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2009.04.30 Thursday
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高永ひなこ「ターニング・ポイント」
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高永ひなこ「ターニング・ポイント」
脚本家の桜木圭吾は仕事に行き詰った末に出かけた旅行先で、ヒッチハイクをしている大学生の今村を助ける。仕事のことを忘れたい桜木は、今村と寝てしまう。それは一夜限りの筈だったのだが、桜木と交わした短い会話を頼りに、今村は桜木のもとへやってくる。
自分の仕事に迷っていた桜木と、自分の現状に迷っていた今村。普段ならば決して見知らぬ人を車に乗せたりしない桜木は、現実逃避とばかりに今村に手を差し伸べた。それだけでは飽き足らず、同じく旅行中で宿泊先を決めていないかれを自分の予約した旅館に泊めてやり、食事もご馳走してやった。会ったばかりの、名前しか知らない、その名前が真実だという保証すらないような相手に自分の職業を晒し、愚痴まで言った。
桜木本人が、行動をしながらも自分らしくないと思っているその行動に、初対面の今村はいたく感動した。かれもまた自分の今の状況に悩んでおり、同調しあったのかもしれない。その晩のうちに二人は関係を持ち、そしてそのまま、連絡先を教えることもなく、桜木は姿を消した。
桜木にしてみればその夜のことは、普段の自分からは到底想像もできない過ちであった。しかし今村にしてみれば、順序がいつもと違っていようとも、それはまさしく恋だった。桜木が話した自分の名前や職業などをたよりに、かれは、桜木の所属する劇団の公演を突き止めてやってくる。桜木が来ている日もそうでない日も、通い詰める。こういう行動は現実であればストーカーだし、迷惑なのだろうが、そういう不気味さや深刻さを感じさせないところが高永ひなこらしさだと思う。自分で気持ち悪いですよねアハハと笑い飛ばす今村の健全さと、桜木自身が口で罵るほどに嫌がっていないことが読み手に伝わってくるので、若さゆえの大胆な愛情表現、くらいで片付けてしまえる。今村を気に入った劇団員たちのように、頑張れ今村!で済ませることができる。このバランスがちょうどいい。
周囲が気の毒に思って思わず応援したくなるほどの今村の気持ちにも、桜木はなかなか向き合わない。今村が好きになった、最初に会った日の自分は、本来の自分ではないという複雑な心情もあったのかもしれない。素直になることにも、真剣に何かにぶつかることにも疲れてしまった大人の桜木には、今村の気持ちは眩しすぎる。眩しすぎるからこそ近寄れなくて、だけれども惹かれてしまうのだろう、最初は冷たくしていた桜木が徐々に気持ちを軟化させてゆく過程がいい。
しかし両思いになったあとも二人の間には問題が起こる。
桜木に会うために見た舞台で芝居の面白さに目覚めた今村は、そのまま劇団員になった。整った容姿と努力と勘のよさでめきめきと実力をつけていったかれは、テレビの仕事に抜擢される。そして次第に、桜木と今村の立場が変化してゆく。とは言えそう思っているのは桜木だけで、今村は今も昔も変わらずに脚本家としての桜木を尊敬し、桜木の書いた舞台に出たいと思い続けている。
現実には今村の知名度は圧倒的に桜木を抜いており、それでも自分は桜木の足元にも及ばないと思っている今村の態度が余計に桜木のプライドを傷つける。職種は違えども、同じ業界で働く男二人ならば、避けられない問題なのかもしれない。
今村が悪いわけではない、今村の所為ではないとわかっていながらもどうしようもないことに悩んでどんどんネガティブな方向へ向かう桜木と、桜木がまさかそんなことで悩んでいるとは思いもしないポジティブな今村。正反対の二人だからこそ、桜木がどんなに深刻になっていても、会話をするとどこかちぐはぐで面白い。今村のあまりのポジティブさに、桜木もなんだかんだで引っ張られていく。包容力や寛容さというよりは、何も考えていないだけにも見えるけれど、この気楽さが良いんだろう。
