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中村明日美子「卒業生-春-」

中村明日美子「卒業生-春-」

「同級生」として出会った二年生の夏から三年生の夏を経て、もうすぐ「卒業生」になる冬を越えて、とうとう春が来る。卒業生として迎える、高校三年生として迎える最後の季節。

佐条は気難しそうで、プライドの高そうな男だった。バカ高にふさわしくない成績の良さや、黙っていると冷たそうに見える顔の造形の所為もあったのかもしれないが、ひとに簡単に心を許さない気位の高さが透けて見えた。張り詰めすぎてぷつんと一気に切れてしまいそうな危うさも持っていた。
根本的な部分は変化していないけれど、そのころに比べると、佐条はやわらかい雰囲気をもつようになった。自分とは全くタイプの異なる草壁と付き合う中で、佐条は息の抜き方を覚えたように思う。ふたりを繋ぐリボンが邪魔になれば、何度でも結びなおせるから切っても良いのだと、佐条は草壁から学んだ。草壁が直接言葉にしたのではなく、かれの言葉や態度から知ったのだ。
喜怒哀楽の表現が激しい草壁の影響で、人当たりがやわらかくなった佐条の変化に、母親が気付いた。無意識に鼻歌をくちずさむ息子が、少し前まで見せていた険をどこかへなくしてしまったことに気付いたのだ。彼女できた?と嬉しそうに聞いた母親に、彼女の手術が近いと知っていて、それでも佐条は答えた。「つき合ってるの 男なんだ」と。多分これも、今までの佐条ならば決して口にしなかっただろうと思う。そんなことないよ、と笑っていなしていただろう。けれど、真っ直ぐで素直な草壁の影響で、かれは真実を打ち明けた。それに対する母親のあまりの物分かりの良さにちょっと拍子抜けしたけれど、このシリーズだから、これでいいのだと思う。相互に与えるものが良い方向に作用する、それでいい。

その一方で、草壁は以前よりも大人になっている。明るく楽しく適当に、という感じのスタンスで日々を過ごしていたかれは、友人が心配するくらい恋愛にものめりこめずにいた。友人とやる趣味のバンドは楽しいし、学校もそれなりに楽しいけれど、佐条と出会うまでのかれには、芯になるものがなかったのだと思う。それまでがずば抜けていい加減だったりするわけではないんだけれど、佐条と出会って付き合い始めたことで、草壁は誰かを真剣に支えたいとか守りたいとか初めて思ったのだろう。愚痴を漏らさず、疲れを隠して「大丈夫」と言う佐条の強さや潔さを好きな一方で、誰にも自分にも頼らないかれの態度をもどかしく思ってもいる。ひとりで頑張るかれの力になりたい、と真摯に佐条に説く草壁の表情はいつもより大分大人びている。男っぽくなっていてすごくいい。
佐条の表情も含めて、「同級生」の最初から今までの数年で絵が変化したこともあるけれど、それだけじゃないと思う。かれらの世界の時間ではたった一年余りだけれど、それでも確かに二人は大人になっている。

でもやっぱり二人はまだまだ子供だ。
おそらく東京にあるであろう事務所に所属するより、フリーのままでいた方が目指すものに近付けると言われた草壁は、佐条が春から暮らすことになる京都へ行こうかな、と考える。それほどの距離でもないし、仕事があれば移動すればいいのだ、とかれは言う。それより何より、佐条と何年も離れて暮らすことが耐えられないと思ったのだ。
けれど佐条はそれを拒む。東京にいた方が絶対に仕事には有利だから、青臭い夢のために必死になっている草壁が好きだからそのままでいて欲しいのだと、自分のためにそれをないがしろにするようなことは許さないと怒る。それを草壁も承諾した。
一週間会えないだけで心が擦り減ってしまうようなかれらは、一緒に暮らす道が目の前にあるのに、敢えてそれを選ばなかった。考えた結果出した答えだけれど、若さもあるのだと思う。離れ離れになること、とかれらはまだよく分かっていない。ほとんど毎日、努力しなくても会えていた相手と、会えなくなる。会いたいと思っても、時間も金もかかる。それぞれ異なるタイムスケジュールで動くようになれば尚更だ。辛いことがあったから顔を見せて、と言うわけにはいかない。その寂しさをかれらはまだ知らない。知らないからこそ、別々の土地で生きてゆこうと言えるのだ。知っていてもやっぱり、言うだろうけれど。

草壁の一大告白もまた青くて可愛い。人生設計があって言っているわけでは当然なく、幼い子供のように、恋愛の最終地点を結婚だと思っているのだろう。それが今のかれに示せる最大限の愛情表現なのだ。好きだからずっと一緒にいたい、という気持ちがその言葉に集約されている。佐条もそれを受け入れた。離れたくないと泣いて、それでも一緒に京都に来ることは嫌だと泣いて、草壁が好きだと泣いて。涙もろい草壁も泣きまくって、この日を持って永遠に失ってしまうものの大きさを噛みしめる。二度とふたりは「同級生」にはならない。恋人は続くし、家族になる日も遠くないかもしれないけれど、同じ制服を着て同じ校舎に通った日々はもどらない。戻らないからこそ美しい。

最後はちょっとロマンチック過ぎるきらいもあったけれど、一貫してまぶしい物語だった。成就して、永遠に続くはつ恋の輝きが凝縮されたような、きれいでかわいくて甘くて酸っぱい物語。
OPERAでほとんど読んでいたのだけれど、毎回どきどきしてキュンキュンさせられた。背中に走るむず痒さと、思わず口元が緩むような微笑ましさが沢山詰まっていて、楽しみで仕方がなかった。大好き!


