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2008.07.31 Thursday
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LYNX CD COLLECTION「罪の褥も濡れる夜」特製小冊子
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ドラマCD「罪の褥も濡れる夜」のムービック、いーず通販限定小冊子。このために送料手数料を払ったと思えば安いものだ。
・和泉桂「恋文」
冬貴視点の短編。このために送料手数料以下略。
以下ネタバレ。
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2008.07.30 Wednesday
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草間さかえ「イロメ」
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草間さかえ「イロメ」
同じ高校を舞台にした、生徒と先生、生徒同士のオムニバス風コミックス。堅物で面白くないと言われている教師と、なぜかいつも授業中に目が合うオバカ生徒。来るもの拒まずのモテ男と、そんなモテ男にずっと慕われている真面目な幼馴染み。告白されるたびに卒業してから出直して来いと断っている教師と、本当に出なおしてきた卒業生など。
草間さかえが持っている乾いた絵柄と泥臭くて湿度の高いキャラの関係性をそのままに、学園物というありふれた設定を扱うことで、今までのどの作品よりも読みやすくなったと思う。敢えて多くを語らないことで余韻を残す、想像を膨らませる文学的な世界観はきちんと残っているのだけれど、これまでにあった分かりにくさが減っている。個人的には良い意味でDear+っぽさ(ライトさ、爽やかさ)が出ていると思った。好きですこの本。
どれも面白かったけれど、告白してくる生徒を「卒業して大きくなったら出なおして来い」と体よくあしらっている白川先生と、在学中にそう言われた生徒のひとりで卒業してから学校に現れた壬生谷の物語がツボ。
自分が学生時代に好きになった教師・杉浦に言われたように生徒を拒む白川にとって、その言葉を間に受けて本当に現れた唯一の人間が壬生谷だった。本当に身長も伸びて大きくなった壬生谷に翻弄されるようになり、徐々に心が揺らいでいく白川の描写がいい。そして自分は受けたいけれどどうせ攻だろうと思っていたら、壬生谷が攻めてくるので喜ぶ白川が面白い。物理の話を延々呟いたり、屈折しているかと思えば壬生谷が起きる前に必ず髭を剃っておいたり、どこか白川は歪なままだ。そんな些細な怯えが可愛いけれど物悲しくもある。
切なさと面白さとのバランスが良い。
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2008.07.30 Wednesday
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清水玲子「秘密 トップ・シークレット」5
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清水玲子「秘密 トップ・シークレット」5
死者の脳をMRIスキャナーにかけて、本人が生前に見たあらゆる「映像」をスクリーンに再現することで、捜査が行き詰った犯罪を解明しようとする第九の方法はこれまでにも色々なキャラクターによって非難されてきた。犯罪者やその家族だけでなく、実父にまで言われたものもいる。悪趣味だのプライバシーの侵害だのと言われるその操作方法は、本当ならば知られずに済んだようなことを死んでから覗かれるかもしれないという耐え難い恐怖をひとに覚えさせる。
これまでならば闇の中に葬るしかなかった事件が解明されるのは素晴らしいことだし、第九の人間たちは誇りをもって仕事に従事しているけれど、その反面罪悪感も抱いている。本当は自分たちの仕事がなくなればいい、この技術が不要であればいいと思っている。そういう葛藤がこの話の根底にある。
もうひとつ根幹にあるのは、どうしようもないやるせなさだ。色々な犯罪を扱う以上は避けて通れない問題だ。事件が解決しても、殺されたひとは帰らない。家族の悲しみも完全に癒えることはない。寧ろ今まで信じていたこととは異なる事実が明らかになったことで、より一層の苦しみを味わう羽目になることもある。
今回はその両方が非常に色濃く出た話が収録されている。幸せそうに振舞っていた友人の過去、彼女の兄が命を賭けて守ったその過去は結局明らかになった。遠い昔に失った息子の死の理由を知った母親は、息子を殺した人間の脳を見たいと願い凶行に及んだ。犯人の苦しみを知りたかったというよりは、死ぬ瞬間の息子の様子を見たかったのではないか。何もかもを失ってもなお、彼女には更なる苦しみばかりが待ち受けている。憎悪を全面に滲ませて立つ彼女の姿を見て、牧は絶望する。犯罪をいくら解明しても、犯人をいくら突き止めても、誰の心も晴れない。寧ろ悲しみだけが増えていく。それは特別編にも言えることだ。最悪の事態は避けられたけれど、岡部がMRI捜査をして「こんなものがないと犯罪が抑止出来ないような社会は社会じゃない」という叫びが痛い。
