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2011.08.16 Tuesday
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BD「TIGER&BUNNY」3 初回限定版
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・TIGER&BUNNY #05「Go for broke!」
感想はこちら。
TIGER&BUNNY #06「Fire is a good servant but a bad master.」
感想はこちら。
TIGER&BUNNY #07「The wolf knows what the ill beast thinks.」
感想はこちら。
特典映像
ノンテロップのOPとED。OPもEDも好きなんだけれど、オンタイムの時以外は早送りするようなふまじめなファンなのですが、普段テロップで見られない部分が見えるのはいいね。
・スペシャルCD3
オーディオドラマ#3「アポロンメディア・ヒーロー事業部へようこそ!」
毎月の経費報告書の提出が遅れている虎徹は、ロイズから早くするようにせっつかれている。企業、スポンサーがあるからこそ活動ができるんだ、資金があるからこそ仕事ができるんだと言われた虎徹は、深く考えもせず自分で財源を確保すると言い出し、企業への営業に繰り出そうとする。
ドタバタドラマ、今回はアポロンメディア内の物語。
そもそも「TIGER&BUNNY」は「職業・ヒーロー(正社員)」というコピーの通り、ヒーローがそれぞれの企業と契約している会社員であることが作品設定のキモだった。それゆえに企業が契約しているスポンサーのロゴがついたスーツを着て戦うし、建物を壊しても自身で支払わなくて済むし、上司に頭が上がらない。しかし物語が佳境に入るにつれてそれどころではなくなっている現状(20話まで放送済み)なので、このベタベタの正社員設定はいまとなると懐かしくて良い。
経費報告書を作成すべく、領収書を出してきたり、そろばんで計算する虎徹。既に提出済みのバーナビーは、ロイズから言われて虎徹を見張っている。そうじゃないとかれは後回しにしたり、そもそも作成せずにどこかへ行ってしまいかねないからだ。「ヒーローである前に一サラリーマン」というバニーと、「サラリーマンである前に一ヒーロー」だという虎徹の会話はどこまで行ったって平行線だけれど、この噛み合わなさこそが醍醐味である。気持ちいい。しかし結局おじさんは完成させることなく、バニーちゃんにはトイレに行くと言ってサボろうとする。
そこへ現れたのがまさかの斎藤さん。斎藤さんが出るというのは聞いていたので、字幕が使えないドラマCDでどういう演出をするのかと思ったんだけれど、それなりの大きさの声で話していた。「耳元で話している」といる設定らしい。マイクを通したときのハイテンション大声ではなく、普段の会話の音量を最大にした感じ。リップノイズ入りまくりでこそ斎藤さん。
「トレーニング」と「トイレに行く」をかけたおじさんのしょうもない自爆ボケをこっそり聞いてツボに入ったらしい斎藤さん。斎藤さんの笑い方が凄く個性的で、文字に起こせない。すごい。そこへ現れたロイズさんは、虎徹ではなく、斎藤さんに厳しい言葉をかける。開発費用、研究費用が莫大なのでなんとかしろ、というのだ。それができないなら、ヒーローたちがバイクではなくモノレールで移動することになる、と。それを聞いた虎徹は、たび重なるロイズからの小言も相俟ってキレる。当然キレたところでロイズさんの威圧感とよく回る口と正論に推し負けるのだが、金金言われて憤ったかれは、自分で財源を確保するなどと言ってしまう。
見張りを命じられていたバーナビーはそのやりとりを見ていて呆れる。呆れつつも、実際企業に営業に行く虎徹に同行する。虎徹が余計なことを言ってトラブルが発生すれば、自分にもアポロンメディアにもケチがつきかねないので、かれを「見張るため」だ。そこに「とかいいつつも本当は心配だから」みたいなデレが潜んでないのが良い。簡単にデレないバニーちゃん…なつかしいな…。
スポンサーになってほしい企業へ二人で挨拶に行って、すぐに失敗するおじさん。慌てたバーナビーのフォローも無駄にするおじさん。けれどもう帰れと言われても、バーナビーのようにすぐに退出しようとはせず、ねばるおじさん。何でもないところから、おおきな運をつかむおじさん。虎徹にないところをバーナビーが持っていて、バーナビーにないところを虎徹が持っている。バニーの努力と才能に比べて虎徹に出来ることは少ないのでバランスが取れているとは言いづらいけれど、いい具合にコンビっぽくなってきている。
企業の社長に付き合って飲んだ帰りの二人の、ちょっとろれつがあぶない会話がとっても可愛い。おじさんはいつも通り可愛いんだけれど、ほろ酔いバーナビーは普通の20代前半の若者っぽくてかわいらしい。酔っ払ったバニーちゃんは、会社で帰りを待っていてくれたロイズさん相手にノリツッコミするので驚いた。ヒーローアカデミーでもおじさんに細かく突っ込んでいたし、そう言うこともできるんだな!それを聞き逃さなかった虎徹に「こっち側」に来たと言われるバーナビー。たぶんその「こっち側」って「トイレに行くとトレーニング」の側でしょ…。
最後までお小言ばっかりのロイズさんが、人に文句を言うばっかりじゃない人物であること、人一倍仕事を抱えていてそれを手際よくこなし、更には行き先も告げずに出て行った所属ヒーローの帰りを待ち続けるような責任感のある人物であることもさらっと判明して良かったと思う。オモシロ可愛かった!
キャストトーク
津田さん、平田さん、森田さん、岩崎さん、横島さんでコメント。津田さん司会。
自己紹介から色々ぶっ飛ばし。ロイズ役の横島さんは次の仕事があるようで、冒頭で挨拶して感想行ってハケてしまうという何でもありの状態。抜き録りするわけでもなく、本当のその場からいなくなるこのぬるさがちょうどいいんだろうな。
仕事経験とかバイト経験の話。全員(既に横島さんはいない)社会人経験がないので、これまでにやったバイトの話になるのだが、皆それより何より斎藤さんをいじりたくて仕方がないようで、そわそわしていた。アフレコで斎藤さんとのやりとりの時に笑いをこらえるのが大変な平田さん、マイクから離れてずっと笑ってる森田さん。
今回もうちょっと出番が欲しかった、と岩崎さんが言っていたので、またドラマにも出るといいなー。
・MONTHLY HERO
雑誌記事風のダイジェストで、タイガーとブルーローズのコンビについてアンケートをとった結果が出ていたり、グッドラックモードについて「実績よりもお騒がせコンビらしいギミック」と揶揄されていたりと面白い。この時期はタイガーだけじゃなくてバーナビーもまだスター扱いからは程遠い感じがする。
ヒーローファイルはジャケット同様にバーナビー。
ヒーローたちが載っている乗り物の紹介もある。ヒーローを運ぶバスのようなトラックのような車はトランスポーターと言うのね。学習した。
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2011.08.03 Wednesday
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TIGER&BUNNY #09「Spare the road and spoil the child.」
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ドラゴンキッド回。
やる気・実力ともに問題なく、申し分のない成績を出している彼女だけれど、企業の担当者は心苦しそうに「華がない」と言う。いつも動きやすそうなカンフースーツを着て、一人称が僕の彼女。特に反抗的ということもないけれど、女の子らしさがないと考える担当者から、両親のプレゼントである花の飾りがついたピンを差し出されるも、絶対につけないと抵抗する。
バーナビーは両親殺害現場にいた男の記憶を思い出そうとするが、あと一歩のところで思い出せない。炎が充満している自宅に立っている男。顔のところが影になっていて、見えない。
斎藤さん制作のカプセルでそれぞれ休養を取っていたタイガーアンドバニー。アニエスから「ワイルドタイガーに」緊急事態だという呼び出しが入る。慌ててバーナビーともども駆けつけた虎徹に与えられたのは、市長の息子だという赤ん坊・サムだ。最近資産家の子供を狙う誘拐犯が増えているので、ベビーシッターでは不安だという市長がヒーローを頼ってきたのだと言う。警察は?とか言うと話が終わってしまうので言わない。警察は国民のもの国家のものだし、サラリーマンのヒーローに頼むほうがある意味理にかなっているのか。
