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薄桜鬼 碧血録 第二十話「散ずる桜花」

斎藤との別れのあと、先行している羅刹隊を追って仙台へ入った土方だが、羅刹隊との連絡がとれない。
榎本武揚も登場。元々土方とは知り合いであるかれは、仙台藩主に掛け合おうとするも、何の返答もないことを漏らす。更には、仙台藩にはおかしな部隊があるという噂、世間を脅かしている辻斬りの犯人が城を出入りしているという噂があると言うかれに、土方と千鶴が反応する。辻斬りは、長らくかれらを悩ませてきた懸案だ。京にいる頃、千姫が聞かせた噂が始まりだった。羅刹隊に所属する新選組隊士が、もっと言えば山南が辻斬りをしているという疑惑は、浮かんでは消えた。誰が調べても確証は得られないまま、ただ疑念ばかりが深くなって、とうとう仙台まできたのだ。その件を自分に預けて欲しい、と土方は言う。何度消そうとしても完全に拭い去れない疑念と、とうとう向かい合うときがきたのだ。

気落ちしたままの千鶴のもとへ平助が現れる。仙台城で綱道と山南が 密会していることを知った平助は、山南が裏切ったかもしれないと告げるため、土方のもとを訪れたのだ。
一本気で嘘や隠蔽工作が苦手なかれの行動など、当然綱道はお見通しだ。新型羅刹を大勢率いた綱道が現れる。原田・不知火と戦った綱道が生死不明になっていたことを知らないかれらが、綱道の登場にさほど驚かないのも無理はない。しかし「原田くんといい君といい困ったものだ」と、モノローグやひとのいないところではなく、敢えてかれらの前で言った綱道に二人が反応しないのはちょっと勿体無い。

人間に滅ぼされた一族の栄華を取り戻すため迎えにきたという綱道に、当然千鶴は抵抗する。平助が身を挺して守ってくれるけれど、向こうは数え切れないほどの羅刹がいる。のみならず、太陽の光に怯む平助と違い、新型の羅刹は日中の行動に苦痛を感じない。勝てるわけがなかった。千鶴は父の手で意識を奪われ、仙台城へ連行される。
人間の道理を曲げて寿命を削る危険な薬を飲ませて羅刹を作り出し、数にものを言わせて搾取や攻撃を続け、乱暴な真似をして娘を拉致した綱道の言葉は、しかし優しい。千鶴の良心に訴えかけたり、まだ幼い子供だと思い込んでいる千鶴をうまく騙そうという心もあるだろうが、どうもそればかりでもないように感じられる。わざと薫の名を出す綱道の説得は卑怯だが、かれが薫について語る言葉のすべてが嘘だとも感じられない。人間にすべてを奪われた被害者としての綱道、一族を復興させたいというまっとうな感情を持つ綱道、たとえ血縁関係になくとも千鶴や薫を心から思いやる父としての綱道がところどころ顔を出す。マッドサイエンティストとしての、大きなクーデターを起こそうとしているテロリストとしての綱道の合間から顔を出す良心に向かって、千鶴は必死に復讐の無意味さを説く。

そこへ山南が現れ、羅刹の研究のために綱道と協力することに決めたと話したとき、羅刹との戦いを切り抜けた平助が土方とともに城へ来る。話を聞かれた山南はうろたえず、どころか奥羽同盟が戦争回避をもくろんでいて仙台城が見方に成り得ないこと・新政府軍側の綱道が実際は新政府軍に不満を抱いていることを理由に、羅刹隊と綱道が描く鬼の王国の共存を訴える。
綱道もまた、千鶴に、羅刹を使い雪村家を再興しようと話す。綱道が羅刹を「使う」と言うことは、千鶴に距離感をおぼえさせ、土方に不信感を募らせるだろう。羅刹より鬼を上に見ている綱道は、山南や平助の前でもかれらを道具として見ていることを明かす。

