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原作:大場つぐみ、漫画:小畑健「バクマン。」12

原作:大場つぐみ、漫画:小畑健「バクマン。」12

サイコーとシュージンが全てを賭けて作り上げている「PCP」はなかなか好調だが、シュージンはいまひとつ不安を拭えないでいる。漫画においてキーになるライバルキャラ・明智と主人公たちの関係性、在り方が見つけられないのだ。今出来上がっているネームでいいとサイコーも服部も言ってくれるけれど、おそらく悪くはないのだろうけれど、かれはいまひとつ腑に落ちないでいる。
そんなとき、シュージンは打ち合わせを終えた岩瀬と出くわす。
そこでかれはかつて岩瀬が自分に言った言葉を、彼女に言う。中学生時代、成績で上位を競い合っていた頃、岩瀬はシュージンに手を差し出して言った。「お互いを励みにして頑張りましょう」と。それはカタブツで真面目で思い込みが激しくて暴走しやすい、恋愛に対しては非常に奥手で不器用な岩瀬が示した最大限の愛情表現だった。彼女にしてみればそれは、告白だった。けれどそんなことが、岩瀬の存在をその時ようやく認識したようなシュージンに分かるはずもない。かれは言葉を額面通り受け取った。
そして今、ジャンプで連載する漫画の原作者という同じフィールドで戦う岩瀬に、シュージンはその時の言葉をかけた。そしてかれは、自分(たち)が頑張るために、より技や腕を磨くためには好敵手が必要なのだと再認識して、明智のキャラを示すエピソードを変更する。
けれど岩瀬にしてみれば、あの時の告白を、今になって相手からされたようなものだ。さすがに彼女も大人になって、相変わらず恋愛には不器用だが、これが既婚者でありかつてひと悶着あったシュージンからの愛の告白だとは思わない。けれど何もなく受け止められるほど大人でも、こなれてもいない。どきどきする岩瀬と、悪気がないとは言え作品のために過去をうまく思い出して利用したシュージン。思い出はきれいで、思い出の中の片思いはやはり残酷。

そのおかげもあって更に調子をあげてきた「PCP」の結果により、亜城木夢叶は編集長にも認められることになった。これで急な打ち切りもなくなり、連載をこのまま続投することになる。そこへ浮上してくるのがメディアミックスの話題だ。
ドラマCDの話が舞い込んだかれらは、アニメではないことに落ち込みながらも、ヒロイン役に亜豆を推薦した。作者二人の意向はそのまま通り、亜豆は亜城木夢叶作品に出演することになった。いずれアニメ化した際に、キャストをそのままスライドさせるという狙いもある。「バクマン。」自身がVOMICと違うキャストでアニメ化したことは置いておこう…服部さんの台詞に他意はないと思うし。
ともあれ推薦を受けたことを聞いた亜豆はそれを引き受け、サイコーにメールを送った。ここで事務所から連絡が来たとか選んでくれてありがとうとか言うのではなくて、第三者である亜城木夢叶という作家に選ばれたとサイコーに報告するような口調になっているのがかわいい。

いずれはアニメに、と皆が思っている。サイコーもシュージンも、亜豆も香耶も思っている。ジャンプで売れて、ドラマCDになったなら、そりゃあその先にアニメを考えるだろう。けれどその夢を聞いた服部は、はっきりとアニメ化はない、と言った。なぜなら「PCP」は、子供がやる程度の可愛く微笑ましいものだとしても、「犯罪」を扱っているからだ。犯罪を解決するのではなく、完全犯罪を為そうとする子供たちの物語だからだ。子供が公園で「PCP」ごっこをしているのを見てシュージンたちが感動するシーンがあったけれど、実際は、そういうことが理由でアニメにならないのだという。
内容が過激・子供が真似するのでクレームが来ている、なんていうエピソードを見ると、どうしても著者二人による「DEATH NOTE」を思い出さずにはいられない。あれはアニメどころか実写映画にまでなったけれど、実際模倣犯まがいの事件も起きていたし、色々制約や思うところがあったとしてもおかしくない。