ヒーローが権力を持つ個人に利用されることに不満を漏らしつつも、子供には罪がないので、それなりに接する虎徹。「将来いいパパになるんじゃない」というカリーナの言葉に、「こいつは既にいいパパだぞ」とアントニオ。そこで初めて虎徹が9歳になる娘の父親であること、妻が5年前に病気で亡くなっていることがヒーロー仲間に打ち明けられる。
アニエスさんはわざわざヒーローとしての点数が低い虎徹を指名したぐらいなので当然知っていただろうけれど、他の面々が知らなかった模様。バニーちゃんの誕生日パーティへのリアクションといい、最近妙に仲良しになってきたという感じのヒーローたち。
しかし子供はさておき、結婚していたことに誰も気付いていなかったというのは意外だ。虎徹にほのかな思いを抱いているカリーナとか、目ざとそうなネイサンまで彼女がいるという想像すらしていなかった感じがするので、さっぱり左手薬指の指輪に気付かなかったのかな。あとアントニオが虎徹を「いいパパ」と称したのにほっこり。実際のおじさんはあんまり「いい」パパではないと思うんだけれど、ね。
ということで虎徹が押し付けられそうになったサムは、ちっとも虎徹になつかない。更にただの赤ん坊ではなく、泣くと部屋中の物が壊れるテレキネシスの能力を持ったネクストなのだ。これまでの犯罪者のように、ネクストの能力を悪用するのも考えものだが、自分自身でコントロールできないというのもなかなか大変。サムにはさっぱり悪気がない分、叱ったり罰したりするわけにもいかない。
ヒーロー間を盥回しにされて一向に泣き止まないサムが懐いたのは、パオリンだった。かれが彼女の前でぴたっと泣き止んだことで、パオリンが世話係となった。そして彼女がサムの面倒を見るのが、バーナビーの家。
さすがにまだ若く子育ての経験のないパオリンを一人にするわけにはいかないし、元々指名されていた虎徹が巻き込まれたのだろう。そして自分の家のものを壊されてはたまらないと思った虎徹は、子育ての場所にバーナビーの家を思いついた。今のバーナビーは虎徹に逆らわないだろうし、虎徹がかつてHERO TVで特集されたバーナビーの部屋を見て、物が少ないことを知っていたのかもしれない。
バーナビーの家はあの通りの物のなさなので、サムが泣いたところで守るものも少ない。家族の写真と、子供用のおもちゃ。かつて誕生日に父親から貰ったのだというそれを、バーナビーは大切に残している。
サムが被っている帽子に描かれている花柄を見て、親が子供を大切に思って物を贈る行為を微笑ましく思う虎徹。親から貰ったアクセサリーがちっとも嬉しくない、自分の気持ちを分かっていないと言うパオリン。
遠く離れた場所でヒーローとして活動する娘のために、空港でアクセサリーを贈ったパオリンの両親。自分がヒーローを続けるために遠く離れた場所に住まわせている楓に、贈りものをする虎徹。もういない両親からの贈り物を、大切に飾っているバーナビー。三者三様の事情がある。
そういう気持ちが分かるからなのか、バニーちゃんはおじさんが楓ちゃんを強く思っていることや、不器用な愛情を示すことを決して茶化さない。普段憎まれ口をよく叩くのに、父親としてのかれは決して批難しない。そういうところがすごくいい子。侵してはならない部分をきちんと守っている。
サムの能力によってスイッチが入り、バーナビーがこれまで集めてきたウロボロスに関する資料が壁に映し出される。偶然それを見てしまった虎徹は、何も言わなかった。何も言わずサムとパオリンと時間をすごし、二人の子供が眠ったあと、酒の力に背中を押されて、ようやく言及する。
ここのおじさんが上半身裸で包帯を巻いている姿であることに関しては、たぶん永遠に謎が解けない。泊まっていくのに風呂を借りたのならせめて髪が塗れてるとかタオルを首や肩にかけているとか、そういう描写を…ください…。包帯を巻きなおしたとかでもいいから…。自分の所為で負わせた傷だと口にするバーナビーの前で、包帯だらけの体をずっと見せてるのって結構残酷…。
資料は全て自分で集めた、この20年必死だったと言うバーナビー。かれが全てを投げ捨てて得た情報を教えるというのは、凄く虎徹を信頼している証拠だろう。ウロボロスについて得たことと、分からないままのこと。思い出せない記憶。ひとつ打ち明けると堰をきったように全てが溢れてくる。
思いつめた口調で語るバーナビーに、「気持ちは分かる」「必ず見つかる」と虎徹は励ます。これまでのバーナビーなら、気持ちが分かるわけがないとか、犯人が見つかる確証なんかないと言ってキレそうなものだ。しかし何の根拠もない気休めのような言葉に、かれは微笑んだ。野生の動物が懐いた感じ。
あとバニーちゃんの年齢が発覚。4歳のときに両親を殺されて、20年間必死で犯人の手がかりを探してきたということで24歳。妥当です。
酔いつぶれた大人二人が雑魚寝している様子を見たパオリンは、サムを連れて散歩に出て、三人の女性に誘拐されてしまう。
身代金目的の誘拐犯からの電話を受けたのは、市長の息子の様子を伺いにきていたアニエスだった。母親のふりをして身代金の引渡し場所へ向かった彼女を見た犯人たちは、アニエスが母親だと偽っていること・彼女が抱えているバッグの中身が札束ではなく新聞紙であることを見抜く。いくらアニエスさんが並外れた根性を持った女性だとは言え、率先してアニエスさんをおとりにする作戦を思いつくバーナビー…折紙先輩を呼んでアニエスさんに擬態してもらえばよかったんじゃ。
犯人はネクストの三姉妹だった。それぞれ金、嘘、危険をかぎ分けることが出来る彼女たちこそが、巷を賑わしているベビーシッターのふりをした誘拐犯だ。この三姉妹がなかなか派手で手の込んだ容姿をしているんだけれど、これまでの犯罪者と違って妙にカラフルで、違和感を覚えて仕方がない。なぜそんなに奇をてらった…人種のるつぼの中、ここだけが10年前のKERAみたいな感じ。
まさか目の前にいる子供がHERO TVでおなじみのドラゴンキッドと、現市長の息子だなんて知らない犯人たちは、パオリンに手錠をかけたことで安心しきって自分たちの能力を明かす。誘拐犯の彼女たちにしてみれば、二人が裕福な家の子・金の匂いがする子だというだけでなく、金を出し惜しまないくらい親に愛されている子でなければいけない。サムの帽子に描かれた黄色いマリーゴールドの柄を見た犯人は、その花言葉が「健康」であることから、サムが親の愛に恵まれている子であることを察知した。
すやすやと眠っていたサムは目を覚まし、火がついたように泣き始める。当然物が飛び、かれらを監禁している車も壊れはじめる。三姉妹が罪を重ねる犯罪者であることは確かだが、サムと、ドラゴンキッドの敵ではなかった。パオリンは手錠を稲妻でそっと焦がして外すと、いとも容易く形勢逆転に成功し、サムを救助して犯人たちを仕留める。
そこへ登場するタイガー&バニー。かれらの助けを必要とするまでもなく、既に事件は解決していた。出る幕がないと苦笑しながら、犯人が落としたスタンガンを拾い上げる虎徹。サムの能力が引き起こした結果、彼女たちのアジトであった場所を火が囲っている。その情景を見たバーナビーをフラッシュバックが襲う。火に包まれた家、両親を殺した男の顔。確かに見たはずのその顔。そして叫んだバーナビーは、天井をぶち抜いてそのままいなくなる。
色々な名称が付けられていたこの一連の行動だけれど、個人的にはハンサムエスケープが一番しっくり来てばかばかしくって好き。というかこの行動事態がちょっとばか。最初何が起きたのか分からなかった。というか今もよく分かっていない。ジャンプが100倍になるとああなるのかな。どこで降りたんだろうとか、考え出すときりがない。
バーナビーが両親を殺された場所にいて、犯人を見ているはずなのに顔が思い出せないというエピソードが出たときからずっと、シルエットしか出ない犯人が虎徹ならいいなあ、と思っていた。ベテランヒーローだということしか描かれていないかれだが、見た目の年齢とヒーロー歴から鑑みて、数年のブランクがあってもおかしくない。かつて犯罪組織にいたとか、洗脳されてたとか、もしくはバニーの両親が何らかの不正・犯罪行為をしていた結果虎徹が手を下したとか、そういう暗い過去があって、バニーちゃんが虎徹に心を許した瞬間に明らかになれば凄くいいなあと思っていた。なので、炎を背景に自分の方を向いた虎徹を見た瞬間に、バーナビーの記憶が戻りかけたのを見て、願いが叶った!と思ってしまった。まあ残念ながら似ても似つかぬ男の顔だった訳だが。
記憶の中の憎き殺人犯が今より少し若い虎徹だったりすれば最高なのにー。 ちなみにこの妄想は今もまだ完全に諦めたわけではありません。
ひどい話が好き!