***
「同級生」「卒業生-冬-」「卒業生-春-」と三冊並べたときの背表紙が可愛い。ハラセンを挟んで向かい合っている佐条と草壁。しゃがんでいるハラセンは当然佐条の方を向いている。
表紙も、表がそれぞれのシーズンに歩く二人のイラストで、裏はその途中で立ち止まってキスしてるイラスト。口絵の後ろ姿も統一されていて良い。丁寧に描かれた内容同様に、丁寧に作られた本だと思う。
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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 00:51 | - | - |

中村明日美子「卒業生-冬-」

中村明日美子「卒業生-冬-」

「同級生」<感想>の続編。同時発売に「卒業生-春-」があるが、冬が先。

「同級生」では、京大を受験すること、つまり合格すれば離れ離れになってしまうことを自分から言わなかった佐条を草壁が責めるシーンがあった。自分とこういうことになって、それでも迷わなかったのか、どうして言ってくれないんだ、このまま自然消滅でもするつもりだったのかと感情的に怒鳴り付けた草壁に対して、痛いところをつかれたと動揺しながらも佐条は言い返した。「お前だって何も言わないじゃないか」と。進路や展望や夢を語らないのはお互い様だった。
そしてその問題はこの巻に持ち越される。
離れ離れになると分かっているから、佐条は進路を言いだせなかった。草壁が動揺して傷ついて騒ぐことも想定内だっただろうし、かれに何を言われても変更するつもりがない自覚も、それでも揺れてしまうという不安もあっただろう。言わなくても時間は過ぎるし受験の日は近付くと知っていて、なんとなく目をそらしていたのだと思う。それはかれの狡さだけれど、弱さでもあるし、草壁への愛情の所為でもあった。
草壁が打ち明けないのは気恥ずかしいからだ。地に足のついた目標を持ち、それに向かって堅実に努力して結果を出している佐条とは違って、青臭いと分かっているからだ。好きだからこそ、一笑に付されそうな夢を言いだすのに勇気がいる。しかし言わないことが、今度も相手を動揺させて傷つけてしまう。学習能力がまだ備わっていないかれらは、何度も失敗して、同じ過ちを繰り返す。それでもその方法しかとれないから、満身創痍でぶつかっていくばかりの恋をする。

「まじめにゆっくり恋をしよう」というのは「同級生」のオビに使われたコピーであり、なにより作者本人があとがきで書いていた、作品のテーマであった。出会ってすぐに恋人関係になったり肉体関係を持つBLが多い中で、そのテーマに忠実に描かれた「同級生」は異彩を放っていた。色々なことに未熟な高校生の青く眩しい恋が微笑ましかった。
しかしかれらにも時間は流れている。高二だったかれらは高三になり、夏を終えて冬を迎えた。不器用な恋をゆっくり育てているだけではいられなくなった。それぞれの進路に向かって焦り、悩み、もうそこまで来ている春を実感している。その焦燥感や苛立ちが、普段の会話の端々に滲んでいる。何気ない会話の間に挟まれる、お互いの進捗状況への興味と心配、それに対する過敏な反応が生々しい。

それだけでも精一杯な佐条のもとに、更に問題が起こる。避けようのない、誰も悪くない問題だけれど、それだけにかれは参ってしまう。自分の力で解決できないからこそ歯痒くて、ただでさえ少ない時間がどんどん削られて、佐条は追い詰められてゆく。こんなとき佐条も、佐条をなんとかして支えてやりたいと思っている草壁も、無力だ。恋すらなかなかうまくいかないのに、恋どころではない事態が続く。恋と家庭の問題を切り離せるほど器用でも大人でもないから、ずるずると引きずられていきそうになる。

クラスも友人も目標も異なるふたりは佐条の予備校帰りや昼休みに少し会って喋って、帰り際に隠れてキスをする。毎日がその繰り返しだ。
かれらが交わす会話はほとんどが内容の薄い、どうでもいい雑談だ。友人のバカ話、先生の愚痴、前から話そうと準備していたことではなく、そのとき気付いたことやついさっき起きたこと、ふと思い出したこと。そんななんでもない話をするなんでもない時間が大切で、なによりも楽しい。それが恋だ。
今まで知らなかった相手のことを少しずつ知って、いやなところも見えて、それでもやっぱり好きだと思う。普段の生活の中に組み込まれつつあるその時間が、限界ぎりぎりのふたりを支えている。

