<< 週刊ヤングジャンプ2011年36・37合併特大号 | main | 冨樫義博「HUNTER×HUNTER」29 >>

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

web拍手
posted by: スポンサードリンク | - | | - | - |

薄桜鬼黎明録ポータブル 斎藤一ルート

出ました薄桜鬼黎明録ポータブル!黎明録発売前から特集記事を見てどきどきしてたので、移植嬉しい!
乙女ゲーム派生で、恋愛要素の(ほぼ)ないエピソード、しかも主人公が新キャラの男ってことで非難轟々だったけれど、個人的にはすごく楽しみでした。

貧しい武家に生まれた井吹龍之介にとって、武士という立場やそれにしがみつく人間は、見苦しく嫌悪すべきものだった。武家の妻であることを誇示し、現実を見ないまま生きて死んだ母の所為だ。
両親亡きあと京へ出てくる途中、井吹は金も食料も尽きて行き倒れる。特に目的のない行動ではあったが、報われることのない人生が終わろうとしていた。
そんなかれを助けたのが、浪士組の一員である芹沢鴨だ。とはいえ決してまっとうな、人道的な救助ではない。地面に倒れ込んでいるかれを挑発し、期待させたあと落胆させ、更には試して、ようやく助けた。

八木邸の一室で目を覚ました井吹は、挨拶もそこそこに出て行こうとする。それを、次々現れる隊士たちが制止して、なんとかかれが芹沢に礼を言うように仕向ける。
助けてもらったくせに、つっけんどんというか無礼な態度の井吹。もともとの生意気な性格と、武士嫌いが合わさっているのだろう。平助が焦り、原田が叱り、永倉が止める。沖田は勿論嫌味を言って、山南井上はそれなりの客人への対応をして、近藤は得体のしれない井吹にも親切だ。まだ浪士組の一員でしかない近藤は、試衛館にいたときと同じスタンスのようだ。決して自分たちの生活が豊かなわけでも、今後のめどが立っているわけでもないのに、いきなり芹沢が拾ってきた井吹を歓迎し、食事を与える。これがかれの人望の理由であり、ざる経営しかできない原因でもある。
ともあれ夕飯を一緒にとっていると、外で揉めている声が聞こえる。芹沢・新見・平間の三人と、土方が対立している。島原や祇園で暴れてばかりの芹沢に、浪士組の評判を落とすなと土方が食ってかかっている。かっとなった芹沢が鉄扇を振り下ろすも、土方は引かない。攻撃を避けることも受け止めることもせず、眼を閉じることすらせず、鉄扇など存在しないかのように芹沢を睨みつけたままだ。この土方のスチルが凄く好き。噛みつくような目と一歩も引かないところが超土方さん。

結局翌朝井吹は芹沢に挨拶する。礼を言ってとっとと浪士組から出て行くつもりだったが、命の恩人に恩返しをしろという芹沢に押し負けて、かれは芹沢曰く「犬」の小間使いとなる。
この頃の隊士たちはまだ新選組ではなく、「浪士組」という名前だけを持つ、どこにも所属しない烏合の衆だ。偽りの主張で人を集めた清河八郎に反発した芹沢や近藤たちには後ろ盾がない。ひとまずは芹沢の兄が会津藩にいる伝手から、会津藩の重役に話をするという狙いがある程度だ。多摩から出てきた百姓上がりや大した実績のない武家の子息たちから成る近藤一派とは違い、芹沢には計画や伝手がある。そのことが元々態度の大きなかれを増長させ、押しに弱い近藤をして「芹沢『殿』」と呼ばせることになる。

・『憎悪と殺意』沖田
井吹視点で物語が進むため、かれがいない場所・かれが知り得ない状況でのエピソードは「十六夜挿話」として補足される。
沖田はこの時点ですでに芹沢を憎んでいる。嫌っているのではなく、今すぐ自分の手で命を奪いたいほどに強く、憎んでいる。それはかれが「この世で一番尊敬している人」を侮辱したから、らしい。まだ人を殺めたことがない沖田は、いずれくるその日がいつなのか、相手が誰なのかを楽しみに待っている。

