてレコーディングした曲」だそうで、その時レコーディングしてくれたのが山本さんで、今日も山本さんがいるということに対して「奇跡は、目の前で起きてるんだよ」と言うaieさん。よくやる、妙なことやクサいことをしれっと言っただけかと思いきや、直後に本人が顔を真っ赤にしていた。
「そんなLamielのミドルヒット曲を歌ってくれるヴォーカルさんをどうぞ!」と紹介されて漾さんとHitomiさんが出てくると、「空が堕ちるアノ日」のイントロが始まる。爆笑と興奮と感動と、なんか色んな感情がないまぜになって大変なことになった。
漾さんはセッションになると異様に張り切る、はっちゃける人なのだけれど、その本領は今回も発揮されていた。俺を見ろ!と全身で訴え過ぎる。っていうかもはや「俺の曲!」状態。絶対ビデオ見たよね。そりゃ歌詞に合わせてどんどん変な動きしたりフリ作ったりするよね。Hitomiさんは若干その盛り上がりっぷりに気おされているというか、一歩譲って苦笑いしつつ楽しそうだった。
そして目玉はギターソロ。aieさんのギターソロ!Twitterでも「10年ぶりのギターソロ」というようなことを言ってたけれど、上手のステージ前方に出てきてソロを弾くaieさんのどことなくぎこちない様子が面白かった。近づいてそれをしたり顔で覗き込む漾さんであった。
※aieさんの立ち位置がよく分かる文章:「aieさんがバリバリギターソロを弾いていて面白かったです(笑)」 (引用:SIZNAブログ)

「どうですかお客さーん!」「すげーだろ!」と一曲終わって大興奮のaieさん。「30歳超えてこういう曲やると思わなかったよ」と苦笑気味。まあヴォーカルの人たちはまだこういう曲やってるきらいがあるけどね…。
そして、「生きてれば俺も歳とるんで、来年も来てくれるかな」という言葉に、客席から「いいともー!」の声があがる。想像していなかったのか、あまりにも揃っていたからなのか驚くaieさんに、漾さんが「誕生日プレゼントだよ」とにやにや。生きている以上年をとるのは当たり前だ。あの頃10代のバンドマンだったかれが三十路に突入している。そのことに何の不思議さもない。ただ、「生きてれば」という当然の大前提をさらっと口にしたことに、色々と思いを馳せてしまう。何も決まっていないであろう「来年」の約束は、来年まで生きるという約束でもある、のだ。

ラストは「1999年にLamielを辞めたときに、最後にやった曲」でお別れ。この曲をやったとき、北村さんは「この人とバンドやるのは最後だな」と思って見てたのに、結局DEADMAN(deadman)で一緒にやった、というオチつきで、「Eins」へ。楽しかったー!

空が堕ちるアノ日
Eins


***
終演後もやまないアンコールの中放送がかかる。
アンコールの声にお答えしたいのはやまやまですが、「曲がありません」というしれっとしたアナウンスで納得せざるを得ない客席。もっとバースデーイベントらしいアンコールが待っていると思ったんだけれど、案外誕生日自体は二の次三の次だった。ともあれおめでとうございます。

***
ひっさびさの人にも色々会えたし、久々に見たひともいたし、ひっさびさに聴いた曲もあって、とにかく馬鹿みたいに楽しいイベントだった。10年後くらいにはkeinのカヴァーもやりましょうよ、ね。

web拍手
posted by: mngn1012 | ライヴ・舞台など | 22:28 | - | - |

野田地図(NODA・MAP)番外公演「表に出ろいっ!」@東京芸術劇場 小ホール1 19:00開演


どーん。


これは地下に下りた、入り口付近にあった。さっぱりこんな話じゃない。

***
野田秀樹と中村勘三郎の舞台、である。絶対に見に行きたいと思う反面、エリザベートで手一杯でもあった。しかし、「ザ・キャラクター」と関係していると聞いてしまえば、あの舞台にトラウマを植えられた身としては行かずにいられない。

作・演出:野田秀樹
父:中村勘三郎
母:野田秀樹
娘:黒木華



以下ネタバレ。
参考までに、「ザ・キャラクター」の感想。
野田地図(NODA・MAP)第15回公演「ザ・キャラクター」@東京芸術劇場 中ホール 19:00開演

戯曲はここに。

続きを読む >>
web拍手
posted by: mngn1012 | ライヴ・舞台など | 19:00 | - | - |

ミュージカル「エリザベート」@帝国劇場 13:30公演/終演後トークショー


エリザベート:朝海ひかる
トート:城田優
ルドルフ:伊礼彼方
ゾフィー:杜けあき
ルドヴィカ:春風ひとみ
少年ルドルフ:小宮明日翔
***
一階補助席の下手側で観劇。
補助席は公演当日に発売される座席で、一階補助席だとS席の最後尾にあたる。背もたれこそ折りたたみ式なものの、他の会場のようにパイプ椅子などではなくもともと設置されているものだ。座り心地も悪くないし、前列との幅は狭いものの、普通の荷物量だと問題ない。9000円。

***
「私だけに」の三重唱、正面を見据えて歌うシシィに歌いかけるトートの表情がせつない。「陛下と共に歩んで参ります」という彼女は、何度も辛い思いをしながらも、トートではなくフランツを選んだ。死ではなく生を選んだ。
その一方で、彼女は皇帝であるフランツにも、実際の最高権力者であるゾフィーにも屈せず己にのみ依拠して生きると決断している。つよい意志が表情にも滲んでいる。トートの言葉もフランツの言葉も、このときの彼女には届かない。手が届かないものに対して、トートが切ない顔をしてみせる。普段は生意気そうな表情のかれが、決して余裕たっぷりなわけではないのだと思わせてくれる。

