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渡海奈穂「恋になるなら」

渡海奈穂「恋になるなら」
容姿の良さと愛想のなさで人付き合いが下手な上村は、職場で中学のバスケ部で人気者だった先輩の伴瀬と再会する。強引で明るい伴瀬に振り回されるように食事に行くうちに二人の距離は縮まり、遂には関係を持ってしまう。体を繋げてからようやく伴瀬が好きだとはっきり自覚した上村だったが、翌日から伴瀬と一切連絡が取れなくなってしまう。

元々口がうまくない上村と俺様を演じているような伴瀬は、とにかく自分の気持ちを言葉にしない。はっきり自覚できていないというのもあるし、自覚することから逃げているふしもある。二人とも、言わなければ曖昧な関係のまま、始まらず終わらず、ずっと続いてゆくような気がしていたのだろう。上村は戸惑いや照れから、伴瀬は自分が抱えている事情から、気持ちを口にすることをしなかった。しないまま、当然のように段階を経て寝た。行動は完全に恋人同士以外のなにものでもないのに、告白していないから友達のままなのだと思い込んでいる。

伴瀬が姿を消した理由はちょっと意外だった。
一応ネタバレ伏せ。
かれが背負うものの名前は一切出ず、ただ症状だけが描写される。それだけで分かるひともいるだろうし、分からないひともいるだろう。ラストに繋がる過程の描写もかなり緩い。と言うよりも、意図的に最低限にとどめているように感じられる。固有名詞や具体的な描写が出ないことがイメージを膨らませて、尚且つ程よく現実から一線を画した位置を保ってくれるので、この場合は名前が出ないままでいいのだと思う。しかしながら、二人が乗り越えたものの大きさや、その間に感じた辛さや葛藤というものが当然ながら見えてこない。とりあえず辛かったのだということは最期の上村の態度で分かるけれど、そこに入り込めない。
やはり、病気を扱う作品は難しいと思う。リアルな表現や苦悩を描けばラストに受ける感動はひとしおだけれど、その前に過程の厳しさに折れてしまうかもしれない。飽くまで恋愛が至上にある全体的に緩やかなものと、現実に根を下したものとどちらが良いのかは分からない。前者は物足りなさを感じるひとが出てくるだろうが、後者は直視したくないために読むことを止めてしまうひとが出てくるかもしれない。
選ぶのは当然作り手だが、個人的にはこの作品は前者を選択して正しかったのだと思う。振り回されて浮かれて落ち込んで、それでも後味だけは決して悪くない。地面から1センチくらい浮いたようなエソラゴトっぷりが、ひとを傷つけない。感情描写という意味では消化不良な部分もあるけれど、どこまでもやさしい一冊。

あと渡海さんは後書きだのブログだのが面白すぎる。軽妙な文体で卑屈になりすぎない程度に自分をネタにするセンスが素晴らしい。
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posted by: mngn1012 | 本の感想(BL・やおい・百合) | 22:53 | - | - |

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