<< 「祈りと怪物 ウィルヴィルの三姉妹」Ninagawa version | main | 森薫「乙嫁語り」5 >>

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

web拍手
posted by: スポンサードリンク | - | | - | - |

冬コミ新刊

一穂ミチ「Overtour」
「Is in you」「Off you go」の番外編。
仕事で東京本社に出張することになった一束は、社内を案内してくれた良時の善意から佐伯との再会を果たし、偶然会社を訪れていた十和子と出かけることになる。隠しきれない嫉妬に自己嫌悪しながら一束を送りだした圭輔は、急な仕事でドバイに向かう。
圭輔の佐伯への嫉妬には、恋人の以前の恋人への嫉妬、仕事ができる上司への嫉妬の二種類が絡み合っているので非常に複雑だ。仕事に関しては圭輔は佐伯に到底叶わないと思っているだろう。口や態度の悪さを補って余りある洞察力や発想力の持ち主である佐伯は、豪快で破天荒で、なんというか色々な意味で非常に特別な男だ。その男が一束と付き合っていた。一束は単に現在の圭輔の恋人だというだけでなく、かつて圭輔が独占していた友人で、それ以上の関係になろうとして拒まれてしまった相手なのだ。自分を拒んだのに佐伯と付き合っている(実際は付き合っていたわけではないが)、というのは圭輔にとって色々な意味で複雑な心境だっただろう。
その嫉妬を隠しきれず、以前圭輔は一束を傷つけてしまった。その反省があるから何とかして晴れやかに送りだしたいのだろうが、なかなかできない。できないけれどやろうとしている、そういう不器用さも含めて一束は圭輔が好きなんだろうけれど。

佐伯との離婚について十和子がどう考えていたのか、ということがようやくここで語られる。一方的に離婚を言い渡した十和子、佐伯が良時を好きなことを知っていた十和子は何を考えていたのか。単に「良時の妹」として紹介された十和子が佐伯の元妻であること、憎しみあって別れたわけではないことを一束は察した。この察しの良さこそが、佐伯が評価した一束の魅力なのだろう。
なぜ別れたのかと問われた十和子は「身体は分けられないから」「半分が過ぎて、私の番は終わった」と言った。佐伯という一人の男を自分と良時で共有することはできない。佐伯が二人にならない限りは無理だ。だから十和子は佐伯を時間で割り、先に所有し、兄に渡した。泣きながら、つらい思いをして、それでも優しい兄に譲った。
十和子と良時が佐伯を共有することは同時に、佐伯と良時が十和子という宝物のような少女を共有することであり、佐伯と十和子というひねくれものの二人が良時という光のような男を共有することでもあった。それは佐伯曰く「ずっと遊んで」いることだ。そのために佐伯は十和子との結婚を決めた。けれど三人は長い年月の中で知った。「身体は分けられない」と。
十和子の「半分が過ぎて」という言葉が非常に印象的。分ける対象である佐伯が40代なので、一般的な寿命からみて半分が過ぎたというのは決して大げさな言いぶんではない。しかし十和子が口にすると、なんだかひやっとする。

飛田新地の壁を「嘆きの壁」と呼ぶ同僚に呆れつつも、納得している佐伯。結局どこにいったって、何を見たって、良時と十和子のことを考えている。

一穂ミチ「すべての日は灯」
「街の灯ひとつ」の番外編。
初鹿野さんは一穂作品随一のお色気キャラだなあと毎回思っている。妹が片喰の家に忘れて行ったマニキュアでひと盛り上がりする初鹿野さん。家にあるちょっとしたアイテムでいちいち盛り上がれて楽しそう…この二人は落ち着いちゃって変化や事件がないかわりに、いつまでも楽しそう。

一穂ミチ「ちょうちょ結び」
「雪よ林檎の香のごとく」番外編。
最近先生との関係も落ち着いてきたな、昔みたいなときめきが欲しいな、なんて思っていた矢先に、着物姿の桂に惚れ直す志緒ちゃん。落ち着いてきたと思ってるのは本人だけだろうけれど。付き合いの長さに比例して、これまで特別だったことが日常になっていくのはどうしようもないことだ。それが手に入らなかったときは辛かったのに、いざ手に入って落ち着くと少し不満に思ってしまうのも、どうしようもないことだ。
和装しただけで真っ赤になって目も見られなくなる自分に驚いたり、恥ずかしくなったり、うろたえたり。そのリアクションを可愛いと思いつつ、ちょっと気恥ずかしい桂も含めて一生こんな感じなんだろう。平和。

一穂ミチ「Ninna Nanna」
こちらはコミックシティ新刊。冬コミ終わった→新刊通販ぽちっ→早く届かないかな〜→シティ新刊のお知らせ、の流れは二回目かな。一冊でも多いとうれしいので送料気にしない。
「Off you go」番外編。
クリスマスに酔っ払って大きなクマのぬいぐるみを連れてきた佐伯と、すてきな棒こと良時の平和な日常。佐伯が良時に、あらゆる意味でものすごく甘えているのがかわいらしい。佐伯は比較的いろんな人に我を通しているほうだが、良時の前に出ると佐伯の我はかわいくなる。良時にかわいい自分を出しているというよりは、良時といるとかわいくなってしまう。でも口が悪くて態度がでかいので、それを他の人がかわいいと思えるかはまた別だな。
片思い時代の佐伯の話も切なくていい。自分の出産後体調を崩して亡くなってしまった母を思い、「もしも十和子が出産なんかで死んでしまったら赤子であろうと憎んで殺す」と考える佐伯のモノローグがいちばん好きだ。それはたぶん一般的な過半数の父親の考えとは異なるだろうし、佐伯もそれを自覚している。佐伯の十和子への愛はほんもので、だけどたぶんそれは夫婦間とは異なる。佐伯が十和子を愛すれば愛するほど、遠ざかる。だからかれらの結婚生活は非常に円満で、仲良し夫妻でいられたのだろう。
良時に「ままならない」と佐伯が言ったのは、もともと十和子が口にした言葉を覚えていたのだろう。勿論それまでも知っていた言葉だが、十和子が話すのを聞いてぴんときたのではないだろうか。十和子の言葉が良時を煽り、二人が恋人になるきっかけの事件を招いたのだ。

佐伯祭り!満足。
web拍手
posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 11:43 | - | - |

スポンサーサイト

web拍手
posted by: スポンサードリンク | - | 11:43 | - | - |