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パコと魔法の絵本

日曜に厨さまと見てきた。予告を見た時に服が可愛かったので、公開になったら行こうかーくらいの気持ちだったので、評判が良いということを終わってから知った。
もう泣いた泣いた泣いた。
で、以下ネタバレ。
大勢の人間が眠っている、アニメのポスターやフィギュアに囲まれた部屋で、唯一目を覚ましていた金髪の男は謎の男の訪問を受ける。とっくに亡くなっていてかれ自身は面識がない親戚の知り合いらしいその男から、金髪の男は親戚の男の話を半ば強引に聞かされる。
謎の男と、親戚である大貫が出逢ったのはある奇妙な病院だった。コスプレ好きの医者、吸血鬼のようなキバを持つ看護婦、足にタトゥーの入った看護婦が働いているその病院の患者は自殺を繰り返し入退院を繰り返す薬物中毒者、消防車に轢かれた消防士、慰謝料を釣り上げるためにずっと入院しているムチウチのオカマ、自称銃の暴発で怪我をしたヤクザ、そして自分一人で無一文から会社を起業し、大成功させた頑固で偏屈な老人大貫。
大貫は見舞いに来る甥っ子にもきつくあたり、他の患者にも暴君のように振舞っているが、ある日、絵本を読んでいる少女に出会う。


前半はいかにも元々は舞台のひとが作ったという感じの大仰さがあり、後半の時制が前後したり人と動物が入れ代わり立ち代わりするあたりは映像ならでは、というところか。セリフまわしが舞台調。

とにかく偏屈じじいで嫌われ者で、悪魔のような大貫は、「お前が私を知っているというだけで腹が立つ」が口癖で、パコに対してもその態度を崩さない。屈託のない笑顔で話しかけてくる彼女に意地の悪い態度を取り、自分が落としたライターを持っていた彼女を泥棒だと決めつけて理由も聞かずに倒れるくらいの強さで殴る。老人とはいえ、七歳の少女を殴るなんてとんでもない。それ以外にも他の患者をゴミだと称し、何の罪もない動物を蹴ってやったと豪語して笑っている。オカマの木之元に「かわいそうなひと」と言われても気にしない。
しかしパコが交通事故の後遺症で、記憶を一日しか残しておけないのだと知らされた大貫は、一気に反省する。確かにパコの抱えているものはあまりに大きく、残酷だが、この心境の変化はいきなりすぎると思った。医者に教えられたくらいですぐに後悔するとは思えないが、寓話っぽい作りなので安易な展開がかえって良いのかもしれない。「泣いたことがない」から「涙の止め方が分からない」と言って、大貫は泣く。声を上げて泣き続けるシーンがとてもよかった。

大貫が何度目かの自己紹介をして、自分が前日打ったパコの頬に触れたとき、彼女は「昨日もパコのほっぺに触った?」と聞く。眠ると記憶がリセットされる彼女の、唯一残るかすかな記憶だった。それに突き動かされるように大貫は、パコの心に残りたいと思うようになり、演劇を提案する。度重なる発作に苦しみながらも、大貫は懸命に皆を説得する。
彼女が七歳の誕生日に母親に貰った絵本を、毎朝「今日パコのお誕生日なの」「朝起きたら枕元においてあったの」と繰り返す彼女のために演じる。毎日「おめでとう」を言って、そらで言えるくらい読んだ絵本を彼女に読み聞かして、それでは何も変わらない。だからこそ、大貫は一縷の望みに賭けようとする。

少しずつ、それぞれの患者の抱えているものが明らかになっていく。
ヤクザの龍門寺が消息を探っている「ジュンペイ」の正体が面白かった。犬か猫だと思っていたのだが、もうひと捻りあった。力技のような笑いだが笑った。
一番意外性があったのは、少年の幻覚を見続ける薬物依存症の室町の過去だ。かれが夜ごと見ては魘されている、同じ顔で色々な姿をした少年の幻覚は、かれ自身だった。天才子役と言われていた、可愛いことが全てだった時代のかれだ。ひたすら可愛くあること、を求められ、それに応え続けていた室町は、大人になった今も、そこから逸脱できずにいる。可愛い演技しかできない、と髭面でボサボサの頭でかれは泣く。同じことをやっているのに、大人になったら気持ち悪いと言われたのだ、と。残酷なエピソードで、とても好きだ。それに対応するタマ子の過去も切なくていい。

あらゆる自身のトラウマの向き合いながら、かれらはパコのために演劇を始める。
そんな中噂好きの木之元は、滝田にある噂を話す。最近自転車置き場の室外機が回っている、これは霊安室の換気をする機械だから、おそらくもうすぐ誰かが死ぬのだろう、と。仮病で入院を延長している木之元、怪我をして巻いていたギプスも少しずつとれている滝田は違うとして、もう長くないのは誰なのか。答えは考えるまでもない。

CG交じりの演劇がコミカルでいい。ガマ王子の容姿があんまりかわいくないのだが、これはこれで。

好き嫌いは別れるだろうが、わかりやすくご都合主義の展開も含めて、おとなのための皮肉に満ちたいい寓話だった。
そしていきなり予定調和を裏切るラストにはびっくりした。ショックだった。もう手のほどこしようがない状態の中、意識を一瞬取り戻したとき、ビニール越しに自分を見ているひとたちが、演劇のキャラに見えてくるところが泣けて仕方なかった。自分を心配そうに見ているのはもはや患者仲間ではなく、絵本の登場人物たちだった。

そして昔語りは終わり、現代に戻る。謎の男の正体もまた粋で良い。まさに飛び出す絵本のような極彩色で煩雑な世界観が良かった。

とにかく役所広司は凄かった。大貫だけでなく、本人ももう老人だったような気がしてきた。シルエットがハート形の頭の老人が紙の王冠を被ってカエルのスリッパを履いたり、ギラギラのローブを纏ったり、マントをはおったりと素敵な映像。他のキャストの衣装もメイクも基本やりすぎで良かった。

面白かったです。

しかし包帯ぐるぐる巻きの木村カエラは何だったのだろう。患者なのかと思っていたら人数が減ったり増えたりするし、他の患者から見えているのかも定かではない。不思議な楽団だった。そして途中ドアップで間奏が入るのは蛇足に思えた。
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posted by: mngn1012 | 映像作品 | 23:42 | - | - |

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