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薄桜鬼 碧血録 第十五話「遠き面影」

これまでの羅刹の最大の欠陥のひとつであった、日中行動できない・太陽の下で行動できないという点を克服した新しい羅刹を綱道は開発した。人間よりも力もすばやさも上で、回復が早く、なにより忠実な羅刹を用いて、綱道は雪村家の再興を目指さんとする。
開発を知らなかった不知火は怒る。知らなかったことではなく、自分よりも強いかもしれない存在が大量生産されていることでもなく、その非人道的な行いに怒る。そしてかれは、敵でありながらもその志を買っている原田に一時休戦を持ちかける。羅刹を倒さなければ、原田と自分のまっとうな戦いは出来そうもないからだ。いずれきちんと命をかけて戦うために、手を組んで共通の敵を倒すという行動は矛盾しているように見えるけれど、かれららしい。

山道を抜けようとする近藤と千鶴の前に、男の格好の薫が現れる。薫は自分が本当は男であること、千鶴の兄であること、綱道が千鶴や自分の実父ではないことなどを彼女に畳み掛けるように告げる。千鶴を救うために来た、とかれは言った。けれど薫の目標は、綱道ともども雪村家の再興にある。人間に滅ぼされた自分たちの家を復興するためには、当然、人間を滅ぼす必要がある。そのために綱道が作ったのが羅刹だ。薫が千鶴を、妹を救いたい気持ちは本物だろうけれど、それは千鶴の望むものではなかった。
千鶴に優しい言葉をかけて、一緒に行こう、とかれは言う。その言葉も表情も、離れ離れで暮らしていた妹への慈愛に満ちているように見える。けれど一方で、刀を抜いた近藤を容赦なく叩きのめす。千鶴が世話になっている新選組、千鶴が大好きな近藤を倒す。千鶴の幸せが何なのか、千鶴の哀しみが何なのか、薫は全く分かっていない。
千鶴には、近藤を守って生き抜くと土方と交わした約束がある。そのために彼女自ら刀を抜いた。既に手が震えている彼女が何かできるとは思えないし、やり手の薫に勝てる可能性は万に一つもないけれど、揃いの刀を向けられた薫の心は確かに傷を負った。
ルートによって薫の性格は微妙に変化する。全く千鶴と相容れない、非常に厄介な敵のときもあれば、敵として登場しても心の奥にどこか非情になりきれない気持ちを秘めた兄のときもある。なので、千鶴に真摯な目を向ける薫の本音がなかなか見えない。千鶴に刀を向けられた薫の表情は、傷ついて揺れるけれど、それが本当なのか疑ってしまう。優しくして千鶴を絆しておいて、一気に形勢逆転を狙っているのではないかと言う目を向けてしまう。
千鶴に刀を向けられた薫は応戦する。勿論かれがいとも簡単に千鶴を倒す。覚悟を決めてとどめをさそうとしたかれを後ろから刀で貫くのは、土方が準備した洋装に袖を通した、羅刹化した沖田だ。もとより訝っていた薫を見過ごせなかったのか、病床で苦しんでいたはずのかれが現れた。
しかし羅刹化したところで沖田の病態は悪いままだ。すぐに発作で人間に戻ってしまうかれに、「変若水じゃ労咳は治らない」と薫は笑う。近藤と千鶴が驚いていたけれど、近藤はここまで病名を知らなかったのかな。さすがに気づきそうなものだと思うのだけれど。一気に薫に刃を向けられる沖田を、近藤が助けようとしないのがちょっと哀しい。本人も満身創痍なのは分かるんだけれど、沖田の思いの強さを知っているだけにやるせないなあ。勿論沖田はそんなことちっとも望んでいないのだけれど。
その場を制するのは風間だ。鬼の誇りを忘れ、雪村の名を汚す薫をかれは許さなかった。このタイミングで出てきたということは、風間が沖田を死なせたくないと、心のどこかで思っていたということなのだろうか。沖田を殺した薫を殺すのではなく、沖田を殺す前にかれの命を奪ったことに意味があるといい。
地面に倒れこんだ薫は、這うようにして千鶴に近づく。この期に及んでも、まだ薫が何かしでかすのではないかと思ってしまう。命をかけた罠を張ろうとしているのではないか、と。しかし実際は、千鶴が兄と遊んだ幼い頃の楽しい思い出を回想するだけだ。薫に手を伸ばすけれど時は遅く、その指が薫に触れる前にかれは息絶える。いつも真っ直ぐな千鶴らしくない迷い、躊躇いが見られていい。
鬼の誇りを大切に思う風間は、このままいくと次は綱道に刃を向ける。そして父親がかれに敵うはずがない、と千鶴は思ったのだろう。風間が手を下す前に、話をする時間がほしいと彼女は主張する。