事件の解決を経て、パオリンに心境の変化が起こる。両親がくれたアクセサリ、飾りの花に「遠くにいる人を思う」という花言葉があることを調べた彼女は、それを付けるようになる。それに目ざとく気付いて、「すっごく可愛い」と飾らない言葉で真正面から褒める虎徹。パオリンはかれにしてみれば自分の娘と大差ない年齢の子供だし、彼女にしたってお兄さんとお父さんの間くらいの人としか思っていないのだけれど、おじさんはこれがカリーナだとしても同じ態度に出るので侮れない。
何がどうなったのか普通に家にいるバーナビーは、ついに記憶の中の男の顔を思い出した。けれど、それが誰なのかは、まだわからない。
鼻歌を歌いながら真っ白な空間で壁に指で絵を描く全裸の男がうつって、次回へ。
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2011.07.26 Tuesday
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TIGER&BUNNY #08「There is always a next time.」
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ルナティックの行動と発言以降、ヒーローの存在意義・必要性が問われている。チャリティーショーでタイガーの足を蹴った少年以外にも、犯罪者・悪い奴は逮捕ではなく「やっつけ」られるべきなのだと考えている人間は多い、ということだ。
そういった意見が増えることはすなわちヒーローへの不信やかれらの不人気につながり、HERO TVの視聴率低下やスポンサーの撤退にも結び付きかねない。慌てた各企業の代表が集まった会議には、ユーリ・ペトロフも参加している。普段通りの顔でルナティックの逮捕策について述べるかれの底がしれない。
結局はマーベリックによる、ヒーローの信頼回復という提案で話は一端お開きになる。
「Let's believe HERO」なんて書いた襷をつけて老人ホーム慰問やゴミ拾いなどにヒーローたちが分担される中、ワイルドタイガーとバーナビー、そして折紙サイクロンはヒーローアカデミーへの訪問を課せられる。バーナビーと折紙は卒業生だからで、ワイルドタイガーはバーナビーとの抱き合わせだろう。
ともあれ次のヒーローを目指す人々に暖かく迎えられたかれらは、一様に浮かない顔をしている。タイガーは面倒ながらもそれなりに仕事として受け止めているようだが、バーナビーは少しでも多くウロボロス究明に時間を割きたいと考えている。かれにとってはヒーローの人気とか理論とかは、両親の仇の前ではとるに足らないことだからだ。 そして折紙サイクロンことイワン・カレリンは、見切れるばかりでポイントも最下位の自分がかれらにとって憧れるようなヒーローではないことを知っているからこそ、浮かない顔をしている。
楽屋代わりの教室で、アンダースーツ姿のバーナビーが「あー帰りたい」とぼやくところに驚いた。どんな時だって愛想よく人に接して、「疲れないのか」と問われても「仕事ですから」と返していたバーナビーからは考えられない態度だ。ここに三人しかいないとしても、かれがどれほどおじさんに心を開いてきたのかが分かる。
それぞれの講義。ポイント最優先だとドヤ顔で言うバニーと人命救助のためなら器物損壊も気にしないと言うおじさんの話は素直に聞いていた生徒たちも、スポンサーアピール最優先の折紙の講義には不満を隠さない。バニーも決して良いこと言ってるわけじゃないので、講義内容と言うよりは普段の活動に対する反応の違いもあるのだろう。
生徒たちが自分のNEXT能力を見てほしいとタイガーに願い出る。ひとりずつ見てやるものの、殆どはびっくり人間としか言いようがないもので、人命救助などに活かせそうにはない。けれどここでそう言ってしまうのは得策ではないので、笑顔を褒めてやりすごすワイルドタイガー。
その様子を見ていたイワンが、ようやく解放されたタイガーに声をかけて自分の能力を見せる。これまで見切れることや、不特定多数の人間に出来るような行動しかとってこなかった折紙サイクロンのNEXT能力は、擬態だった。声は努力すれば似せられるけれど、能力までは同じに出来ない。しかしいかにも「特殊能力」という感じの力だ。
しかしその能力は未だヒーローとして発揮されていない。そもそも折紙サイクロンのヒーロースーツに身を纏っている以上、擬態もくそもない。そのことを一番分かっているのはかれ自身で、どうせ自分なんか、とイワンは落ち込み始める。
そんなかれに、お前の能力にしかできないことがあるんじゃないのか、とワイルドタイガーは言う。ありふれた、けれど真っ当なその慰めに、イワンは過敏に反応する。かつて、同じことを言ってくれた人がいたからだ。ヒーローアカデミーに通っていた時に行動を共にしていた友人。学年一のNEXTで、次期ヒーロー間違いなしだと言われていた男。
その話を聞いたワイルドタイガーは、しかしそんな男が現在ヒーローとして存在していない事実を踏まえて、イワンに適性があったからだ、と言う。何も知らなければ多くの人間はそう思うだろう。ブログの炎上などで落ち込みがちのイワンが自分を卑下しているだけだと、思うだろう。思うからこそ慰めようとし、もしくは結果を素直に受け止めない態度に苛立ち、畳みかけるようにタイガーはイワンを鼓舞する。けれどそれは逆効果で、結局のところイワンは走り去ってしまう。 人の話を聞かないタイガーと、人に話をしないイワン。人を理解することが苦手なタイガーと、人に理解されることが苦手なイワン。
事情を話さずに逃げ去ったイワンの過去を、タイガーはアカデミーの校長から聞くことになる。かれが語った次期ヒーロー候補の生徒エドワードと一緒に外出したイワンは、女性を人質にとった強盗が警察と対峙しているところに出くわす。人質がいる以上どうすることも出来ない警察は、ヒーローが来るのを待っているが、まだたどり着かないらしい。エドワードはイワンに、女性を助けて事件を解決するように誘う。しかし校則で外での能力使用が禁じられていることを理由に、イワンはその誘いを受けない。校則どうこうよりも、自信がないかれには元々行動するという選択肢がなかったように感じる。
痺れをきらしたエドワードは一人立ち向かう。地面や壁を砂状にして、自分や他人を飲み込んだり移動させたり出来るイワンは、犯人の手から銃を奪った。しかしそのあとすぐに強盗の仲間が現れ、形勢逆転してしまう。囲まれたかれは、観衆の中にいるイワンに助けを求めるも応えてもらえず、結局その手にあった銃が人質だった女性に向けて発砲してしまう。不幸な事故で彼女は亡くなり、エドワードは実刑判決を受けた。当然ヒーローになる資格も失った。人を助けるのに校則なんて気にしていられないと言ったエドワードは犯罪者として収容され、何もしなかったイワンは七人のヒーローのうちの一人となった。
この会話の前にあった、バニーちゃんは全校生徒の憧れでファンクラブがあって、全員同じ眼鏡をかけていたという謎の(寧ろ恐怖の)エピソードとか、折紙のことばかり考えていたおじさんが校長にかれのことを尋ねたのを自分のことだと勘違いしてまんざらでもなさそうなバニーちゃんとか、そのあと折紙の話題だと分かってムッとしたバニーちゃんとか、ジワジワ面白い。オモシロナルシスト。
タイガーの元から走り去ったイワンが中庭で一人座っていると、坊主頭の男がやってくる。エドワードだ。かつては長髪だったかれが坊主頭になっているあたり、いかにも刑務所という感じで生々しい。
かれが現れた瞬間、イワンはそれがまっとうな出所ではないと悟る。つまりイワンはエドワードの刑期をきちんと把握しており、かれの出所にはまだ早いと分かっていたということだ。そのことが既に、イワンの今も続く後悔や罪悪感を示している。
けれどエドワードはそんなことに気づかないのか、気づいたところでどうでもいいのか、イワンに復讐をしに来たのだと笑う。かれを砂に埋めながら、かつての事件で何もしなかったイワンを責め、自分とかれの現状に怒りをあらわにする。苦しそうなイワンは、しかし抵抗をしない。
エドワードが脱獄したと話を聞いたタイガーとバーナビーの登場によって間一髪のところで助かったイワンは、感謝のことばではなく「殺されても良かった」と言った。自分が助けなかったことがエドワードの人生を狂わせてしまったのだと、イワンは思っている。それに対する償いが、エドワードの望む復讐の完遂なのだ、とも。
「折紙先輩に非はない」とバーナビーは言った。よりにもよってここで「折紙先輩」呼び…やだかわいい…。年下だとしてもヒーローとしては先輩だもんね。学校も先輩なのかな。会話的に学生時代が被っていた感じがしないんだけれど、入学年齢が自由そうなのでそういうこともありうるのかな。別にスーツ着てないから本名でもいいはずなのに、「折紙先輩」呼び、かわいいです。
ともあれ「非はない」と言うバーナビー。確かにイワンに非はない。校則を守って能力を外で使わなかったかれに非はない。たとえヒーローが到着しないまま強盗犯が逃げ切っていても、警察が動いて人質の女性が殺されていたとしても、イワンに非はない。他の見物客と同じように、非はない。けれどそんな言葉で癒されるイワンなら、こんなにもずっと過去を引きずってはこなかった。エドワードにされるがままになってはいなかった。
バーナビーの言葉も聞かず自分を責めるイワンに、「だからこそ止めてやれよ」とワイルドタイガーは言う。「お前の所為で罪を背負わせた」のだから、と。おじさんがイワンに非があったと思っているとか、イワンの所為でエドワードがヒーローとしての可能性を断たれてしまったと思っているのではなく、そういうのが一番イワンの背中を押すと分かっているからだろう。そうしてイワンが前へ進むことが、かれを救うということも。
「お前はもうヒーローなんだぞ」と言う言葉に、イワンは走り出した。前はまだただの生徒だった。能力があるだけの、ただの子供だったからこそ、何もしなかったイワンは責められなかった。けれど今は違う。今のかれは、たとえポイント最下位でも、人気がなくても、れっきとしたヒーローなのだ。
「今いいこと言った」と自画自賛するワイルドタイガーに、「うわ、自分で言った」と突っ込むバニーちゃん。憎まれ口の言葉遊びすら、普通になってきている。校長の言うとおり「いいパートナー」になってきた。
自分を探しにきたイワンにエドワードが暴力をふるっているところへ、ルナティックが現れる。罪を償わずに脱獄したエドワードは、ルナティックの正義からすれば許されるはずもない。かれの断罪が始まる。
慌てたイワンはエドワードに擬態してルナティックの前に現れる。「罪びとは歩み出よ」というルナティックの言葉にも、先に反応して前に出たのはかれだった。それを呆然と見つめるしかできないエドワード。その様子からルナティックは、どちらが本物なのかを見抜く。罪びとは卑怯だから、というかれの根拠が正解だった。エドワードは既に、打算を考えずに人のために行動するヒーローとしての心を、かつてかれが事件の日には持っていた子ことをなくしていた。
慌てたイワンは元の姿に戻ってエドワードの前に立ちはだかり、「エドワードは僕が守る」「僕が守るんじゃ!」と言う。語尾が忍者口調になるのは折紙サイクロンの特徴で、それを「イワン」の姿のかれが迷いなく口にした。イワン・カレリンは本当の意味で折紙サイクロンに、ヒーローになった。
そんな二人を助けたのがワイルドタイガーで、ルナティックにキックで襲いかかったのがバーナビーだ。まだルナティックがウロボロスに繋がっていると思っているバーナビーはここでようやく、ルナティックが組織とは無関係であることを知らされる。ルナティックは犯罪組織に身を置いているのではなく、犯罪者を己の判断で裁いて処刑することを求めているのだ。
邪魔をするバーナビーに向かって攻撃するにあたって、「タナトスの声を聞け!」と叫ぶルナティック。真剣だけど笑ってしまうだろこれ。
しかし攻撃自体は非常に威力のあるものだ。それを真正面からくらいそうになったバーナビーの前に、ワイルドタイガーが走ってきて、かれが受けるはずだった攻撃を受け、ルナティックに一撃をお見舞い。 ルナティックのフェイスというか仮面というか絵を描いたゆでたまごの殻みたいな顔にヒビが入る。フェイスが傷つくのいい!