芹沢の「犬」は一匹ではない。犬と呼ばれるわけではないが、かれを旦那さまと呼んで仕える平間もまた、芹沢の犬のようなものだ。気が弱くてお人よしの平間は一人でいくつもの用事を背負わされている。さすがにそれを他人事だと放置できない井吹は、芹沢から頼まれた仕事だけでなく、平間の仕事を手伝ってやることもある。
その一貫として芹沢の酒を買うために外へ出た井吹は、八木邸の前で一人の黒ずくめの男を見る。他の隊士たちとも自分とも異なる方に刀を差した男、斎藤登場!かれが何者か分からない井吹は、土方に会いたがるかれを案内することになる。そして斎藤の顔を見た土方は喜び、かれを歓迎する。更には試衛館の連中もやってきては、斎藤との再会に喜びの声を上げる。
斎藤は土方・近藤を訪ねて八木邸を訪れたけれど、試衛館時代に同じ釜の飯を食った他の連中が一緒にいることを知らなかったことにはちょっと驚いた。まあでもそんなものなのか。土方の「今までどうしてたんだ」という問いを逸らして答えない斎藤は、刀を交えた沖田曰く以前と比べて「色々と変わった」らしいが、井吹には分からない。
斎藤と沖田が壬生寺で戦うシーンも好き。斎藤と沖田って凄く気が合わないと思うんだけれど、そのちぐはぐ感が面白い。

・『恩返し』斎藤
浪士組に合流した日の夜、斎藤は土方の部屋を訪ねる。そこで土方より、浪士組の現状を聞かされる。中心人物が近藤率いる自分たちではなく芹沢であること、当初の予定が狂って資金がないこと、など。先にマイナスの面を打ち明けて、それでも浪士組に参加するという意思を変えない斎藤に、その理由を問う。一度は自分たちの前からいなくなった斎藤が、なぜ再び現れたのか。斎藤を疑っているとか不審に感じているとかではないだろうが、理由が分からないというのも素直な気持ちなのだろう。
それに対して斎藤は、江戸で世話になった恩返しだと言う。単純かつ言葉少なな理由だが、それでも土方は納得した。
近藤たちへの恩を返すために自主的に浪士組に参加した斎藤と、芹沢に恩返しを強いられて浪士組に留まらされている井吹という構図が面白い。

近藤たちの提案で、浪士組は将軍家茂の入洛の警護をすることになる。とは言え何の権利もないかれらなので、勝手に集合して、何も起きないように見張っているだけだ。しかし目の前で将軍を見たというのは、近藤にとっては感動すべき事実だった。
それを揶揄し、かれのモチベーションを下げるのが芹沢だ。何かと噛みついてくる芹沢について、平助は本庄宿の一件を井吹にそっと教えてくれる。芹沢たちの宿を手違いで用意できなかった近藤に腹を立てた芹沢が、火を付けたという事件だ。平助の言葉に合わせて出されるスチル、今にも芹沢を殺しそうな沖田を制止する土方の目も、血走っている。せつない。
過去も今も、近藤を嘲笑してばかりの芹沢。耐えかねた土方は近藤に、芹沢にへりくだるのを止めるよう提案する。土方も山南も他の誰も呼んでいないのに、近藤だけが芹沢を「殿」で呼ぶ。他意はないのかもしれないが、そういう態度が芹沢を増長させるのだ。

後ろ盾のない隊士たちは、京都の見回りを続けて不逞浪士をとっ捕まえることで名前を上げようとしている。ある日沖田は、不逞浪士と斬り合いになって返り血を浴びた斎藤と永倉を見る。子供が泣きだすほどの姿を見た沖田の心が揺れる。
返り血いいね!しかし服はまだしも肌についた血はその場で拭おうよ!

・『実績を積むために』山南
どこにも所属していない浪士組の問題点は、給金が出ないことやそれに準じて新しい人員を募集できないことなどだけではない。権威をもたないかれらは、主人に断られてしまうと、店の中に入って行った不審者を追いかけること・建物を改めることができないのだ。強制力がない。
不十分な見回りしかできないけれど、結果を出すためには見回りを続けるしかない。

芹沢の伝手の甲斐あって、浪士組は会津藩のお預かりとなる。ひとまずの成果を喜んで、芹沢たちとともに井吹は島原へ飲みに行くことになる。一見さんお断りの店に、暴力で無理やり入店した芹沢は、まだ若い舞妓・小鈴の生意気な口調に激昂し、彼女に傷を負わせる。
本編の君菊さんのときも散々感じたし、別に島原だけでなくて普段の道を行く人たちに関してもそうなんだけれど、薄桜鬼の京ことばのイントネーションは聞いてて苦痛だ…方言・訛りはきっちりしたルールがあるわけじゃないし、同じところに暮らす人だって異なる抑揚で話すこともあるけれど、それでも突っ込みどころが満載過ぎて疲れる。ゆっくり喋ればいいってもんじゃないわよう!これならいっそみんな標準語で喋ってくれたらいいのに、というレベル。