俺達の戦いに羅刹隊は必要ねえ、と土方は言った。綱道と手を組むつもりはないとか、新選組の本願は羅刹隊の富強や生存にないとか、そういうことは全部飲み込んで、一番ひどい言葉を吐いた。
けれどその言葉に刀を抜いた山南は、目の前にいる土方ではなく、周囲にいる羅刹を次々斬り殺し始めた。「戦うことしか出来ない羅刹に戦いの場が残されていないと言うのなら、ここで終わりにしてやるのがせめてもの情け」だとかれは言う。そして「新選組の局長命令は絶対」だとも。山南が当然のこととして土方の言葉を「局長命令」と受け入れたことに、かれの覚悟を知る。山南が抜いた刀に、向かい合っている土方の姿がちいさく映るのもいい。
羅刹隊は必要ない、と土方は言う。その言葉に、羅刹隊を率いてきた山南と、実質かれの右腕になっていた平助が賛同する。羅刹は必要ないと、三人の羅刹が言う。白い髪と赤い目で、常人の域をはるかに超えた腕で、仲間をひたすら斬り殺してゆく。狂っている。この狂いこそが激動の時代であり、薄桜鬼だ、と思う。
いかなる研究をもってしても、寿命の問題も吸血衝動の問題も解決できなかった。今後も進めてゆけば何か分かるのかもしれないが、そんな時間はもう自分には残されていない。綱道を除けば、山南ほど羅刹に対して熱心に研究を重ねたものはいなかっただろう。かれほどの明晰な頭脳を持っているものもいなかっただろう。つまり山南が解決できなかった時点で「羅刹には未来がない」のだ。僅かな残り時間を使って山南に出来ることは、すべての羅刹を一箇所に集めて、幕を下ろすことだけだった。遂にかれは自白する。羅刹は「生み出されてはいけないもの」であったと。
「どのみち俺らもお前らと同じ運命」だと平助は笑った。かれもまた、酷使してきた自身の肉体の限界を悟っていた。山南が言う「未来がない」「生み出されてはいけない」羅刹、平助が言う「同じ運命」をたどる羅刹には、土方も入っている。土方も、かれ自身が言う「戦に必要ない」羅刹のひとりなのだ。少し時期が遅かったとは言え、変若水を飲んで羅刹化し、その肉体を酷使してきた。かれの先は決して明るいものではない。土方もそれを知っている。知っていると分かっているから、ふたりは平気でそんなことを言う。
それを知っているかれだから、山南は最後まで裏切らなかった。どんなに意見が合わなくても、ともに行動した。どんなに合わない意見もぶつけられた。

我を忘れた羅刹の暴走に、千鶴は思わず綱道を背に回した。自分に薬物を嗅がせて意識を奪い、拉致してくるような男でも、彼女には大切な父なのだ。無意識であろう千鶴の行動は、いつだってまっすぐだ。 そして羅刹が襲い掛かってきたとき、今度は父が娘を庇った。自身が生み出した新型羅刹の刃に斃れた綱道は、「お前の信じる道を行きなさい」と今際の際に千鶴に言った。千鶴の言葉が綱道を動かした。千鶴にその言葉を言わせたのは、これまで彼女とともに行動してきた新選組の在り方だ。彼女が鬼だと知っても態度を変えなかった隊士達の優しさやつよさが、彼女に確信を与えた。人間と鬼は共存できる、ということ。

寿命が尽きた山南と平助は、遂に立ち上がる事も出来なくなる。今後の戦いを勝てると思うのかという山南に、「負けるつもりで戦うやつはいねえ」と土方は返した。勝てる、とは言わなかった。
土方とぶつかることもあったけれど、土方を認めていたと笑う山南。一度離隊した自分を受け入れてくれたことを感謝していると言う平助。こんなときだからこそ言える、こんなときでなければい言えないことばだ。平助の言葉に対して、「俺だけじゃねえ、皆心配してるさ」となんでもないことのように笑う土方がいい。あまり平助に対して言及することのなかった土方の、最初で最後の言葉だ。
これまで新選組を離れていく人間が皆言ったように、二人もまた「土方君のことを頼みます」「土方さんをしっかり見張っててくれ」と、千鶴に土方を託してゆく。平助が千鶴に向ける「笑ってくれ」がとってもかれらしくていい。わたしは平助が一番最初に千鶴を気に入って、ずっと千鶴を一途に、あからさまに思い続けてきたと思っているので、かれが最後までそのままであることが、哀しいけれど嬉しい。平助ルートより、他ルートで報われない平助とか、ドラマCDで皆にからかわれる平助の淡い恋心が好きだなー。とにかく千鶴千鶴言って、千鶴の心配ばかりしていた平助が死ぬこの回に、「散ずる桜花」と言う名前がついたことが良かったと思う。にくい!

新選組は額兵隊を加えて蝦夷地へ向かうことになる。こういうところほんと細かいアニメだ。離隊しても構わないという土方に、来るなと言ってもついていく、と島田を始めとした隊士たちが笑う。それにつられて笑みを浮かべる土方が、どこか哀しそうに見える。
どこまでもついていくと決めているのは隊士たちだけではない。千鶴だってそうだ。けれど土方はそれを許さない。お前の未来を探せ、生き延びろ、とかれは言う。負けるつもりで戦うやつはいないと言ったかれは、自分が蝦夷から生きて帰ってこられないこと、を覚悟している。寧ろ確信している。

雪の中船を見送る千鶴と、雪に掻き消されて見えないであろう陸地を見つめ続ける船上の土方。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 16:17 | - | - |

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