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ミュージカル「スリル・ミー」14時公演@銀河劇場

原作・音楽・脚本:ステファン・ドルギノフ
演出:栗山民也

私:良知真次
彼:小西遼生

***
ピアノ一台、演者ふたりのミュージカル。沢山うたっているのだけれど、なぜかストレートプレイのような匂いもする濃厚な心理劇だった。
1924年にアメリカで起きた、恋愛関係にある二人の男性が犯した少年誘拐殺人事件「レオポルド&ローブ事件」をもとにしたフィクション。

無期懲役刑を宣告され、30年以上牢獄で過ごしている50代の男。もう五度目になる仮釈放を申請する場で、男はかつての犯行について語る。何故、恐ろしい事件を起こしたのか。現在の男の吐露と回想を交えて物語は進んでいく。

同じ学校に通い、同じく成績優秀で飛び級して高校を卒業し同じ大学に通っていた二人の男。しかし「彼」は「私」に黙って、いきなり別の大学に移ってしまう。
その後再会した二人。大学でニーチェの超人思想に傾倒した彼は、自分が「超人」であることを確信する。その証明のため、そしてスリルを味わいたいという欲求のため、完全犯罪の実行を考えるようになる。そして彼にどれほど冷たくされても好意を抱き続ける私の気持ちを利用して、彼は私に犯罪の手伝いを強いる。
彼に見放されるのが嫌だという一心で悪に手を染める私だが、犯罪の悪質さが増すに連れて躊躇するようになる。そこで彼は、お互いの要求に全て応じるという誓約書を交わすことを提案する。彼の愛を求めるあまり、応じる私。
そしてとうとう二人は殺人を計画する。何の関わりもない少年を誘拐し殺人と死体遺棄を実行した二人だが、これまでの事件と異なり、警察に犯行を暴かれてしまう。そのきっかけは、犯行現場に残された私の眼鏡だった。

役名が「彼」と「私」なので感想が書きにくい!いちいちカギカッコつけると読みづらいかな、と思ったのでそのまま書きます。なので男性の代名詞としての「彼」や、ブログエントリ筆者の一人称としての「私」はここでは使わってない。はず。

彼に恋をしている私と、その好意を知った上ですげなくあしらったり、適当に相手をしてやったりと態度を変えて私を弄ぶ彼。自分に手を伸ばしてくる私の手を無視したり、近付いてくる私を押しのけたりするのはまだ良いほうで、心理的にも揺さぶってくる。いきなり熱烈なキスをしてくるのに、驚いた私がそっと体に手をかけるとすぐに離れて「これで満足か」「こうしてほしかったんだろ」と冷たく言う。それなりに親しげに会話している中で私が手を伸ばして「触って」と言えば、伸ばされた手を冷たく一瞥したあとで「ちゃんとお願いしろよ」と支配・被支配関係を示してくる。読書をしている彼に私が何を読んでいるのかと問えば、もう読み終わったからと本を閉じて手渡そうとし、すんでのところで床に落とす。手渡しはしない、床から拾え、と暗に言っているのだ。
サディスティックな態度、意地悪な行為と言うよりは、調教に近いと思う。コンスタントにそういう態度を見せることで、二人の関係性を何度も私に再認識させるのだ。対等ではない、と繰り返し刷りこもうとする。恐怖で支配し、自分に従順な私を作り上げようとしているという意味ではDVに近いのかな。その辺りは疎いのでうまくカテゴライズできないが。

私を抱きしめるときもキスするときも命令するときも、彼は煩わしそうだ。神経質そうな顔には少しの煩わしさ意外の表情がない。そんな、何も感じていないかのような彼の顔が、放火をした時に変化する。
ひどく昂揚した彼は、歪んだ笑みを浮かべている。一方で歌詞にあるように、気持ちが落ち着いているようにも見える。久々に見たこにたんは顔つきが変わったように思ったのだが、単なる経年変化ではなく、役柄の所為なのだろう。何とも言えない、けれどどこか違和感を感じる顔は「彼」の顔なのだ。美しいのに美しくない、ねじの外れた男の顔をしている。
こにたんは黙っているとマネキンのような造形だからこその恐ろしさ、残酷さがある。それに存在感が強まり、持ち物である肉体を使いこなす術も増えてきている。独特の歌声も健在で魅力的だった。

彼は弟に何らかの劣等感ないしは嫌悪感みたいなものを抱いていた。最初は、金と引き替えに自分の情報を私に売ってしまうことへの憤りだと思っていたが、どうやらそれだけではないようだ。最近「ケチになってきた」父の金庫の暗証番号は「どうせ弟の誕生日だろう」と吐き捨てるように言う彼。単に父の経済観念が変化したというよりは、彼に金を使わなくなった・お気に入りである彼の弟に使うようになった、という感じがする。父の中で兄である彼よりも弟のほうが優先順位が上のようだ。実際にそういう態度に出ているのか、彼の思いこみかは分からないが。
だからこそ彼は最初に殺人を口にしたとき、自分の弟を殺そうと言った。しかもそれによって父がショックを受けること、父が死ぬことも喜ばしい、という。弟が亡くなることで父のものが全て自分のものになるという狙いもあったようだが、単に弟を消したいという願いがあるようだ。彼と弟の間に、もしくはそこに父を入れた三人の間に何があったのか。語られないままだ。

