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薄桜鬼 碧血録 第十八話「輝ける暁光」

斎藤の報告で一堂は近藤の最期を知る。武士として責任を取る切腹すら許されず、罪人として斬首に処された近藤。斬首のシーン、かれの前に掘られた穴がなまなましい。再三繰り返すけれど、このアニメはこういうところが本当に細かくていい。ゲームでやらなかったこと、ゲームではできなかったことが沢山織り込まれていて、どれも蛇足になっていない。

近藤を見捨てたこと、見殺しにして自分達だけ逃げたことに対して、沖田は土方を罵る。近藤のこととなると感情的になるうえ、その場にいられなかった自身への苛立ちも相俟って暴走する沖田に、土方はひとことも返さない。まだ癒えていない傷口が開いてもなお黙って沖田の好きにさせている土方の自責の念がつよすぎてやるせない。
近藤に、結果的にかれの命と引き換えに逃がしてもらったのは千鶴も同じだ。あの場所にいたものとして、彼女は沖田を追う。近藤が自分達を送り出してくれた日のことを語る彼女の言葉に動揺しないところから見て、沖田は全て分かっていたのだ。土方が、自分が生き残るために近藤を見殺しにするような男ではないこと。自分の命を捨ててでも、近藤を守ろうとする男であること。今も、怪我をおして新選組を守っていこうとしていること。分かっていて土方を責めた。沖田には、自分にとって兄だった近藤、自分にとっては何よりも大切な存在だった近藤と一番仲が良かったのが土方だ、というつよい思いがある。かれに非はないこと、どうしようもなかったこと、かれが自分を責め続けていること、そしてこれからの新選組を引っ張るのは土方しかいないと分かっていて、それでも沖田は土方を許せない。土方が言い返さないと知っていてかれを悪し様に言うのは、沖田のこれまでの嫉妬と、なにより甘えだろう。近藤が兄なら、その友人としていつも傍にいた土方もまた、沖田にとっての兄だ。二人の兄の仲を羨む年の離れた弟は、長兄にいいところを見せたいと頑張り、次兄には遠慮せず我儘を言って甘える。そのバランスは、長兄がこの世から去った今、永遠に取り戻せない。
土方は悪くない、土方を許せない、土方のことを頼むと言って去る沖田がせつない。自分と近藤のことばかり主張していたかれが、土方のために千鶴とはなれた。

土方に心を許しているからこそかれに甘える沖田の一方で、土方を尊敬するからこそかれの方針に真っ向から意をとなえるものもいる。体調を無視して前線指揮をとるという土方を止めるべく、斎藤は刀を抜いた。平助の制止も聞かず、かれらは勝負する。
本調子からほど遠い土方に負けるような斎藤ではない。かれの喉元に切っ先を向けた斎藤は、激戦地に土方を送るわけにはいかないと言う。戦っていれば忘れられるかもしれないが、忘れてもらっては困る、という斎藤の台詞がいい。かれは幹部の誰よりも土方を慕い、誰よりも土方に忠実だった。土方の命であれば、そしてそれが新選組のこれからにとって必要だと感じられれば、誰に何と言われようと御陵衛士に参加したような男だ。常に土方を気にかけていたかれだからこそ言える言葉であり、斎藤がよくぞ言った、という言葉でもある。ただの部下、ただの忠実な僕ではないところがいい。
真実を言い当てられて納得した土方の決断により、前線指揮をとることになった斎藤が千鶴に言う。「土方さんを頼む」と。