冬だから手が荒れるとか、教科書で読んだ小説のこととか、音楽のテストをクリアできないとか。後で振り返れば本当に些細な、どうでもいいことで流れてゆく高校時代。きらきらして、みずみずしくて、二度と戻らないからこそ美しい。
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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 20:21 | - | - |

「ANJIN イングリッシュ・サムライ」@シアター・ドラマシティ 13時公演

行って参りました。パンフだのTシャツだのというグッズ販売の中に、藤原竜也の出演した舞台のポスターの画像のピンバッチガチャガチャというのがあってびっくりした。どうしてバッチにしようと思ったのだろう…しかもガチャガチャ…なぞ。

途中20分の休憩時間を挟んで、全部で3時間半弱くらいの舞台。

徳川家康:市村正親
三浦按針:オーウェン・ティール
ドメニコ:藤原竜也

以下ネタバレ。

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posted by: mngn1012 | ライヴ・舞台など | 23:59 | - | - |

「薄桜鬼WEBラジオ 新選組通信録」第四集

「薄桜鬼WEBラジオ 新選組通信録」第四集

WEBラジオ「新選組通信録」の第九回から第十一回までのダイジェストが入ったディスクと、WEBラジオ内の「土方プロデュース」という企画で生まれた、キャラからの罵声がひたすら収録された「怒られ隊士 原田左之助編」のディスクの二枚組。

森久保さんゲストが三集と四集をまたいでいることから、「これ森久保ファンは両方買わなきゃいけないんだね、大変だね!」と、全部のCDに収録されている三木さんが言っている…自分のファンが一番大変だって気付いてあげて!っていうか作品のファンは全部買わなきゃいけないんだよどっちにせよ…。
ははははは。
三木さんもだけど、森久保さんは薄桜鬼だいすきオーラが出てて微笑ましい。

大川さんと一緒に、初登場の飛田さんが参加した第十回がすごい。三人合わせて「天国に一番近いスタジオ」とか言っちゃってるけど、確かにノリが古い。飛田さんの第一声は「イエーイ」です。昭和!
運送業者とコラボしようぜなんていう話題が飛び出したWEB配信したときにも驚いたのだが、CDでは、収録と収録の間の休憩中に三人がそのネタをきゃいきゃい話している会話の録音も収録されている。大人が裏でこういうこといって騒いでるのかと思うと可愛いなー。
リスナーからのメールを読むときの、大川さんの老人演技が面白くて仕方がない。

上京したての近藤・土方・山南が京の道を歩きながら話すドラマ「道標」がいい。土方と山南は元々意見が合わない。価値観も合わない。人間関係の機微をあまり察さない上に、京都に来たばかりで浮かれている近藤と三人での見物はいまいち盛り上がらない。沖田とは違って山南はあからさまに土方に嫌味を言ったり、当てつけたりするようなことはない。土方が考えもつかなかったようなことを、ごく当然のことだと思ってしまうかれの性格に悪気はない。土方もそれを分かっているし、いちいち気分を害さないけれど、他の隊士や近藤のように気安く話すことが出来ないでいる。何とも言えない遠慮がある。その距離が多分永遠に埋まらないことを、二人とも分かっている。分からない近藤と三人、違うものの考え方をして、同じものを目指す。相手を褒めれば空々しくなってしまう微妙な雰囲気を抱いて、道を行く。
結局それは埋まらないのだけれど、近藤のため・新選組のために歩み寄ろうとする二人。

平助・原田の悪乗り全開のドラマ二本は相変わらずのテンションだ。出てこないと分かっている新八の登場を期待してしまうのは、仕方がないことよ、ね。

怒られ隊士は原田。台詞・シチュエーションごとにトラックに分かれていたこれまでの三枚とは違って、この原田編のディスクだけは何故かトラックが分かれていない。「仕様です」ってブックレットにもHPにも記載されているんだけれど、ちょっともやもやする。
内容はこれまでと同じ。平助がヤンキーの下っ端だとしたら、原田は元ヤンくらいかな。元々上からの物言いなので、怒ると更に圧迫感がある。ネチネチ意地悪を言うようなキャラではないので、怒るだけ怒ったらすっきりしそうな雰囲気。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 22:54 | - | - |

円屋榎英「年下の流儀」1

円屋榎英「年下の流儀」1

モデルとして大成できず微妙な立ち位置にいる友介は、大学進学を機に上京する弟との同居を楽しみにしていた。しかし、血は繋がっていないけれども自分に懐いている泣き虫だった弟・敦士は、バスケのスター選手として有名になり、態度も図体も友介より大きくなっていた。

 

友介はスカウトされたことをきっかけにプロのモデルになったけれど、いまひとつ芽が出ないまま年齢を重ねている。仕事相手からの評判は良いのだけれど、華が無いというかぱっとしない。土日だけ、マンションの一階にあるカフェでバイトをしているということに関しても、もしかしてモデルだけでは食っていけないのかと邪推してしまう。