救いのなさがこの作品には充満していて、それは読んでいてとても悲しいけれど、わたしはこの読後のやるせなさが非常に好きだ。
そして今回は牧の核心に触れるような問いが雪子から出された。
牧は元々ひとに優しい言葉をかけるタイプの人間ではないし、仕事のことになると実力がある分余計に他者に厳しくなる。しかしながら、雪子に対峙するときの牧はそういったかれの気質を越えた残酷さがある。わざと彼女を傷つけようと言葉を選んでいるような様子が見える。牧に罵倒されて傷つき、青木に庇われてまた傷つく雪子を見て、牧も傷つく。雪子が吐いた言葉に対して牧は苛立って物を投げた。慌てた青木に大丈夫かと問われた雪子が言った「私には全然カスリもしないように投げてたから…」という言葉は、ここまできても牧に向き合ってもらえない彼女の絶望のようだ。物すらぶつけてもらえない、ぶつけるにも値しない、と言われたように思ったのだろう。
最初の頃からそういう気配は感じていたけれど、まさかガチでそうだったとは思わなかった。友情なのか、度を越えた友情なのか、それとももっと他の感情なのか。そのどれであっても、三人の間にあるのはどうしようもない三角関係だ。同じことを繰り返している牧と雪子と、巻き込まれた青木。どうなっても幸せな終わり方が見つからない辺りがまた良い。
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2008.07.29 Tuesday
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高橋ゆう「秘め事は王子の嗜み」
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高橋ゆう「秘め事は王子の嗜み」
マイロを結婚させ、自分は愛人となることを選んだ英喜。英喜がとったその行動に納得がいかないマイロは様々な手を尽くして英喜を苛み、婚約を破棄すべく作戦を練る。
ひとでなしシリーズ第四弾は引き続き海運王の息子×セレビッチ兄さん。今回オビにもどこにもセレビッチの文字がないのは、何らかの大人の事情かしら、と勘繰ってみたり。その代わり「下まつげハッカー」だの「貧坊ちゃま」だの新しい渾名も出てきて、相変わらず笑わせてくれる作品紹介だ。
そしてこの「キャーBLっぽーい!」「BLってこんな感じだよねー!」という声が聞こえてきそうなタイトルとロゴもいい。巻数が増えるたびに繰り出されていく悪乗り感がたまらない。
失う前に手放して、傷つくまえに傷ついて、どんなに酷い目に合わされても冷たくされても体裁を保ちたがっている弱虫の英喜はとても愚かで哀しく、そして愛しい。前作「王子と情人」でマイロへの愛情を自覚し、その結果「マイロのため」と銘打ってかれに結婚を勧めた英喜は、どうしてマイロが怒っているのかすら分からない。「俺はまたひどい間違いを犯したんだろうか」と不安に思うけれど、答えを導くことができない。
寂しい悲しい辛い苦しい、そんな思いをひとつも口にせずに平気だと笑ってみせる英喜の笑顔は引きつっている。かれが無理をしていることが分かるから、なんとかして本音を吐かせたくてマイロは英喜を苛むけれど、英喜は決して口にしない。相手を思えば思うほど、素直に振舞うことができなくなっていく状況がお互いに続く。
不健全な状態でも傍にいたいと思う英喜と、そんな状況は作りかえればいいと思うマイロ。意見が合わないふたりの関係は、いつだって英喜が折れる。それは大金持ちで容姿端麗成績優秀のマイロが俺様なのに対して、見た目はいいけれどおばかな英喜兄さんがへたれな所為もあるけれど、根本的に二人が兄弟だからなのだろうと思う。可愛がられて何でも一番に貰っていた弟と、弟優先の環境で知らず知らず我慢を覚えてしっかりすることを義務付けられた兄。異父兄弟であろうが離れて暮らしていようが、幼い頃の性質は変化しない。ワガママが通った弟と、うまく場をとりなすことが得意な兄。兄弟としてはありえないはずの関係になっているのに、根っこの部分で立ち位置が決められているような気がする。母を脅してまで言うことを通す弟と、お互いさまであろうと弟の独断で真っ最中の自分を見られようととにかく自分が悪いと謝る兄。「…俺のせいで…ごめんね母さん…」と言いつつ半笑いを浮かべる英喜の表情が、何とも言えない複雑な感情を上手く表現してって好きだ。罪悪感と、マイロと二人で生きることへの幸福感、相反する感情がミックスされた笑顔だ。
そしてシリーズ内の最終回のラストのシーンがとても良い。めでたしめでたし。
秘書にちょっかい出した直之と、ハッカーで京島社長と意気投合下まつげハッカー明臣の「傷つけたい」もなかなかいい。下まつげは爬虫類のようで単体でも威力のあるヴィジュアルをしている。いつまでも過去にこだわって愚痴る割りに自分ひとりでは何もできない直之に対して、これまで貯めていた怒りを吐き出す明臣。普段穏やかな人間がいつも通りに接していきなり爆発する、というのはよくある話なのだが、この話はその直後の絵が凄い。笑っていいのか怯えていいのか、といいたくなるような絶妙な顔をしている。
秘書と社長も一杯!
