<< シングルマン | main | 和泉桂「終わりなき夜の果て」上 >>

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

web拍手
posted by: スポンサードリンク | - | | - | - |

薄桜鬼 碧血録 第十四話「蹉跌の回廊」

病床の沖田は、近くに置かれた自分用の洋服を見て、土方と千鶴が訪ねてきたときのことを思い出す。
近藤とともに甲州へ向かう、と知らせにきた土方を沖田は責める。それは怪我から復帰したばかりのかれを連れての遠出への怒りだけれど、自分が行かれないことへの憤りや、土方が行けることへの嫉妬、新選組と離れることへの不安などがあるのだろう。もはや隠せないほどに体調が悪い表情で、自分が近藤を守るんだと立ち上がろうとする沖田は痛々しい。近藤は沖田に甘いけれど、沖田もまた近藤に甘いというか、近藤のことになると冷静な判断ができなくなる。
今のかれは土方の言うとおり「足手まとい」にしかならない。沖田本人だって分かっていることをはっきり言ってかれの動きを止めてから、「待ってるぞ」と言う土方のアメムチっぷりが素晴らしい…。しかも無意識でやってるからな…。

故郷の日野でもてなされる近藤を置いて、一行は甲府へ向かう。宴席に出てばかりの近藤は危機感がないと不満を抱く新八、故郷だから仕方がないと情にあつい原田、新しい隊士への配慮だととりなす土方。どれが真実なのかは近藤のみぞ知る、むしろ近藤自身にも分かっていないのか。全部あるんだろう。
そんな中斎藤は、今回の戦に勝てると思っているのかと土方に聞く。その質問自体、斎藤がそう思っていないこと・思えないでいることの表明だ。そして土方もまた、難しいだろうと素直に答える。そのことが千鶴には信じられない。戦に勝てないかもしれないと思いながら戦うことも、思っているのに戦うために前進することも。

夜、ひとり陣を抜け出す斎藤を見かけた千鶴はそっとついていく。気配に気づいた斎藤に叱られるところなんかは斎藤ルート。薄桜鬼のアニメは、土方メインで進んでいることに間違いはないけれど、他の隊士をおろそかにしないのがいい。絵柄にクセはあるけれど、ほんとに丁寧に愛情を持って作られていると実感できるいいアニメだよ…。
死ぬことではなく、信じているものを見失うのが恐ろしい、と斎藤は言う。それはかれが信じているものを見失いそうだと実感しているということだ。一度は失ってしまった「本当の強さ」の答え、新選組に入って取り戻したその答えを斎藤は見失いそうになっている。新八や原田のように口に出して誰かにぶつけることをしない分、かれの不安はこれまで拭われずにきた。斎藤の揺れに気づけないから、誰も斎藤を落ち着ける答えをくれない。本人は自身で見つけるべきだと思っているんだろうけれど、それだけでは保ちきれないところにまで来たのだ。
そして不安を打ち明けられた千鶴が、斎藤に答えをくれる。刀が必要なくなっても斎藤が必要なくなるわけではない。大切なのは武士の魂だ、と。

守るために向かっている甲府城が既に敵の手の中であることが判明する。中腰で松明持ってる千鶴がちょっとカワイイ。
ここは一端退くべきだという新八・原田に対して、近藤は飽くまで交戦の構えを崩さない。その理由が、お上に命令されている任務だから退却すれば面目が立たないというものだから、かれらは呆れてしまう。近藤の権威欲や名声欲が透けて見える。それが真実かどうかは問題ではなく、かれらにはもはや近藤は「そう見える」のだ。
鳥羽伏見の戦いを経験していないからそんなことが言えるのだ、と新八は尚も食い下がる。新しい武器の威力を目の当たりにしたかれらには、いかに現状が不利で勝ち目がないかが実感できる。けれど近藤にはその感覚がない。それでも進むのだという近藤は、ひとり守っている和服と相俟って、とても時代遅れに見えてしまう。ついこの間まで皆が髪を伸ばして和装だったのにおかしなものだ。時代の流れはあまりに早く、そしてほんの僅かな過去にすら戻れない。
喧々諤々の討論を収めたのはやっぱり土方だった。援軍を呼んでくるから交戦してくれというかれの意見に、「あんたが言うなら」と新八は話を呑んだ。土方の言うことならば聞こう、信じよう、という風潮が強まっている。精神的支柱の近藤と、実際の策を練る土方という役割分担から、土方に全てが預けられるように変化している。いずれは他の道を選ぶことになる原田・新八と近藤の間に、徐々に亀裂が入っていく様子が丁寧に描かれているのもいい。

見送りにきた千鶴に、土方はここを離れろと言った。しかし新選組の力になりたいから行きたくないと彼女は主張し、頭を下げる。ここで頭を深々と下げた千鶴に対しては土方も何も言わないんだなあ。前回あんなに頭を下げるなと言ってたのに。
必死で主張する彼女に、土方は二つの命令を下す。ひとつは近藤を守れというもの。そしてもう一つは、絶対に死ぬなというもの。命を懸けて守ることと楯になって守ることは、たぶんきっと、絶対的に違うのだ。
千鶴の小太刀と金打したあとに、武士が誓いを立てるときにするものだ、と説明する土方の、ちょっと違和感のある物言いがすごくいい。自分が「本物の武士」ではないことを苦笑いしてはいるけれど、卑屈な感じはない。こういう細かい芝居が…!

戦はかれらの多くが見込んだとおり勝てるようなものではなかった。どんどん死んでいく隊士を見て、撤退命令を出せと言う原田・新八の言葉にも近藤は耳を貸さない。
どころか総大将自ら突撃をして銃撃をくらい、命を投げ打った隊士に庇われて助かる始末だ。自分に寄りかかる、もはや息絶えた隊士を見て、近藤はようやく戦場を見る。刀の時代の終わり、それは気合いや根性の時代の終わりでもあった。近藤が信じて、必死で上り詰めようとしていた時代の終わりだ。自分の古いこだわりがどれほどの被害を出したのかということと、信じていたものが終わったことに呆然とした近藤は、遂に撤退を決める。
しかしかれ本人は撤退をしようとしない。多くの部下を死なせて生きて帰れるか、と死を決意したかれからは、優しくて思いやりのある近藤らしい罪悪感よりも、逃避の願いが強く滲んでいる。
そうだと知っていて千鶴は、生きてくださいと言う。最初からずっと暖かく接してくれた近藤を死なせたくないという気持ち、ひとはやり直せるという気持ち、そして土方との約束が彼女を突き動かす。「近藤さんを信じて死んでいった皆さんのために」生きろという彼女は優しいだけの、弱いだけの子供ではない。
そして近藤は生きることを決める。

撤退を決めたかれらの元に、いくつもの厄介な存在が現れる。原田の前にやってきた不知火、かれらごと巻き込もうとする、昼間に太陽の下をうろつける新型の羅刹。しかも傷を負っても異常な速さで修復するかれらが相手では勝ち目がない。
存在に驚くあまり、敵である不知火にどういうことなのかと原田が問い詰めるも、かれも本当に知らないようだ。しかし、ひとつだけ分かることがある。こんなことが出来るのは、こんな羅刹を開発できるのは、たったひとりだけだ。変若水を作った当の本人、雪村綱道だけだ。
web拍手
posted by: mngn1012 | 薄桜鬼 | 20:57 | - | - |

スポンサーサイト

web拍手
posted by: スポンサードリンク | - | 20:57 | - | - |