敦士は父の再婚相手の連れ子だったため、血のつながりはない。しかし友介がやっているからという理由でバスケを始めるほど、かれは義理の兄に懐いていた。小柄で泣き虫だけれど努力家の、可愛い弟だった。だからこそ友介は数年顔を合わせていない敦士との同居も素直に受け入れた。元々言われていた話だとは言え、かれは悪い顔をしなかった。

基本的に友介はお人よしだ。見た目はチャラいけれど、慣れない現場では緊張してしまう繊細さを持っていて、それゆえに周囲の人間に愛されている。お人よしの兄は、会わない間に変わってしまった弟に戸惑いながらも、それを受け入れる。六つも下のかれに一方的に名前を呼び捨てにされても、自分の気遣いを悉く打ち砕かれても、傲慢な態度も全て苦笑いで許した。人気選手である敦士のCMにバーター出演が決まったときも、友介はそれを飲んだ。芸能界で活動している自分ではなく、スポーツ選手である弟が明らかにメインだと分かっていて、笑って仕事場へ向かう。今までにも友介はこうやって、弟と比較される自分・比較されて弟に劣る自分を突きつけられ、苦しい思いを自分の中で解消してきた。好きだったバスケを辞めたのも、弟に負けることが悔しかったからだ。

 

そういう友介にとって、敦士は何かとコンプレックスを刺激する存在だ。高い背も、ストイックな雰囲気も、ひとを惹きつける力もバスケの能力もなにもかも、敦士にはかなわない。それらを敦士が何もせずに手に入れたのではなく、努力を重ねて得たと知っているから余計に、劣等感は強くなる。

一方で友介は、自分にはないかれの魅力に惹かれていく。自分が逃げたものに正面から向き合い続けているかれの心のつよさに、兄弟や友人相手には持ちえない気持ちを抱いてしまう。幼いころからずっと友介を好きだった敦士もまた、久々に会って恋愛感情を再確認している。相手が同じ気持ちを持っていることに気づくはずもない二人の、ぎこちないにもほどがあるやり取りが可笑しくて良い。友介は普段は自信に満ち溢れた敦士の、明らかにとってつけたような嘘を信じ込んでしまう。敦士は敦士で、友介の信頼する仕事相手兼友人であり、ひそかに友介を思っている伊東の言葉に簡単に動揺する。スポーツマンとしてのかれの自信は努力に裏付けられたものだけれど、それ以外の面ではただ若いから、挫折を知らないからに過ぎない。だからすぐに揺れるし、綻ぶ。

 

兄弟もの、弟×兄もののテンプレとも言うべき、ワガママで強気だけれどたまに子供の顔を見せる弟に振り回される心の広い兄のストーリー。目新しさはないけれど、弟に対するコンプレックスと愛情の間で葛藤する友介と、自分が兄に与える影響や痛みに気づき始めた敦士の心情描写が丁寧で読み応えがある。

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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 20:34 | - | - |

「アニ店特急ラジオ」×「デュラララ!!」 デュララジ出張版

アニメイトtvで絶賛配信中のデュララジの出張版、と銘打たれたDJCDなのだが、肝心の本放送は何処へ行ったのだろう。がんばれ。

折原臨也役の神谷浩史と平和島静雄役の小野大輔がパーソナリティということで、当然それってなんていうDGS?みたいになるわけだが、そんなことはレモンとさくらんぼのど飴のときに経験済みなのでもう深く突っ込まないことにする。二人きりで話しているという意味ではどれも同じだけれど、既に百回を超えて放送し続けているラジオとは異なって、のど飴CDやこのCDは初めて二人の会話を聞くひとなんかにも比較的親切な会話内容になっている。ホームとアウェーほどの差はないけれど、ちょっとよそいきな感じ。

最初のお題はコミケの想い出について。「コミケ」のイントネーションが二人で違うのが面白い。小野さんの「コ」にアクセントを置く発音は普段自分や周囲の人間が使うものなので、西の発音なのかな。神谷さんは「ミ」にアクセントを置く発音。だから何だと言われると別になんでもないんだけれど、こういう、一般的な用語ではないもののイントネーションって、音にして聞くまで分からない場合が多いので新しい発見がある。そして自分が標準語圏の人間ではないと実感するのであった。
大手がものすごく儲かるという話から、浜田省吾の「MONEY」の話をする神谷さん。絶望先生であったものね。しかしこういうモテ話のときの妄想っぷりが楽しそうすぎていい。
初めて行ったアニメイトについての話は、語弊を承知で言うならば、神谷さんが幼いころからちゃんとしたおたくでほっとした。さらっとおたくエピソード。