この日も伊礼ルドルフは好調。本当にきれいな「闇が広がる」だった。
終わらなければいいのに。
伊礼さんは正直、役の解釈やその役にのめりこむまで・なりきるまでに、時間や経験がたくさん必要なひとだ、と思う。最初から完成されたものを提示するのではなく、徐々に解釈を深めていく。わたしがかれを最初に知ったのは、例に漏れずテニミュの佐伯だった。歌がうまくて「無駄に男前」な佐伯だった。すこしのブランクを経てコートに戻ってきたかれは、非常に良い佐伯になっていた。「一つやり残した事」があると言う佐伯の歌にぴったりだったし、その「やり残した事」を見事ステージの上で成し遂げた佐伯でもあった。
なので、他の芝居で伊礼彼方を見たときに、どうしても物足りなさを感じてしまった。役柄や物語の内容とは関係ないところで、もっと出来るだろう、と思わずにはいられなかった。しかし今回のルドルフはその物足りなさを殆ど感じない。喉の調子などで歌がよれていた日は違和感を覚えたけれど、歌以外の部分が格段に良くなっている。そしてこの日は歌も良かった。100回の公演を超えて、すごく良いルドルフが出来上がりつつある。ひとつひとつの仕草や表情に意味がある、一度見ただけでは全てを掌握しきれない深さのある、きれいで繊細で脆い青年皇太子だ。
先週のトークショーで禅さんや塩田さんにからかわれていた、マイヤーリンクでトートに操られて手をばたばたさせる動きは健在で安心した。誰が何と言おうとあの一連の動きは大好き!
この日の死は前回の城田トート同様、ふわふわした、正気ではない顔での自殺。もはや自殺ではなく、他殺のようですら、ある。

これもトークショーで言われていたことだけれど、確かに「父と息子」のあり方が毎回違う。どう違うのか、を上手く説明できないのだけれど、確実に違うのだ。

「どちらかを選んで お義母様か私か」とシシィはフランツに詰め寄る。かれが自分を選ぶことをシシィがどのくらい確信していたのか、それとも全く予想していなかったのかは定かではないが、もしここでフランツが彼女ではなくゾフィーを、ゾフィーが徹底しつづける義務をまっとうする皇帝としての道を選んでいたら、シシィは王宮を出ただろう。そのときに、彼女がルドルフや次女を連れて行くようすが全く見えない。彼女はひとり、もしくは懇意の使用人を数名連れて出て行っただろう、と思えてならない。今も息子を取り返すべく戦っているというのに、母性が見えない。育てる前に奪われ続けたからなのか、性格なのか。「パパみたいに」なりたいと願い続けた彼女だが、マックスのように子供を溺愛する親にはなれなかった。
「ママは僕の鏡だから」において、朝海シシィは決してルドルフを受け入れない。期待をさせない誠実さなのかもしれないが、少しも考えるそぶりがない。ルドルフが現状を打ち明けても、すげなくあしらわれておしまいだ。フランツともこの国とも、そもそもお腹を痛めて生んだルドルフとも関わりたくない、と全身で拒否している。

これで今回の伊礼ルドルフは見納め。大好きです、やっぱり。
 
***
小休憩を挟んでお楽しみの、ある意味恐怖と不安のトークショー。
塩田さんの「舞台上でこういう進行をする機会が増えました。しおもんたです」の挨拶のあと、呼ばれたキャスト陣が登場。「落下」の衣装で出てきた朝海さんと、伊礼さんをお姫さま抱っこした城田の登場。不安的中!

一人ずつ紹介されて、話が進んでいくと伊礼さんが「ちょっとちょっとその前に僕たちの登場についてのコメントはないんですか!」と絶えかねてのアピール。登場前に城田が「抱っこしましょうか」と聞いてきたので「お願いします」と応えたらしい。どこから突っ込んだらいいのかわかりません。「四歳下の男の子に抱き上げられる俺の乙女心が」とかなんとか言ってたな。
2人揃って「僕たちスペイン語圏なんで!」とはしゃいでた。塩田さんも、2人の闇広は外国にいるよう、と称していた。納得。

初対面の話。朝海さんが城田に最初に会ったのは記者会見のときで、会うまでは心配だったんだけれど、会ったらにこやかに挨拶されて安心したそう。城田が「こんな若造で大丈夫かってことですか」とからかうと、「そうじゃなくて人見知りなんで」と朝海さん。でも城田がにこやかだったのでよかったそう。城田が「僕人見知りさん得意なんで」と言ってたのに心底納得した。そうだよねそうだよね。自覚もしていたのね…。
城田は、朝海さんが男役だったと知らなかった、娘役だと思ってた、という話。「瀬奈さまは男役っていうのがすごくわかるんだけど」とも。退団してからの年月の差かなあ。ここでだったか、伊礼さんが「朝海さんのルドルフ見たほうがいいよ!チチウエーーって!チチウエーって!」とはしゃいでた。城田が「あ、僕それ見ました、あの、某動画で」とパソコンのキーボードを叩くジェスチャー付きで言ってた。
朝海さんの伊礼さん初対面の印象は、前回の「エリザベート」で、子供ルドルフたちと遊んでいるのを見て、子供が好きな人に悪い人はいないと思った、という話。伊礼さんは朝海さんが楽屋に宝塚時代の友達が遊びに来たときに、はしゃいでいる姿に驚いた、人見知りとか信じられない、と。「キャーなんとかちゃーーん!」と両手を胸の前で振る仕草付きで再現してた。朝海さんは伊礼さんを「彼方」と呼ぶけれど、城田のことは「優くん」と呼ぶ。自分への扱いが雑だ、と不満を漏らす伊礼さんと、呼び捨ての方が親密だ、とフォローする城田。どっちが年上よ。
城田の伊礼さん初対面は、「エリザベート」の練習のときだそう。同じスタジオで、練習時間が前後だったので、伊礼さんは自分のあとの城田が来るのを待っていたらしい。しかし城田は、いつもと違うスタジオだということを忘れて違うスタジオへ行ってしまい、慌てて本来の場所へ移動したため40分くらい遅刻したそう。それでも待っててくれて、「一緒に闇広をやろう」と言ってくれた伊礼さんであった。

ここまでやってきてどうですか、という話。「とにかく母上がピリピリしてる」と伊礼さんが繰り返してた。確かに朝海シシィは瀬奈シシィよりつめたい。
城田が、普段テレビも映画も全く緊張しないけれど舞台は緊張すると言っていた。

前回のトークショーでの、城田トートがキスするときに目を閉じるので、思わず自分も閉じてしまった、という伊礼さんの話に城田が物申す。僕は目を閉じてない、と熱弁する城田。閉じてた、と主張する伊礼さんに、ちょっと目を細めるからそう見えるだけだ、と反論する城田。「オペラグラス持ってる人は出してください」と城田が言い出し、目を細めて実践する。確かに閉じていないけれど閉じているように見える。結局は伊礼さんの、「城田君が細めた段階で自分が先に目を閉じてしまうから分からなかったのかも」というオチでおしまい。