重たくなりすぎず、ラブコメすぎず、バランスのよい一冊。
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2009.04.29 Wednesday
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藤谷陽子「るったとこだま」
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藤谷陽子「るったとこだま」
寮のある高校に転校生してきた宮城こだまは、学校内どころか近隣でも有名な不良・塁崎隆夫と同室になる。こだまは初対面でいきなりかれをるったと呼んでしまうが、それに動揺したことでこれまで隆夫を恐れていたクラスメイトが打ち解けるようになる。そんなある日、こだまはいきなりるったに告白される。
泣く子も黙る不良とカワイイ顔の普通の子、となると当然ながら「本当は強いのは普通の子」パターンになる。
るったとこだまはまさにその典型的なパターンだ。父親の仕事が忙しくて引越しと転校を繰り返したこだまは、とても普通の少年だ。何かにものすごく秀でているわけではないし、人一倍気がつよいわけでもない。ただ、引っ越したばかりのかれは、るったについての悪いうわさをひとつも知らなかった。そして周りの忠告を聞く前に、かれはるったに出会い、普通に名乗ったかれの名前を「るった」と声に出してしまった。そして乱暴者の不良であるはずのかれは、それに怒ったりしなかった。その一瞬の反応によって、こだまは、その先だれがるったの悪口を言おうとも取り合わなかった。
るったは不良である。それは噂ではなく事実だ。他校の人間の喧嘩を買い、勝ち続けている不良だ。しかしかれはこだまに頭が上がらない。元々悪人ではないので、何の罪も無い善良なクラスメイトに暴力を振るうタイプではないのだが、それでなくても、かれはこだまには逆らえなかった。容姿の所為で絡まれやすいこだまを庇い、かれが誘うならば授業もまじめに出た。
惚れた弱みで振り回されているのか、振り回されているうちに惚れたのか。順番は分からないけれど、るったはこだまに恋をした。
告白されたこだまは戸惑う。不愉快ではない、嫌いではない、ただ、自分がどう思っているのかなど分からない。同じような思いなのか、単なる友情なのかも分からないから、返事ができない。
保留にされたるったは荒れる。外で傷をたくさん作ってくるるったを見て、こだまは自分の気持ちを薄ぼんやりと理解する。頭で考えて答えが出るものではないから、これはこれでこだまはひとつの真実に行き着いたのだと思う。
しかし本人は悩む。るったがものすごく嬉しそうだったことも、こだまの悩みに拍車をかけた。自分が向けられているほどの強い感情を、自分は返せていないことに罪悪感もあったのだろう。こういうこだまの達観しきれていないところが、凄く普通の高校生の反応でいい。そして相談したクラスメイトの少女に、好きになられてから始まる恋もあるのだと言われて、こだまはちょっと納得する。この会話も凄く普通でいい。最初から二人同時に同じ強さで始まる恋なんてそうそうあるものじゃない。恋愛対象に入っていなかった相手に告白されて、そこで初めて対象圏内に相手が入ってくることもある。些細なことに悩んだり浮かれたりしつつ、二人の日常は続いていく。
名前や絵のほわほわした感じに嘘偽りなし、内容もほわほわしていて可愛らしい。
書き下ろしが二人がリバになりそうでならない、という短編で、これがすごくもえた。
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2009.04.29 Wednesday
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獣木野生「パーム32 蜘蛛の紋様」3