さんざん盛り上がってようやく「デュラララ!!」の紹介へ。収録・発売時点ではまだ放送が開始していないので、これから始まる新番組の紹介と告知と言う感じ。小野さんの大火傷で場が凍った揚句、その時話していたネタがすっ飛ばされて回収されないまま、話が進む。いつものことです。
わたしは臨也の声がものすごく好きなので、台詞のひとつでも言うかとわくわくしていたんだけれど残念ながら全く出てこなかった。でも静雄をやってた。小野さんの本家静雄もちょいちょい出てくる。
既に1、2話を見たという神谷さんがストーリーの面白さを興奮気味に話していた。1話だけじゃなくて、2話をセットで見て欲しい、2話を見ることで1話の謎が一気に繋がっていくのが気持ちいい、と話す勢いが強い。小野さんが言ってた「AHA体験」というのは言い得て妙。
既にわたしは3話まで見た状態でこれを聞いているのだが、言わんとすることがすごくよく分かる。沢山いる登場人物のそれぞれの細切れエピソードの集合体でしかなかった1話は、その裏で動いていた事件やエピソードを描いた2話を見ることで補完され、物語となる。それでもまだ謎は沢山ある。穴だらけの一枚絵が、どんどんパズルの要領で埋まっていくような話なのだ。

二人がいかに息が合っているのかを試すクイズもあり。質問に対して答えをそれぞれが書くのだが、正誤よりも二人の回答があっていることが問われる。両方が間違った答でも、一致していれば良いのだ。
正解が六問未満だと両者罰ゲーム、それ以上であれば実際の正解が少ない方が罰ゲーム、という設定なのだが、神谷さんの回避っぷりがすごい。どう考えてもアウトだろというヒントを出し合ってひとまず協力して両者の罰ゲームを回避したあとは、自分の罰ゲームを回避するために非情に徹する。ひどい!すごくいい!

散々ゲームで遊んで、おしまい。作品のラジオと、通常のラジオの間くらいの位置。時間としては50分弱とそれほど長くないけれど面白かった。

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posted by: mngn1012 | 音源作品 | 00:30 | - | - |

「薄桜鬼WEBラジオ 新選組通信録」第三集

「薄桜鬼WEBラジオ 新選組通信録」第三集

WEBラジオ「新選組通信録」の第六回から第八回までのダイジェストが入ったディスクと、WEBラジオ内の「土方プロデュース」という企画で生まれた、キャラからの罵声がひたすら収録された「怒られ隊士 藤堂平助編」のディスクの二枚組。

この第三弾に収録されているラジオを放送している時に第一弾・第二弾のDJCDが発売になったので、ラジオはその話題が中心。「怒られ隊士」のサンプル台詞を言うシーンもあるんだけれど、新八は励ましてるように聞こえる。平助は子供がワーワー言ってる感じで、二人ともあまり怒られているようには感じないな。もっと怒っていいのよ、もっと陰湿でいいのよ!
坪井さんがたびたび、「新八は切なくならないから攻略対象キャラにならなかった」「どうせ攻略対象キャラじゃないもん」的な話をするのが面白い。確かにあのままの新八は切なさとは程遠いけれど、バックボーンを作れば幾らでも切なくなれると思う。原田ルートの終盤の新八は切なかった。

DJCD発売後の収録・放送になった第八回には、「怒られ隊士」を聞いたひとのメールが沢山来たそうなのだが、それに対する三木さんと森久保さんの反応がひどくていい。涙が出たとか体調を崩したとか眠れなかったとか言うメールにとにかく爆笑しまくる。何回も連呼し合って大ウケである。この優しくないリアクションが痛快。落ち込まれたり反省されたり気遣われたりするとラジオのテンションも下がるので、このひとでなし感漂う反応がベストだと思った。それにしても笑いすぎだよ。ああひどい。
正直わたし期待が大きすぎて物足りなさすら感じたのだが、Mなのか純粋さが足りないのかどっちだろう。…両方だな。
あとはまたもやシルバーシートの話。

ラジオドラマ、「仕事」は完全に土方のみの出演。忙しい日々に舞い込んだつかの間の休息すら、土方は仕事で終えてしまおうとする。句を詠んでいないなあ、なんて想いに耽りそうになる自分を咎めて、ひとまず眼先の仕事を片付けようとするけれど、すぐに他の用事が舞い込んでくる。ひとりで穏やかに過ごす時間は儚く終わり、またいつもの世話しない日常に戻ることになる。土方はそんな現状に口先だけで不満を吐いて、楽しそうに飛び出していく。部屋でゆっくりしながら書類整理のような畏まった仕事をしているより、頼まれることやたよられること、先陣を切ってなにかを動かすことが結局好きなのだろう。この話は「薄桜鬼」における土方像を分かりやすく示しているように思った。
そのあとの「説教」は、同じことを新八が実感している話。こちらは書類仕事ではないが、大勢の隊士の前で説教をしている土方よりも、しょうもない話をしている平助と新八に向かってぶつぶつ口汚く言っている土方のほうが本来のかれなのだと新八は思っている。どんどん抱えているものが大きく重くなる土方に、そういう昔からの部分が残っていることが嬉しいのだろう。こういうときに、微妙な差に気付くのは新八だ。普段大雑把なかれがたまに零す真面目な言葉を、大体の隊士は「何言ってるんだ?(珍しいな)」の一言で終わらせてしまけれど、新八もそれでいいのだろう。