相変わらずマイヤーリンクのルドルフの両手ばたばたが気になって仕方がない塩田さん。折角二人いるから、と再現していた。何度も言うけどこれ好きだよ。

「生まれ変わったら何の役をやりたいか」という話。伊礼さんはルキーニ。最初に「エリザベート」を見たときに、ルキーニに釘付けだったのでやってみたい、と。「どうですかね、高嶋さーん!」とここにいない高嶋さんに呼びかけてた。今はまだ無理でも、それこそ十年後くらいにやらないかな!面白そう。
朝海さんは「生まれ変わってですよね?」と確認してから、「禅さんに生まれ変わってフランツ」とのこと。「禅ちゃんはまたフランツやるんだね」と塩田さん。ほんとだ。
城田はエリザベート。いつも袖で見ながら歌ってるもんね、と指摘されていた。「私だけに」は皆勤賞らしい。あの曲を、声を出さずに熱唱して、こっそり拍手しているそう。「私だけに」はピアノも弾けるようになった、人の曲歌うの大好き、らしい。
「レ・ミゼで森公美子がコゼットをやった」ように、記念で色々やったりするのも面白いかもね、と塩田さん。トートとルドルフ交代したら?という話に、「俺見えませんけど!」と伊礼さん。思いっきりジャンプして城田の後ろから顔を出してた。城田も「精一杯しゃがみます!」とか言いつつ腰を落としたり。おばか。
「塩田さんは何がいいんですか」と伊礼さんの無茶ぶり。塩田さんがやっぱり指揮者がいいという返事をしたら「えーでも人生棒に振ってるんでしょ」と本人の持ちネタで揚げ足を取る伊礼彼方。

この格好で渋谷とか歩いたらどうなるのかな、と城田。伊礼さんと二人で真顔で歩く真似。朝海さんが「でもヴィジュアル系の人と思われるんじゃない?」といってたけど、ヴィジュアル系の人だって町歩くときは素顔ですよ…。城田はそれで説明がつくけど、伊礼さんはだめだ、「貴公子だ!貴公子だ!」って言われる、というこれもばかな話題。

あとは一人ずつ挨拶。お友達などにも声をかけてまた来てね、という話。パンフレットとか電車で広げてね、だそう。

心配してた通りひどい、面白いトークショーだった。満足。
web拍手
posted by: mngn1012 | ライヴ・舞台など | 13:30 | - | - |

崎谷はるひ「静かにことばは揺れている」

崎谷はるひ「静かにことばは揺れている」
最愛の妻に先立たれた綾川は、息子と暮らしながら、会社を経営する社長だ。もう恋愛をすることもないだろうと思っていたかれだが、仕事で知り合ったセラピストの白瀬にいきなり迫られてしまう。ゲイの白瀬は、綾川も同じ嗜好を持つと誤解していたのだ。

「心臓がふかく爆ぜている」<感想>のスピンオフというかシリーズ第二弾というか。前回の主人公斎藤の幼馴染みであり、叶わなかった初恋の相手であった綾川の物語。こちらから読んでも問題ないけれど、やっぱり前作を先に読んだほうがいいと思う。

白瀬は綾川の会社のスタッフ向けの講演に呼ばれて来た。同じく綾川の会社で働く斎藤の昔からの友人なのだ。一見おとなしそうな白瀬だが、実際の講演では非常にしっかりとした理念を語るし、胡散臭がっているいう態度を隠さない綾川の挑発を面白おかしく受け流す話術も持っている。講演は盛況に終わり、その夜の食事会のあと、人がいなくなったのを見計らって白瀬は綾川にキスしてきた。酒の席とは言え、冗談や人間違いで済ませられないようなあからさまな誘いに綾川は戸惑う。確かに自分達は今までにこやかに話をしていて、これが男女であれば何かしらの誘いに発展してもおかしくないような雰囲気だった。けれど、綾川は断固としてそれを断る。かれはゲイではないからだ。
内面に強い気持ちを秘めているとは言え、非常に理知的でまじめな白瀬がいきなりそんな態度に出たのには理由があった。かれはゲイだし、なにより、綾川のことをゲイだと思っていたのだ。

白瀬がそう思うのも無理はない。綾川はつい先日まで、テレビでも有名な女装社長だったのだ。オネエ社長、といったほうが正しいかもしれない。母を突然なくしたことに対応できない幼い息子・寛のため、息子や妻と同じくらい深く長い付き合いの親友のため、かれは長身ながらも女性の格好をしていた。それが話題になり、テレビなどにも出ていたものだから、白瀬はてっきり綾川が「お仲間」だと思ってしまったのだ。

全くゲイではないのに息子のために女装する社長は、前作でも散々斎藤との仲を勘ぐられた。けれど断固としてゲイではない、という状態を維持しつづけたかれが、今作で男性と恋愛するようになる。何重にもひっからまった誤解だ。

白瀬の誤解は無事にとけ、二人は仕事上の付き合いと友人付き合いの両方を開始する。色々なことがあって白瀬は寛の面倒を見るようになる。単なる友人の延長ではなく、きちんと仕事としてだったけれど、白瀬が許した金額は低く、決してかれの労働に見合うようなものではない。それ以上は頑として望まず、自分になついてくる寛に心からの愛情を注ぐ白瀬の存在は、仕事的にも精神的にも綾川を癒してくれる。
そういう白瀬を綾川が好きになるのは決して難しいことではなかった。一瞬たりともゲイでもバイでもなかったかれは、白瀬を好きになる。そして白瀬はかつてのアプローチ通り、綾川に惹かれている。
だからと言ってすぐに何もかもが上手くいくわけではない。白瀬にしてみれば綾川のセクシャリティ変更も疑わしいし、綾川にしても、本職にそれほど従事せず寛の世話を安い金額で続けているかれに謎が残る。達観しきった態度であと一歩を踏み込ませないところも気になって仕方がない。

実際白瀬が隠していたかれの過去と現状はすさまじいものだった。しかしそれでもいまひとつかれの気の毒な身の上に入り込めないし、物語としても盛り上がりきらない。わざと起伏を抑えているのだろうけれど、淡々と語りすぎるせいか入り込みづらい。他人事のように話すかれが痛ましい、という印象は受けなかった。
そして現在まで続いているかれの苦労もまた、あっさりしている。恋愛が絡んでいないからなのかなあ。白瀬への想いに腹をくくった綾川に死角がないので、白瀬が打ち明けてからはとんとん拍子で事実が明らかになり、とんとん拍子で解決する。
二人の間には誤解も嘘もない。大きな価値観の違いもすれ違いも傷つけあう会話もない。悪意のある第三者はいるけれど、決して頭のよくないその男の行動に二人は騙されることも互いを疑うようなこともない。ないのであんまり話が切なくない。決定的な不満はないけれど、カタルシスしたりない。