会津お預かりになったのを機に、浪士組は三人の局長と二人の副長、そして局中法度を定める。破れば切腹という厳しい掟に、井吹は大きく動揺し、反発する。名誉を重んじて、何かとあらば腹を切ったり人を切ったりする武士は、かれが一番嫌うところだ。
その法度自体にも納得ができないし、何より浪士組と共に行動するけれど、決して浪士組の一員ではない自分の立場を確認しておきたかった。つまりこの法度が自分には無関係のものであること、自分は守る必要がないし、この法度に反することをしても切腹する必要がないことを、きちんと確認しておきたかったのだ。
井吹は浪士組の一員ではない、と山南は明言してくれた。芹沢が個人的に使っている小間使いだ。そのことは、かれが浪士組幹部たちと同じような行動をとることが増えた今でも変わっていない。しかし、芹沢が何かしらの罪を犯したとき、芹沢の「犬」であるかれが安全かどうかという保証はできない、とも山南は言う。

・『失望感』斎藤
発表された法度に動揺したのは、井吹やこれまで法度に反するような行動を多数とってきた新見だけではなかった。近藤の人柄に好意を抱いてここまでついてきた平助は、戸惑いを覚えている。平助には、斎藤のように、破らなければいいのだ、という割り切りはできない。対芹沢策のひとつなのだと、受け流すこともできない。
「思ってたのと色々違うよなあ」とかれは落胆する。

会津藩お預かりの身分となったものの、給金が貰える目処は立っていない現状に、当然不満の声が上がる。自分達の立場の不安定さを憂える面々の中、沖田はいつものように飄々とした顔で剣の稽古をしようとする。難しい話は分からないと笑うかれは、あらゆる行動・判断の指針を近藤として、それ以外のことを考えない。本編で言っていた通り、近藤の剣となることが全てで、それ以上も以下もないのだ。自分の価値をそこに見出す沖田は、同じ試衛館あがりの斎藤・永倉が不逞浪士を斬ったことを「ずるい」と言う。自分も早く不逞浪士を斬って結果をあげたい、そして会津に浪士組を認めさせたいとかれは笑う。
その理屈自体は、これまで土方や山南が散々言ってきたことだ。しかし、言葉をぼかさない沖田の主張は必要以上に不穏に聞こえる。弟分の沖田の言葉に皆が戸惑っていると、土方が「江戸に帰れ」と言う。百姓あがりのかれとは違う武家の長男で、腕もたつ沖田ならば浪士組で不安定な生活をしなくても済む。武士として生きる道が、ここ以外にもあるのだ。そして、まだ若い沖田は暴力的で口の悪い芹沢の傍にいることで感化されているから、と。
元々相容れず、口論になりやすい二人の間に入って仲介しようとしていた近藤も、土方が沖田の姉の名前を出すと黙るしかなくなる。自分のために喜んで人を斬る沖田を思えば、近藤も居た堪れなくなる。
勿論沖田はそれに納得しない。元から土方を目の仇にしているかれは反発し、その場を去る。

その頃、芹沢派でも近藤派でもない殿内が、芹沢に近づいていた。近藤一派を不満に思っているかれは芹沢を持ち上げ、芹沢にとって邪魔な存在になりうる近藤の始末を、時が来れば自分がやりたいと主張する。殿内の主張に言葉少なに応じていた芹沢は、その事実を誇張して沖田に伝える。

・『沖田からの相談』殿内
芹沢にはゴマをすっていた殿内だけれど、当然かれは心底から芹沢を支持しているわけではない。ひとまず近藤一派を片付けて、そのあと芹沢たちを始末しようと目論んでいるのだ。
そんなかれは、沖田から土方・近藤のことについて相談を受ける。江戸に帰れと言われたことで、反近藤・土方になったというかれは、いずれ殿内に幹部に引き上げてもらうことを条件に、二人を斬ることも辞さないと言う。
安っぽい言葉と芝居で芹沢を騙した(つもりでいる)殿内は、沖田の稚拙な芝居にまんまと引っかかる。自分を過信するものほど、自分を騙そうとする相手に気づけない。

沖田が八木邸に戻ってこないことを心配した永倉たちは、かれを探しに行くという。夜中に出歩いたところで役に立てるはずもない井吹は、土方と、かれの部屋にいる斎藤に、芹沢との一連のやり取りと現状を報告する。慌てて沖田を探しに行こうとする土方は、制止する井吹の言葉など聞く耳を持たないが、斎今土方が言ったところで沖田を煽るだけで逆効果だという斎藤の言葉に立ち止まる。土方のイエスマンのように見られることが多い斎藤だけれど、実際は結構辛辣で遠慮がない。だからこそ土方が信用しているというのもあるだろう。
そこへ、返り血にまみれた沖田が帰ってくる。これは私闘ではなく、近藤局長の暗殺を計画していた男への処罰なのだとなんでもないことのように笑う沖田に、土方も返す言葉を持たない。