「怒られ隊士」平助編は隊士っていうよりはヤンキーの下っ端っぽかった。でも平助自体そういうヤンチャで可愛い年下男子、みたいな要素が強いと思うので、順当かな。怒ってるというよりは文句言ってるとかキレてるという言葉が似合う。何を言っても平助の真っ直ぐな性格が出てしまっている。「くだらないことで悩んでるんじゃねえよ」と言われた場合、平助だと、その言葉のウラに「だから悩まないで元気だせ」というメッセージがありそうな気がするのだ。
沖田だとそうはいかない。「くだらないことを聞かされて腹を立てている」というストレートな怒りが、歪んだかたちでぶつけられているように聞こえる。土方は半々くらいかな。想像だけど斎藤さんは本当に心からくだらないと思っていそうでこわい。
ちなみに今回のCDから「期待以上の効果にご注意ください」という但し書きがついている。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 21:36 | - | - |

椎崎夕「三十二番目の初恋」

椎崎夕「三十二番目の初恋」
恋人と仕事と住むところを一気に失った想は、いつでも来いという言葉と一緒に渡された名刺を
頼りに、医師の梶山のマンションを訪れた。駄目元でしばらく住まわせてくれないかと言った想の願いを、梶山はなんでもないことのように受け入れた。


想は腕のたつ美容師で、共同で店をもつことになった男と同棲していた。ある事情で実家とは絶縁状態だったけれど、恋人だったはずの男は想の収入を管理するからと徴収していたけれど、それでも想はそれなりに幸福なはずだった。
そんな日々が続くと思っていた矢先、想は同棲相手であった信田からいきなり明日出ていくように言われる。結婚するんだ、彼女が妊娠したから、と悪びれずに言う信田が、自分以外の誰かと付き合っていることすら知らなかった。状況が把握できないままひとりレストランに残された想は、知らない男女の派手な喧嘩に巻き込まれ、逆上した女に突き飛ばされて右腕を骨折した。美容師の利き腕骨折はつまり、仕事が一切できないということになる。その話をすれば信田に疑われた揚句切れられて、自分も出資した店なのにクビになった。これまで自分がかれに預けていた生活費がかえってくるはずも、ない。つまり想は本当になにもかもを、心のよりどころも生計をたてるすべも、今日眠る場所さえも失ったのだ。

想が巻き込まれた喧嘩の、男というのが梶山だった。正しくは女が一方的に怒っていたのだが、かれが骨折した想を病院へ連れてゆき、治療費を支払い、そのときに名刺を渡してきたのだ。何もかもを失った想はネットカフェとバイトの面接を往復し、利き腕骨折ゆえに全て不採用とされ、所持金が底をついて梶山をたよった。いくらなんでも了承されるはずがないという想の考えとは異なり、梶山は想との期間限定共同生活をすぐに認めた。

友達でもないし、厳密には加害者と被害者でもない、意気投合したわけでもない二人の、奇妙な共同生活が始まった。勤務医である梶山の出勤時刻はてんでばらばらだし、広いマンションはそれぞれの生活を妨げることもなかった。ただ同じ屋根の下にいるだけ、の日々を経てから、二人は歩み寄る。食事を一緒にとったり、なんでもない会話を交わすようになってゆく。
二人の生活は穏やかなものだった。必要以上に気を使う想と、必要最低限しか他人に心を開かない梶山では、衝突しようがない。ぎこちないけれど居心地の悪くない関係は、しかし何度も危機を迎える。前述の信田の存在と干渉、そして梶山と同じ病院に勤務する医師・永澤の登場と策略によって、想は繰り返し傷つけられる。梶山もまた、ひとりで背負うには重すぎる過去と向き合って心を痛め続ける。

なんだかんだでわたしはこういう、受が精神的にとにかくかわいそうな目に合いまくる話がきらいじゃない。というか好きである。それは、最終的にかれがその傷を補って余りあるほどの幸福を受けることが大前提にあるからなのかもしれない。ひどいままで終わる話もきらいじゃないけれど。なんていうか根本的な嗜好に理由なんてないのだ。
ということはさておき。
想はとにかくひどい目に合う。かれはお人よしで騙されやすいけれど、他のひとと比べて抜きんでて愚かなわけでも無垢なわけでもない。ただ、ひとを食い物にしてやろうとするような人間を無意識に引き寄せてしまうようだ。次から次へと、かれを苛むものがかれのもとにやってくる。そしてかれはそれらひとつひとつを自分一人で処理しようとする。誰かに相談すれば早々に解決したかもしれないけれど、以前ひとに大きな迷惑をかけたことがトラウマになっている想には出来ない。狡猾な相手に食い物にされるほか、かれに選択肢はない。
そして食い物にされるたび、想は自己評価を下げる。誰にも大切にされないのは、ひどいことばかりされるのは、自分がその程度の存在だからなのだと思うようになる。その思いが強くなればなるほど、梶山を好きになってしまったことが苦しい。梶山に好きだと言うことすらできない。