前作に続いて地味めの話でした。綾川が回想する元妻はいつもの崎谷キャラ。

web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 14:45 | - | - |

洋服の話

 
melissaのVivienne Westwood Anglomania ×Zen Girlコラボパンプス。フラットシューズなのでどこまでも歩ける。オープントゥなんだけれどハートのおかげで実際のところつま先はほぼ見えないのも好み。デニムと合わせるとおバカで、ワンピースとあわせてもおバカで、結局何履いてもおバカで可愛いです。友人に「大分イタい靴履いてるなー」といわれた。多分この判断が一番正しい。
四色あってどれも可愛い。懲りずに黒も欲しい。
元々、ヒールが高いオープントゥのハート靴のデザインに惹かれていたんだけれど、現実問題普段使いできなさそうなので逡巡していたのだ。こっちが出て嬉しい限り。ハート周りにスタッズついてるのも嬉しい。ただ本体とハートの色が違う、っていう前者のデザインも非常に魅力的なのよねー。
melissaはすごく歩きやすい、というわけではないんだけれど、フラットだと履き心地が良いのでこれはアタり。


Jane Marple秋物第一弾。散々花柄は流行ってて食傷気味だとか言いつつ、結局花柄に戻る。リバティです。取り外せるゴムベルトがついていて、裾は黒の綿レースが出ている。このゴムベルトは正直かなりチャチいので張り切って使うのはいかがなものか、という感じ。
ただこの服のウリは

リバーシブルになる、ということだ。裏返すと黒で裾に数段レースがついたワンピースになる。写真がアレなので全然分からないだろうけれど。

胸元にだけ花柄がちょこっと。
素材の所為もあるのか、あまり華美すぎず派手すぎずカジュアルな普段使いが出来そうなワンピース。これがあれば一泊二日ワンピース一枚でいける!なんて思ってないよ。
思ってなくもないよ。
web拍手
posted by: mngn1012 | 日常 | 18:34 | - | - |

小林典雅「恋する遺伝子~嘘と誤解は恋のせい~」

小林典雅「恋する遺伝子~嘘と誤解は恋のせい~」
劇団員の六車騎一は大ファンだった劇作家と、かれの妻である大人気漫画家の受精卵の存在を偶然耳にしてしまう。先日事故死した夫妻には、作家と前妻の間に出来た息子がいるが、かれはその存在に批判的だ。いてもたってもいられなくなった騎一は、自分の体に子宮を入れて、受精卵を妊娠することを決意する。

「嘘と誤解は恋のせい」<感想>で二人の仲を面白がりつつ取り持った騎一のスピンオフ。主役が異なるのでこちらから読んでも問題はないだろうが、極力この前作から読んだほうが面白いと思います。あと自分であらすじ書いてて二回くらい我に返った。

片思い相手に、嘘のアンケートを持って行って回答してもらうことで恋愛を成就させた前作もかなりのトンデモっぷりだったけれど、今回は更にすごい。現代日本を舞台にした普通の青年の妊娠がテーマである、しかも、攻。マライヒのように、恋人がいて、何の因果か妊娠してしまったようなファンタジーならまだしも(いやあれも最初に読んだときはひっくり返った)、恋人のいない男が赤の他人の夫妻の代理母になる。わたしに医療知識が皆無だからそう思うのだろうけれど、騎一が新しい生命を胎内に宿すようになる仕組みが、それなりに筋道たてて描かれている。思わず納得して、これなら男性の妊娠も可能なんじゃないかと思ってしまえるからこわい。

赤の他人と書いたけれど、受精卵の両親である劇作家と漫画家夫妻は、騎一にとっては決して他人ではなかった。知り合いどころか面識もないけれど、騎一にとって亡くなった劇作家・朝来野寛は、かれが作中で何度も繰り返しているように「神」と呼ぶにふさわしい存在だった。沢山の夢や感動を与えてくれた神は、妻との間に子供を持つことを切望していたのだと言う。その願いはもはや叶わないけれど、二人が懸命に努力した結果の受精卵が存在している。しかしかれの息子は無関係とばかりに切り捨て、受精卵すら処分しろと言う。
ならばと、定職にも就かず金持ちの後輩に喰わせてもらったりしながら生き繋いでいる貧乏暮らしの騎一が、後先考えずに代理母に立候補したのも無理はなかった。…はず。正しくは、いきなり他人に話に踏み込まれた揚句責められた朝来野の実の息子・尚が、自棄になって騎一に産めと言ったのだ。常識人のかれが本当にそう思って提案しているわけではない。何の覚悟も責任も負わないくせに余計な口出しをするだけの男に苛立って、黙らせるための嫌味だったのだ。しかし騎一はそれを呑んだ。売り言葉に買い言葉というよりは、一瞬のうちにあらゆるリスクを考えて、それでも自分が産み育てると決意したのだ。

晴れて?妊夫!になった騎一は、自分を迷惑がっている尚の態度も全く気に止めず、近況をメールで送り続けている。仕事にかかりっきりでろくに思い出もない父のことを思う気持ちもないし、騎一のようなタイプは苦手なはずなのに、尚はなんだかんだでかれのことを考えるようになる。そりゃあいきなり現れて、あなたの父親の子供を産みますというような男がいれば、頭から離れなくて当然だ。しかし、どうもそれだけではない。
ふまじめかと思えば真剣で、くだらないことを言っているかと思えば冷静で今まで誰にも言われたことのない的を得た分析をしてくる、お調子者で大食漢で人懐っこい、そういう騎一の存在が尚を動揺させる。ある事情で期間限定の同居を始めてからは余計に、尚の生活が騎一を中心に回り始める。長所も短所も含めて、自分にはないものばかりを備えている騎一が、尚を揺さぶる。

なんていうと普通の恋愛もののようだけれど、そのシチュエーションはやっぱり唯一無二。妊娠している男の元を訪れてお腹を触ってほっこりする後輩や、妊娠グッズを山のように持ってくる後輩の彼氏に触発された尚が、生まれてくる子供のための準備練習だと言って、哺乳瓶でミルクを飲ませる練習に付き合ったりする。突っ込むところが多すぎて、もはや突っ込まない方向。このシチュエーションの荒唐無稽さと、実際に行動しているキャラクターたちの真剣で誠実な気持ちのアンバランスさが可笑しい。大笑いしたかと思えば、一緒になって妊娠初期のひとつひとつのイベントを噛みしめたり、読んでるこっちも大忙し。
コメディ色が非常につよいラブコメであること、は確かなんだけれど、きちんと恋愛ものとして読ませてくれる、なかなかうまくいかない恋に一喜一憂したり切なくなったりする、ラブ要素が充実していて好きだ。
その切なくてかわいいラブの部分が一番発揮されるのが、ある意味天然な尚の、狙っていない告白だろう。自分が騎一をどう思っているのか、尚はあまり深く考えなかった。初めて考えたのが、騎一が他の男に告白されて、二人の同居が解消するかもしれない、というときだ。いきなりの事態に困惑した尚の口からは、誰に聞かせるでもない本音がどんどん零れて行く。プロポーズみたいな告白に、騎一はまんざらでもなく落ちていく。