人を殺めたものに、同等の償いを課すことが自分の正義なのだ、とかれは言った。そしておそらく、罪を悔いて償おうとしていないもの、が対象だろう。ウロボロスに、犯罪組織に、受刑者に、エドワードに、かれは鉄槌を下す。法ではなくかれが裁き、かれが処刑する。
逮捕されて連行されるエドワードに向かってイワンは、僕の失敗もエドワードの失敗も一緒にやり直そう、と言った。この台詞すごく好き。自分にもかれにも非があることを、卑屈になるのではなく受け止めている。だからエドワードが「うるせえ」と言ったところで、かれは脅えも傷つきもしない。
最後にありがとうと言ったエドワードはおそらく脱獄した分だけ刑期が伸びるだろうが、今度こそきちんと自分のしたことと向き合い、きちんとつとめてくるだろう。
傷を負って担架で運ばれるタイガーは、心配そうに付添うバーナビーに対して、ルナティックがウロボロスではないと判明したことが良かった、と笑った。そのあと、何の問題も解決していないどころか手がかりがなくなってふりだしに戻ったことを思い出して「いや、よくねえか」と言う。その言葉にバーナビーは何も言えない。きっとかれは、この状況で自分の復讐を一番に気にかけているワイルドタイガーの思考に心底驚いている。
かれを乗せた救急車を見送り、ルナティックの攻撃で焼け焦げたタイガーの襷を拾い上げる。
ユーリさんの拷問部屋みたいな配色と構造の部屋がキてる。気が休まらないことこの上ない配色。
家に帰ったバーナビーは持ち帰った襷を見ながら、自分が今までタイガーにかけた言葉を思い出している。信じていない、頼りにしない、と散々辛辣な言葉をかけてきた。けれどそんな自分を、タイガーは庇った。そのことに少し微笑むバーナビーは、普通の青年のようだ。
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2011.07.21 Thursday
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TIGER&BUNNY #07「The wolf knows what the ill beast thinks.」
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追い求めていた「ウロボロス」のタトゥーを入れた男を殺した犯人をバーナビー、ワイルドタイガーは追うけれど、逃げられてしまう。
ワイルドタイガーが自分を制止したためにウロボロスの手がかりを掴み損ねたと言うバーナビー。バーナビーがブチ切れた所為で、捕まえることができた犯罪者が殺されたのだというワイルドタイガー。当然ながらかれの事情を知らないワイルドタイガーがかけてくる言葉に苛立ったバーナビーの、「こっちは親を殺されてるんだ」という激昂が切ない。普段取り澄ました顔をして、いやになるくらい冷静なバーナビーだけれど、本当はこういうものを中に秘めていたのだ。
こんな状況だけど、アポロンメディアのお二人のアンダースーツいいね!座っているファイアーエンブレムのマントの加工もいいね。
ウロボロスがバーナビーの両親を殺害した犯罪組織であることと、青い炎を遠くから放った相手が連続焼死事件の犯人であることは分かった。けれどその二点の関連性も、組織や相手の正体も何も分からない。分からないからこそ共に考えて探すのではなく、「あなたに頼るつもりは」ないから「僕には構わないで」とバーナビーは言い残して、去る。
ネイサンの会社で待ち合わせする虎徹。ネイサンと同じような肌の色をした太ももがミニスカートから出ている、下からのアングルはずるい。ミニスカートで出てきたのかと思ったじゃない。今更ミニスカートでも驚かないぞ! バーナビーの両親の殺害事件を扱った新聞を見つけ出したネイサンは、青い炎のネクストは組織の一員で、口封じのためにアニエスたちを狙ってロボットを運転していた男の更なる口封じ役だったのではないかと推測する。浮上した二つの事件を、無理なく繋げた形になる。
記事から両親が殺害されたときバーナビーが4歳であったことを知ったネイサンは、そのときからずっと一人でそのことを考えて生きてきたかれの半生を思う。かれの事情を初めて知った虎徹は、「誰だって色んな事情抱えて生きてんだ」と言う。早くに妻を亡くし、母親に娘を預けて、仕事の内容を隠して生きる虎徹だって「事情」を抱えている。そして今のところ多くは語られていないけれど、会社社長でヒーローの上にセクシャルマイノリティ(多分シュテルンビルトでもマイノリティだろう)のネイサンもまた、多くの「事情」を抱えているだろう。虎徹が冷たくてネイサンが優しいわけでも、ネイサンがお節介で虎徹が普通なわけでもなく、「事情」を抱えたものの数だけ、他人の「事情」への向き合い方がある。
そしてバーナビーの過去を「簡単に触れて欲しくない過去かも」という虎徹は、自分の過去についてもそう思っているような、印象。
ロイズが呼んでも来ないバーナビーの代役に、ブルーローズが現れる。急遽組まれたコンビ、タイガー&ブルーローズの戦いがとっても可愛い!打ち合わせを無視するブルーローズと、打ち合わせを忘れるワイルドタイガー。ブルーローズが、指から発生させた氷に乗ることで空を飛ぶのが可愛くて好きだ。おじさんはいつもかわいい。
バーナビーが来ないことを心配したブルーローズが「バーナビーとは喧嘩したの?」と聞くと、「ん?バニーか」とおじさん。バーナビーでの認識に時間がかかってるのか…。そして急遽呼び出されたのにバーナビーを意識していると誤解されるブルーローズの報われなさが微笑ましくて、おじさんの無自覚モテがこわい。
あまりにスムーズな戦いだと思ったらチャリティーショーだったのね。(ということに気づくまでに数回かかりました…)終わったあと裏で休んでいるワイルドタイガーに向かって、子供が「なんでやっつけなかった」のかと聞く。犯人達は鮮やかに一人残らず逮捕されたけれど、かれはそれだけでは不満なのだ。捕まえただけではだめだ、「やっつけ」なければいけないという考えがある。
幼い少年がどこまで考えているのか分からないけれど、その「やっつけ」は、さっきみたいに締め上げられる以上のものなのだ。裁判で決められた刑を受けるだけではない、もっと分かりやすくて暴力的で、胸のすくものが求められている。
ショーのあと、ロイズがマーベリックを連れて虎徹の元に現れる。日々の労いに、疲労回復の効果がある超高濃度酸素カプセルへと招待するマーベリック。そこへ赴いた虎徹は、マーベリックに呼ばれたバーナビーと顔を合わせる。機嫌が悪いともばつが悪いとも取れる態度で特に何も言わないバニーの代わりに、マーベリックさんが謝罪するところは、親代わりであると思えばまっとうなのかもしれないが、ちょっとバニーちゃん情けない。
家では散々ゴネてたカリーナだって、一人のヒーローとして・社会人としてそれなりに怒られたりしていたことを思うと、バニーの扱いは格別だなあ。かれにとって良いことではない、とも思う。
そして「寝たのかー!?」と何度も叫ぶ斎藤さんの可愛さ。単に「マイクを通すとうるさい」というオモシロ個性を活かした笑いどころなのか、何らかの理由で虎徹を眠らせないようにしているのか、読めない。いかにも洗脳されそうなカプセルなので余計に深読みしてしまう。
そして出動要請。良く考えるとおじさん昼間にショーとは言え一仕事やって、そのあと夜にガチのヒーロー業があるって大変だ。なんだかんだで会話もないまま、普通にコンビで出動するふたり。バーナビーの素直さと、虎徹の寛容さが良い具合に作用している。
とはいえかれらに課せられた最初の仕事は、犯罪組織のアジトへの突入を生中継したいと考えるアニエスが司法局から認可を受けるまでの待機だ。ようやく掴んだアジトも、ようやく逮捕できる犯罪者たちも、スリルを求めるテレビの前では形無し。
そして待っている間、ぼそぼそとふたりは言葉を交わす。青い炎のネクストはウロボロスの口封じ役ではないかと提案したあと、褒められるとファイアーエンブレムの受け売りであることをばらす。いつも通りのおじさんの会話で、ようやく空気が和んでくる。「同情するし逸る気持ちも分かるけれど、仕事は仕事だ」という、優しいけれど厳しい言葉がすごくすき。それに素直にハイと言わずに、あまり険のない憎まれ口で返すバニーもいい。ちょっとずつ良いコンビになってきた。
ヒーロー間の会話が全て放送されるように回線が開かれ、生中継が開始しようかというそのとき、アジトに青い炎が落とされる。アニエスの指示など待つわけもなく一番に動いたのは、ワイルドタイガーだった。「どうする気だ、虎徹!」と本名を叫ぶアントニオさんは反省してもらうとして、ワイルドタイガーの答えは単純明快「人命救助」だった。人を助ける、命を助けることがヒーローの至上命題だとかれは思っている。その命を、犯罪者かどうかで区別しない。
そしてバーナビーに「こっちは俺らに任せろ」と言う。ファイアーエンブレムも、かれを陽気に送り出してくれる。放火殺人犯を放っておくわけにもいかないけれど、救出には一人でも人数が多いほうが良いはずだ。けれど「事情」を知っている大人たちは、バーナビーの背中を押す。「あなたには頼らない」と言ったかれに、その大きさが伝わるのは、まだ先。
そして青い炎のネクストがようやく口を開く。バーナビーと一対一で戦うかれの強さは圧倒的だ。そしてかれは、戦闘における強さと掲げる理想が比例するかのように語りだす。自分の正義こそが「本当の正義」だと主張し、バーナビーを煽る。