一方私は名家の息子で、非常に可愛がられて育ったようだ。三人しか持っていない眼鏡フレームを買い与えてくれた父は、息子の裁判に際して非常に腕利きの弁護士を雇ってくれた。そのおかげで二人は絞首刑を免れたようなものだ。
しかし皮肉にも、その父親の愛情が犯人特定につながった。彼にとっては残念なことに、しかし私にとっては幸いなことに、だ。
裁判が終わり、99年の懲役を科せられた二人は護送車で刑務所へと送られる。その中で私は真実を明かす。わざと眼鏡を犯行現場に落とし、これまでの事件も含めてあらゆる指紋を拭き取らず証拠を残してきたこと。その理由は、彼と一緒にいたかったから。彼と二人で絞首刑になっても、彼と二人で懲役刑になっても、私はどちらでもよかったのだ。いや、本当はかれと生きてゆきたかっただけだろうけれど、大学の時みたいにいきなりいなくなってしまうかもしれない、不特定多数の(ないしはたった一人の)女の子と遊んでいる彼を見るよりも、あらゆる自由のない場所で二人きりになることを願った。
そのことを告げる私の顔は歪んでいる。嬉しそうに打ち明ける口元は歪み、目もうまく笑えずにひきつっている。けれどこれまでのどんなシーンよりも強気で、自信に満ちている。誇らしげだと言ってもいい。全てを手にしたかれは、それが失われないことを知っている。移動の自由を制限されているし、本当はとても弱い彼が、知らない人間ばかりの刑務所で唯一知っている私をむげにできないことも、死を選ぶようなことができないことも、既に私は知っているのだ。
彼は本当は情けない男だ。自分に警察の容疑が向くといきなり脅え始めたり、助かるために私に縋ってくるような男だ。裁判の判決が出る前日、一人きりの拘置所で怖いと言って泣いていたような男だ。それでも私は彼が好きだった。彼の本質を知った上で好きだからこそ、こういう方法に出たのだろう。

再会したあと最初の犯行、放火の現場で、彼は私を久々に呼び名で呼んで「昔のレイのままだ、幼い」とからかった。さっきまで脅えながらガソリンをまいていた私は炎を見て落ち着いたのか、冷静なトーンで「どれだけ成長したか見せてやるよ」と返す。このシーンだけ、妙に私が彼に対して対等というか普通の口を聞いている。
そのあと「触って」「ちゃんとお願いしろよ」「…触ってください」という調教にうつるのでそれほど気にしていなかったけれど、あとで思えばこれは、私の計画の布石だったのではないだろうか。かつて彼にいきなり置いて行かれた私が「どれだけ成長したのか」を、護送車の中で彼は知ったのだ。

これはラストを見た上で、もう一度最初に巻き戻って私の行動を見直したいなー。犯行に脅え、彼の命令に従い、何度も彼の計画を辞めさせようとした。眼鏡を失くしたかもしれないと不安がって彼に何度も電話をかけたりした。そういう全てが、彼の自尊心を高めて注意力を散漫にさせるための、裏切るための、そして手に入れるための芝居だった。
純朴で臆病で気弱(に見えていた)私が、一気に本性を見せる。野暮ったさすら感じる良知くんの私が開花する瞬間の歪み方がとてもよかった。それまでが物凄く健気だったので、余計に一瞬の変化が映える。

刑務所で「99年」一緒にいることが確約されたことについて「奇妙な鳥が2羽、籠の中で飼われているみたいに」と私は言う。バード・ウォッチングが好きな私ならではの言いまわしだろう。永遠に出られない「籠」に、彼を連れて飛び込んだ私。羽根をもがれて永遠に飛べなくても、幸せなのだ。

己の優秀さを証明するため、そしてスリルを求めて、彼は犯行を繰り返した。私は彼を愛していたからこそ犯行を手助けした。彼こそが、私にスリルを与えてくれる、Thrill me=ぞくぞくさせてくれる相手だったからだろう。更に、自分の優位に立っていると確信している彼を裏切るための算段を立てて、気づかれないようにじわじわと追い詰めていく行為も、きっと私にスリルを与えたはずだ。
でもそれと同じくらい、私にはそのことそのものが悲しかっただろうとも思える。ただ彼が好きで、彼を手に入れたくて協力しただけの私は、彼に愛される道を探していただけだ。彼を裏切りたかったのでも、貶めたかったのでもない。けれど他に道がなかったのだ。彼を諦める、という選択肢を選ばない以上、こうするしかなかった。その結果私は彼よりも一歩上を行き、彼よりも「超人」と呼ばれるにふさわしい人間になってしまった。

自分を超人だと信じて疑わなかった男がはめられ、その男と共に生きたかっただけの男が超人となった。自分の人生をすべて賭けて、通りすがりの子供を「犠牲の仔羊」にして、凡人の男を手に入れた。

***
カテコは3回?かな。最後、良知くんが右隣にいるこにたんに手を出すも無視される。そのままハケようと移動したこにたんがちょうど自分の左側に来たときに、再び手を出すも無視される良知くん。最後はちょっと小走りでかけよって、無理やり気味に肩に腕をまわして二人でハケていった。

***
「超人」とか「力への意志」が言葉のままで受け取られすぎている、ということへの突っ込みはおいておく。その解釈も含めて「彼」は愚かで未熟で高慢であったのだ。

劇場内のバーではキャラクターごとのイメージカクテルが販売されていた。あと、缶バッジのガチャガチャが一回300円で販売されていたあたり、客層マーケティングが完璧だと思いました…おたくは缶バッジがだいすき…。
それはそれでいいので、せめて日本語の戯曲を出してください。英語の脚本はさすがにハードルがたかい!

ちょうど二日ほど前に、twitterで話題になっていた「クズ彼☆スキャンダル」という、攻略対象キャラがクズ男ばかりの乙女ゲーム妄想をたのしく読んだばかりだったので、ときどきそのことが頭をよぎってしまった。「彼」はクズ彼なんだよ!でもそんなクズ彼がクズだと分かっていて、それでも別れられない「私」もまたクズなんだよ!
Togetter クズ彼☆スキャンダル
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posted by: mngn1012 | ライヴ・舞台など | 00:17 | - | - |

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