・『覚悟』近藤
そして土方と近藤は、沖田をたきつけた芹沢に文句を言いに行く。しかし芹沢は動じない。状況だけ見れば、芹沢は殿内の暗殺から近藤を守ってやったとも言える。しかし芹沢の目的は、殿内と近藤を天秤にかけて近藤を取った、というようなものではない。
沖田の近藤への心酔も、近藤・土方がどれほど沖田に目をかけ、弟のように可愛がっていたのかも見抜いていた芹沢は、だからこそ沖田が一人のときに殿内の話をしたのだと思う。近藤のために手を汚すことを望んでいる沖田と、浪士組の一員として連れてきたくせに沖田にだけはきれいなままでいてほしいと望む近藤・土方。その屈折を理解していて、芹沢は沖田の背中を押した。
それは芹沢の悪趣味な楽しみであり、いつまでも煮え切らない兄弟ごっこを断ち切る手助けでもあった。「江戸に帰るべきはお前ら」と言う芹沢の言葉が決して間違っていないことに、近藤も土方も本当は気づいている。沖田を可愛がりながらも、かれをひとりの独立した大人としてみている山南の「彼はもう子どもではない」という言葉が正しいことも、知っている。
覚悟が足りないのはどちらだ。

芹沢・近藤・土方たちが大坂へ資金調達に行く間、伊吹は山南たちと留守番をつとめる。こんなときにだって一切浪士組の脱走を考えない井吹。芹沢への恩義のためというよりは、特に逃げ出したいという強い意志もないのだろう。
山南に頼まれて買い物に出た井吹は、かつて芹沢と揉め事を起こした小鈴と再会する。服装が異なる所為もあって目の前の少女が誰だか分からない井吹と、すぐに浪士組の一員だと気づいて敵意をむき出しにする小鈴。結局諍いを起こしたままの喧嘩別れになってしまう。

同じく留守番の斎藤から、井吹は稽古の見学に誘われる。居合を学んだ理由として、他の武術よりも相手をしとめる確率が高いからだと斎藤は言う。人を殺すこと、武士というものへの抵抗を隠さない井吹に対して、自分や近藤・土方は「そうせねば生きられぬ」のだとかれは言う。
沖田(やかれと同じ境遇の永倉)には他の道がある、とかつて土方は言っていた。それは裏を返せば、自分には他の道がないということでもある。勿論百姓としての道は存在するけれど、武士としての道は他にない。「そうせねば生きられぬ」ことの不自由さとよ。

会津公と接見できることが決まった浪士組。挨拶だけでは何だと、上覧試合の計画を立てたのは土方だ。前もって対戦相手を決めておいたかれが発表した組み合わせは、土方対藤堂、永倉対斎藤、沖田対山南。

・『斎藤と稽古』斎藤
指名された斎藤は壬生寺で熱心に稽古をする。緊張よりも昂揚が勝っている斎藤の様子を見ていた井吹に、「剣術馬鹿」だと見抜かれてしまう。

そしてご接見の日。土方の読みは当たり、会津公の方から試合を見たいという言葉がかかる。三試合ともに十分に浪士組の力を見せ付けることが出来、浪士組はまずまずの評価を得る。

芹沢の提案で、浪士組にだんだら羽織の隊服が準備される。喜ぶもの、複雑な気持ちを抱くもの、あまり気にしていないものなど、色々。 会津公接見といい隊服といい、追い風が吹いてきたように思われる浪士組の前に、とある人物が現れる。会津藩経由で、幕府から派遣されてきたのは、蘭方医の雪村綱道だ。幹部隊士ですら排除され、局長・副長のみが、綱道の話を聞くことになる。
事情も分からず苛立ちながら話が終わるのを待っている幹部達と井吹。そこへ、悲鳴が響く。外へ出た井吹が見たものは、白髪に赤い瞳という容貌で、理性を失った一人の男だった。襲い掛かる男に殺されそうになったところを、間一髪で斎藤に助けられる。男の首を落とす斎藤の姿に、かれが稽古のときに話していた居合いのエピソードを思い出す。