以下強めのネタバレなので折りたたむ。
続きを読む >>
web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 22:38 | - | - |

青桐ナツ「flat」4

青桐ナツ「flat」4

巻を追うごとに平介が酷い人になっていくのが痛快なような、心配なような。
かれらの前には大きな事件は訪れない。その代わり、家族の誕生日や子供たちの喧嘩のような、小さなイベントがいくつもあらわれる。

忍耐幼児・あっくんと、いかにも年の離れた兄姉の中で暮らしている佐藤の弟・虎太郎は仲良しだ。元々こまっしゃくれた虎太郎が沢山喋り、無口なあっくんが相槌をうつ。行動的な虎太郎が遊びやお出かけを提案して、普段家でおとなしく本を読んでいることなどが多いあっくんがそれに乗っかる。正反対の二人は正反対だからこそちょうどいい、ないものを補い合ってうまく付き合っている、そういう感じがした。
しかし正反対なものは、ぶつかり始めると全てが噛みあわなくなる。口数が多く思ったことをすぐに口に出す虎太郎は、あっくんが好きなものを嘲笑する。かれにしてみれば、もっと楽しい世界が他にあるのだと教えてやっている・紹介して共有しようとしてやっているつもりなのだろう。しかし常に偉そうな物言いと、自分の価値観がすべてだと思っている傲慢な態度に、あっくんのストレスが溜まっていく。けれどあっくんはそれをすぐに言わない。好きなものを馬鹿にされて腹立たしいということ、自分は数ある遊びの中からこれを選んで楽しんでいるのだということを虎太郎に言わない。だから虎太郎は気づかない。
どんどん拗れる子供の喧嘩を、高校生やおとなたちは面白く見守っている。かれらにしてみれば子供ふたりの性格も、両方の主張も手に取るように分かるからだ。そしてかれらは口を出さない。子供たちが自分で考えるべきだ、というようなまっとうな教育信念に基づいているのではなく、もっと適当。もっと気楽に見ている。気が合わないならそれでもいい、仲直りしなくてもいいのだ、世の中にはいくらでも気の合うひとがいるのだ、と思っている。思っていて、それを口にする。それは大人の理屈としては決して珍しいものではないし、実際気が合わないなら一緒に遊ばなければいいだけなのだが、家族も友人も全員がドライですごい。もう会わなきゃいいだけだね、って笑える感覚が普及している。そう言うことで子供達を焦らせているのですらない。仲直りしてもしなくても、本当にどっちでもいいのだ。どうでもいい、に近いものすら感じる。個人的にはこのドライさは痛快だけれど、これでいいのか「flat」。

三人でホラービデオを見るときもひどい。怖いからあっくんに見せられるわけがないのは勿論なのだが、子供相手に柔らかくものを言うということを知らないかれらでは、あっくんに満足な説明はしてやれない。佐藤が比較的マシではあるが、デフォルトの貼り付けた笑顔がかえってこころのなさを露呈させている。三人の中では一番頭の回転が早そうな鈴木もちっとも優しくない。かれらは年齢だけではなく、性格的にも自分達と正反対のあっくんを見て色々なことを分析することは得意なのだが、その分析が実際の行動になかなか結びつかないのだ。結びつける気もない、というところか。
それでも平介は普段より大分気を使っているので、窮屈だ、といけしゃあしゃあと言う。それが悪口だという自覚がないところがまたひどい。そりゃ愛がないって言われるわ。

子供ってかわいい、何をしていてもかわいい、なんて言うつもりはない。実際自分が平介の年齢だったら、悪気はないにせよあからさまに構って欲しくてこちらを見ていたり、自分が友達と遊んでいると羨ましそうに見たり、落ち込んだりしているあっくんを煩わしく思うこともあると思う。たまになら可愛いけれど毎日だと疲れそうだな、と子供と生活したことのない一人っ子のわたしは想像で共感してしまうのだけれど、これでいいのか「flat」。どこへ行くのだ「flat」。
少なくとも序盤は、平介があっくんを可愛く思うことがあった。甘いもの好きという共通点を見出して、ハートまで飛ばしてかれを構ったこともあった。最近はそんなことは気の迷いだったかのように、プレッシャーを感じて窮屈な思いをしている。高校生として最低限、罪も悪気もないかれを傷つけてはいけないとは自覚しているようだが、それ以上のことが出てこない。面白いし、子供って可愛い天使!みたいな話よりは共感も出来るのだけれど、この話はどこへ行くのだろう、とちょっと不安。
web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想 | 14:18 | - | - |

ルチル文庫崎谷はるひミリオンフェア/「はなやかな哀情」番外編

崎谷はるひのルチル文庫累計100万部突破記念フェア。新刊「静かにことばは揺れている」を含むルチル文庫の崎谷はるひ作品全点の中から二種類を購入すると、SSカードが貰えるというもの。カードは二種類。

新刊が一冊なのに「二冊買うと特典が貰える」というのは、全てを集めている人に非常に不利なフェアだ。これだけ作品が出てるんだから持っていないものもあるでしょ、ということか。実際わたしはノベルスで持っていて文庫を買っていない作品がある。ただこの手の短編すら手に入れたいと思うのは大抵熱狂的なファンで、そういう人は大半の作品を既に手にしていると思う。いつも搾取されるのは「好き」がつよい方なのだ。どんなやり方にせよBLのフェアは一長一短。

特典カード二種類のうち、「はなやかな哀情」の番外編をひとまずゲット。

***
「はなやかな哀情」<感想>のラストから一カ月後の物語。
なんでもない平穏な日の、なんでもない会話劇。冒頭の会話は「空にみる倖い」を彷彿させる。目の前に広がる空の話なんていう、誰とでも交わせるような会話なんだけれど、普通何も考えずに流してしまうようなことに引っかかって疑問を抱く臣の感性の鋭さと、それを茶化したりせずに真面目に受け止めて応える慈英の誠実さがすごくいい。この慈英の優しい気配りが臣にしか齎されないと思うと余計に、いい。