しかしこれバーナビーは目の前の男が両親殺しの関係者だと思い込んでいるからこそ、かれの言う「正義」に激怒しているのであって、本当の意味でかれの言う「正義」に過敏に反応しているのはワイルドタイガーだと思う。犯罪者を捕まえるのではなく、命ごと絶つことに対する是非を、バーナビーはこの時点では持っていないように思える。勿論ウロボロスのことでそれどころじゃないというのが一番なのだろうけれど。
「お前は正義ではない、ただの人殺しだ」とワイルドタイガーは言う。かれの「正義」から見ると、男はその範疇から大きく外れている。人を守るためにあるネクストの力を悪用し、更には「正義」を掲げる男に、ワイルドタイガーは怒っているのだと思う。
ルナティックと名乗った男は、ワイルドタイガーのワイヤーで拘束されるも、それを焼ききって逃げる。拘束されていたというよりは、話をするために逃げなかったと言うべきか。
結局何もつかめないまま、バーナビーはルナティックを逃がしてしまう。そのことに意気消沈するかれをワイルドタイガーが慰める。放火されたアジトにいた男がひとり、息を吹き返したのだと言う。
それは確かに、ヒーローたちの人命救助によるものだ。
結局病院で犯人の体を見るも、ウロボロスのタトゥーはなかった。突き止めたアジトとウロボロスが関係なさそうなことにかれらは落ち込む。そしてウロボロスと関係のないであろう組織にもルナティックが火を放ったということにより、ネイサンの提示したルナティックはウロボロス一員で仲間の口封じ役である、という仮説も崩れる。
しかしバーナビーはどこかすっきりしている。「もうじたばたしても仕方ありません」と、わずかばかり腹をくくったようだ。
バーナビーが先に出た病室から、今回の面会に立ち会った裁判官が現れる。ヒーローたちに協力は惜しまないというかれのネクタイの模様は、ルナティックの仮面とよく似ていた。
声でとっくに分かってるよね、というのはこの際おいておく。
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2011.07.20 Wednesday
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TIGER&BUNNY #06「Fire is a good servant but a bad master」
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薄暗い刑務所、収容されているものの全く反省の色などない受刑者の男が三人、自慢げにこれまでの犯罪の思い出話をしている。見回りの刑務官?も私語を嗜めるだけで、その内容についてはいちいち言及しない。ろくでもない男が上辺だけの返事をした直後、事件は起こる。青い炎がどこからともなく現れ、かれらを包む。
物語上仕方がないとはいえ、三人組の犯罪者たちがひとつの部屋に収容されてるってどうなの、とかはいちいち言わないようにする。三人の中心人物っぽい、鼻の先が赤い男はどこかで見た印象。
どこかの撮影スタジオ。白いスーツを着てポーズをとりながら微笑むバーナビーと、その様子を退屈そうに見つめるおじさん。こういう時のかっこつけバニーちゃんが、自分が格好良い自覚があってそれなりにやる気なのか、仕事だと思って馬鹿馬鹿しいなりに取り組んでいるのか、アイドル扱いに反吐が出そうな気持ちを隠してやっているのか、見えそうで見えない。
バニーちゃんの携帯電話でこっそり自分の写真を撮っておくワイルドタイガー。携帯電話置きっぱなしでロックもかけないバーナビーは案外無防備。
その場にあった新聞に載っていた犯罪グループの死亡報道。それはアバンで火に襲われたかれらで、バーナビーがヒーローとしてデビューした時に捕まえた三人組だった。
かれらが死んだこと・殺されたことに驚くワイルドタイガーと、何とも思わないバーナビー。記事の写真を見ても、その三人が数ヶ月前に自分と対峙した犯罪者であったことを思い出せなかったのに、その死に衝撃を受けるワイルドタイガーと、かれらの顔を見た瞬間にいつ逮捕した連中か分かったけれど、その死を心底どうでもよさそうに受け止めるバーナビー。正反対で面白い。
人が死ぬということを軽んじているように見えるバーナビーに、ワイルドタイガーは憤る。いきなり怒鳴られたバニーが、どこか寂しそうな、きょとんとした顔をしたあと、「価値観を押し付けないでください」と言うところにかれの幼さが出ている。
妻の死を経験して人の死の重さを深刻にとらえる虎轍と、両親の死を経験して大切な人の死とそうでない人の死の重さを冷静に分断するバーナビー。おじさんがお人よしなわけでも、バーナビーが人でなしなわけでもない。
撮影を見守るロイズの元に入った一本の電話によって、ワイルドタイガーはスーツをまとってファイアーエンブレムの炎の実験に付き合わされることになる。なんでも、刑務所の焼死事件の疑いが、ずば抜けた炎を出せるファイアーエンブレムにかかっているというのだ。事件に使われた火と、ファイアーエンブレムの火を検分することで、アニエスたちが疑いを晴らそうとするのは分かる。けれどそこにどうしてワイルドタイガーが必要なのか。その火がスーツの中にいるかれに被害を及ぼす可能性は決してゼロではないはずだ。
その答えは斎藤さんが持っている。いかに自分のスーツが優秀なのかを、ワイルドタイガーに示したかっただけ、だ。傷一つ負っていないおじさん相手に自慢げ!無邪気!
ファイアーエンブレムの疑いが晴れず謹慎させられるようなことになったら、HERO TVの視聴率に痛手だ、というアニエス。それが唯一の理由だとしても、ファイアーエンブレムの無実を証明したい彼女の照れ隠しの言い訳だとしても構わないんだけれど、アニエスが「彼」と呼んだことが気になる。彼女じゃないのー!
三人が刑務所のグラウンドらしきところを横切るとき、ベンチに座っている老いた囚人がいきなり発火する。体を動かす若い男たちには混ざらずにいた男が、どこからともなく飛んできた火に焼かれる。こういうときに一番に助けに行くのがワイルドタイガーだ。自分の上着を使って火を消そうとし、声をかける。
ふと、高いところからの視線を感じたかれはビルに飛び乗るが、そこには誰もいない。そんなかれを車の中から見ている目が、ある。
バーナビーの回想シーンが随所に挟まる。インタビューで「炎」「火」が嫌いだと答えたかれは、業火に包まれる家を思い出している。大柄な男が立っている。銃を持っている。その手には、謎の刺青。
そのマークを覚えていたバーナビーは、紙に書いて聞き込みをする。幼い子供がひとり、紙切れに書いた絵だけをたよりに、男を捜し続ける様子はせつない。それが未だに終わっていないことも。
人を救えなかったことに落ち込む虎徹を、ネイサンが慰める。真っ向から諭したり褒めたりするのではなく、「今晩添い寝してあげようか」と茶化して声をかける。これが多分、かれらのちょうどいい距離なのだろう。少ない人数で、命をかけて体を張って市民という不特定多数で自分勝手な人間たちを守る同志だし、協力もする。けれど常に共に行動する仲間でもない。ポイントを競い合うライバルという意識は二人にはあまり強くなさそうだが、譲れないものもある。会社を、社員を、家族を、生活を、守るために戦う。
正社員ヒーローだけあって、まさに違う会社に勤める知り合い、という感じの関係。大人になってから、その会社の人間として出会ったものならではの、深入りしなさがいい。飲みに行くけどそういえば家族構成とか知らないや、みたいな。
あとネイサンがすごくいい感じに女子トーンで話すのが可愛かった!
ネイサンと別れて一人道を歩く虎徹は、いきなりロボットに襲われる。生身で太刀打ちできるようなものではないので、慌てて逃げつつ斎藤さんに電話するも、繋がらない。そこへ、携帯電話にいたずらされたことに気付いたバーナビーからのお叱りの電話。事情を説明するも、普段の適当さがたたって信じてもらえないまま通話終了。まああんなサプライズしたくらいだしな…。
とりあえず走って走って走って、ネイサンの車に追いつく虎徹。最初は状況が読み込めていなかったネイサンが、自分の車を砲撃された瞬間にドス声で「何してくれてんだよ!」と叫ぶシーンがいい。どこかで男声を出すだろうなとは思っていたけれど、車でした。
5分間しか保たない能力は、人助けという最大の目的のときに使えないと困るから、とネイサンに攻撃させる虎徹。ハンドレッドパワーは非常に不便な能力なので、自分の中できちんと考えてペース配分しないと大変そう。そういう意味ではワイルドタイガーもバーナビーも、仲間と共に役割分担をして戦うべき能力だよなあ。
ロボの中にいる男こそ、一連の焼死事件の犯人なのではないか、という二人。ネイサンと虎徹の連携プレイで中の男を確認することができるも、結局取り逃がしてしまう。
いつものバイクに一人で乗ったバーナビーが、スーツの設置された車を引き連れて登場したのがかっこいい。なんだかんだでおじさんの電話に冗談ではないものを感じ取ったのか。爆発音とかも聞こえてそうだしな。むしろ最初のサプライズの、超絶棒読み芝居ですら出てきてくれたので、憎まれ口をたたきつつも良い子です。
そして「遅い」という虎徹に対して、「別にあなたのために来た訳じゃありませんから」という、90年代のツンデレみたいなテンプレ発言!お約束!ツンツン!
