<< 冬コミ新刊 | main | ミュージカル・ミーツ・シンフォニー 15時公演@サントリーホール >>

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

web拍手
posted by: スポンサードリンク | - | | - | - |

森薫「乙嫁語り」5

森薫「乙嫁語り」5
結婚が決まったライラとレイリの準備もいよいよ大詰め。花嫁を美しく、家庭的なものにしようとする女性たち。お祝いを少しでも多く得ようとする男性たち。婚礼の手伝いに訪れる親族たち。かれらにとって婚礼は特別なものであると同時に身近なものなのだろう。年齢と性別によってきっちり分けられためいめいの仕事を、楽しみながら手際よくこなしてゆく。文化祭の準備みたいな、手作りの楽しさがみえる。
そこには単なる作業分担以上のものがある。動物を捌く、料理をする、といった作業の伝承が存在する。年長者はかつて自分が教わったように、年下の者に作業を教える。以前は見ているだけだった子供たちは、実践の機会を与えられて、少し照れながらも嬉しそうに笑っている。年長者たちは厳しいけれど優しく根気よく指導する。引き継がれてゆく人間の営みが美しい。
初めて挑戦した少年を含めた男たちが裁いた動物を、おそらく今回初めてやるであろう少女を含めた女たちが料理する。力のあるものは力仕事を、子供たちは簡単なことを、老いたものはその経験が活かせることを行う。共同体で生きてゆくということは、分担と伝承の一員となるということだ。
通りがかった老人は、声をかけられて婚礼の宴会に参加する。誰の婚礼かも知らないというかれの「めでたい」「おめでとう」の言葉と笑顔が、双子の結婚を更に祝福された幸せなものにする。この老人が関わってきた婚礼に、双子の婚礼を催す者たちもこんなふうに参加してきたのかもしれない。着飾って花嫁のもとに向かう花婿たちも、道すがら、知らない人々の祝福を受ける。めでたければいいのだ。いいなーこういう文化たのしそう!

おてんば双子は、着飾って座るだけの花嫁業に早速飽きている。お腹がすいた、どこかへ行きたいと我儘を言う花嫁に、呆れつつも付き合ってくれる花婿たち。ふたりが食べたいと言ったものを手に入れようと、物陰に隠れて画策する兄弟がかわいい。文句を言いつつも言うことを聞いてくれるサーミと、呆れつつも文句を言う弟を窘めるサーム。
かと思えば双子が口を挟む間も与えないほど、興奮して舟について語る兄弟。結婚祝いに父からもらった自分たちの舟に、かれらは熱狂している。子供のように喜ぶ二人は、けれど仕事への意欲を語る。
家族との別れもありつつ、踊りながら叫んだふたりの乙嫁の「皆で楽しく暮らすのよ!!」という言葉が現実になりそうな予感。

物語は再び(婆様を挟みつつも)アミルとカルルク。
本当にこの夫妻はいじらしくてかわいい…徐々に育ってゆく恋の中で、思わず動物に嫉妬してしまうカルルクの可愛らしさと、アミルの代わりに辛い行動に出るカルルクの強さの両方が描かれている。アミルのほうも、何かに真剣になる彼女の真摯さ、「生きる」ことに対する揺るがない理念、そしてすこしの弱さが描かれていて、背筋が伸びる。
治安の悪さがほのめかされているのでこの先もたのしみ。


web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想 | 11:44 | - | - |

スポンサーサイト

web拍手
posted by: スポンサードリンク | - | 11:44 | - | - |