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東山翔「prism」1

東山翔「prism」1
高校生になった恵は、新しい環境での恋に夢を抱きつつも、小さな頃に一度会っただけの初恋の相手が忘れられずにいる。入学式で美少女にいきなり抱きつかれた恵は、その少女こそが初恋の相手だったと知り、戸惑ってしまう。

無茶苦茶いい表紙だなー。季節に合わせるかのように四月に発売になったのもいい感じ。
高校生になったばかりの恵は、可もなく不可もない普通の少女、という感じだ。中学からの友達もいて特に高校生活に大きな不安があるわけではなく、恋愛に関してもこれまで全くモテなかったわけではない。けれど本気の恋をしたことがない。よくいる女子高生だ。
彼女が恋に本気になれなかった理由は、昔会った少年だ。ショートカットの少年と遊んだ日のことが忘れられない。それは確かに恵の初恋だった。「光」という名前と、当時の顔しか知らない少年。再会できるかもわからない相手のことはいい加減忘れて、高校生になったからには恋をしたい、と恵は考える。それら全てがとても普通の、自然な女子高生のものだ。
入学式の日、ひときわ目立っている少女がいた。共学高校で男女ともに見とれてしまう美少女。例に漏れずきれいだなあと見ている恵に気づいた彼女は、そのまま恵に抱きついてきた。当然ながら戸惑う恵だが、その少女こそが初恋の相手「光」だと知ったときの驚きはその比ではなかった。ボーイッシュな格好と「僕」という一人称のために男の子だと思い込んでいた初恋の相手は、同い年の少女だった。男っぽい言葉も服装もすべて止めてしまった今となっては、彼女は学校中から意識される美少女だ。

女装しているわけじゃないよね、などと茶化しつつも、長年の誤解が解けたことで恵は解放される。いつ会えるとも分からない初恋の相手を思い続ける必要もなくなり、光という新しい友人も増え、これで彼女の高校生活は目標に向けて走り出せる。はずだった。
けれどそうはいかなかった。
その容姿の所為で必要以上に人の好意を受け、同じくらい嫉妬や嫌悪感を受ける光は、自分に一方的な好意を抱いている先輩の彼女から呼び出される。ありがちなことに、色目を使ったなどといういいがかりを受けたのだ。それを他の子から聞いた恵は当然心配し、光を呼び出してそれとなく話を聞く。大勢の前で聞きだしたり、二人きりになった瞬間にいきなり本題を持ちかけないところが恵の優しさだ。相談してくれなかったことへの少しの寂しさを含んだ心配を、タイミングをうかがってそれとなくぶつける。この恵の配慮は、傍から見ていると不自然なことこの上ないのだけれど、そのぎこちなさがかえって可愛らしく、等身大の不器用な子供という感じがして微笑ましい。
そのぎこちなさに触発されたのか、光は恵に前触れもなくキスをした。そして冗談だ、と言って終わらせた。

しかしそれを言葉通りに受け取る恵ではなかった。その時の状況や光の性格からして、それが真剣なものだと分かってしまったのだ。この経緯がとても好き。冗談だと光が言った以上、それを冗談でとどめておくこともできる。それは光が自分を守るためについた嘘であると同時に、恵を追い詰めないための配慮でもあったのだと思う。けれど恵は光の嘘を嘘のままで終わらせることでなく、葛藤しながらも真実と向き合う方を選ぶ。
光の気持ちがどういうものなのか、どこまで本気なのか。そしてその場合自分はどう思うのか。翌日以降の光の様子や言葉を含めて恵が出した答えは、自分も光同様に相手のことを好きなのだ、というものだった。友情ではなく、彼女の率直な言葉を使えば「エロいことしたい」好意。
けれどその反面、怖いとも考える。いつか男の子と付き合うのだと考えていた恵にとって、女の子と付き合うことも、誰かと付き合うことも、なにもかもが初めてで、想像の域を超えている。そして男の子相手のように簡単に人に打ち明けられるわけでもない。そういう戸惑いを含めてさらっと話せるところが恵の素直さ・強さだし、女の子同士だからこそできたことなのかもしれない。

結構スムーズに付き合い始めたふたりだけれど、そうなってからもちいさな問題は山づみだ。両思いになったことに浮かれて周囲の目を気にする余裕をなくした光、以前からの友人に知られることに焦る恵。かと思えば光は自分の家に恵を招こうとしない頑なさも持っているし、諍いの火種はそこかしこに埋まっている感じがする。けれどともあれ幸福な始まり。百合漫画特有のふわふわした感じは最低限残しつつも、地に足のついたシリアスなストーリーと随処に挟まれるコミカルな要素で進んでいく物語は魅力的。
周囲の人間の恋も含めて、この先どうなるやら。
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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 15:25 | - | - |

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