話を聞くより早くこの眼で見てしまった幹部たちに、綱道たちから説明がなされる。変若水の話、羅刹のメリットとデメリットの話。先ほど羅刹になったのは、法度を破って切腹することが決まっていた浪士組の隊士であったこと。
給金がなくろくに人員を集められない一方で、これからどんどん人手が不足する。その状況を打破するものが、上手く改良されれば何十人分の力を発揮できる変若水なのだ。しかしそのためにはいつ結果が出るとも知れぬ研究と、なにより実験台となる人間が必要となる。その実験がうまくいかなければ実験台になった人間は理性を失った化物となり、始末されるほかなくなる。さらには京の人々を傷つけるかもしれない。あまりにリスクが大きい計画だが、実際このときのかれらに断る手立てはなかったのだろう。ようやく手に入れた会津藩お預かりという身分だけがかれらの支えであり、会津経由の命令を拒めば、それすら失うことになる。
自棄に改良に乗り気の新見、特に反対もしない芹沢。近藤派では山南だけが研究に加わると言った。暴走しかねない新見のストッパーを買って出たのだろうし、芹沢派だけが幕府の命に応じるという状況も良くない。それ以外の気持ちがあったのかどうかは、井吹には分からない。
ここで綱道を登場させたのは上手い。ご接見で浪士組の力量を知ったからこそ会津藩は綱道をよこしたのだろう。かれらにしてみれば会津藩に評価されたと喜ばせておいて、実はていのいい実験台にされるという、あまりにもひどい侮辱だ。

新入りに稽古をつける永倉と斎藤は初っ端からひどく厳しいため、かれらがいなくなると新入りたちはこぞって不満を漏らす。自分のことは棚に上げてそれに憤っていた井吹も、浪士組に入る以外に生活の方法がないくらいに貧しい生活をしているかれらの事情を知れば、それ以上の追求もできない。
しかしそんな事情はとうに理解していたであろう斎藤は、腕を磨かなければ生きてゆけないという。生きるために浪士組に入ったとはいえ、弱ければ見回りの最中に殺されてしまうかもしれないのだ。

・『土方の劣等感』井上
体調や状況を心配する故郷の姉からの手紙に、土方は返事をかけずにいる。会津藩お預かりという状況は故郷の姉からすれば喜ばしい事態だけれど、それは芹沢の手柄であって自分の、自分達の手柄ではない。自分(たち)の出した結果ではないことより、芹沢という、人間的には決して尊敬できないろくでもない男が出した結果であること、なんだかんだ言っても芹沢は揺るがない意志を持って行動していることが土方をためらわせ、悔しがらせる。そういう芹沢の姿は「武士」そのもので、それになれないことが、土方のコンプレックスなのだ。

新入りの隊士が紹介される。永倉と古馴染みの島田、大坂出身の山崎などもここから参加する。

・『新入隊士歓迎会にて』山崎
宴席が苦手な山崎と、酒よりも甘いものが好きな島田が輪から離れて会話をする。自己紹介のあとのすこしの会話のやり取りで、一瞬にして土方に心酔した山崎が、土方のすばらしさを熱弁するところが可笑しくて好き。立ち聞きしていた沖田が「尊敬する相手を間違えない方が良い」とイヤミを言うところも、それが全く山崎に通じてないところも好き。

不逞浪士の本拠地が京から大坂へ変化しているという情報を握っている芹沢の言葉により、一行は大坂へ。不逞浪士を捕獲したのち、舟で盛大な夕涼みをしていると、斎藤が体調不良を訴える。先に戻るという斎藤の言葉に何か思うところがあったのか、芹沢は斎藤一人を帰すことを認めない。
更に宿に帰ったあとも体調が戻らない斎藤は、大坂が地元の山崎と共に病院へ向かうと言う。同じく許さない芹沢は、かれの犬であるところの井吹を連れていかせる。
三人になった瞬間に仮病であること・土方の命令で芹沢を介さない人脈を作ろうとしていることををバラす斎藤に焦る山崎。最近入ったばかりのかれにしてみれば、井吹は芹沢の息がかかった、芹沢専用の小姓である井吹を信じられないのは当然だ。
井吹は決して芹沢を正しいと思っているわけではないし、近藤派の連中にも好意を持っている。けれど山崎があまりに芹沢批判を繰り返せば、苛立ちもする。しかし山崎にしてみれば、そのどっちつかずの態度がまた腹立たしい。この頃の山崎はまだ尖ってて、いきがってる若者って感じで面白いな。
喧嘩になる二人を諌めるのは斎藤だ。斎藤に対する山崎の態度が、先輩犬の背中を見て一生懸命いい犬になろうとする後輩犬でオモシロ微笑ましい。斎藤は山崎を諌めたあと、井吹に「身の処し方を考えておけ」と言う。
力士との乱闘もばっちり抑える。

大坂の夜の一件以降、井吹は自分の今後を、まさに「身の処し方」を考えるようになる。そもそも自分が今後の生活の目途をたてたら、解放してもらえるのだろうか?かと言って浪士組に留まり続ければ、色々な意味で生命の危険を感じ続けることになる。これまでのように流されていれば無事に一日を過ごせる時期は終わったのだ。
けれどこの先どうするか、何も見えてこない。