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2008.07.28 Monday
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夏目友人帳 第三話「八ツ原の怪人」
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冒頭、教室で寝てばかりの夏目に対してクラスメイトが心配するシーンがとてもいい。大丈夫なのか、寝られないのか、体調が悪いのかと声をかけてくれる友人に対する夏目の答えは「いや」だ。矢継ぎ早に繰り出される問いに対する三回の「いや」は、同じようでどれも違う。三回目は僅かに声が嬉しそうだ。周りの大人に心配されなかった少年が、他者から掛け値なしに優しさを向けられて、喜びを隠せないでいる、そういう感情が滲んでいる。
人には見えないものが見えることで孤独感を味わっていた幼い夏目と、いつも公園にいる少女との邂逅を描いたエピソードがとても好きなので、アニメでも見られて嬉しい。真っ暗だった夏目の心に射した一筋の光明が、一瞬で曇る瞬間が切ない。実は妖だったと分かった瞬間、手を伸ばしてくる少女を拒む言葉を夏目は叫んだ。けれどその言葉は隣人を心配してくれた優しい女性にぶつかって、結局夏目は両方失ってしまった。判明した瞬間に背筋が凍るような恐さと、後に残る物悲しさ。こういったことが何度も繰り返されて、夏目は上手く感情を表現できなくなった。
それから数年。ニャンコ先生という奇妙な存在と出会い、次々に妖と交流することで夏目は変化していく。妖を攻撃する存在を当初「妖が見える上で攻撃している」と思っていた夏目は、見えるのにどうしてこんな残酷がまねが出来るのかと遺憾に思っていた。その疑問は晴れたけれど、先生に妖贔屓だと言われた夏目は「言葉を理解して知り合いになったから」と人間と妖の間に大差がないことを述べている。人間が人間を見るように、幼い頃からずっと妖と人間の両方を見てきた夏目だからこそ「触れ合わすのが心であるなら同じだ」と言い切ることができるのだろう。
そして夏目は、そんなことを他の皆は決して思わない事も知っている。見えないからだけではなく、異形のもの・自分とは異なる存在に対して人間がどんなに残酷なのかを知っているからだ。だからこそ、少しだけ妖を感じることが出来る田沼に「内緒」だと言ったのだろう。この「内緒な」の言い方も可愛かった…。
先生は前半酔っ払い。明らかに自分の体よりも細い隙間から、にょろっと部屋に入る先生が可愛い。敢えて襖を開けない先生。涎をたらしてる先生も可愛かった。低級妖怪ばかりが夏目の下を訪れることに不満を感じて、玄関先でジタバタする先生も可愛かった。「オーノー」も可愛いぜ。おしりかわいいなー。
そして八ツ原で斑になるとまた格好よいのだ。高く飛ぶと長い尻尾が映える。その後祠の後ろでニャンコの姿に戻る瞬間がとてもよかった。祠の右端から出ている顔はニャンコなのに、左から出ている体は斑。粋だなあ。
黒田さんの三篠も良い感じ。いかにも位が上っぽい。部下が世話をかけたことに恩義を感じたり、名前を取られたまま一度も使役しなかったことを筋が通らないとでも言うような、ちょっとヤクザな三篠。夜中に訪れて、断られると案外すぐに諦める三篠。
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2008.07.27 Sunday
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峰倉かずや「最遊記RELOAD」9
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峰倉かずや「最遊記RELOAD」9
過去にヘイゼルの胸中を掻き乱し、三人と別行動中の三蔵を笑顔で苦しめ続ける烏哭三蔵がまたもや登場。
世話になったひとの役に立ちたいからと、身の丈に合わない速度で成長したいと願うヘイゼルの願いに烏哭は付け込もうとする。すぐ先にある美しい生や、永遠に続けられてゆく命のサイクルを見ぬふりでやり過ごし、その先にある死を提示してくる。不安を煽り、相手の心の脆い部分に入り込んで内側から崩す。最初の綻びを作ってしまえば、あとは勝手に疵が広がっていく。年端もいかないヘイゼルを混乱させる烏哭の様子は、牛魔王の蘇生実験によって世界を混沌に追いやろうとしている現在と何ら変わっておらず、ちっとも楽しくなさそうに見える。それはかれが唯一のもの、大切なもの、フィルバートが言う「神様」を失ったからなのかもしれない。