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獣木野生「パーム32 蜘蛛の紋様」3
ロナルド・エリーに引き取られたあと、早速人死にが出るような事件に巻き込まれたジェームスは、エリーの持ち物である農場に移送され、そこ軟禁生活を送ることになる。11歳のジェームスも、14歳のジェームスも、見事なほどに今と変わらないかれだ。表情の変化が乏しいかれが何を考えているのか、分かろうとしないものには決して分からない。動物が不当な暴力を受けていることに本気で怒っているかと思えば、自分を殺そうとした人間を何人返り討ちにしても平気な顔をしている。それは人間よりも動物が好きなのではなく、人間や動物の隔たり無く接しているに過ぎない。その上で、有害なものと無害なものを冷静に判断している。
どんなに劣悪な環境に置かれようとも、ジェームスは諦めなかった。逃げて自由な生活を送ること、夢で見る褐色の肌と碧眼を持つ少年に出会うことを。50を過ぎた男が呆れるほどにかれは気が長く、現在の状況に慣れることもなかった。
ジェームスと新しく出会った人間はその性質に心底驚いたり、心酔したり、今すぐ息の根を止めてやりたいほど憎んだりとさまざまな感情を見せる。けれどもうわたし(たち)は驚かない。かれがどういう人間であるのかを、これまでの長い物語の中でいやというほど知っているからだ。かれはあらゆる面において、普通の人間ではなかった。それと同時に、普通の人間と同じ感覚も持ちえていた。平和で平凡な日常を愛し、動物や植物を愛した。そのことがまた、かれの特殊性を強めたのだ。
ああジェームスはどこに行っても、何歳であってもジェームスなのだなあと実感する。そのことがかれの最大の魅力であり、かれがもっとも愛する平凡な日常を得られなかった最大の原因であり、不幸だったのだろう。
同じころカーターは医大生で、心の中に巣食った闇が広がってゆくことに対処できずにいた。カーターの闇は、かれが実の母親に愛されなかったということによって生まれたものだ。そのことはかれの少年時代に暗い影を落とし、それ以降も、おそらく最後まで払拭されなかっただろう。本当であれば、かれは母親ともう少し歩み寄れるはずだった。しかし彼女は事故で亡くなった。父も、自分にいつも親身だった叔父も、亡くなった。青年になって仲良くなった友人も、どんどん自分の前から姿を消し、二度と会えなかった。そういう、度重なる別離が更にカーターの心の闇を暗く、深いものにした。
アメリカはベトナム戦争に入る。罪もないのに殺される多くのひとびと、戦場で亡くなる兵士たちと、その死に身を引き裂かれる思いをするかれの友人や家族。そういうものを想像することで、カーターの精神はどんどんと沈んでゆく。
かれは「他国の人間に殺されないこと」に罪悪感をおぼえるようになる。「殺さないこと」ではなく、「殺されないこと」に。
今自分がのうのうと暮らしているこの瞬間にも、どこかで戦争が起こっている。そのことを実感するようになったかれは、どうしようもなく苦しんでいる。自分もその戦場に行き、ひとを殺すか殺されるかしなくてはいけないと、いてもたってもいられない気持ちになる。こういうところがカーターだ。自分が平和に暮らせている幸運に感謝するでも、今起こっている戦争を止めるための努力をするでもなく、ただ、その戦場に飛び込もうとするのだ。戦争に意味がないことを知っていて、身を投じる。能動的なのか受動的なのか分からない。ただ、カーターというのはそういう男だ。かれの心に広がった闇のおかげで、カーターはあらゆることに意欲を失う。特にこれまで他人が白い目を向けるほど積極的だった女性関係に対して、いっさいの興味を失っていた。
そこでジャネットと出会う。なぜか一目見たときから彼女のことが頭から離れなくなったかれは、なんとかしてデートにこぎつけることができるが、彼女の家に飾られた家族写真を見た瞬間、理性を失う。両親と弟とともに、満面の笑顔を浮かべる少女に、どうしようもない狂暴な感情が浮かぶ。それはカーターがどんなに努力しても得られなかったものだ。他の多くの友人が、生まれたときから手にしていたものを、かれは、一生得られない。両親を亡くしたかれには、永遠に和解のときは訪れない。