芹沢への不信感も募る。「武士」をひとくくりにして嫌悪し続けるには、井吹は色々な武士に会いすぎた。必死に生きているもの、理想や尊敬できる相手のために最善を尽くすものも多い。その中の一人である芹沢を、暴力的で高圧的な男、で片付けておくことが出来なくなっている。
変若水の実験台にされた不逞浪士が、屯所から脱走した。放っておけば平隊士にすら隠している羅刹の存在が一般的に知られることになるし、何の罪もない街の人々に危険が及ぶ。けれどそれを聞いた芹沢は、寝転がって酒を飲み始める。羅刹を不眠不休で探し続ける隊士がいる一方で、芹沢は関心すら抱かずに酒を飲む。

平助からも、出て行くなら早い方が良いと言われるが、相変わらず目途は立たない。そんな中、斎藤が剣術の稽古を提案する。刀を腰にさしているものの殆ど握ったことすらない井吹に、技術があって損はないと斎藤は熱弁をふるう。

・『足りぬものばかり』斎藤
土方の部屋へ報告に行く斎藤。どうでもいいけど斎藤ルートなのに斎藤の部屋っていちども描かれなかった。大体壬生寺か土方の部屋にいるねこの人。
監察方の設置を決めた土方。浪士組が唯一の居場所なのだという斎藤。

稽古での斎藤は物凄く理屈っぽくて厳しくて口うるさい。かれが言うことは全て正しいのだけれど、初めて稽古をする初心者の井吹にしてみれば出来ないことだらけで、元々短気なかれはすぐに腹を立てる。教えることがうまくない斎藤と、教わることがうまくない井吹。
武士になんかなりたくないと井吹が言い捨てれば、何になりたいのか考えてみろと斎藤は言い返す。斎藤のすごいところは、井吹がどんな捨て鉢になろうとひどいことを言い捨てようと、決して逆ギレしないところだ。上から暴力や権威で押さえつけて強制することもない。ただ真っ直ぐに言葉を返す。そしてどれほど拒まれても嫌な顔をされても、しつこく稽古に誘い続ける。
斎藤が繰り返す言葉の中で、井吹はひとつの記憶を浮かべる。絵を描いていた幼い頃。母親に叱られてやめてしまった、好きだったこと。

稽古から逃げるために島原に同行した井吹は、芹沢から「何も出来ないのに世にあるものを辱めて悦に入っている」と指摘される。酔ったかれの、いつもの憎まれ口だけれど、それは紛れもない事実であった。井吹の痛いところを突いただけでなく、芹沢という男が決して馬鹿ではないことを示してくる。
そして芹沢の言葉に煽られるようにして井吹は絵を描き始める。衝動的に何枚も絵を描いているところを斎藤に見られる。
井吹は武士になるのかなあ、でもあまりにも素人だし、そもそも浪士組に入ってたら本編に出てこないイコール死だよなあ、とか思っていたので、絵描きという流れは面白いと思った。

山南・綱道と共同で研究をしている新見だが、どうにも暴走しがちなことを山南は懸念している。鋭いかれの予想は当たる。井吹は新見の部屋で、拘束された浪士を見つけてしまう。芹沢によって無実の罪を着せられて連行されたと主張する男の言葉の真偽を図りかねた井吹は、斎藤に相談する。
話を聞いた斎藤と共に新見の部屋へ向かうと、浪士は既に逃げたあとだった。なんとか発見し、斎藤との稽古を思い出して応戦する井吹が斬りつけると、浪士は羅刹になった。
何とか羅刹を始末したのち、今回の件は芹沢にも報告していない新見の独断であったと判明する。

引き続き稽古に誘う斎藤に、井吹はどうしても疑問を乱暴な言葉でぶつけてしまう。たとえ規律違反を犯したものであっても、仲間を実験台にするのが武士なのか、と。尊厳を保つ死としての切腹に比べて(おそらくこの思想も井吹は嫌いだろうが)、羅刹の実験台はあまりに惨い。
斎藤は直接の回答をしない。ただ、ここ以外に自分を武士として扱ってくれる場所はないのだ、と言う。かつて土方に「唯一の居場所」と言ったこととリンクする。