今よりもほんの僅かだけ、過去の烏哭は素直に見える。
そして三蔵の元に烏哭がやってくる。暴力と言葉に両方で三蔵をひたすらに傷つけて、それでも烏哭はやはり楽しくなさそうだ。無理矢理楽しもうとして、うまくいかずに苛立っているような表情だ。どんなに惨めな状況になっても、最終的には前を向いている三蔵を次から次へと追い込んでいく。
傷つけられて立つことすらままならない三蔵は、それでも瞳を曇らせない。三蔵一行は皆そうだけれど、どんなに死に掛けていても、かれらは笑って前を見ている。愚かで危険な行為だけれど、かれらはどの瞬間にもその心に誇りを宿している。決して折れない信念よりも、何度も粉々になってその度に繋ぎ合わせて修復された信念のほうが強い。四人は何度も絶望して、死の直前まで行って、そこから這い上がってきた。仲間に助けられながら、時には罵倒されながら、「みっともないトコ」を見せ合うことでその信念と絆を堅いものにしてきた。甘すぎず、辛すぎず、ちょうど良い関係性で成り立っている。止まったら死ぬマグロのように、ただひたすらに前を向いて走り続ける。
烏哭が三蔵に語った自己確認の話が面白かった。自己を確認するのは自覚と他者。会わずに終わる他者は存在しなかったことと同意義。皆に忘れられてしまったら、それは自分が最初からいなかったこととなる。存在ごと否定しかねない無天経文。恐ろしい。
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2008.07.26 Saturday
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新井サチ「ギリギリな僕ら」
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新井サチ「ギリギリな僕ら」
スタイリストの下でアシスタントをしている伸二は、高校時代同じサッカー部に在籍していた幼馴染みの彪に告白され、距離を置くようになった過去を持つ。大切な親友である彪からいつまでも逃げているわけにはいかないと、現在プロサッカー選手として活躍するかれに対して伸二は再会を持ちかける。
「ゴールイン!」の彪と伸二のその後の物語。「後ろのケダモノ」の主役だった伸二の師匠である宗和とその恋人・井上もちょこっと出ている。
気の合う親友が実はずっと自分を思っていたことを告白されて初めて知った伸二は、気持ちを受け入れることは出来なかったけれど、そこから彪を意識し始めるようになる。恋愛真っ只中の師匠を見ても、彪のことばかり考えてしまう。距離が離れていても、長い間会っていなくても、再会した瞬間に打ち解けられる親友のことを当然伸二は好きだ。その好意は勿論友人としての感情だけれど、相手が自分に向けてくる恋愛感情との線引きは案外難しい。少なくとも彪のことばかり考えて悶々としている伸二の気持ちは、世間一般的な恋とさほど変わらないように思える。
混乱して相手の本気も自分の本音も見えなくなっていた伸二は、徐々に自分と彪の気持ちと向かい合うようになる。どうしていつも彪のことを考えるのか、彪を好きだという相手にどうしてムキになって対抗したのか、どうして自分が関係の変化を恐れたのか。少しずつ自分で答えを出していく伸二は、そのたびに彪への気持ちを堅固なものにしていく。流されたりほだされたりしたのではなく、自分で選んで、対等な気持ちを持つまでに至る過程は決して平坦ではないけれど、真っ直ぐ向かい合おうとする伸二の姿勢が良い。
そして恋人同士になっても甘ったるい雰囲気が出ない二人。親友から恋人になったのではなく、親友から親友兼恋人になったような関係性が自然で可愛い。バカを言い合ったり、すぐに手が出たり、下ネタを大声で言ったり、そういうノリをなくさないままなのが良い。
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2008.07.26 Saturday
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nakes ape「DOLLS」6限定版
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nakes ape「DOLLS」6限定版
