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凪良ゆう「もったいない!」

凪良ゆう「もったいない!」
生活能力が乏しい両親と姉に囲まれている大学生の日向は、常に細かい節約を心がける毎日を送っている。騙されて多額の借金を負った父は、肩替りしてもらう代わりに姉と幼馴染みの圭吾の婚約を決める。しかし姉が駆け落ちをしてしまったため、日向は圭吾の家政夫となることを決意する。

角川ルビーらしいドタバタラブコメだった。
家族仲はとてもいい。しかし画家の父の収入はムラがあり、更に芸術家肌なのであまり気にしていない。母と姉はふわふわした性格で、悲観的になることもなくにこにこと生きている。お互いに思いあう人間関係は良好この上ないが、生活をしていくにはそれだけでは足りない。ゆえに、こまかい節電を徹底し、副業になりそうな父の仕事を組み込むのは、しっかりものの日向の仕事だった。
そんな地に足のついていない父は、友人と呼ぶのもはばかられるような元クラスメイトの自己破産にまきこまれて多額の借金を負ってしまう。その金は、会社社長である父の友人に一端肩替りして払ってもらったために借金取りが家に押しかけてくるようなことにはならないが、借金があることには変わりない。
その借金を帳消しにする条件を、社長である友人は提示する。かれの息子であり、日向と姉が幼いころ一緒に遊んだ圭吾と、姉・成子の婚約だ。おっとりした美人の成子を、圭吾の父は是非息子の妻に、と希望した。自己主張の弱い姉は圭吾を「素敵」と言っていたので、いつもの様子からして特に不満もないだろう、と皆が解釈した。しかしそれは誤解だった。恋人がいたらしい姉は、意図しない男を結婚させられることに焦り、書きおきを残して駆け落ちした。
そうなるともはや手の尽くしようがない。ドラマなら身代わりで息子を差し出すこともできるけど…などと、フラグを温厚な口調で母親がへし折ってしまったので、姉の振りをすることもできない。いくらしばらく会っていなくても、姉と弟を間違えるわけがないのだ。仕方がないから地味に借金を返すという父の言葉に、日向は立ちあがった。

圭吾は日向の初恋の相手だった。最初は単なる仲良しの幼馴染みだった圭吾が、男とキスしているところを見てしまったことをきっかけに、日向は自分が圭吾に恋をしていると気づいてしまったのだ。
久々に会った圭吾は相変わらず容姿端麗頭脳明晰で、友人からの信頼も厚く、将来を見据えてボランティアサークルの活動を熱心にこなしている、あだ名の通り「王子」な男だった。
日向は圭吾に事情を打ち明け、その上でかれの父親に黙っていて欲しいと頼む。姉の代わりに自分が恋人になるという提案は冗談として流されてしまったけれど、せめて、独り暮らしをしている圭吾の世話をさせてほしいと必死に懇願する。そこにあるのは圭吾への罪悪感ではなく、両親が旅行に出かけている間、圭吾の家に寝泊まりすることで経費を削減しようという狙いと、自分に恋をさせることで借金をチャラにしてもらおうという狙いがあった。
ひとまず期間限定の同居を許可した圭吾だが、次第にかれの化けの皮が剥がれてくる。掃除は嫌い、野菜は嫌い、節約などは考えたこともなく、だらしなくて性格が悪い。王子からはかけ離れたその正体に日向は驚き、長年の恋が冷めるのを実感する。
母親の家庭菜園はおろか、道に生えている草を料理して夕食に出す日向。とにかく肉さえ食べられればいい圭吾。勝手に家中の色々なものを節約モードに切り替える日向と、貧乏くさい真似をするなと怒る圭吾。相容れない二人の口論は生活感に満ちていて面白い。

日向の恋は、圭吾の本性を知って終わったはずだった。口が滑って本人にも昔好きだったことを知られてしまったが、それも含めて終わった恋だった。今は単に幼馴染みとして、理解者として、一緒に暮らしている。そのはずだった。
しかし圭吾の秘密を知るたび、日向の胸は苦しくなる。父親に許されなかった子供向けの漫画ばかり読む圭吾。かぶり物をして、メンバーにも自分のプロフィールを明かさずにハードコアバンドをしている圭吾。そういう、イメージと違う自分にコンプレックスを抱いている圭吾。病死した母親の望む自分になれなかった「期待はずれ」の自分を嘲笑する圭吾に、「今の圭ちゃんも好きだよ」と日向は告げた。それは恋愛の意味ではなかったし、圭吾もそういう意味で解釈しなかった。けれどそれを機に、圭吾は日向に触れてくるようになる。日向を甘やかし、日向のために行動するようになる。

王子様の時の圭吾より、口が悪くて生活能力がなくて空回りする、けれど優しい圭吾のことを日向は改めて好きになる。お互いに性格が正反対で、だからこそ埋め合える。王道の本筋に、細かく面白い細部がくっついて楽しく読める一冊。
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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 13:40 | - | - |

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