そういうものを持っているジャネットに惹かれて、そして彼女を乱暴に奪いながら、カーターは泣いた。愛なんていうものの実在を疑っていたかれは、自分が、どうしようもないほどジャネットを愛しているのだと気づいただろうか。恋の自覚すらないままジャネットを目で追っていたかれは、これが恋の苦しみだと知っていただろうか。不幸な過去の連続から、痛ましいほど理屈っぽい大人になったかれは、理性で片付けられない衝動に、泣いた。
ジェームスと出会ったあとのカーターとジャネットの経緯が、これを読むとすごくしっくりくる。このあと哀しい別れが待っているのだとわかっているからこそ、余計に切ない。
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2009.04.28 Tuesday
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外食外食
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四月はなんだか外食続き。
・もんじゃ麦
もんじゃは数えるほどしか食べたことがないのだけれど、ここは美味しかった。人気メニューと書かれていた、カレー味のもんじゃがとってもヒット。ただ煮詰まった感じでかなり味が濃厚になるので、白ご飯がほしくなってしまった。これはお好み焼きをおかずにしたがる関西人の嗜好かもしれない。こういうちびちび食べられるものはお酒が進む。
・boogaloo cafe 烏丸
中高時代の友人と先日もはや何年ぶりかもわからないくらい久々に再会し、今度一緒にライヴにいくことになったので、チケットを渡しがてらご飯に行った。
boogalooは全店制覇したけれど、どこも印象が同じだ。正直どこも料理はいまひとつだし、接客は中の下なのだが、店の雰囲気が良いというか、だらだらできてオシャレすぎないので気楽に利用できる。ディナーのパンがお代わり自由なのはいいけれど、こげているんだ…。
・O-Cha Cafe
厨さまと和カフェでお茶。
ほうじ茶スムージー。タピオカが入っていて美味しかった!厨が食べていた梅ちりめんのサラダうどんを一口貰ったけれど、それもかなり美味しかった。家で作れそうだね、とか言いつつ、たぶん作らないわたしたち。そのあと更に二人でパフェを頼んで分けて食べた。とっても暑い日だったからさ、と言い訳。
抹茶にしてもあまり苦味が強くないので食べやすい。
・8G Spaghetteria Shinsaibashi
晩ご飯を食べたあと、デザートを食べに入った。
8b ROLLという生クリームたっぷりのロールケーキが最近人気で、この店で食べられると大阪の友人が連れて行ってくれた。
それがこれ。奥にアイスが二つついている。
噂のロールケーキは確かにふわふわでクリームたっぷり。ただ貧しい舌のわたしは、コンビニで売っている味の濃い、クリームがちょっとしかないロールケーキが大好きである。
周りのひとが食べている食事があれもこれも美味しそうだったので、次は食事で行きたい。
・牛たん処 たん味屋
仕事関係で久々に行ったのだが相変わらず美味しかった。食肉の中で、牛肉の優先順位はそれほどた高くないのだけれど、たんは大好き。牛たんの刺身がとってもおいしい!というかここは何食べても美味しい。スペクタクル!
WITTAMERのマカロン。平均的な味だった。
LOIN STAGEのマカロン。ブルーのぱっきりした色合いがカワイイ。
真っ白いのがシャンパン味。外はからっとしていて、中はクリーム多め。
美味しかったけれど、もうちょっとじめじめした方が好みかな。
アンリシャルパンティエのミルフィーユ、さくさくチーズスフレ・パイ。すっごい美味しかった…!
