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「じゃじゃ馬馴らし」

作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:蜷川幸雄

キャタリーナ:市川亀治郎
ペトルーチオ:筧利夫
ルーセンショー:山本裕典
ビアンカ:月川悠貴

***
蜷川シェイクスピア23弾、オールメールシリーズ5弾。らしい。WOWOWでみた。

美しく可憐な資産家の娘ビアンカは色々な男から求婚されているが、彼女の父親はビアンカの姉であるキャタリーナが結婚しないことにはビアンカを嫁に出さない、と宣言する。困り果てた求婚者たちは、口が悪く気がきついキャタリーナに、金目当ての結婚を望むペトルーチオをあてがおうとする。強引なペトルーチオと無理やり結婚させられたキャタリーナは、次第に夫によって馴らされてゆく。

シェイクスピア作品を見てきた中で学んだことは、「台詞の細部はあんまり気にしない」ことです。聞きとれなくても仕方がない。そのスタンスが正しいかは知らないが、そのことに気づけてからとても楽しめるようになった。
とりあえず人間関係がややこしい。妹ビアンカと結婚したい二人の男。恋仇であるふたりは、金目当ての結婚を願うペトルーチオを姉キャタリーナにあてがうことで、ビアンカの父から再び娘に求婚するチャンスを得ようと画策する。更にビアンカには、家庭教師を利用して近付くことを狙う。一人の男は自身が音楽教師となって屋敷に入り込み、もう一人は優秀な若い男を紹介することで家と近付こうとする。
その若い男というのが、ビアンカに一目惚れしたことがきっかけで下男と立場を入れ替わった金持ちの男、ルーセンショーだ。かれは忠実な家庭教師のふりをして男に近付き、ビアンカの家庭教師の立場を得る。ビアンカに求婚したい男は二人ではなく三人だった。
更にルーセンショーに頼まれて立場を入れ替わった下男も、ビアンカに求婚する。家柄を利用してビアンカの父親に近づくのだ。求婚する男は四人。
美女ビアンカを狙う恋の5角関係、じゃじゃ馬キャタリーナと輪をかけて口のたつペトルーチオの奇妙な夫婦、更にはルーセンショーに扮した下男と主人の男との駆け引き。それだけでもややこしいのに、その物語すべてがある王に捧げられる劇中劇なのだ。その王はただの王ではなく、酔っ払っている間に王に仕立て上げられた乞食なのである。ネーム多すぎ!しかも劇中ではべつにその壮大なドッキリについての顛末は語られないまま。どうなるの?おじさんかわいそう!

「じゃじゃ馬馴らし」の「じゃじゃ馬」は、気がきつすぎて求婚されない女性・キャタリーナのことだ。そして彼女を「馴らし」はじめるのは、突如現れて1週間しないうちに結婚することになったペトルーチオである。
出会った瞬間からキャタリーナを褒めちぎり、彼女に返答の隙を与えない剣幕でものを言い、拒否の瞬間を与えないまま結婚に持ち込んだかれは、そのあともその勢いで彼女を馴らす。食べ物をぎりぎりまで与えずに飢えさせてから食事をちらつかせ、ドレスを作らせてから引き裂き、彼女を追い詰める。もはや調教だ。何を言われても反論していたキャタリーナは次第に反抗することを止め、夫に従うようになる。老いた男も夫が少女だと言えば少女相手の接し方をするようになる。じゃじゃ馬ケイトは飼いならされ、最終的にはどの妻よりも夫に従順な女性となった。
放送後のインタビューでも、女性蔑視ととられることのある作品だと話題になっていた。時代も国も違うしどうでもいい意見だと思うが、最終的に逆玉狙いの男のSMばりの調教で従順になりましたおしまい、なのは物語としてそんなに面白くないなーという感じ。最後にキャタリーナのどんでん返し復讐があるとか、賭け金欲しさに夫妻が結託していたとか、そういう笑えるオチが見たかった。シェイクスピアに何を言うんだ私。

というのも亀治郎さんのキャタリーナの序盤〜中盤の気の強さが凄く良かったのだ。もともと亀治郎さんの演じる気のきつい女、おきゃんな女が好きなので、キャタリーナもすごく良かった。頭がよくて口がよく回って、美人な妹と比較され続けてきた所為で人間の醜い部分をよく知っていて、きっと彼女には世界がバカに見えているんだろう。そういう強さと、評価されなかった・愛されなかった・悪意ばかりを向けられてきたものならではの弱さや諦めが共存している。哀しいけれど可笑しい、魅力的なキャタリーナだ。ぴったり!
随所に歌舞伎の手法も取り入れて、思わず大向こうが飛んじゃうシェイクスピア!頭の良さと、知性のあるものならではのシニカルが普段から滲んでる亀治郎さんならではだなあ。
彼女と張り合うペトルーチオ、筧さんもすごくよかった。というかこちらもぴったりすぎるほどにぴったり。以前みたお芝居の筧さんがぴんとこなかったんだけれど、こちらは良かったー。まあとにかくしゃべるしゃべるしゃべる。ペトルーチオの言葉は、伝えることを目的にしていない言葉だ。相互理解を求めていない、ただ相手を制して黙らせる、自分のいいなりにするための言葉。だからかれはとにかく喋る。相手の反応は気にしない。黙っていればそれでいいし、黙らないのなら黙らせる剣幕で喋るだけだ。そういう勢いと、コミカルな表情・アクションが暑苦しいほどに存在した。ふたりがやいのやいの言ってるのがおもしろくて、それが物語の醍醐味なんだろうと思う。

ビアンカはかわいくてちょっとワガママで、自分がきれいなことを知っている。月川さんはべつに飛び抜けて女顔ではないと思うんだけれど、ときどき本当の女の子のように見えて、ぼんやり「胸のない人だなあ」と思ってしまった。そりゃないわ。
ルーセンショーの頭のおめでたい感じ、若くて男前で家柄があって自信に満ちているものならではの在り方もいい。山本くんは評判がいいのは知ってたんだけど納得。結局この人殆ど苦労してないね…お坊ちゃんだからね…。
ビアンカは結局ルーセンショーの顔が良かったから、最初から彼のほうばかり見てたんでしょ…お似合いのふたりですことっ。

にぎやかに、ばかばかしく、きかざって、下卑ているけれど知的。蜷川さんらしい舞台だなー楽しかった。


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posted by: mngn1012 | 映像作品 | 14:06 | - | - |

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