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久世番子「私の血はインクでできているのよ」

久世番子「私の血はインクでできているのよ」
お絵かきが大好きだった少女が、どのような変遷を経て、現在の漫画家・久世番子になったのか。濃厚なオタク半生を振り返るエッセイコミック。

幼い頃、目の中に星があるような絵を描いた経験がある女子は多いと思う。わたしも例に漏れずそうだった。ただ、そんな少女がその後どのような道を進むのかは、本当に千差万別だ。番子少女は絵を描き続け、登場人物が全員馬という恋愛漫画をみんなに発表したり、大人に媚びた姑息な絵を描いたり、ファンタジーの設定ばかり考えて友人とはしゃいだり、まったく売れない同人誌を作ってとても楽しかったりする青春を過ごして、遂にプロの漫画家になった。

今回は「番線~本にまつわるエトセトラ〜」の雑誌履歴書の回などでも垣間見えた、番子さんのディープなオタク学生時代が如実に出た一冊だ。最終結果がどうであれ、上に挙げた番子さんの半生と似た青春を過ごしたひとには、絶対面白いと思う。ただ、かなりの痛みも伴うだろう。
気持ちばかりが逸って、漫画家になったつもりで誰にも設定されていない締切に追われているという状況に酔ってみたり、トーンを一枚貼っただけで自分の絵が何段階も上がったような気になったり。友人と対談をやってみたり。ああもう書いてて辛いほどに身につまされることばかり。キャラの設定や人間関係ばかり考えて、肝心の物語は一切書かなかったり、「寄稿」という言葉に酔ってみたり。
この本を読んで、お前はわたしか!と心の中で叫んだひとがどれくらいいるのだろう。ああ痛い。痛すぎる。忘れたい過去、忘れていたはずの過去を掘り起こされて、白日の下に晒された気分。

軽い気持ちで開いた本で思わぬ大やけどをして、でも同時にわたしだけじゃなかったという安心も得られる。
番子さんのように、当時の友人と今も関係が続いているのであれば、それを話題に出して笑い合うこともできる。ただ、そのころの友人と疎遠になっていたり、ひとりでこそこそとやっていたタイプの人間は、自分が通ってきた道を振り返って直視できない。そういうひとは、恥ずかしくて、痛々しくて、誰かに知られるくらいならいっそ消えてしまいたいくらいの過去を、番子さんがこうやって本にすることで、自分だけの恥ではないのだと知ることができる。ちょっとだけ、抱えていたものが軽くなるような気分。

ろくに絵が描けない上に、描きたいものもなかったわたしは早々に番子少女とは違う道を進んだけれど、目を伏せたい過去が沢山あるという意味では非常に共感できる本だった。
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posted by: mngn1012 | 本の感想 | 23:58 | - | - |

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