閉所恐怖症のフェアリー斎藤さんとの会話で、ロボットの中にいた男が、エレベーターに爆弾をしかけた男だと思い出す虎徹。掃除夫の格好をしていたかれが虎徹を狙ったということは、口封じが目的だと考えるのが一番自然だ。そうなると、次に狙われるのは同行していたアニエスとカメラマンということになる。
そしてかれらは三人乗りでバイクにまたがり、アニエス・ジュベールの元へ。選択肢が他にもある中で、三人揃ってアニエスさんのところへ向かったのは何故なの…カメラマンが先に狙われてたら完全に死んでた。車あるんだから別行動すれば良いのに。せめてアニエスが車を止めていたのがテレビ局の駐車場で、直前までカメラマンたちと一緒に仕事をしていた描写とか、アニエスが車に乗り込むところを見送るシーンでもあれば自然だったのにな。
間一髪のところでアニエスを助けて、攻撃するバーナビーがものすごく強い。そして「どうした、もう終わりか?」と冷酷な声をかけると、アニエスを保護したファイアーエンブレムから「いいぞーハンサムゥー」の声。
ポイントも得られないからとワイルドタイガーに確保を譲ったバーナビーは(むしろ余計な体力使いたくないのかも)、男の首に自分が探しまわっていたマークのタトゥーがあるのを見つけた瞬間、人が変わったように男を追及する。
何年もかけて、その紋章が「ウロボロス」という何かに関わりがあることだけをようやく突き止めたかれは、男に暴力を振るって話させようとする。ヒーローらしからぬ、かれらしからぬ態度を諌めようとしたワイルドタイガーの言葉も届かない。かれらを仲介しようとネイサンが割ってはいったところ、男がアニエスを人質にする。
一転優位にたった男は、刑務所の連中を殺した理由を聞くワイルドタイガーの問いに「知らねえ」と言う。ウロボロスについての質問をされていた時とは違って、故意に隠しているというよりは本当に知らないように見える。言いがかりを付けられて面倒、不快、そういう様子が出ている。
そしてアニエスを人質に取られたヒーローたちに男の銃口が向けられたとき、炎の矢が男の手から銃を弾く。赤い月を背景に、塔の上に立つ男がこちらを見ている。犯人に火が放たれる様子を、かれらは呆然と見ているほか、ない。
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2011.07.11 Monday
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TIGER&BUNNY #05「Go for broke!」
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ユーリ・ペトロフがワイルドタイガーの器物損壊についての判決を下すシーンから5話は始まる。ヒーローとして、街や市民を守るために仕方がない損壊と、そうではない損壊を判断する、という流れのようだ。結果ワイルドタイガーの行為は後者と判断され、損壊した建物への賠償金は、かれが所属するアポロンメディアの負担となる。
この裁判は面白い仕組みだ。ヒーローがスポンサーや、所属する企業に逆らえない会社員であるということの必要性を物語っている。ヒーロー活動で収入を得ているだけではなく、何かあったときに個人ではどうしようもない対応を会社がしてくれるのだ。
しかしワイルドタイガーとして判決が下されているのに、それを聞く被告人はアイマスクすらしていない普段の鏑木虎徹さん。傍聴している人には、目の前の男がイコールワイルドタイガーだってばればれじゃないか…。誰でも気軽に傍聴できるのか、関係者じゃないとだめなのかは分からないけれど、バニーちゃんの顔出しに騒然としたわりにはゆるいなヒーロー業界。
おそらくいつも通りであろう判決にバーナビーは憤っている。誰かを助けるために仕方がなかった犠牲ではなく、ただ壊してしまった建物に会社が金を出すこと、それを「仕方がない」と笑って終わらせる虎徹の態度に腹を立てたバーナビーの不満は、普段の虎徹のお節介にまで至る。「ちゃんと飯食ってるか」ってわざわざ聞いてくるおじさんが癒しキャラすぎる。
通りがかったファンの女性がバーナビーにサインを求めてくる。饒舌な彼女の口から、虎徹はバーナビーが明日誕生日であることを知る。誕生日とかスリーサイズとか好きな色とか、色んなところに載ってるんだろうな…。
バーナビーの誕生日を祝ってやろうと、虎徹はジムで仲間たちに呼びかける。ここでアポロンメディアの内部の人ではなく、ヒーローに声をかけるあたり、おじさん新しい会社に馴染んでいないのね。
最初は乗り気じゃなかったアントニオとカリーナ、二人の意見に流されたネイサンも、途中で話に入って来て非常に好意的な態度を見せたキースにつられて、パーティをすることに。しかもサプライズ。よりにもよって、ああいうタイプに一番やってはいけないサプライズ。
サプライズそのものがプレゼントだと考えているおじさんに、それとこれとは別だからきちんとプレゼントを用意しろと言うカリーナ。女子高生らしい意見と言えばそれまでだけれど、おじさんでは思い至らないところをきちんと彼女がフォローしていて微笑ましい。
とは言え、バーナビーが何を好きで何を欲しがっているかなど、虎徹に分かるはずがない。というよりも、ヒーローの誰にもわからない。取り敢えずファッションで攻めろというカリーナのアドバイス通り、翌日の朝から虎徹は圧倒的なわざとらしさで探りを入れるも、うまくいかない。とうとう面と向かって欲しいものを聞いたところ、バーナビーはニュースが流れるテレビのモニターを指さした。美術館に展示されることがニュースになるほどの、おおきな宝石、「ヘラクレスの涙」。
それを欲しがっている男はかれだけではなかった。
欲しいと思ったものを、財力と能力で全て手に入れてきた、「坊っちゃん」と呼ばれる男もまた、ヘラクレスの涙を報道で目にして欲しがっていた。欲しいと言うだけではなく、手に入れようとしている。
そんな犯罪者の思惑を知るよしもないヒーローたちは、せっせとサプライズの打ち合わせ。虎徹がかれを呼び出して合流したところで、覆面のアントニオが虎徹の荷物をひったくって逃げ、追いかけて犯人の親分を見つけると、後ろから部下に囲まれる。全員にピストルを向けられて絶対絶命、というところで、かれらが引き金をひくと銃口から「HAPPY BIRTHDAY」と描かれた紙が出てくる、という手の込んだ設定だ。それを実際に演じてみる面々。虎徹はバーナビーの代わりに、真っ赤なウサギの抱き枕を持って、アテレコしている。これは最初に見たとき…目を疑ったよね…おじさん何考えてんの…。しかもおじさんの私物ではなく、おじさん以外のメンバーからのプレゼント、だというのがまたすごい。完全に「バニー」が浸透している。
そして盛りだくさんな今回のエピソードを語る上で外せないのが、キース・グッドマンの可愛さだろう。アニエスに「天然」と言われて「えっ」と戸惑っていた時も可愛かったけれど、今回はマスクがついていなくて表情が出ている分余計に可愛い。張り切ってアドリブを入れたのに、それを虎徹の真正面から馬鹿にされてNGを出され、「アドリブは慎むよ…」としょげて反省するKOH可愛すぎる。天使。
誕生日の夜も、バーナビーは一人きり、簡素な自分の部屋にいる。手元にはケーキがあり、毎年送り届けてくれるメイドのサマンサとの通信が繋がっている。年老いた優しそうなメイドは、かれの誕生日をしっかり覚えて、きちんと毎年ケーキを焼いて送ってくれる。まだ幼く幸せだった頃のバーナビー少年との約束を、彼女は守り続けてくれている。
(しかしこの回想シーンはいったいいつなのだろう。この屈託のない笑顔からしてまだ両親が生きていた頃だと思うのだけれど、そうしたらサマンサの「送ってあげます」という約束は少し不自然だ。「作ってあげます」のほうが自然だろう。そしてこの数話あと、バーナビーが両親と迎える誕生日を回想することで更に訳が分からなくなる。親を亡くしたのが4歳なので、3歳の誕生日と4歳の誕生日なのかな。今回の回想は両親の死後なのか…?)
一応最低限の笑顔、愛想はあるものの、バーナビーの気持ちは少しも晴れていない。まさに「俺は今も一人」なのだろう。そして、虎徹からの緊急招集がかかる。
バーナビーが来るまでの間、プレゼントはどうしたんだとカリーナに聞かれた虎徹が「俺がプレゼントってことでいいかな」と言ったことは、未だに御しきれないのだけれど、おじさんってこういうことを意味もなく言うので、そういうことなんだろう。オヤジギャグオヤジギャグ。他意はない他意はない。頭では理解しているのだが心がついていかない、ような。
いざバーナビーが登場して作戦を開始するも、初っ端から失敗の連続。というか計画がそもそも、バーナビーが全てにイエスで乗っかってくることを大前提として組まれているのが間違いだ。犯人を追おうと誘えば断られ、アントニオは引ったくりに手間どい、追いかけようと走ればカートを押したひとにぶつかる。揚句の果てに犯人の親玉を演じるキースだと思って声をかけた男は、本当に犯罪者だった。ヘラクレスの涙を美術館から盗みだした「坊っちゃん」ことポーリーだったのだ。
サプライズパーティは最悪のしらけ方で終わり、すぐにアニエスからの招集が入る。激怒しているバーナビーと、状況が飲みこめない虎徹は斎藤さんの乗った車に乗せられ、そこでヒーロースーツに着替えることになる。
このスーツ着替えシーンが凄く格好良くて見ごたえがあった!変身できるわけじゃないのでいちいち着替えているとは思っていたけれど、アンダースーツより先は機械的。ハイテク!マイクを通すと声が異常にデカくなる斎藤さんから、バーナビーが誕生日だということで、と前置きして、スーツに新しい機能がついたことの紹介がある。ぽかんとしたバニーちゃんの顔からするに、かれはここへきてようやく、誕生日というものの立ち位置を知り始めたのだと思う。他人がこっそり用意してくれるもの、嬉しそうに披露されるもの、主役はただ受け止めていればいいもの。
車で逃走する犯人に最初に向かい合ったのはスカイハイだ。風を集めて飛ばす、かめはめ波のような必殺技、その名も「スカーーイハーーイ!」である。なにこの可愛さ!考えつかなかったのかな!一周してこれだ、と思ったのかな!かわいい!練習した芝居が無駄になってしまった、路地裏で一人佇んでいて寂しかった、と言うスカイハイが…かわいい…ことばがない…。チャームありすぎて困る。
その上で、不憫だったスカイハイに犯人捕獲を譲るというブルーローズとファイアーエンブレムの言葉を拒んで、T&Bに主犯格の男の逮捕を委ねるという懐の広さ!「だって今日は特別な日だろ」だよ!にくい!