ひとまずの撤退を成功させ、身を寄せている旗本屋敷でまだ明るいうちから隊士たちは酒を飲む。このときは全員同じ洋装なのだけれど、それぞれが好きなように着こなしているのが制服のようでかわいい。着崩したりきっちり着たり。
相変わらず新八は近藤の不満をこぼす。原田が庇うけれど、お約束の応酬になるだけだし、その言葉にも力がない。もうどうしようもないところまで亀裂は入っている。
綱道のことで気を落としつつも、自分に出来ることをしようとしている千鶴を慰めるのは原田だ。一緒に元の家を訪ねてみたり、昔のように団子を食べようと誘ってみたりするけれど、慰める側のかれだって決していい精神状態ではない。思い出話をしながら、「少し前のことなのにあの頃が遠い昔みてえだ」というかれは、楽しかったあの頃にはもう戻れないこと、再び同じような時代は来ないであろうことを知っている。
団子を持って沖田の見舞いへ。明らかに体調が悪そうだけれど、沖田の世話って誰がしてるんだっけ…。帰り際、新八によろしくと言う沖田に、原田は一瞬返事に詰まる。沖田と新八が再会することがおそらくないだろうと思っているからか。

近藤が帰還したことを喜ぶ隊士たちの中、険しい顔をした新八が近藤を呼ぶ。ならば、と自分も向かう原田を見て、土方はお前もか、とだけ言った。話を聞く前から、またすべてを分かっている。その頭の良さや勘の鋭さはかれの長所だし、そのお陰で何度も勝利や成功を収めてきたのだけれど、かれ個人としては良いことばかりでもないんだろうと思わされる。

原田・永倉、離隊。
近藤との話し合いや、それを最初に聞かされたときの千鶴の驚きなどは描かれない。けれど、これまで散々近藤への不信感を滲ませていた新八たちの口ぶりや、以前斎藤と平助が離隊したときの千鶴の様子から想像できる。
離れていくことを決めた新八は、もう近藤のことをとやかく言ったりはしない。ただ後悔しないために自分の思う道を行くのだ、と笑うかれの態度は清々しい。守ってやりたがったが途中で放り出すみたいですまないな、と原田は笑う。平助のときと同じだ。千鶴を守ってやりたい気持ちは確かにあるけれど、かれらにはそれよりも優先すべきことがあるのだ。原田にしてみれば、千鶴を守るべき存在は自分ではないと分かっているというのもあるだろう。かれが言った「あの人」という言葉に動揺するような千鶴なのだ。自分の出る幕ではない、とも思っているだろう。
しかし原田との思い出回想、原田と新八二人との思い出回想はあるのに、新八と二人きりや原田がいない輪での回想がないあたりが物悲しい。これが攻略キャラと非攻略キャラの差ってやつなのか…。
別れを惜しむ千鶴に、同じ空の下でこれからも戦うんだ、と言って二人は去る。また会おうとも、また会えるとも言わない。偶然会う可能性は勿論ゼロではないけれど、限りなくゼロに近いし、偶然以外の理由で会う可能性は、きっとない。そうと知っていて去っていくふたり、そうと知っていて見送りに行かない平助、そうと知っていて笑顔で分かれる斎藤と島田。いろいろ。

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posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 19:37 | - | - |

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