日常の会話を、そのまま臣への愛情の話にきれいに持っていく慈英。甘ったるいんだけど、あまりにもかれが当たり前のこととして自然に話すので臣も読んでいるこっちも、その内容の甘さに気づくのが一瞬遅れてしまう。臣のうつくしさとか臣への愛を語るときの慈英は可笑しいほど真面目だ。

恋人よりも年上の臣が繰り返し考えていることのひとつに、自分の老いがある。当然かれよりも先に年をとる自分は、この先年齢とともにどんどん容貌が衰えていく。だからと言って今更慈英が自分に愛想を尽かすとは思っていないだろうが、あまりにきれいきれいと言われるので不安になるのだろう。けれどそんなことにも勿論慈英は動じない。と言うより、臣が何故そんなことを不安に思っているのかが本当に分からないような感じがする。ぽかんとしている。飄々とした慈英は、なにかとうつうつとしてしまう臣とぴったり。

相変わらずスケッチブックでああだこうだ言ってる二人が可愛い。本編は記憶が戻ってからの慈英がとても少なかったので、補完出来て良かった。

web拍手
posted by: mngn1012 | その他やおい・BL関連 | 20:55 | - | - |

ミュージカル「エリザベート」@帝国劇場 13:30公演/終演後トークショー

 
エリザベート:瀬奈じゅん
トート:城田優
ルドルフ:伊礼彼方
ゾフィー:寿ひずる
ルドヴィカ:春風ひとみ
少年ルドルフ:小宮明日翔

***
翌日のマチネ。
最前列のセンター付近でした。この日が今回のエリザで一番良い席。というかD-BOYSのFC優先でとった城田トートの回は全部席が良くてナベプロに足向けて眠れないきもち。東宝ナビザで取った席も比較的良かったので、平日+一人コンボも影響しているとは思う。
しかし今回は封筒からチケット出したとき思わず叫んだ。人生のチケ運を使いはたしている気がする。

***
取り敢えず。目の前で見る城田トートは吐きそうなくらい美しかった。なんだろうこの生き物…。
わたしはD-BOYSのFCに入っている(くせに会報もろくに読まず、携帯サイトのブログもめったにチェックせず、テレビも殆ど見ないふまじめ極まりない)ファンなのだが、別に城田優のファンなわけではない。かれのことは勿論好きだし、元DVDのバクステなんかで見るかれの朗らかで人なつっこい人間性や、今となっては武器である容姿や身長の所為で仕事の幅が限られて苦悩していたことなどもそれなりには知っている。D-BOYSというよりはテニミュ出身者という大きいくくりで、かれが成功するのは非常に嬉しいことだと思っている。ただ、城田が出るからといって舞台やドラマを必ず見るかというとそうでもない。作品次第、という条件がついてくる。エリザベートに関しては、眠れないほど好きな作品に参加することになって凄く驚いた、という感じ。長々と言ったけれど、そういうわけで別にわたしは抜きんでて城田優のファンなわけではない。格好良いとは思うけれど、好みなのは薄い顔だし。ただ。ただ、本当に、城田トートは美しい。きれいとか格好良いとかそういう次元じゃなく、美しい。目の前で見ても実在する人間とは思いがたい、美しさだった。涙袋に塗られた豪奢なラメも似合うなんてもんじゃない。よくこんな生き物の求愛を拒めるなシシィ…。「青い血を流す傷口」なんて台詞も誇張じゃないみたい。
そしてそんな美しい城田トートの歌声は甘くて、目つきはどこまでも冷めている。卒倒しそう。

そんな城田に卒倒しそうな最前列。塩田さんのカウントも聞こえるし、瀬奈さんの顔の小ささや肌のきれいさだってばっちり分かる。目の前にゾフィが来るのでどきどきしてしまった。舞台の照明が他の人物に当たっているときも、当然ながらゾフィは怒ったような顔をしているので、今にも怒鳴りつけられそうな臨場感を味わった。
バートイシュルでのお見合いのシーン、フランツを顔を合わせたルドヴィカが眉を寄せて「ご立派になられて」と音にせず唇で言っていた。かれは皇帝だけれど、ルドヴィカにしてみれば姉の息子・甥でもあるのだ。親戚のおばちゃんっぽくておもしろい。
遠い席だとはっきりみえないトートダンサーの床での動きなんかも見られて面白い。婚礼の夜の「最後のダンス」の時のトートダンサーのダンスがすてき!

城田トートは駆け引きのトートでもあるんだな、と思う。かれのトートが持つ幼さゆえなのか、幼いにも関わらず、と言うべきなのかは判断できない。シシィに感情をぶつけて彼女を追い詰めたかと思えば、いきなり突き放したりもする。婚礼の夜、強い力で追い詰められて腕を取られて身動きがとれなくなったシシィは当然怯えている。けれど、トートがいきなり夢から覚めたみたいに手をぱっと放してしまうと、彼女は戸惑う。嫌だったのに、不安になる。計算しているのかしていないのか、城田トートは魔性だ。つまらなそうに唇を少し尖らせて、冷たい目で見下ろされてしまうと、急激に心配になってしまう。ずるい。

最後通告を叩きつけてフランツを追い返したあとのシシィの苦悩がいい。彼女もなんだかんだでフランツを愛しているのだと実感する。トートがゴンドラで登場して、棺から出てきたひとびとの前に現れる。フランツだけが、かれを見ていない。最愛の妻を奪った憎き恋仇を見ようとしない。

この日のルドルフは凄く良かった。昨日何だったのってくらい。本調子の伊礼彼方ルドルフが見られて良かった…!そしてわたしはやっぱりこの伊礼彼方のルドルフが凄く好きなのだと実感する。「おはようございます皇帝陛下」から引き金を引いて死ぬまでの短くて濃密な時間、ルドルフが何を考えて行動に出るのか、伊礼さんのルドルフは物凄くしっくりくる。分かりやす過ぎるほどに分かりやすい。
繊細で夢見がちで不安定なのに、かれは国なんていう一人で到底抱えきれないものを憂えてしまった。焦燥感に駆られたかれの心の弱さは利用される。本人は利用されているなんて気づかない。周囲だって、かれを利用しているばかりではない。かれらだって自身の命や名誉をかけているし、皇太子でありながら自分たちと同じものを見ようとするルドルフが一条の光に見えたこともあるだろう。ただ、ルドルフにはかれらほどの覚悟も、信念も、ないようにみえる。めまぐるしく変わっていく時代に取り残されないようにしがみついているのが必死のかれは、馬車からトートが降りてもしばらく気づかないような男なのだ。今までずっと自分を放っていたママにすら頼ろうとする、弱い青年なのだ。そういうルドルフの愛すべき情けなさが好きだ。一見意思がはっきりしないようにも見える行動が実はとても一貫しているのだということも伝わってくる。そうよそうよこれが伊礼ルドルフよ…!
「闇が広がる」も良かった。両方やわらかい歌声なのでどうかなと思ったけれど、あのきれいすぎるほどにきれいな曲によく似合っている。