クリームが少ないのがかえってツボ。なんだこれ幾つでも入るぞー。
おまけ。
友人にもらった。なんで煎餅作ろうと思ったんだろう…普通に醤油煎餅で美味しく頂きました。
リプトン×ピエール・マルコリーニは全然ツボらなかったのでスルーで。レモンティーが苦手なので、本当に欲しくないとなかなか手がでない。ミルクティーにもつけてほしいよリプトンさん…。
コラボの公式サイトで無料DLできる、携帯電話用のフラッシュがむちゃくちゃ可愛いのでそれは手に入れて、待ち受けに設定中。電話を開くたびにやにやしてしまう。
あとは鍼に行って頭やこめかみにびしばし鍼を打ってもらったり、友人に紹介してもらって人生で初めてエステに行ったりした。フェイシャルエステだったのだが、毛穴の汚れをごそっと取ってもらってちょっと感動した。エステに行っている自分、にちょっと酔った。
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2009.04.28 Tuesday
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沖麻美也「デミアン症候群」6
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沖麻美也「デミアン症候群」6
相変わらず三歩進んで二歩下がり、それでもなんとか一歩ずつ着実に歩みを進めてきたかと思えば、思わぬ突風で一気に五歩ぐらい下がってしまい、更にはどちらへ進むのかもわからなくなってしまってどんどん道がそれてゆき、もうだめかと思うと強引に軌道修正されて、なんとか元の道を行きつ戻りつしている、そういう関係を東と城は続けている。
言ってしまえば、二人とも、「物凄く面倒くさい」タイプだ。プライドが高い上にシビアなので、他人の甘言に惑わされない。簡単に人を信じることができず、なんであれ疑ってかかる。かと思えば破滅的なほどに自己献身的で、他人のために寝食を削って行動する。人当たりはいいけれど、絶対に自分の心に踏み込ませない。殻に閉じこもって自分を守ろうとする、少しの間違いも逃げも決してゆるさない、かれらはそういうところがそっくりの子供だ。
過去に起きた事件によるトラウマに今も苦しんでいる二人は、お互いの傷を癒すことをしない。自分の傷を受け止め、相手の傷もまた、ただ受け止める。
飾りのない本音を徹底的にぶつけ合うことでしか、二人は向き合えない。自分から離れていこうとする東に対して、城は必死になって止めようとする。しかし唇や体を重ねようとも、決して言葉をくれない東の気持ちを、城はどう受け止めたらいいのか考えあぐねている。
東が留学すると知ったとき、城は言葉でなんとかかれが考えなおすように努める。BL御馴染みの無き落としも、懇願もない。実際たとえ城が泣いていかないでくれと言ったところで、東の心は変わらないだろう。勢いに押されてそのときだけ受け入れたとしても、かれの気持ちが変わらない限り、かれはいつか離れていくだろう。それが分かっているからこそ城は、根本から覆すべく、必死に言葉を繋ぐ。
その場限りの優しさでごまかすことを許さず、安い甘い態度でなあなあにすることを認めず、城は必至に向き合う。それは城にとっても東にとっても、楽しいことではない。それ以外にも、二人は一緒にいると、苦しくて辛いことの方が多いようにも見える。
それでも、城は決してこの恋を止めようとしない。
甘くて優しくて楽しい、嬉しくてきらきらとまぶしい、そういうものだけが恋ではない。傷つけあってぼろぼろになりながら、取り繕うことを許されずに剥き出しの醜い自分を強引に見られて、それでも離れられない。そういう恋もある。かれらは既に、そういう恋を選んでしまった。
上記のとおり、牛歩で三歩進んだと思えば一瞬で二歩下がる恋である。結末が見られる日はいつになるか分からないけれど、不器用で幼い子供同士の心の変遷は、読み応えがあって面白い。
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2009.04.28 Tuesday
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森川智之・神谷浩史「最悪」フリートークCD
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森川智之・神谷浩史「最悪」フリートークCD
Atis公式通販特典。森川さんが司会で26分くらい。
生肉先輩連呼。
