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遠野春日「裁きの騎士に恋して」

遠野春日「裁きの騎士に恋して」
東京でサラリーマンとして働く記章と、大阪で判事補として働く仁は遠距離恋愛中の恋人同士。暮らす場所と仁の仕事の忙しさからなかなか会えないけれど、関係は良好だ。しかし記章は偶然仁が昔の恋人と一緒にいるところを見てしまった揚句、やってもいない横領の疑いをかけられてしまう。

リーフノベルズで出されたあと、最近B-PRINCE文庫から復刊した「金のひまわり」のスピンオフ。出版社、レーベルを超えてのスピンオフなので最初気付かなかった!
わたしは「金のひまわり」単体しか知らないんだけれど、これ色々シリーズが関連している話なんだな。別に「金のひまわり」を読んでいなくても、この本の中で過去に起こったことの概要は説明されているので問題ないと思う。優しい仁が過去に、長年付き合った恋人を寝取られたことがある、くらい知っておくといいかな。この作品では既に恋人同士になっている仁と記章の出会いもわかりやすく振りかえられている。

新卒二年目で、普通のサラリーマンである記章はあまり自分に自信が持てない。それは華やかな世界で忙しく活躍する仁と自分を比べてしまうことだけでなく、かれが過去にしでかした仕事上の大きなミスの所為もある。
それでも、遠距離ではあるもののこまめに連絡をしたり会いに来てくれる恋人ができて、記章は幸福だった。驚かせようと黙って会いに行った仁が、元恋人と談笑しているのを見るまでは。
更にほぼ絶縁状態であった元恋人である上司の比嘉が、やけに声をかけてくるようになる。仕事のミスを庇ってもらった負い目があるため素っ気なくもできない記章だが、そのかれのまともな精神は比嘉に付け込まれる。酒に酔ったかれは、仁と混同していたとはいえ、比嘉と一晩を過ごしてしまう。
そして数日が経過したある日、記章はいきなり部長に呼ばれる。そこで、多額の金の横領疑惑をかけられてしまう。次から次へとつらい出来事が襲いかかってくる記章を支えるのは、やはり仁しかいなかった。

裁判官である仁はまさに「裁きの騎士」だけれど、記章にかけられた横領の嫌疑を晴らすべく実際に仕事をしたのは、弁護士である折原だ。職業の問題なので当然ではあるけれど、仁がとった行動は記章に折原と白石を紹介したことと、恋人として記章を支えたことだ。かれは「裁きの騎士」としてではなく、ひとりの男として、記章を守った。

あまり外聞のよろしくない出逢いがあり、再会したのちは最初から遠距離恋愛だったふたりには、決定的に時間が足りていない。記章は自分が仁にふさわしくないと事あるごとに考えてしまうし、仁もまたそれを払拭するまでに至っていない。
比嘉の策略に嵌められて犯してしまった(犯させられてしまった)過ちについて、記章は仁に何も言わなかった。かれ自身の記憶が不確かだということもあるし、記章に決定的な非があるわけでもない。その話を聞いても仁は許してくれるだろう。自分の中の嫉妬を押し殺し、ひどい目に会った記章を慰めて労ってくれるかもしれない。そうすれば記章は余計に罪悪感が募り、いたたまれなくなる。だから言わないというのもひとつの選択だとは思うけれど、それについて一切言及がなかったのがちょっと物足りない。仁は過去に恋人を寝取られたことがあるので、余計にかれの傷を抉りそうで、悪趣味にもちょっと楽しみにしていたのだが。
仁が記章と共に生きていくために、多忙な中必死で東京へ戻れるように努力していたこともさらっとしか伝わらなくて残念。本気で白石と隠れて会っていると思っていたわけではないので、想定内の行動だったけれど、結果だけ報告された感じ。そして記章はたとえ会うことができなくても、東京へ来たことだけでも報告して欲しいと伝えたほうがいいんじゃないの…。
一冊の中に横領疑惑と、仁と元恋人との関係に対する不安が詰められて、更にはそこに結構な濃度のセックスが何回も挟まれているので、二つの事件の解決が両方ともちょっとすっ飛ばし気味になっていたようにも思った。抱き合う前に話し合うことがあるんじゃないのか君たちは…。まあもうすぐ遠距離じゃなくなるので、それから徐々に理解しあえばいいか…・。序盤から盛り上がって面白かっただけに、ちょっと尻すぼみかな。

取り敢えずわたしは「金のひまわり」では圧倒的に仁派というか、何も非がないのにいきなり現れた男に長年付き合った恋人を奪われたかれが気の毒でならなかったので、仁が幸せになったならいいかとすら思う。折原と別れるときもかれは本当にいい人で、誠実で、せつなかったのだ…。

そんな仁の元彼折原と、かれから折原を略奪した白石の短編も収録。
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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 23:00 | - | - |

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