裏でそんな話がなされてるとも露知らず、必死にポーリーを追うワイルドタイガーとバーナビー。空を飛ぶかれを二人がかりで抑え込むまでは良かったが、犯人の足に捕まりながらワイルドタイガーが「もうすぐ時間が切れる」なんていうものだから、またバーナビーは苛立つ。敵の前でもうすぐ使いものにならなくなりますと告白するなんて、さすがにどうかしてる。地上に降りたあとも、全身をダイヤモンドで覆うことができるポーリーは余裕だ。100パワーが残っているワイルドタイガーのパンチも、バーナビーのキックも、かれの体に傷一つつけられない。
そして時間制限が迫る。繰りだすパンチとキックの応酬を、ポーリーは笑って受けている。攻撃をし返すようなことはない。実際出来ないだろうし、する必要もないのだろう。そして時間が切れる直前、ふたりのスーツが変形する。タイガーの右腕が、バニーの右足が広がって、グッドラックモード。そしてポーリーのダイヤは割れ、かれは地面に倒れる。
凄い能力だ!と興奮するワイルドタイガーに、パワーを増強させるような仕組みはない、と言う斎藤さん。単に見た目が派手になっただけなのだ、と言う。時間ギリギリまで二人が連携して繰り返し撃ったパンチとキックが、少しずつダイヤにダメージを与えていた、それだけだった。
気絶したポーリーを抱え上げたワイルドタイガーは、それをバーナビーに渡す。バースデープレゼントだ、と言われたバーナビーは、ポーリーの首にかかったヘラクレスの涙を見る。そして、自分が適当に指差したダイヤを本気にしていたのか、窃盗品をどうにかできるわけでもないし、そもそも欲しかったわけでもないし、と混乱しかけたところで、プレゼントの意図するところが犯人逮捕時のポイントだと知らされる。
翻弄するようなことを言われたバーナビーは怒るでもなく、苦笑して「恥ずかしい」と言って歩いていく。グッドラックモードでスーツの両足の構造が変わったために歩きづらいのだろう、足を引きずりながら、ゆっくりと。おじさんの「お節介」が、少しずつ沁みこんでいく。
そして皆が忘れかけていたアントニオさんは、招集に参加するどころか、不審者として警察に逮捕されていたという、いいオチつき。
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2011.07.08 Friday
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BD「TIGER&BUNNY」2 初回限定版
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・TIGER&BUNNY #02「A good beginning makes a good ending.」
感想はこちら。
TIGER&BUNNY #03「Many a true word is spoken in jest.」
感想はこちら。
TIGER&BUNNY #04「Fear is often greater than the danger.」
感想はこちら。
特典映像
PV2とCM1。散々見たものなので目新しさはないけれど、どこにも収録されないと寂しいので入ってくれて嬉しい。
・スペシャルCD2
オーディオドラマ#2「ブルーローズのミッドナイトアイスクリーム!!」
アイドルヒーロー・ブルーローズが、ラジオ番組を開始する。自分らしい番組をやりたい本人の思惑とは異なり、会社は彼女のキャラである「ドS女王様」としてラジオをやらせようと目論んでいる。戸惑う彼女のもとに、ラジオゲストとしてバーナビーが登場する。
アイドルヒーローとして人気を博している彼女が、自分の力でラジオを回すのは無理だと言ったために原稿が用意された。しかしそれは、彼女の自覚や思惑の範疇を超えた、女王様キャラを全面に押し出したものだった。罵ってくださいというファンに罵声を浴びせたりするのは、彼女の本意ではない。原稿ではなく自分で喋ると生放送の途中で言いだす彼女に、ディレクターは怒る。全編通してコメディ番外編なのでいちいち突っ込むのも何なのだが、怒られて、自分が間違っているかのように扱われることに悲しむカリーナの感覚はさすがに甘すぎる。本編の時も仕事としての自覚のなさは指摘されていたので、それも含めて彼女というところか。さすがになんで原稿チェックしなかったのか、と言いだすと話がまわらないので黙っておく。しかも生放送って。
初回放送ということで、パーソナリティの彼女自身にも秘密にされていた特別ゲストがブースに入ってくる。「アポロンメディアからのゲスト」と聞いたカリーナが胸をときめかせていたのも空しく、相手はバーナビーだった。人気・話題性・そつのなさ、どれをとってもバニーちゃんが来るに決まっている。求められているキャラと自身の乖離に悩み文句を言うカリーナの気持ちも分かっているであろうバーナビーは、ひとりそつなく仕事としての対応を続ける。
ラジオに出たって当然バーナビーはファンが自分に持っているイメージを崩すようなことはしない。紳士的で低姿勢な好青年を演じ続けるかれが、本当はそんなこと心にも思っていないことをカリーナは知っている。知っているからこそ、「疲れないの?」と聞いた。ブルーローズとカリーナの間で揺れる彼女だからこそ、の思いもあったのかもしれない。裏表と言うほど表でも爽やかなそぶりを見せないワイルドタイガーやロックバイソン、裏も表も爽やかなスカイハイなどと違って、バーナビーは自分と同じくらい「演じる」ことを求められている。うまくできない・やりたくない自分と、余裕でこなしているバーナビー。彼女なりにいろいろと思うところはあるのだろう。
けれどバーナビーはそんな心情を汲み取ることはせず、仕事だから、自分とカリーナではヒーローに対するスタンスが違うから、と切り捨てる。その冷たいもの言いに思わずカリーナは「あんた友達いないでしょ」と吐き捨てる。それを否定するでも肯定するでもないバーナビーは、誰かさんにも同じことを言われた、と漏らす。
思っているのが自分だけではないと知って嬉しそうなカリーナは、自分と同じ意見を持つ相手が誰なのかを聞いた瞬間、思いっきり動揺する。それが、彼女がひそかに思っている相手・ワイルドタイガーだったからだ。おじさんがこの台詞を言ったのがちょうどこのBD2巻に入っているエピソードなあたり、CDもうまく考えて作られている。そしてこのあからさまなリアクションによって、バニーちゃんは思うところがあったのか、このあとも故意におじさんの名前を出してブルーローズをからかうのであった。彼女がおじさんを好きだって気づいた(気づいてた)のかなーそういう方面の感情の機微が備わっていてほっとしたよ…。
絶対にフラグなんか立たない、と強く言い合う二人のやりとりが、気の強い猫同士のケンカみたいで可愛い。そしてなにより、ここにいるのは、14話まで放映された現在となっては非常に恋しいツンバニである。外面だけがよくって、ニコニコする必要のない相手にはここぞとばかりに嫌なやつのバニーちゃん、人をからかったり振り回して面白がっているふしのあるバニーちゃんが懐かしい…ほんの数週間前までいたとは思えない14話の有り様だったので、これ聞いてほっとした。おじさんツンバニ返して。
原稿を読み進めていく上で、到底読みたくないようなこと・口に出したくないようなことが書かれていると気づいて慌てて話をずらすんだけれど、そのずらし方が思いっきり不器用でわざとらしかったりするのがカワイイ。普通の女子高生カリーナ、公に出ているときのブルーローズ、ブルーローズでいようとするけれど素のカリーナが出ちゃう状態、など色んなバージョンが出てくるのを寿さんが好演。彼女のお芝居をちゃんと聞くのはブルーローズが初めてなんだけれどいいなあ。
あとブルーローズの「私の一面なんかをね、ファンの皆にお届けできたら…」「リアルタイムでね、皆の意見をね」みたいなフリトにおける「ね」の部分が強いのがいいの!かわいいの!
キャストトーク
森田さん、寿さん、井上さん、岡本くんでコメント。岡本くん司会。
オーディオドラマの感想と、ドラマの内容にちなんだラジオについてのあれこれ。原稿に忠実か否か、の話。あとは実際に番組でラジオやりたいな、とかも。井上さんがネガティブ。スカイハイなのにネガティブ。
・MONTHLY HERO
ヒーローファイルはジャケット同様にブルーローズ。凝った衣装なので、桂さんのデザイン画も見応えあり。クリアになって奥が透けて見えるパーツと、白くて透けていないパーツがあるのが面白い。アップの髪型でヘッドアクセ?がクリアなのがかわいい。自分が凍らせた氷がさむくないのかな、とか、素肌で氷の上に倒れてひっついたりしないのかな、とか考えないようにする。
おじさんママの名前もここで初めて見た。
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2011.07.08 Friday
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TIGER&BUNNY #04「Fear is often greater than the danger.」
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やる気のないブルーローズの姿をTVで見て、母親は駄目だしをする。普段から衣装が気に入らないと言っている父親は、「ヒーローなんか二の次よ」とそれらの言葉を振り切った娘の姿に表情を曇らせる。波乱含みで始まるブルーローズ/カリーナ・ライル回。
折角のヒロイン界なのにテレビで放映された分は作画が酷くて、ブルーローズが気の毒なくらいだったのだが、BDでは直っていたので良かった良かった。現金輸送車が盗まれた、というお達しに、「車盗んで逃げてるだけなんか俺達の出る幕じゃない」とぼやくワイルドタイガー。たいした事件じゃないからこそ言える軽口で、確かにヒーローが出るまでもなく警察あたりで解決できそうな事件だけれど、非常にこの言葉がいやだった。事件の規模の大小でモチベーションが上下するだけならまだしも、小さい事件を軽視するなんて非常におじさんらしくない。わたしの好きなワイルドタイガーじゃない!と泣きながら走り去りたい気持ちである。
バニーちゃんが言ってたらハイハイ、で済むんだけれど、これまで散々ヒーロー論を掲げて、ポイントや人気よりも優先すべきものがあることを言い続けてきたおじさんが言うなんてショック。そのあと、「走行」と「装甲」を勘違いしていて、犯人にマシンガンぶっぱなされるところは非常にいつものおじさんらしくてよろしい。ブルーローズの憂鬱は続く。やる気のないヒーロー業ではミスばかり、授業が足りなくて補習にも出なければならないし、友達と遊びに行こうと思えば呼び出しがかかる。その上で「ヒーローとしての自覚がない」と叱られる。
歌手デビューとの交換条件だっただけで、やりたいわけではなかったヒーローが、彼女の日々の中心になっている。その上正体を明かせないので、誰にも認めてもらえない。その愚痴を聞いた虎徹が、「誰かに評価されたくてヒーローやってるわけじゃない」と言う。不器用なかれらしい率直な言葉は、苛立っている女子高生にすぐに響くわけはない。