森川さんが司会で二人きりのトークとなると、普段は他人に話を振るだけふって都合の悪い話題はさらっと乗っからずに流す神谷さんお得意のテクニックが使えないので新鮮だった。ちょっといつもより温厚なかんじのトーク。
いかに森川さんが大らかか、という話でひとしきり盛り上がる。その大らかエピソードが本当に大らかすぎて面白かった。ひとつひとつが面白いというよりも、次から次へと出てくるのがすごい。それは大らかっていうかずぼらだ、と言われていたけれど、ずぼらだと言われても全く気にしていないくらいには大らかなようです。お題を無視する程度には大らかです。
あとは「最悪」な過去のエピソードとか。二人して大火傷した過去を語る。
内容はなかなかどうして本当に最悪なのだけれど、どうも空気が穏やかなので笑っておしまい。平和なトークだった。
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2009.04.27 Monday
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森川智之・神谷浩史「最悪」(原作:ひちわゆか)
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森川智之・神谷浩史「最悪」(原作:ひちわゆか)<Atis公式>
異例の若さで大手商社の課長になった英彦は、営業先で台風にかちあって、急遽ホテルで一泊することになった。そのホテルのロビーで、対応の遅さに怒鳴っている男を見て、かれは心底驚くことになる。そこにいたのは、英彦が大学生時代同棲していて、あまりの無神経さについてゆけず別れた有堂だった。
原作は既読。感想はコチラ。
二枚組で一枚目が「最悪」、二枚目が「悪運」をほとんどノーカットで収録している。かなり原作に忠実だった。
几帳面で神経質な英彦は、喋り方もものすごくきっちりしている。滑舌よく、通る声ではきはきと喋る。神谷さんの形式ばった喋り方が活きている。特にその特徴が際立つのが、有堂を罵っているときだ。畳みかけるように、普段溜めている不満を吐き出すときのいきいきとしたことと言ったら!何度となく出てくる罵声のシーンでは、大抵同じことを言っているあたりもいい。常に有堂に対する不満は靴下の脱ぎ方から始まっている。ずっと有堂は指摘されたことを改めないし、英彦は注意することを諦めない。
最初はその堂々巡りの言い合いに真剣に感情移入して、有堂に腹を立てていたのだけれど、途中でふと、ああこれは単に痴話喧嘩なのだと気づいた。だってふたりとも凄く楽しそう。怒られている有堂は嬉しそうだし、怒っている英彦は真剣だけれど、言いたい放題言うことでフラストレーションを消化している。怒っているんだけれど怒っていない、不思議な感覚だ。
原作を読んだときは、結構有堂に腹が立った。それは小説として不快だとか、作品に不満があるということではなく、有堂という人物がありありと想像できるほどリアルに描かれているからこそ、その対象に向けて感情を抱けるという意味で、腹がたった。それでも嫌いになれないという英彦の気持ちが切なかった。
CDもおおむね同じ感想なのだけれど、声がついたことで更にキャラクターとしての広がりが出て、有堂の可愛らしい部分が強く出ていたように思う。拗ねたり落ち込んだり、本気で苛立ったりしている、そういう「余裕のない有堂」の機微が描かれていた。かと思えば大雑把だったり無神経だったりもする。普通の人間が見れば見落としてしまいそうなその差に英彦は一喜一憂し、何度も別れようと決意したり、思いとどまったりする。ともすれば嫌味なだけの人間になりそうな有堂というキャラを、愛すべきバカな暴君に作り上げた森川さんはさすがと言うしかない。後半なんて有堂が突然現れるたびににやけてしまったぐらいだ。
話の骨子にあったのは、英彦と有堂それぞれが男としてのプライドを持っているからこその衝突やすれ違いだ。ずば抜けた商才や人望を持つ有堂が、自分では一生かかっても手にできないような単位の金を扱っていることを、他の登場人物のように手放しで称賛することが、英彦にはできなかった。かれも同世代の中では出世頭で、決して仕事が出来ない人間ではない。むしろ有能だからこそ、有堂に対抗意識を抱いてしまう。
それなのに、どうしようもなく有堂が好きでたまらないということがまた、英彦を悩ませる。同じ会社の堤に、有堂のような才能の持ち主と友人でいれば辛いこともあっただろうと、劣等感を言い当てられたあとのモノローグがすごくいい。悔しくて、憧れて、恋して、憎い、そういう整理しきれないぐちゃぐちゃした感情を、自分自身でも持て余しているからこそ、英彦の声は不安定だ。自分で御しきれない思いを、分かられてたまるかと、必死で耐えている。
