2308年、フォーリンエンジェルス計画により壊滅状態になったCB、死を予感しながらも助かったティエリアが復帰するまでの物語。
前回の「wanderer」に一切アレルヤとティエリアが出てこなかったので、内容としては満足しつつもさびしいと思っていたら、今回は丸ごとティエリア!高河ゆんの描くティエリアはやっぱりとってもいい。
二次元におけるおかっぱ男子の要点は、とにかく毛先がいかになびいているのか、に尽きると思う。フレアスカートの裾のように、キャラが動くたびに髪が広がるところが好きなのだ。ななめに一直線のラインを描くおかっぱ。三次元では決してそんな風になびくことはないからこそ、二次元おかっぱ男子最高。
静止しているときも、顔周りの髪が円柱状のラインを描いているのがおかっぱ男子の醍醐味。
気持ち悪い話はこのへんにして。いやまあこの下も大概気持ち悪いんですが。
話はひたすらティエリアの内面が言及されている。生き延びたかれは、自分たちがあまりに多くのものを失ったことをその場で知る。そして、少しずつ身をもって理解する。そんな中でも、ティエリアは逃げようとしない。諦めようとしない。ただ、少し立ち止まっている。指針を失い、仲間とはぐれ、迷っている。
そしてかれはニールの姿を見る。夢か幻覚か、それとも人知の及ばない何らかの力か、跡形もなく消え去ったニールが目の前にいる。
そしてかれに対して感情のままに発している台詞が支離滅裂で、だからこそいかにティエリアが煮詰まっているのかが分かる。
「誰が命を落とそうと同じだったはずなのに 何故 みんなに生きてて欲しかった 僕はあなたに生きていて欲しかった」とティエリアは叫んだ。死ぬことは可能性の中に含まれていて、そのことは熟知しているはずなのに、何故自分は生きていてほしいと願ったのか。計画達成のためであれば誰が死んで誰が生き残っても同じことだったのに、何故自分は特別死んでほしくない存在を見出してしまったのか。そして何より、目の前にいる男に死んでほしくなかった。
ニールの姿を見た瞬間にそれらの感情が一気に噴き出して、順序立てて話すことができず、興奮している。自分が出せない自分自身に対する答えを、ティエリアはニールに投げる。何故自分がこんな風に感じているのか、いつから自分はこんな風に考えるようになったのか、その答えをニールに求めてしまう。
ヴェーダとアクセスできなくなった後、よすがにしていたニールもいなくなった。「自分で決める」ことを強いられて、不安で立ち上がれないティエリアに、ニールが最後に言った言葉が良い。それは立ち止まったかれを突き動かし、そして人間にする言葉だ。
この話を読むと、四年後にマイスターと再会した時のティエリアの態度が更に感慨深いものになる。
来月号も漫画が載るということで、次はアレルヤかな、と予想。CDもつくようでとっても楽しみ!