解せない井吹は、永倉に斎藤のことを聞く。芹沢と同じ流派なこともあって行動を共にする機会が多く、ストレートな物言いの永倉はこういうときにベストの相手だ。
そして永倉の回想で、斎藤が試衛館に現れた当時のエピソードが描かれる。
貧乏な試衛館に他流試合の申し込みに訪れた斎藤。好戦的な沖田が勝手に試合を受けて手合わせをすることになる。結果が出たあとも打ち合うことをやめない二人は、真剣で、楽しそうだ。
腕に自信のあった斎藤にとって沖田ほどの腕の相手と戦えたことも驚きだったが、何より衝撃だったのは、かれも試合を見ていた近藤も土方も、斎藤の利き手について言及しなかったことだ。斎藤が話題にして初めて近藤は「器用だ」と笑い、土方は「勝ちは勝ちだ」と当たり前のように述べた。
それは永倉が予想するに、利き手のことで正当な評価を得られずにいた斎藤にとって初めての経験だったのだろう。自分のことを話さない、感情が表に出ない斉藤だけれど、皆といる時間は有意義だったはずだ。
しかしかれはしばらく顔を出していた試衛館に突如来なくなり、いきなり浪士組に現れた。そのあとは、井吹の知るとおりだ。
回想シーン良かった!他の隊士の回想もあるのかなー楽しみ。贅沢を言えば服とか髪型が違うと良かったけど、貧乏だろうから仕方がないことにする。

相撲の興行をすることになった浪士組。斎藤の熱心な推薦により、井吹は引き札を描くことになる。井吹の絵を見た斎藤は、その絵に感じるものがあったようだ。
ためらいつつも引き受けた井吹が引き札に取り組む様子を見た芹沢は、どこか嬉しそうだ。邪魔をすることもない。自分ではないものに興味を持ってのめりこむ姿が嬉しいなんて、芹沢にとっての井吹が決して犬ではないことを証明している。
井吹は無事に引き札を完成させ、興行自体も成功に終わる。そのことについて斎藤は、井吹は絵に「天分」があるのだと述べる。自分が刀から離れられないように、井吹も絵と離れられない。それは幸福なことであると同時に、大変なことでもある。

興行のこともあって少しずつ浪士組が京でも見直されてきている最中、芹沢が大和屋に大砲を打ち込んだ。かれなりの理屈があったとは言え、暴挙以外の何ものでもないその行動が、浪士組の評判を地に落とす。

・『らしくない』斎藤
芹沢の行動に斎藤は怒っている。近藤や土方たちの努力が散ったことにも勿論憤っているだろうが、なにより、寝食を忘れて引き札を描いていた井吹を思うと腹が立つ。かれの努力や作品までもが冒涜された気がするのだろう。

八・一八の政変により、浪士組は正式な京都守護を会津藩より命じられ、「新選組」という名前が与えられる。本当の意味でかれらは、主君より仕事を命じられる武士となった。そのことに感動した斎藤は、「会津公のためなら命を落とすことも厭わぬ」と言う。本編の斎藤ルートを想起させる言葉だ。過去が未来を補完している。

最近の井吹の絵がつまらないと感じる芹沢は、自分を納得させるだけの絵を描けば、井吹を自由にしてやると言う。恩返しを強いたかれが、自分から解放を口にした。

変若水の資料を持って、新見が失踪した。綱道とも連絡が取れないという。法度の一つ、「隊を脱する」にも触れる行動をとった新見はその後発見され、切腹させられた。
このあたりは井吹が聞いた事実だけを述べるに留まっている。他ルートで見られるのかな。

ようやく斎藤が過去を話す。真剣勝負を挑まれたかれは、それに応じた結果殺人の罪を負い、脱藩することとなった。主君を失ったかれは、このとき一度、武士ではなくなった。
そしてかれは浪士組の話を聞き、ここを訪れた。そして今新たな主君を正式に得て、ふたたび武士となったのだ。そうなった今だからこそ、斎藤はようやくこの過去を口にしているのかもしれない。かれの行動規範は一つだった。「どうすれば後悔せずにあの世にいけるのか」

近藤・土方の誘いで芹沢は島原へゆく。屯所から文が届いたので一人先に帰るという芹沢を、土方・沖田が送ると言う。何も知らない永倉は自分も送ると言うが、それを斎藤が引き止める。
まるで茶番だ、と思う。打ち合わせをしていたのだろうがグダグダで、かれらの中に計画があることは火を見るより明らかだ。そのことに芹沢はどれくらい気づいていたのだろうか。聡明なかれのことだ、そもそも新見が腹を詰めさせられたときに、もう駄目だと思わなかったのだろうか。
芹沢の暗殺に気づいた永倉が後を追うのを、斎藤が制止する。従うべき会津のためでも、土方のためでもなく、永倉と今後も共に生きるため・新選組として戦うために斎藤は刀を抜いて、永倉を止める。
刀はどうしたって武器で、誰かを傷つけるための道具であるけれど、少なくとも斎藤にとってこのとき、かれの腰にさした刀は人を救うためのものだった。古くからの友を守り、生かすための刀だった。