「PCP」はかれらの持ち味を存分に活かした作品で、尋常じゃないプレッシャーの中であるにも関わらず実績を上げ続けている。その充足感がある一方で、どんなに続けても、夢であるアニメには結びつかないということが明らかになった。このまま進めばいいと思っていた道の先にはゴールがないと知ったふたりは、特にサイコーは焦り始める。
ちょうどその頃からドラマCDの脚本の修正や、今後上がってくる小説版のチェックと訂正など、シュージンの仕事が増えはじめる。更に、アシスタントの白鳥が持ってきたネームを先輩作家・プロ作家として見てやるつもりが、気づけば作品の筋を考えるようになっていた。その結果、話:シュージン、絵:白鳥の作品が生まれ、ジャンプに読み切り作品として掲載される。白鳥のアイディアに基づく
その作品は、シュージンひとり、ないしはシュージンとサイコーからでは生まれなかった。そして読みきりが評価されれば当然連載へ、と話は進む。振って沸いた白鳥の人生を大きく変えるチャンス、そして原作者としてのサイコーの力を更に伸ばすチャンスをサイコーは止められない。ものを作る人間として、ジャンプで活動する作家として、二人の気持ちが分かるからこそ、やめてくれとは言えなかった。「PCP」を連載しながら、アニメ化を狙える別の作品を亜城木夢叶として作りたいという考えを主張せず、かれは自分で他の道を模索しはじめる。
さすがにサイコーは落ち込んでいるし動揺してもいるけれど、嫉妬したり怒ったり拗ねたりはしていない。クリエイターとしてかれは自分もまた、他の創作へ繋がる努力を始める。絵を描くスピードを上げることで時間をつくり、もう一本描こうと決めたのだ。 
 
亜城木夢叶をひっかきまわすことになったアシスタント白鳥の家族設定がまた面白い。超金持ち会社の社長の息子で、絵にかいたような教育ママから全く理解が得られない。会話は成り立つはずもなく、白鳥は家を出ることを決意する。白鳥の仕事場である、亜城木夢叶の仕事場にいきなり現れた母親が、プロの漫画家たちの前で漫画家という職業そのものへの無理解による批判と侮蔑を蒔き散らすあたり、白鳥がいかにこれまで辛い環境にあったかが分かる。けれどかれは最高の友人である愛犬ピースと、親身になって面倒を見てくれる仕事仲間を得て、なにより作品を世に出したことで変わった。母が言う道ではなく、自分が選んだ道を行くと決めた。
やっぱりここは何と言ってもお姉ちゃんの台詞の格好良さに尽きる。漫画家連中と一緒になって盛り上がりたい気持ち。

新しく生まれる作家・作品があれば、終わりゆく作品もある。「ラッコ11号」 「青葉の頃」は打ち切り終了が決定した。終わること、人気の低迷を受けとめながらも、かれらだってその次を見る。かつて亜城木夢叶が打ち切り勧告を受けて、最終回まで走りながら次の作品を思ったように、かれらもプロの漫画家なのだ。
次回の連載の足がかりになればと、二人はそれぞれ人気作家読切祭に参加することを決める。他にも低迷中の連載作家が出る中、勿論あの男・エイジも参加する。どれだけ仕事してるのこの男…。
それを聞いた二人は、亜城木夢叶の参加を希望する。「PCP」を連載しながら、もう一本全く異なる読み切りを作る、と言うのだ。
チャンスを掴もうと努力していたら、チャンスが舞い込んできた。それにどうしても食いつきたいサイコーと、サイコーの希望に添いたいシュージン。白鳥の件でサイコーに迷惑をかけているから、サイコーがやりたいのならばやる、とかれは言う。けれどかれの目は嬉しそうに輝いている。サイコーの願いに付き合うわけでも、義理を立てているわけでもない。亜城木夢叶の名前を二人で名乗ったときから、サイコーの夢はシュージンの夢でもあるのだ。それに積極的に向かうことは、かれらにとって当たり前のことなのだ。

山あり谷ありながらも希望が見える終わり方。その一方で、森屋が悪気なく他誌の編集に漏らした亜城木夢叶情報がどうなるのかも気になる。
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posted by: mngn1012 | 本の感想 | 22:01 | - | - |

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