死の舞踏も良かった。ダンサーたちに上着をはぎ取られ、翻弄されて髪を振り乱すルドルフは、舞台奥へ誘導される。そこから出てくるトートを見て、かれは走って逃げようとする。ゆっくり追いかけてくる石丸トート、走って追い詰めてくる山口トート、そして城田は敢えて動かないトートだ。立ったまま、優雅に手を動かすだけで、かれはルドルフを意のままにできる。ルドルフはひとり舞台の前方で、糸がついた傀儡のように引きとめられて体を反転させられる。身動きがとれないのだろう、手先だけをばたばたとさせて背後から見ているトートの方に向いてしまう。
それを確認したトートは何の関心もなさそうにルドルフに近づいて、考えごとをしながらボールを左右の手に移動させるようなどうでもよさでルドルフの頭を左右に振って、死の口づけをする。既にこの世にいないルドルフは何のてらいもなく引き金をひいた。
トートそれぞれの追い詰め方があるけれど、ルドルフのこのマリオネットは見ごたえがあっていい。

あとやはり革命運動の時の、トートダンサーを引き連れてのダンスはきれがあってとてもいい。後方で踊るルドルフも機敏でいい。

城田トートの時の最後は、シシィをお姫様だっこして棺に入れる。ルキーニを殺すときも、嬉しそうな二人と違って比較的どうでもよさそうな顔。シシィ以外に興味のないトートだ。

***
カテコ、伊礼さんが少年ルドルフの小宮くんに「キッチュ」のときにポーズをとるようすすめてた。ほっこり。

***
小休憩を経てトークショー。
司会で出てきた塩田さんが客席を暖めてから、キャストの皆さまです、と呼ばれて出てきたのが伊礼さんだけ。にっこにこの顔で塩田さんを見てにやにやしている。ダニエル余計なこと言わないといいな…っていうか絶対言うな…と確信した。いや実際におとなしくしたままだったら物足りないのでこれでいいんだけど。
そのあとカテコ衣装の禅さんと、「パパみたいに(リプライズ)」の時に着ていたドレス姿の瀬奈さんが腕を組んで登場。どうも色々二人は仕組んでいたみたい。親子三人勢揃いだー。
下手から伊礼さん、禅さん、瀬奈さん、塩田さんの順番で座る。

最初こそかしこまっていた伊礼さんを、塩田さんが「いつもの彼方らしくないね」と弄る。「いつもの彼方だとルドルフのイメージが…でもいつもの彼方でいいですか?」とスイッチが入った伊礼さんはルドルフの軍服の首元のボタンを外して緩めて大股開き。来たよ来たよダニエル…!
トークショーと言うと、自分は先日別件のトークショーで瀬奈さんの名前を間違えてしまった、と伊礼さん。瀬奈さんのあだ名が「あさこ」さんなのに、「じゃあこれからは『さとこさん』と呼びますね!」と言ってしまったそう。それを自分から暴露した伊礼さんに瀬奈さんが、「自分から言うんだ。絶対これ言ってやろうと思ってたのに」と突っ込んでた。
そこから、塩田さんが「伊礼彼方」という名前が覚えられなくて「イカタくん」って呼んでしまったことがある、という話に。伊礼さんが「それ僕二回までは耐えたんですよ、『イカタくん』『ハイ』って!」と偉そうに話してた。

主に伊礼さんが弄られるトークショーだった。二人目のルドルフ、出来上がったところに入って行くのはどうですか、という話では、やはりプレッシャーがすごいそう。エリザベートの「切迫した」感じは前回も今回も変わらない、と伊礼さん。この「切迫」っていうフレーズを繰り返し使っていた。
禅さんが、伊礼さんが「こんなんだけど真面目で繊細」だということを証明するエピソードとして、本番直前に真っ青になって「よろしくお願いします」と挨拶に来たことを話す。なので、「毎回変えるぞ」と言ったのだという。つまり毎回二人のシーンでのやりとりを変えるようにしているとのこと。自分にこだわりすぎると良くない、相手がどう出るのかと様子をうかがっていると緊張感もほぐれるし、相手の行動に対して自然な反応が出来る、のだそう。すごいなあいい話だ。「父上とはアイコンタクトを…」と伊礼さん。禅さんが絶対目をそらしてくれないらしい。
前回と比べて格段に良くなった、と禅さんが褒めていた。小池さんも練習だかゲネだかの時に、「良くなっててびっくりした」と称したらしいのだが、それを聞いた伊礼さんが「びっくりっすか」と顎をしゃくりながら返事したとのこと。君のその台無し感がいいと思うよ…。あと真っ直ぐすぎるくらい真っ直ぐ、とも禅さん。

「おっかさんは?」と、シシィとのやりとりについて聞いた塩田さんに伊礼さんが「いや一応うちらロイヤルファミリーなんで」と訂正。おっかさんもどうかと思うけど、ロイヤルファミリーっていうのも地味にうけた。
瀬奈さんのシシィは「ママ鏡で一回受け入れてから突き放す」シシィなのだそう。皆さんに伝わってるといいな、伝わってるかな…と伊礼さん。その、一度受け入れられたと思ってから突き放されることでルドルフは深く傷つく。「狂う手助けをしてもらっている」という言いまわしが印象的だった。だからそのあとの「マイヤーリンクのシーンもやりやすい」そう。狂う手助け、っておかしな日本語なんだけれど、あのルドルフを見るとひどく納得してしまう。瀬奈シシィがルドルフに決定的な傷をつけたのだ。

