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矢沢あい「NANA」20

矢沢あい「NANA」20
とてもゆっくりではあるけれど、着実に物語は進んでいる。
大きめのネタバレが幾つかあります。
前巻で初登場した、レイラが連れていた男の子の正体がほぼ明らかになった。その髪色からレイラとシンの子か、レイラと他の誰かの子ではないかと思っていたのだが(そしておそらくそう思わせるような描き方がなされていたのだが)、奈々とタクミの子のようだ。ナオキが言う通り、目つきがまさにタクミ。

ナナが自覚している通り、彼女の飢えは凄まじい。何もかもを捨てて、自分を選んで欲しい、愛してほしい、傍にいて欲しい、他の誰にも興味を示さず自分だけを見ていてほしい。その感情自体は特別珍しいものではなく、詩音の元へ行こうとしたヤスを止めた美雨の嫉妬と大差はない。
ただ、ナナの感情は強すぎるうえ、誰かひとりに向けられたものではない。レンもハチもおそらくヤスにも、傍にいて自分を一番に選んで欲しいと思っている(いた)。更にはノブにも自分の傍にいるハチを選んでいてほしかったし、シンには奈々に懐いている子供のままでいて欲しかったのだろう。そういうナナを強欲で我儘で贅沢なのだと罵ることは容易いけれど、男と天秤にかけられた挙句母親に捨てられ、学校ではいわれのない非難を受け、祖母にも信じて貰えず、最愛の恋人が相談もせずに彼女としての自分もヴォーカリストとしての自分も捨てて上京していった彼女が、かえるところを持たない彼女が、楽しかったひとときにしがみつくことは決してナナの所為ばかりではないとわたしは思う。
そういったナナの願いは叶わないけれど、彼女が滲ませているその希求がひとを苦しめ、身動きがとれないようにしている。そのことを知っていても直せないのがナナの弱さであり、哀しいところだ。逃げるように薬に手を出したレンはぼろぼろになり、幻覚を見て事故に巻き込まれた。何よりも切ないのは、レンが車を飛ばして向かっていた先は、誕生日を数時間後に控えたナナではなく、自分のために罪をかぶろうとしたレイラだったということだ。結局レンはナナを選べない。最後の最後で大丈夫だと過信して、「ヘコんでるだろうな…」と予想しながらもナナを後回しにしてトラネスを選ぶ。
自分の濃すぎる愛情が、自分を棚に上げた都合のいいものだと分かっていながらも否定しきれないナナは、既に容量ぎりぎりのところまで追い詰められている。いつ水が溢れてもおかしくない状態でなんとか踏ん張って立っている彼女が、破綻するのはそう遠くない気がする。
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posted by: mngn1012 | 本の感想 | 22:16 | - | - |

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