家に来た部下に聞こえないように、ひとり風呂場に籠って声を出さずに有堂の悪口を叫ぶシーンもすきだ。冷静なのか冷静じゃないのかよくわからなくていい。こういう、シリアスなシーンとシリアスなシーンの間に挟まれたまぬけなシーンがにくい。一生懸命だからこそ、真剣だからこそ英彦はちょっとマヌケだ。そのマヌケさが、普段仕事で冷静なだけに際立って面白い。
最後に抱き合ったときのモノローグも良かった。惚れていなければ、こんな屈辱を誰に許すものか、と英彦は思う。たとえ有堂が一生自分にだけは仕事の相談をしてくれなくても、一生靴下を自分で片付けることがなくても、それでも構わないくらい惚れてしまっているのだろう。恋愛は説明しきれないから、理屈じゃないからいいのだ。
非常に安定感のある一枚でした。二枚組で時間も内容もたっぷりあるのだけれど、内容がラブコメ調でそこまでヘヴィーじゃないので楽しく聞ける。こういうのもいい。
5分弱のトークで、早々に生肉の話が出てきて懐かしい気持ちになった。生肉せんぱい…。
以下どうでもいい話。
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2009.04.26 Sunday
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松本ミーコハウス「テレビくんの気持ち」
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松本ミーコハウス「テレビくんの気持ち」
売れっ子俳優と幼馴染み、人気アイドルとそのマネージャー、フランチャイズコンビニ店長と本社社員。それぞれの恋愛を描いたオムニバス。
ああキュンキュンする!
俳優と幼馴染みの大学生、アイドルとマネージャーの話はともに、容姿が整っていて他人を惹きつける魅力を持っている男が、ふつうの人を好きになる話だ。相手が雲の上の人すぎて、自分が愛されているという現実をなかなか受け止めきれない。疑っているわけではなく、頭では理解していてもいまひとつ受け入れきれない。だけれども、相手が自分のことを好きだと、ずっと前から知っていたような気もする。態度や視線が、言葉よりも雄弁に、自分が特別であることを、ともすれば性の対象であることを語っている。そのことに戸惑い、それが不快ではない自分にも戸惑う。
しかしそんな微妙な心理を分かるはずもない芸能人たちは、自分の愛情が届いていないと思う。自分が愛されていないと受け取る。ちょっとしたことで不安定な気持ちはすぐに揺らいでしまう。天にも昇る気持ちになったり、立ち上がれないほど打ちのめされたり、相手の言葉に一喜一憂する友達以上恋人未満の曖昧な関係は切なくて、だけれども駆け引きがちょっと楽しかったりもする。恋愛って苦しくて、哀しくて、でもやっぱり可愛くて楽しい。
一番好きだったのは父親の病気によってコンビニ店長を継いだ村山と、コンビニの本社の社員須藤の話だ。不精髭に長髪というあまり接客に相応しくない姿だけれどもなんだかちゃっかり仕事している村上と、スーツに眼鏡で仕事にまじめだけれど融通がきかない須藤は正反対の人間のように見える。しかしかれらは、実は最初に顔を合わせたときから、お互いのことを意識していた。
マニュアルから外れている村山のやり方に賛同できないながらも、かれが真剣に仕事に取り組んで結果を出していることも分かっている須藤。仕事はできるけれど型物で応用のきかない須藤を可愛く思う村山。村山の直接的なアプローチにも、なかなか須藤は靡かない。過去のトラウマによって自信という自信を失ってしまったかれは、自分なんかが誰かに好かれるはずがない、ましてや両想いになれるはずがないとどこかで思っている。見苦しい自分を晒すことを恐れて、取り繕って嫌われないように必死で努めている。その痛々しさが切なくていい。
傷つくことを恐れて、卑屈になってみたり、自己を失わないように防衛したり、須藤はあがく。けれども村山は、そういうかれの頑なな心を、かれの気持ちになって涙することで瓦解させる。無理やりこじ開けるのではなく、優しさで須藤の心をひらいた。北風と太陽。
松本ミーコハウスはちまちました感情の変化をひとつひとつ丁寧に描いていくことに本当に長けていると思う。たとえば売り言葉に買い言葉で勢いにまかせて言葉を吐きだして、途中で我に帰って尻すぼみになってしまう、そういう一瞬の機微を見逃さない。鋭く見つけて、きちんと画面に落とし込む。