好きだと言うことすらできないと思いながらも、想は気持ちを止められない。好きだと言えないから、好きだと言うだけなら構わないのではないか、と思うようになる。返事など望まないから、片思いでいいから、と思ってしまう。もう二度と逢わない、遠くで幸せになってくれればいいと思いながらも、偶然すれ違うだけでもいいと思ってしまう。客としてたまに店にきてほしい、たまにじゃなくて頻繁にきてほしい、と思いだす。小さな願いが小さな欲になり、その欲が叶えばまた新しい願いが生まれる。自分でも制御できない気持ちに想は苦しみながら、この恋を全うしようと思う。

想の過去も、梶山の過去も重たくて、一気になかったことにできるようなものではない。過去は変えられないし消せないけれど、それでも、これから先や現在を変更することはできる。一人ならばとうに諦めてしまっていたことも、二人でなら。

梶山の過去はともかく、想の過去や、つい最近まで抱えていたトラブルについては少し消化不良のようにも思った。こんなにタチの悪い奴らが、その程度で手を引くとは思えない、と言いたくなるオチのつけ方だったのが物足りない。タイトルもそれほど重要なエピソードではなかった。けれど滑らかな文章と、もどかしいにもほどがある一進一退の恋愛模様は地味ながらも切なくていい。
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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 23:06 | - | - |

富士山ひょうた「その手の熱を重ねて」1

富士山ひょうた「その手の熱を重ねて」1
独立して自分の店を持つことになった渚天景は、プレオープンの日に来てくれた古賀凪紗という招待客に妙に懐かれてしまう。店に通っては自分と会話をしたがる凪紗に戸惑いつつも、ペースに翻弄されているある日、酔っ払って潰れてしまったかれを渚は自宅に連れ帰る。

一冊もしくは一話で恋愛物のひとつめのゴールになる両思いまで描かれることが、BLでは非常に多い。続刊物であっても付き合い始めた恋人たちに波乱が起きたり、新しいキャラが出てきたりと話が膨らむだけで、メインの二人の恋愛自体は最初の巻である程度片が付いている。
そういう中で富士山ひょうたは比較的、最初から続刊予定の物語を描くことが多いように思う。この話もふたりの恋がどう転ぶのか分からないまま次巻に続く。それはもどかしいけれど、漫画って・フィクションってそういう面を持っているものだとも思うのだ。あー気になる!こんないいところで終わるとかひどい!ともやもやして次巻なり次回なりを待つ楽しさ。「純情」のときにも味わったその気持ちは、この作品でも味わえる。

イタリアンのシェフである渚は、自分が前にいた店の常連客やマスコミや、とにかく色々なところにプレオープンの招待状を配ったので、凪紗が果たして何者であるのか分からなかった。そして明らかに自分の正体をつかみかねている渚に対して、凪紗は名前以上のことを明かさなかった。きれいな容姿に人懐っこい態度をとるかれが変わった男であることは、いくつか言葉を交わしただけですぐに分かった。
凪紗はそのあとも店に通ってくる。ただ来ているのではなく「会いたかった」から来たと告げ、渚とまた「話がしたい」から今後も通うと宣言した。話の切り替わりが早く、いきなり懐に入ってくるようなかれの積極性に渚は圧されながらも、なんとなく流されてしまう。というより、断る理由がない。邪魔になるわけでも、嫌なことを言われるわけでもない。ただ、普通のひとならば取らないようなその行動に、胸がざわつく。いっそ凪紗が女だったり、あからさまに恋愛の色を出してくる男であったならば対応も変わっただろう。ただかれはどこまでもあっさり好意だけを向けてくるから、受け止めるしかない。
もしかして誘われているのか、と動揺しつつも、取り立ててアクションを起こしてくることもない凪紗に渚は戸惑って距離を測りかねている。ある夜普段とは違って荒んだ状態で店に来た凪紗は、許容量を超える酒を飲んで、そのまま潰れてしまった。どう考えてもかれが自宅へ帰れるとは思えない。仕方なく渚はかれを背負って自分のマンションへ連れ帰り、介抱した。やましい気持ちはなかったけれど、凪紗が自分にやましい気持ちを持っているのであればどうしようとは思った。この辺り、渚の動揺というか、自分の立ち位置を見つけられずにアタフタしている感じが出ていて面白い。
酔った凪紗はいつもより更に人懐っこくて、渚の手に触れてくる。これは単なる酔っ払いなのか、それとも誘われているのか、かれは本気で分からなくなる。誘われていた場合、それに乗ってしまいそうな自分を持て余している。