前巻から引き続いての第二部隊メインの物語から開始。真犯人にも驚いたけれど、リカコが死んだ理由もなかなか衝撃的だった。女だらけの世界で起きる女の犯罪、という感じで背筋がちょっと凍るような面白さがある。
続いては他人に依頼されてひとを殺す「呪殺屋」を巡る第一部隊メインの物語へ。これくらいの短さで事件が解決したのは久々かな。読みやすくて、尚且つトリックも面白い。ミステリでトリックがあんまり難しいと混乱するので、これくらいが親切だ。珠緒と笑太の過去は相変わらず部分部分しか見えないけれど、今回は珠緒が笑太の正体に気付いているかもしれないというハラハラ感があって一歩進んだように思う。現実に照らして考えれば口元を隠しただけなので分からないはずがないのだが、その辺りをどう持っていくのかが楽しみ。
最後は第三部隊。これまた色々とトラウマがありそうで次に期待。
元々あまりトーンを使わない、白黒はっきり二色の作画だったけれど、最近黒の割合が増えているような印象。キャラの目線よりも下からカメラでとったようなアングルが多いのも慣れてきた。
限定版の付録はドラマCD「Impressive Word」
ことあるごとに第一、特に笑太に嫌味を言ってくる第三部隊隊長・上條が仕事終わりの第一にまたもや噛み付いてくる。それをきっかけに上條のこれまでの毒舌ワースト3ランキングが開始される。しかし何を言われても上條を嫌いになれない笑太。それにはかれが昔見かけた上條のある一面が原因だった。
おお上條は人気キャラだったのか。正直最初にキャストが出たときに上條って誰だっけ、と思った自分がいるのだが、確かにそう思って読むと人気があることが分からないでもない。ツンデレっていうかツンしかないけど。
4巻の特典はコメディタッチのドラマだったけれど、今回は冒頭にちょっとドラマを入れただけであとはひたすらコメディ。ドラマ途中で謎のフリートークが入るのに驚いた。キャラが自分たちで原作に突っ込みを入れるゆるゆる感。
そしてフリートークはフリーダム。ドラマと収録時間があんまり変わらないあたりも凄い。異様なテンションの三人にひたすら弄られる浪川さん。何の収穫もないフリートークだったけれど、面白かったのでまあいいか。テーマ無視、自己紹介適当、雑談以下だけど面白かったのでいいよ。
しかしボケなくていいところでボケたときの櫻井さんの瞬発力の高さは素晴らしい。好きな食べ物に噴いた。更にボケても面白いとか恐ろしい。
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2008.07.26 Saturday
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椎名軽穂「君に届け」7
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椎名軽穂「君に届け」7
引き続き非常に高いクオリティで胸キュン。この作品の良いところは、その胸キュンエピソードが男女間の恋愛だけに存在するのではなく、女の子同士の友情にも多数存在しているところだと思う。大晦日から初詣に出かけるときに化粧品を持参して自分を可愛くしてくれた二人と出かけるときに、「ありがとう 私 とてもとても幸せ」という爽子のモノローグがいい。二人の後をついていくばかりだった爽子が、二人の真ん中に入って一列で歩いている。普通は何とも思わないような日常すら、爽子にはとても大切だ。それをひとつひとつ噛み締めて感謝している爽子は風早が言うように「楽しいこと見つけんのがうまい」のだ。それはこれまであまり友人に恵まれなかったことだけが原因ではなく、純粋な彼女の性格が大きく関係しているのだろう。爽子が気持ちを届けたいのは風早だけではなく、友人や家族にも等しく思っているはずだ。読んでいて素直に応援したくなるいい主人公。
そして風早くん…!わたしは小さな頃からずっと、少女漫画では主人公に横恋慕して結局振られる男が好きなのだが、この漫画はとにかくこの風早が格好良い。なにこの子!もんどりうって叫びたいくらい良いヒーロー。ちょっといい加減だったり、微妙に照れてぎこちなくなったり、バレンタインに期待する普通の男子。どこにでもいそうで、絶対にいないような男子。
爽子が終業式に、矢野ちんとちづちゃんに冬休みにも遊びたいと自分から言えたことに感動した。まさに「変わってるよ いい方に」だ。風早の最大の長所は爽子のことをちゃんと良く見ていて、彼女のテンポやリズムを把握しているところだ。早く皆に追いつきたいと焦る爽子に対して、ゆっくりでいいよ、そのままでいいよと何度となく促してくれる。
