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小林典雅「嘘と誤解は恋のせい」

小林典雅「嘘と誤解は恋のせい」
大学生の結哉はマンションの隣人である和久井に一目惚れをして以来ずっと片思いをしている。見つめているだけで何の行動も移さないかれをもどかしく思った先輩の騎一が練ったある作戦を使って、結哉は和久井の家を訪れる。

アホラブコメで面白かった!
とりあえず裏表紙がすでに面白い。普通あらすじが書かれているそこには、作品の内容にリンクさせたアンケートが載っている。当てはまったら買ってね、というノリなのだが「どれか一つでも当てはまったあなたは、同志です。(勇気を持って)お買い求めください」という悪乗りっぷり。勇気がいるのかこの本は。ちなみに実際は語尾にハートまでついている。

いいとこのお坊ちゃんで家事が得意で顔が可愛くてお人よし、という悪いところのない結哉だけれど、かれは自分の片思いを成就させたいと思っていない。ただ出勤するかれをベランダから眺めていられるだけで十分だと思っている。背が高くて顔がよくて優しそうなかれに恋人がいないわけがないし、大体自分なんて相手にされるわけもないし、っていうかそもそも男だし。
色んな言い訳を自分にぶつけて希望すら持たない結哉を、劇団員で常に財布が苦しく、かれに常に食わせてもらっている騎一は放っておけなかった。本来の優しさとお節介と恩義と、後は多分ちょっと楽しんで、かれが考えたアイディアは、大学生である結哉が授業で使うためのアンケートを和久井にとりに行く、というものだった。
それをきっかけに会話をして、なおかつかれの様々な情報が聞きだせる、それはある意味で一石二鳥の案だった。すでにアンケートを作成し、更には緊張して話し出せないであろう結哉のために会話の一部始終まで脚本で作った騎一に押されるまま、結哉は和久井の部屋のチャイムを鳴らした。

いきなりやって来た緊張しまくりの隣人相手に、和久井はとても親切だった。結哉の言い分を信じきったかれは、結哉を部屋にあげ、アンケートに回答してくれた。ただその内容がもうとんでもない。最初は趣味や職業から始まり、あとの殆どが性癖。やってみたいプレイとか、無人島で二人きりなら男とでも大丈夫ですかとか、これを元にどんなレポートを取るんだと疑いつつも、和久井は親切に返事をする。
結哉は結哉でそのろくでもないアンケートを口に出して読み上げないといけないので、内心いっぱいいっぱいである。二人して混乱しつつ、騎一の作ったアンケートに振り回されている。問題のとんちんかんっぷりと二人のリアクションは、思わず声に出して噴いたくらい面白かった。

騎一のとんでもないアンケートと、こちらは悪気のなかった忘れ物によって、二人の距離は一気に近づいた。相手の色々なところを知って、そのあとは、知らないところをもっと知りたくなった。和久井は自分が知らない結哉を、騎一が知っているのかと思って嫉妬もした。
嘘で始まった出会いは、しかし本人すら知らなかったお互いの本性を暴いていく。自分はもはや枯れているのではないかと思っていた和久井と、ただ親しくなれればそれでいいと思っていた結哉は、自分の欲の深さを知ることになる。それまでは積極的に行動することがあまりなかった和久井は、ある事件のあと、それまでのクールなかれはなんだったのだと言いたくなるほど必死で結哉を捕まえようとする。全体的にノリは軽いのだけれど、キモをきっちり抑えてあって、ラブ部分は切なかったり胸キュンさせてくれる上質のラブコメだ。
気持ちが通じ合ったあとの和久井の、アンケートをもじった台詞がいい。こういう恥ずかしいことをさらっとやってのけてしまうくらい、目の前にある恋愛に溺れているのかと思えば微笑ましい。

その続編である「ラヴァーズ・ブートキャンプ」は、付き合い始めた二人の話。このタイトルがすでにおかしい…。
結哉が最初の嘘を嘘なのだと明かしたことで、その嘘はなくなった。けれどまだ誤解は残っている。恋愛にいい思い出のない結哉は自己評価がとてつもなく低い。そして恋するものの盲目さで、和久井への評価がとてつもなく高い。その結果導き出されるのは、和久井と二人きりになるとどうしていいのかわからない、そしてこんな自分と和久井が付き合っていていいはずがない、というものだ。

付き合い始めたと思ったのに、二人の関係はあまり変わらない。学生で料理が得意で隣人である結哉の家に、かなりの頻度で和久井は通っているけれど、そこには大体いつも騎一がいる。二人きりの時間はろくに取れないでいる。
この騎一がまた曲者。かれは後輩であり親友でもある結哉の恋が成就することを本当に願っているのだが、その一方で、自分の都合だって大事である。かれにしてみれば結哉の家で振舞われる料理は生活に不可欠なものだし、それ以外にも楽しいことがあれば自分だって参加したいと思う。
しかしだからと言って、親友の恋を邪魔するような男でもない。ではなぜかれがこれまでにも増して結哉の家に来るようになったかと言うと、本人から頼まれているからだと言う。二人だと緊張して間が持たないから、というのだ。そうやって誰かに一緒にいてもらったら、永久に二人きりの関係に慣れないように思うのだが、そんなことまで結哉には考えられないのだ。

決してうまくいっているとは言えないそんな状況だけれど、二人の脳内は結構お花畑。付き合いだしてからというもの、二人とも心の声がものすごく増えているのだ。相手が好きすぎて世界中に叫びだしたいような気持ちになっている。このテンションと、実際の会話のテンションの差が可笑しい。恋愛バカでステキ。

そんなにも結哉が好きな和久井の前に、ひとつのある案が舞い込む。無人島ツアーのモニターにならないか、と友人から誘われたのだ。二つ返事で応じたかれは、そのツアーに結哉を誘った。騎一の絶妙なアシストもあって、見事和久井は二人きりで一泊旅行に出かけることに成功する。

モニターとして行くので旅費は無料、その代わり宣伝に使えそうな写真を撮ってくるように頼まれた二人は、それを口実にお互いの写真を撮りまくる。着替え!裸!と目を爛々として撮っている二人が可笑しい。そして相手が自分と同じことを考えているなどと全く想像しないあたりが、微笑ましいやらがっかりするやら。
楽しい旅行でこれまで知らなかった相手の一面を知って、思いは募るばかり。心の絶叫も大きくなるばかり。邪魔も入らないし、腹をわって話して、そのあとはあわよくば!と血走っている二人の欲望とは裏腹に、立て続けに天災が起こる。この運のなさがまたお似合いである。

とは言いつつも雨降って地固まる、な感じ。とにかく笑うところが沢山あって、胸キュンするところも沢山あって面白かった。相手の行動に思いつめていた割りにちょっとしたことで納得してしまうけれど、消化不良ということもなく、満足満足。
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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 17:19 | - | - |

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