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モモ花「春の雪」

モモ花「春の雪」
食欲がなく夜泣きする亡き姉の忘れ形見・優人を連れて病院へ行った雪彦は、担当医の日吉に顔を合わせた瞬間に告白される。一目惚れだと言う日吉を雪彦は拒むが、日吉は諦めず、雪彦の職場である美容院を訪れ続ける。

出会い頭の告白を当然雪彦は拒否した。どころか、優人がつらそうなのにそんな話を持ち出す意思に怒りと不信感を覚え、そのまま診察を受けずに帰ろうとした。結局日吉が詫びて診察してもらい、優人には何事も起こらなかったのだけれど、雪彦の身にはそのあと面倒な事態が降りかかることになる。雪彦の職場を探し当てた日吉は客として来店を繰り返す。雪彦が店内に入るなと言えば店の外で、来るなと言えばそっとねぎらいの言葉を置いて、来る日も来る日もアピールし続ける。
根負けした雪彦が教えた連絡先に日吉が定期的に連絡を入れる用になった頃から、事態は変わり始める。頼ってほしい、ムリをしていないか、ワガママを言ってほしい、というような日吉の言葉が、ひたすら気を張って生きている雪彦の心に沁みこんで行く。そのときは反射的に否定の言葉を吐きながらも、まだまだ教わることだらけの仕事と何もかもが手探りな子育てで疲れた雪彦は、日吉の言葉に救われていく。

かれらを出会わせたのが優人の体調不良なら、かれらを結びつけたのもまた、体調を崩した優人だった。辛そうな優人の様子に慌てた雪彦は、迷いながらも携帯電話を手にした。初めて、自分から日吉に電話で、助けを求めた。優人のためであったことや、急を要する事情だったとは言え、日吉が繰り返していた言葉がきちんと雪彦に届いていたのだ。
そして雪彦からのSOSに応えた日吉が優人の診断をして帰ろうとすると、雪彦がかれを引き止める。普段押せ押せで鬱陶しいくらい攻めてくるのに、こういうときに限ってあっさり引き下がる日吉に、雪彦が食いついた。ずっと一人で頑張ってきつつも、ずっと一人は嫌だと思っていたかれは、日吉に手を伸ばした。仕事と優人との生活、日常を頑張りながら、雪彦は日吉と付き合うことを決める。
おして、ひく。これだね。

患者そっちのけで一目惚れ相手を口説いたり、職場を探し当てて連日通いつめたり、よくよく考えるまでもなく日吉は非常に問題だらけのストーカーだ。診察にしても「何ともない」「よくあること」などという結果しか出ないあたり、医者としての日吉というよりは物語の細部が疎かになっているとも思う。実際2歳のこどもにはよくあることなのかもしれないが、どうにも優人の体調が便利な要素として使われている感がつよい。
そんな感じでお互いの気持ちを認識するまでの流れは都合が良くて早送りっぽいのだけれど、そこからの話は良い。

付き合いだすと雪彦の口の悪さ、不器用でなかなか素直になれない性格が表面に出てくる。そのことを一番気にしているのはそんな風にしか振舞えない雪彦自身で、日吉は別段気分を害しているということはない。雪彦の本質が見えているというのも勿論あるが、寧ろかれが雪彦以外について語っていた「興味がない」性格が出ているようにも思う。瑣末な事に興味がない。待たされても冷たくされてもあまり気にせず、雪彦と優人が傍にいるだけで笑っている、そういう男なのだ。
寛容と無関心の間くらいの日吉のテンションは、忙しい仕事と優人の世話で大変な雪彦にちょうど良かった。かれに救われて癒されて、雪彦も少しずつ心をひらく。

そして心を開いて好きだと実感した途端、自分がひどく悪いものに思えてくる。雪彦にとって不気味で変な奴だった日吉は、自分を好きだと言ってくれる人になり、何よりも大切な相手になった。そうなると、若くて仕事のできる開業医であるかれ、女性から好意を寄せられるかれの将来を、自分が奪っているような気がしてくる。自分さえいなければ、と思ってしまう。
けれど多分それは雪彦自身にとって耳障りの良い方の理由だろう。日吉に、何より自分に言い聞かせる大義名分でしかない。かれの本音は、怒った日吉から問い詰められたときに吐き出した、いつでも終わりに出来る関係が怖い・大切な人を失ったときの辛さを味わうのが怖い、というものだろう。家族を悉く失ってきたかれは、その思いを繰り返すのがいやで、大切なものを作らずに生きていこうとする。不器用であわれな自己保身だ。
大切なものをなくしたくないから大切なものをつくらない、大切なものをなくしたくないから今手離す。その矛盾を責めたって雪彦は変わらない。かれを変えるのは、雪彦の態度や言葉に左右されずかれを思い続ける日吉の強い思いだ。それさえ信じられればいい。だって自分から終わりにするという選択肢があることすら気づかないくらい、雪彦は日吉が好きなのだ。
よくある展開だけれど切なくて好きだよこういうの!
ラスト、雪彦の家族の墓参りに来た時に日吉が言ったせりふがすごくいい。失われるばかりだったものを、ようやく雪彦は手に入れたのだ。

相変わらず子連れBLが好きです。とても。
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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 21:35 | - | - |

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