凪紗はものすごくタチが悪い。渚が「魔性」と称していたけれど、かれの思わせぶりな目線や態度には、そう言わせるだけのものがある。こいつは自分が好きなんじゃないか、誘われているんじゃないか、と思わせる。そして途中まではかれがそれを意識的にやっているように見える。おそらく何らかの意図があって渚に近づき、たらしこもうとしているように読めるのだ。しかし凪紗の動作は不審ながらも魅力的で、怪しがりながらも渚がそそのかされていく気持ちの変化もよく分かる。
しかし渚もおされているばかりではない。かれだって成人男子だし、恋愛経験がないわけでも人と比べて格段に少ないわけでもなさそうだから、ためらっているばかりでもない。そしてよりにもよって、自分の事が好きなのか、とかれは聞いた。直球もド直球、駆け引きなんて微塵もない、結構情けない問いだった。けれどそれに対する凪紗の反応は、想像とはかけ離れたものだった。

片方がゲイであった「純情」や、元々色々な感覚の合う友人であった「ディア・グリーン」とは違って、ついこないだまで赤の他人だった、今もまだお互いのことをよく知らない二人の関係はぎこちなくてなかなか進まない。男を恋愛対象にすることすら考えたことがなかった二人が、ここへきて、そのことを考え出している。それと同時に、友情にしては逸脱しかけている相手への気持ちが一体どういうものなのか、分かりそうで分からない。分かりたいのか分かりたくないのか、気持ちが逸っている。
凪紗の正体も明かされたけれど、なにひとつ謎も、問題も解決していない。嵐みたいに恋が始まった。
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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 11:34 | - | - |

「薄桜鬼WEBラジオ 新選組通信録」第二集

「薄桜鬼WEBラジオ 新選組通信録」第二集

まだまだ行くよ、薄桜鬼!

WEBラジオ「新選組通信録」の第三回から第五回までのダイジェストが入ったディスクと、WEBラジオ内の「土方プロデュース」という企画で生まれた、キャラからの罵声がひたすら収録された「怒られ隊士 沖田総司編」のディスクの二枚組。

第一集でも思ったけれど、一枚に三回分しか入っていないって結構少ない。こちらも前回同様三木さんの最初と最後の挨拶、それぞれの回に対する雑な挨拶入り。いやもうほんと雑ですけど、恒常的ハイテンションはレアなので良いと思う。
あとジングルが異様に多い。ラジオごと、コーナーごとのジングルがこれでもかと言うくらいに入っている。ただ毎回言ってる人も言い方もさまざまなジングルなのでいいのかな。何回タイトル言うんだ、って思わないこともないが。
ラジオは安定期でどれもこれも面白い。お腹の音もあるよ。

音声ドラマは、不在時の報告をすべく土方と斎藤が夜道を歩く「夜の散歩」が楽しい。肩凝らねえか、と思わず土方が気遣ってしまうくらい、斎藤は畏まっていて、でもそれがかれのデフォルトになっているので問題なさそうだ。普段近藤にすらあんまり丁寧に接していない土方が、斎藤にだけはなんとなく気をまわしてしまうのは、そうじゃないとかれが自分を顧みないで働き続けそうだからだ。誰かが、かれよりも上の人間が命令として休養を命じなければ、斎藤は永遠に走りまわっていそうに見える。それは勤勉さであり真面目さであり実直さであるけれど、危うさでもある。
主人公についても報告する斎藤に、ちょっと動揺する土方。それぞれが抱いている主人公への感情はまだ不明瞭。斎藤は、斎藤にしては非常に関心を持っているけれど一般的に見れば殆ど興味がないレベルだし、土方もまだ敵か味方か判別できかねているというところだ。近藤や平助たちは性格的に既に心を許してしまっているけれど、かれらはそういう風にはいかない。まだ色々なことが動きだす前の、なんでもない平和な夜の話。

「怒られ隊士」は最初に「沖田組長の一日」という、あらゆるシーンで怒っている沖田の一人芝居が入る。機嫌が良くても悪くても嫌味で揚げ足取りの沖田なので、当然平隊士にもそういう態度をとる。キャラとして外から聞いてる分にはいいけれど、実際には嫌だなあこんな上司…雑談を全部嫌味で返されてしまう。近藤に対しては相変わらず異常に必死で、そこだけがかれの人間らしい面でもある。
そして怒りの台詞はさすがの破壊力。こちらに非がある行動に対して怒ったり、あとは機嫌が悪かったりばつが悪くて怒る土方とは違って、沖田はとにかく嫌味で意地悪だ。一言も二言も多い。ただそれが沖田であって、物凄くいい…!土方と何が違うかというと、沖田はちょっと嬉しそうに聞こえるのだ。責めるべき点があるから責めるというより、責める点を見つけて意気揚々といびっている。いじめっこ!
「そういうのすっごく面倒くさい!大嫌いだよ!」が秀逸。感想に加えてストレートな「嫌い」の言葉である。ああひどい。優しさや思いやりが感じられない。楽しい。
怒られ隊士っていうか虐められ隊士である。
最後は勿論デレる。
個人的には沖田と言えば「後でいっぱい褒めてあげる」の名言だと思うので、これもどこかに入れて欲しかったな。上から目線ばんざい。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 09:33 | - | - |