ちょっと距離が縮まったけれど、そう簡単には上手くいかない。それもまた少女漫画の醍醐味です。とても人気のある作品だけれど、助長しすぎずにまとめてくれるといいな。
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2008.07.26 Saturday
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原作:崎谷はるひ×漫画:山本小鉄子「あの日のきみを抱きしめたなら」1
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原作:崎谷はるひ×漫画:山本小鉄子「あの日のきみを抱きしめたなら」1
だらだらと続いている恋人から暴力を受けては、幼馴染みの健吾の部屋に逃げてくるゲイの秀利。十年前に秀利が自分に向けた告白を無意識に逸らしてしまってからも友情は続いたけれど、ずっと健吾は後悔し続けていた。
小説&漫画「あしたのきみはここにいない」のスピンオフ。前作の主人公三尾朝陽の姉・夕奈の同僚が健吾という関係で、弟に男の恋人がいると知った夕奈がカミングアウトしている秀利に弟が今後どうしたら社会的に生きやすいのかを相談をしていた。前作との関連はフォローされているので前作を読んでいなくても問題はない。
早い段階から自分のセクシャリティを確信していた秀利は、それを否定したり隠したりするのではなく受け入れた上でどうやって生きるのかを考え、ある程度確立もした。普通のサラリーマンとして生きるのは少しリスキーだからと資格を取って手に職をつけ、理解ある友人にも恵まれた。
家族にも仕事相手にもカミングアウトして飄々と生きているように見えるけれど、自分が少数派であることに対する秀利の闇は深いく、決して良い相手ではないと思っていても暴力を慢性的に振るう恋人・金沢と別れられない。金沢を批判する健吾に向かって「あの人だってかわいそうなんだ」と恋人を庇う秀利の感情は恋愛感情ではないだろう。金沢に傷つけられているのは自分で、健吾は自分の味方なのに、それでも金沢の肩を持つような発言をしてしまうのは同病相哀れまざるを得ないような環境にかれらがいるからだ。他に誰もかれを庇わないと分かっているからだ。健吾に向かって「舐め合わなきゃいけない疵なんかどこにもないくせに!」と吐き捨てる秀利は自棄になっているわけでも被害妄想に苛まれているわけでもなく、これまでに辛い経験を沢山してきたのだろう。
そしてもうひとつ、「あのね 俺 もう28なんだ 抱いてくれる男は年々減っちゃうんだよ」ということに起因しているだろう。この手の発言は「ねじれたEDGE」の中でも繰り返されていた、崎谷さんお得意のネタのひとつだ。共にこれからを生きていくつもりの恋人同士であれば問題にはならないけれど、一夜限りの関係を望むのであれば年齢や容姿の衰えは非常に大きな枷になる。だから酷い人間だと分かっていても金沢を切り離せない。相手のエゴと自分のエゴが一致してしまうから、許すほかない。かれを跳ね除けることが、自分を否定することになってしまうからだ。惨めでも、疵を舐めあって生きるしかない。物悲しいけれど、パートナーを持てなかった人間に訪れるひとつの現実だ。
それらの問題と向き合ってきた秀利はずっと健吾のことが好きだけれど、健吾に振り向いてもらうことを求めない。それはイコールマイノリティの世界に引きずり込むことになり、自分にもよくしてくれた健吾の家族を悲しませ、明るいところで生きていた健吾を苦しめることになると思っているからだ。
二歳年下だったこともあって若い頃は秀利の気持ちを上手く理解できなかった健吾は、ようやく色々なことに目を向けるようになった。夕奈の後押しや、彼女の弟のエピソードにも触発されたのかもしれない。金沢に対する苛立ちの理由や、秀利の自分に対する感情を把握して、秀利に対する気持ちが変化し始めている。夕奈に「全て捨てて 沢木さんだけ取れる?」と聞かれたときに、「決まってる」と即答した健吾がいい。そして頑なに閉ざされた秀利の心を懐柔させるべく動き出す。期待することをとうに諦めた秀利をどうやって動かすのか、続きが楽しみ。
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