芹沢は暗殺された。表向きにどんな発表があろうとも、近藤局長をはじめとした一派が計画的にかれを死に追いやったことを、井吹は知っている。次に消されるのは芹沢の小間使いであり、新選組の隊士でもない自分であることも、知っている。
知っていて、逃げるでも命乞いをするでもなく、かれは絵を描いた。それは斎藤が言う「天分」であり、かれらが刀に向ける情熱と同じ狂気に満ちている。

死刑宣告をするのは、当然土方と山南だ。自分の信念のためには泥を被ることも辞さない芹沢の生き様を、嫌悪しつつも本物の武士だと感じていた土方は、今、新選組のために井吹を殺そうとしている。かれの行動の是非は別として、かれは武士になったのだ。
覚悟していた井吹を制止したのは斎藤だ。井吹が描いた絵を持ってきた斎藤は、生前の芹沢との約束を持ち出して井吹を庇う。
斎藤のお陰で解放されることになった井吹は、「俺が選んだ道」として、絵師を目指して生きる。斎藤の別れの言葉は短く、簡潔だ。

その後大坂、江戸と移り住みながら絵の勉強を続けた井吹は、苛烈さを増す戦の中でしか見られないものを描くようになる。戦を追いかけて会津へ向かうかれは、途中で斎藤の訃報を聞く。それでも進み続けた井吹は、会津で、羅刹になった斎藤が単身戦う姿を見る。銃を持った数名の男相手に戦いぬいたかれの元に駆けつけるのは、少年の姿をした少女・千鶴だ。わー千鶴にも声がついてる!桑島さんの千鶴は清涼感があってほんとカワイイ。
千鶴と言葉を交わしたあと彼女を先に帰らせた斎藤は、自分達を伺っている存在に声をかける。敵意や殺意を持たない存在があることには早々に気づいていた斎藤も、まさかそれが井吹だとは思っていなかった。再会を喜ぶ二人だが、それほど時間があるわけではない。斎藤が土方たちと離れて会津に留まる選択をしたことを、井吹が今得の勉強をしていることを簡潔に報告しあう。いつかきちんと絵をかけるようになったとき、最初に書くのは斎藤だと井吹は告げる。戦を追い続けた自分が本当に書きたかったものは何だったのか、かれはようやく気づいたのだ。死ではなく生を。奪うものではなく生かすものを。
二度目の別れが一度目と違うのは、「またな」という言葉を迷わずかけられることだ。

・『【ここ】にある平穏』斎藤の妻
斎藤終章。さっき散々出ておいて、今になって名前の入力をさせてくるこのシステムは凄いな…見事だわ。
最後は斎藤の帰りを待つ千鶴目線で語られる。斎藤がいつもより帰ってくるのが遅かった理由は、かつて浪士組にいた男から連絡を貰ったからだという。錦絵を学んだかれの最初の作品を受け取った斎藤は、それを千鶴に見せる。羅刹の姿の斎藤だ。
絵師という、絵を発表することで生計を立てる職を選んだ井吹の最初の作品は、誰にも見せることのできない絵になった。歴史からは消された、表に出してはならない存在・羅刹。けれど確かにかれらは居た。誰にも知られることがなくても確かに存在した。

***
自分で書いておいてなんだけどちょっと狂気だなこの長さ。他ルートはたぶんもうちょっと短くなる…。
相変わらず史実に沿って進みながら、ねじ込まれたファンタジーが痛快。斎藤ルートだけ見ると物足りないところも多々あって、それが他ルートで補完されて素晴らしい「薄桜鬼黎明録」になるのか、それともどれをやっても半端なままになるのかは今のところ不明。ともあれ楽しいです。血沸き肉踊るはくおうき。
千鶴には積極性のかけらもなくて、何かあれば帰れ帰れといっていた斎藤だけれど、井吹相手だとものすごく強引で面倒見が良すぎて空回っている。男と女への接し方の違いなのかな。性別だけでなく、自分の意見がはっきりあって、人を気遣うことのできる千鶴と、自分が何がしたいのかが分からなくて、配慮のたりない井吹という正反対っぷりなので、そのあたりでも接し方の差が楽しめる。

さあ次はどのルートにいくかな!
ネタバレするといやなので特典CD関連は終わってから聞く!ドラマCDも黎明録になってから買ってないのだ。(そこまでしてPS3を買わない吝嗇)
web拍手
posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 22:53 | - | - |

スポンサーサイト

web拍手
posted by: スポンサードリンク | - | 22:53 | - | - |