彰義隊は上野で新政府軍との攻防を続けている。彰義隊に参加している原田のもとへ、不知火が現れる。二人の狙いは、羅刹を率いて現れるであろう綱道だ。そしてその読みは見事的中。
強くなるためには手段は選べないと綱道は言う。かつて滅ぼされかけた鬼の一族としての恐れや経験がそういわせているのだと思えば、かれもまた不幸な存在だ。けれど地獄を見た鬼はかれだけではないし、何より綱道の動きに心を痛めているひとがいる。「あんたのせいで千鶴がどんだけ苦しんだと思ってんだ」と叫ぶ原田がせつない。父親を探すために、単身、慣れない男装までして京へやってきた千鶴のことを原田は気にかけていた。これ以上新選組として生きていくことはできないと離脱した気持ちに迷いはないけれど、千鶴の父親探しを最後まで手伝ってやれないことが心残りだった。もはや綱道は千鶴にとって、探し出して会いたい優しかった父様ではないけれど、原田にとって綱道の存在は気がかりだったのだろう。これが原田の示す義であり愛なのだ、と思う。せつない。
遂に羅刹を全滅させた二人。綱道に銃を向けた不知火は、弾切れしていることに気づく。その隙をぬって爆弾を取り出した綱道を、槍で原田が攻撃する。川に落ちた綱道は上がってこなかった。
甲府の借りは返した、と言う原田に、不知火は高杉を思い出す。墓参りに戻るというかれと、新八の待つ会津へ行くという原田。地面に座り木にもたれている原田の目から、光が消える。
「このあと二人に会うことは二度となかった」という、低めの千鶴のモノローグが刺さる。彰義隊の上野戦争を持ち出して、そこへ綱道・羅刹との決戦を絡めた話の展開もいいし、上野戦争で死んだ事になっている、このあと生死不明の原田のエピソードの使い方もうまい。原作以上に史実をベースにするアニメの恐ろしさよ…。

千鶴に背を向けた沖田は、神社の境内に腰掛けている。「お兄ちゃん何してるの」と問いかけてきた子供の顔が千鶴に被る。自分は一体何をしているのだろうかと、冷静になったかれは考える。
土方の暗殺を狙う集団が話しているのを聞いてしまった沖田は、ひとり、咳の止まらない体を引きずってかれらを尾行する。あまりにも大量の赤黒い血を吐いた沖田は、それを見て覚悟を決める。もう会えない近藤の背中を宙に思い描いて、近藤が新選組を託した土方さんなら僕も守らなきゃだめだよね、と話しかけて、かれはひとりで大勢の剣客に立ち向かう。誰だと問われて名乗りを上げるところがすごく好き。

沖田の名乗りに、体を休めるべく布団に入っていた土方が、呼応するように眼を覚ます。白髪の男が、宿場を守る仁王のように戦っている様子を見たという老人の話を聞いたかれには、それが誰なのか分かってしまった。薄桜鬼らしからぬタイプの展開だと思ったけれど、これはこれで。老人は鳥海さんが兼ね役!
体を引きずって沖田のもとへ向かう土方に追いついた千鶴は、沖田を見捨てるわけにいかないという土方の言葉に、制止することをやめ、かれについていくことにする。途中、階段すら上れない土方に千鶴が肩を貸す場面があって、いかにかれが弱っているのかが分かる。この状態で会津で指揮を執ると言った土方の無謀さが今になって響いてくる。それほどまでに自暴自棄だったのだとも、分かる。それと同時に、こんなかれがあの大勢の剣客に攻め込まれたら決して生き残れなかったであろうと思わされる。

そして二人がたどり着いた場所にあったのは、大量の死体と、沖田の刀。それを見て全てを悟った土方は、その場に背を向けて引き返す。 大量の死者の間にかれの亡骸が埋もれているということも考えられるけれど、そうすれば生き残りがいるはずだ。全ての敵を倒したあと、羅刹としての力を使ったことと病の進行によって寿命を迎えた沖田が、あとかたもなく消えてなくなったと考えたほうが自然なのだろう。残されたのは刀だけ。常々近藤の刀だと自称していたかれは、近藤が命をかけて守った、命と引き換えに新選組を託した土方を、自分の命を賭けて守り抜いた。
かれは近藤の遺志を継いで新選組を守る、近藤の刀になったのだ。
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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 21:00 | - | - |

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