好き嫌いの別れそうな絵ではあるけれど、殆どのシーンで赤面していることも、受も攻も感情が高ぶるとすぐに涙ぐむことも含めてとっても好きだ。
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2009.04.25 Saturday
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フェロ☆メン「禁忌の薔薇〜Aphrodisiac〜」
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お勧めリストにだけ入れて放置していたフェロ☆メンのCD。
フェロ☆メンというのは諏訪部さんと鳥海さんのユニットで、謎の新ユニットSTA☆MENの中のユニット、ということなので、モーニング娘。の中のタンポポや、第14帝國の中の○○隊のような位置づけだと勝手に解釈。スター☆メンのことはよく知らない。唯一知っているのは、嬉しそうに諏訪部さんが鈴村さんのwikipediaを改定していたことだけだよ…。忘れないよ…。
とりあえずジャケットがすごい。たまたま発売日直後にアニメイトに行ったとき、売り場にででーんと多面展開されていたときは目を剥いた。本気すぎるこのジャケット。白いジャボのついたブラウスに燕尾服で縦ロールの諏訪部さんと、赤いラッセルレースのブラウスに同じく燕尾服の鳥海さん。赤髪のカツラにフルメイク。なにこのDue'le quartzにいそうな人!(怒られそうだな)
勿論爪は黒で指輪はたくさん。中の写真もまたすごい。特に赤い人、原型がない。写真の撮られ方も分かってる…斜め上の角度からの流し目。ちなみに円盤は黒地に深紅の薔薇。いまどきヴィジュアル系でもあんまりいないよこういう人たち。
どういう趣旨でこのCDが出たのか知らないままに書くが、大人が本気で遊ぶ、ということを体現しているのではないかと思った。我に返ったら負け、照れたら負け、である。ノリとしてはLa’royque’de zabyに近いのかもしれないけれど、あれは本気で茶化しているという感じなのに対して、こっちは本気で模倣しているとでも言うか。手を抜かないところが面白い。
ヴィジュアルだけでなく曲もかなりヴィジュアル系。古き良き、という文句自体が古いけれど、まさにそういう、往年のヴィジュアル系だ。というか二期MALICE MIZER。アルバムに入っていても驚かないよ!
一曲目の「禁忌の薔薇〜Aphrodisiac〜」は作詞が諏訪部さん。「トラソルの鳥籠」の歌詞でも凄かったけれど、見事にびじゅあるけい。二曲目「懺悔室」を作詞している岩室先子さんという方を調べてみたら、アニソンの作詞などをされている方だった。これもいい感じにはまっている。というかこのタイトルは分かってないと出てこないと思う…。
元々二人とも歌がうまいので、さくっとものにしてしまっている。これだけやって歌唱力がへにょへにょでは単なる企画物なんだけれど、きちんと基盤があるので成功しているのだと思った。歌がうまくないと成立しない企画なのだ。使い捨てにされるネタではなく、きちんと達成されたものになっている。ジャケット見て笑っておしまい、ではないのだ。
「懺悔室」は左右でチャンネル切り替えになっているので、イヤホンで聞くとなんかすごい。吐息の部分があってちょっと笑った。
化粧した男とか、こういう世界観とか、結局好きでどうしようもない。普通のファンの人がどう思うのかはさておき、ヴィジュアル系がすきなおたくにとっても優しい一枚。
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2009.04.24 Friday
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D-BOYS STAGE Vol.3「鴉〜KARASU〜04」@大阪シアターBRAVA!
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19時からの公演を見てきた。
前列のど真ん中の席だった。ラストゲームは東京・大阪ともに惨憺たる席だったのに、なぜ今回に限ってこんな良席が来たんだろう…。ともあれ非常に見やすかった。
以下ネタバレ。
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