それぞれの第一印象の話。
瀬奈さんから見た禅さんは「とにかく優しい」ひとらしい。ただその裏で、人の面白いエピソードを必死で探しまわっているようなところがあるのだとか。言われた禅さんは、瀬奈さんの髪が乱れたときの話を意気揚々としていた。普段は一度抱き合って、そのあとフランツが放そうとするとシシィがしがみついてくるシーンなのに、髪がぼさぼさだった瀬奈さんは禅さんに直してもらおうと抱きついてこなかったそう。そこで直したのだけれど、結局そのあと1:9分けみたいにぼさぼさになって、瀬奈さんが走りながら必死で顔を左右に振って直そうとしていた、という話。これをまあ嬉しそうにお話しでした皇帝陛下。
伊礼さんについては、「前の万里生くんは可愛かったんだけど…」と言いだしたところで「すいませんね可愛くなくて」と伊礼さん。「そうじゃない、万里生くんは可愛かったけれど(伊礼さんは)格好良いと思ったのよ。ほんとよ。あ、万里生くんが格好良くないって意味じゃなくて」と折角褒めてくれた瀬奈さんに更に「ここにいないし大丈夫ですよ」と田代くんの悪口を推奨する悪伊礼。ひどい。あとは「思ったより声が低い」と思ったそう。そこで塩田さんが「万里生くんはテノールだけど彼方はハイバリだもんね」と言っていた。「バリトンじゃなくてハイバリ?テノールの下?」と確認する伊礼さん、聞いてもいないのに「楽譜読めないんで」と言ってた。禅さんもそれに乗っかって「私も読めません」と。「絶対音感とかも勿論ないので、楽器の調子とか全然分かりませーん。音が鳴ったら歌う」そう。塩田さん曰く、海外の一流の場所でやっているひとでも楽譜が読めない人は沢山いる。ただ楽譜が読めない人は、誰かが一拍遅れるとそれに合わせて遅れて歌うのがキズ、だそう。

禅さんから見た瀬奈さんは、「ボーイッシュな広末涼子」らしい。他の舞台の楽屋に挨拶に来てくれたときに、短い髪と薄いメイクだったらしく、そう感じたのだとか。ここで瀬奈さんが「私何の特徴もない顔なんです」とさらっと言ってたのも面白かった。あと、男役をやっていた人は男に厳しい。男性に厳しいのではなくて、男の演技に厳しいのだ、と言う話。「相手の女の人を立てる男役だったでしょ」といきなり言われて「そうですけど何で分かるんですか!」と驚く瀬奈さんに、相手との立ち位置で分かる、と立って説明開始。男性は、相手の女性の顔を客席に見せようとするときは女性の斜め前に立つ。そうすると自然と女性の顔が客席から見えやすい。反対に顔を見せないでおこうとするときは斜め後ろに立つといいのだそう。で、自分は男性として主役の女性を立てようと斜め前に立つのだけれど、瀬奈さんもひとの斜め前に立つくせがあるらしい。確かに結婚式のあとの、「皆が見つめているわ~♪」のところはポジションの譲り合い・奪い合いになっていますよね、と瀬奈さん。「私はどうすべきなんでしょう」と真剣に言い始めて、「立ててもらっておきなさい、主役なんだから」と言われてた。ここ好き!
あと、芝居プランの話をするのが凄く楽しかった、と二人が口をそろえて言っていた。
伊礼さんは「ヤンキー」と即答。噛みつきそうな面白いやつが現れたと思ったそう。でも意外と謙虚だし繊細だし、あとは細かいこととか面白いことをどんどん質問してくるのだそう。「伸びる余地ありますかね」と言う伊礼さんであった。あるある。あるからちょっと黙りなさい。

あと塩田さんが「死ぬときの手のバタバタ何なの?」と伊礼さんにぶっこみ。死の舞踏の最後、トートに操られているルドルフの手が落ち着きなくバタバタ動いているのが気になっていたそう。それを指摘されると禅さんも「袖で見て気になってた」と言いだす。からかわれているもののめげずに演技プランを語る伊礼さん。「あれは城田くんの時だけです」「だって城田くん動かないんだもん!」と必死で言ったあと、「色々考えてるんですけどねえ…」「やめよっかな」とちょっとしょげてた。何を言ってるんだあそこの演技超好きだよやめちゃだめだよ!
逆に塩田さんに、何考えて指揮してるのか、という質問もあった。考えていることをひたすら言い続ける塩田さんを禅さんが制止。伊礼さんが「今日ちょっと(指揮)早かったですよね」とか言いだしたのも禅さんが顎掴んで黙らせようとしていた。「え、どこが早かった?」と聞く塩田さんに、そのあともまだ主張を続けようとする伊礼さんでした。

トートによって当然演技が違うという話から、死の口づけの話を持ち出す塩田さん。「えーそんなの聞くんですか」と言いつつも嬉しそうな伊礼さん。ばかなこ!
祐さんは凄くソフトなんです、と言ってから客席を見て「祐さんの唇って、やわらかいんですよ」と得意そうに繰り返す。この「ゆうさん」が脳内で「優さん」に変換されてしまって最初城田のことかと思ったけれど、良く考えたら伊礼さんの方が年上だった。
「石丸さんは肉を食らうように」と伊礼さんが言うと、塩田さんが「野獣?」と口をはさむ。それに賛同する伊礼さん。塩田さんは前回の田代くんの発言が効いてるのかな。
ラストは城田くんが目を閉じてキスしてきたときがあって、思わず自分も目を閉じてしまった。その瞬間に、乙女心がわかってしまった、と言うひどい話。「あーやばいって言ってたもんね」と塩田さんが言うと、「そうなんですファーストキスが忘れられなくて!」「大体二日おきなんですけど待ち遠しくって」と調子に乗る伊礼さん。落ち着いて。

あとは先日ルドルフ100回目を迎えた、自分は残り二週間くらいしかない、とも言ってた。そこそこ真面目な挨拶をしていたはずなのだが、そういうところに限って覚えていない…。
禅さんの挨拶は、実際のシシィさんには自殺願望があった。彼女にとって死は憧れだった。だからこそ、きれいな男の姿で死というものが現れる。そういうことを考えると、この芝居は史実に基づいた内容なんだ、そういう見方も出来るので、何度でも足を運んでほしい、という話だった。わたし自身、「エリザベート」は史実の謎をフィクションで/ファンタジーで見事に埋めた、真実の補完をした話だと思っているので、この話は嬉しかった。
瀬奈さんの挨拶はそれを受けて、色々な見方が出来る・楽しめるので、何回でも見に来てください、という話。

30分くらいで終了。面白くってあっと言う間だった。伊礼彼方のトークは諸刃だと思うのだが、これだけ周りに大人の人がいると安心できる。

web拍手
posted by: mngn1012 | ライヴ・舞台など | 13:30 | - | - |