その言葉を聞いたときに微妙な顔をしていたバーナビーは、テレビ番組のインタビューで「誰かに評価されたくてヒーローやってるわけじゃない」と得意げに語っていた。前回バーナビーについて聞かれた虎徹が言った「似てるところもある」が、まさかここへかかってくるとは。ヒーローは辞めて、バーで歌うとカリーナは決意する。ファンが沢山いる華やかなブルーローズのステージを味わったあとの決断は、勇気のいるものだっただろう。けれど彼女は本来の夢であった歌を選んだ。歌うことが好きだから、聞いてほしいから、場所が変わろうと客が減ろうと、歌う。
自分も同じだ、と虎徹は言う。困ってる人を助けたいから助ける、ヒーローをやっているのだ、と。前回描かれたおじさんの過去を思うと、他人に否定されたNEXTの力を他人のために使うことで受け入れられるようになったところがあるので、若干自己肯定の意味もあるように思うのだけれど。
ともあれ、自分にとっては辛くて報われないことだらけのヒーロー業を、自分が歌を愛するように愛している人がいる、というのはカリーナにとって大きな衝撃だった。けれどすぐに素直に受け取れない、いちど吐き出してしまった言葉を訂正できない。そして何より、彼女はそんな風にヒーローという仕事を愛せないでいる。
母親と一緒にいるときは何も言わなかった父親は、扉越しに娘に語りかける。ヒーロー業自体の如何より、ヒーローは二の次だと言ってしまえる気持ちが心配なのだ、と。そんな生半可な気持ちでは、取り返しのつかないことになるのではないか、と。煮え切らない気持ちを抱えたカリーナのもとに、ヒーローとしての呼び出しと、バーからの呼び出し。彼女はバーを選び、急遽休んだスタッフの代わりにピアノの弾き語りを披露する。それは確かに彼女が選んだ道だった。ヒーローを捨てて、歩いていこうと決めた道だった。
けれどテレビで状況が流れれば気になるし、酔っ払いが何も知らずに非難していれば腹も立つ。危機的な状況の仲間たちを見たカリーナは、バーを去る。
燃え盛る船上に残された一人の人物を助けるために、何人ものヒーローが借り出される。自分たちの命も危ない現場へ文句ひとつこぼさずかれらは向かい、協力しあい、時には軽口を叩きながら必死で救助につとめる。数字のことしか考えていない指示を聞き、「ショー」として楽しんで見ている連中がいることも承知で、かれらは戦う。本当の意味でオフの時間などはなく、スポンサーや企業からは次から次へとお小言をもらい、それでも戦い続ける。
がんばれサラリーマン。鍛えているから大丈夫だ、と強がるおじさんに「鍛えてるとこなんか見たことありませんけど」というバニーちゃんは、大分おじさんに心を許している。突っ込まずにはいられないおじさんの言動が、バニーちゃんにコミュニケーションを教えたんだな…。
そして間一髪のところでブルーローズ登場。素直に謝ったりできない彼女の幼さや性格を皆知っていて、茶化すことで深く言及せずに受け入れてくれる。
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2011.07.07 Thursday
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TIGER&BUNNY #03「Many a true word is spoken in jest.」
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銃を持った複数の犯人を相手にして、
陰に隠れて様子を伺っているタイガー&バーナビー。 右から出るか左から出るかで揉めている間に、 ワイルドタイガーが撃たれてしまう。 いつまでもコンビネーションが培われない二人を心配したロイズの 提案したシミュレーションは、結局無駄に終わってしまった。 アポロンメディアお金持ってんなー!HERO TVがバーナビーの取材に来る。ひたすらジムでトレーニングしているバーナビーを撮影したあとは 、他のヒーローからバーナビーへのコメントを貰う。 自分の雑なコメントに怒ったアニエスに対して、 ワイルドタイガーは非難されるべきは寧ろスカイハイだと言う。 スカイハイは天然だからこれでいい、 というアニエスの反論も面白いけれど、間で「えっ」「えっ」 と戸惑うスカイハイが可愛い。 ここでスカイハイさんのキャラクターがある程度見えたのだと思う 。風を使って空を駆け、犯人逮捕よりも人命救助を最優先し、 何でもできるキングオブヒーロー。で、天然。完璧…! 家の中まで撮影するテレビマンたちが帰ったあと、シャワーをあびて謎のパンツ姿のバーナビー。 しかしなんだったんだろうこの心底どうでもいい雑な裸… あってもなくてもいい裸…。 雨の日、一人ぼっちのまだ幼いバーナビーに向かって、ひとりの大人が「君はもう一人じゃない」と言った。 家族を失った、奪われた子供に向けられたやさしい言葉は、 しかしかれは響かなかった。大人になったかれは「 俺はいまだに一人ですよ」と自嘲する。 この大人はロイズさんでいいのかな、眉毛的に。そして一人称俺!バーナビーのプライベート密着、ということで、アニエスに指示されたワイルドタイガー(眼だけ隠した虎徹) ともども、かれの日常を追う企画。子供にサインして、 女子と写真撮影して、 新名所フォートレスタワービルのオシャレなレストランで相棒と食事 。「先輩あれは何ですか」「あれはビルってやつだ」 のやり取りの茶番っぷりも好き。 そこへ入った、爆弾を仕掛けたという脅迫電話。要求もないことからいたずらかもしれないと疑いつつも、 客を避難させるバーナビーと、 爆弾が仕掛けられた場所がどこなのか、 勘が働くワイルドタイガー。 市民を逃がしたあとも、二人をカメラで追うというアニエスを、「ヒーローには市民を守る義務がある」 と一喝するワイルドタイガー。 多少怒鳴られた程度では折れないアニエスの言葉に、 カメラをワイルドタイガーにまわさせるからと微笑んでフォローす るバーナビー。 結局二人がかりの誘導で追い払われるテレビマンたち。 アニエスにうんざりしていたのも、 緊急事態にまで首を突っ込んでくることに苛立っていたのもおじさ んだけではないと思うんだけれど、 バニーちゃんは笑顔でカドを立てずにいなしてしまう。 このあたりのバランスがいい。 爆弾を見るやいないや、昨年習得したという技術で処理していくバーナビー。 憎まれ口をききつつも、 努力家のかれを見直しているきらいのあるワイルドタイガー。 技術はないから何もしないけれど、相棒を残してひとり逃げるようなことはしないと当然のように言う ワイルドタイガーに、 憎まれ口をききつつも満更でもなく微笑むバーナビー。 ちょっとずつ距離が縮まる。 そして時間ギリギリに全ての処理が終わり、二本のうちどちらかのケーブルを切ると助かり、 もう一方を切ると爆発してしまうという、おじさんも自分で「 お約束」と言ってしまう展開に。 大体こういうときって何か閃いて間一髪で助かったりするんだけれ ど、二人が選んだ方法はなかなか荒唐無稽で斬新なものだった。 この無茶さ加減も好き。気楽だ。 全てが終わって、アントニオと飲みに行った虎徹は、バーのテレビでワイルドタイガーがバーナビーについてコメントし ている映像を見る。あからさまに高い声で、「 結構似ているところがあるんです」なんてコメント。 そしてそのバーでピアノを弾くのは、アルバイトのカリーナ・ライルだった。
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2011.07.07 Thursday
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TIGER&BUNNY #02「A good beginning makes a good ending.」
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コンビで売り出されることやその相手が誰であるのかを知ってぶすくれる虎徹とは対照的に、バーナビーは冷静だ。かれは以前からこの「会社の命令」を聞かされており、文句を言ったのか言わなかったのかは知らないが、既に納得済みでいる。
街にあった石像が動きまわり、建物などを破壊して廻っている。現場に行くと同時に動こうとするワイルドタイガーを、他ヒーローの状況を把握して目立つところで登場するためにバーナビーが制止する。当然ながら怒ったワイルドタイガーが「目立てば犯人が捕まんのか?街が平和になんのか?」と詰め寄るシーンが掛け値なしに格好良いんだけれど、その結果暴走したかれが慣れないスーツに手間取ってワイヤーを石像ではなくバーナビーに巻きつけちゃったものだからおじさん台無し。
メカニック斎藤さん登場。聞こえないほど話し声が小さくて字幕を使う、って斬新なキャラデザ。白衣につつまれたちびまるこい体も、不適な笑みも可愛い気がしてくる。一人でニヤニヤしている斎藤さんにとって、いちいち突っ込みを入れたり一喜一憂してくれる虎徹は居心地の良い相手なんだろうな。前のスーツを「クソスーツ」と呼ぶ斎藤さんの遠慮のなさと、自分のスーツへの意気込みが好き。
合弁による転職、状況が分からないままの出動、謎多き人物との初対面で、虎徹は自分が大切な用事を忘れていたことを思い出す。昨夜でれでれしながら約束した、楓のスケートの発表会。
慌てて今から向かうと楓に電話したところで、またもや出動要請。ヒーローは大変。
電話の所為で出遅れたことを軽く詫びるワイルドタイガーにバーナビーが言った「僕の人生の3分をあなたが無駄にしたこと、一生忘れません 」という台詞がすき。バニーちゃん粘着!おじさんの「友達いないだろ」っていう返事も秀逸。謝るでも逆ギレするでもなくぽんっと言い返して、それでチャラになる感じがいい。
そしてコンビは、動く石像の正体が、石像につかまっているNEXTの少年の力によるものだと知る。
少年の頃犯罪に巻き込まれたときのことをワイルドタイガーは思い出す。もうだめだ、というときに登場して犯人たちを捕まえた伝説のヒーロー、Mr.レジェンド。犯人の一人を自身が忌み嫌うNEXTの力で跳ね除けた虎徹を、レジェンドは「人を守るためにある」力を有効に活用したのだと褒めてくれた。それが今のヒーロー・ワイルドタイガーの人格形成に繋がっていることは言うまでもない。
そしてここでバニーちゃん呼び。侮辱されたとバーナビーが怒ると、口真似をしてからかうワイルドタイガー。ここのやりとりが子供の喧嘩みたいでかわいいな。おじさんの前ではクールぶっていられないバニーちゃん。
あんまり期待していなかったけれど父親はやっぱり来ず、憧れていたアイザックはぶつかっておいて謝ることすらしない嫌な奴で、踏んだり蹴ったりの楓はさらに大きな事件に巻き込まれる。少年の動かす石像が、彼女のいるスケートリンクに突っ込んできたのだ。崩れる天井、逃げ出す市民を助けるワイルドタイガーは、目の前で娘が倒れているのに気づく。そして手を伸ばすが、間一髪のところで瓦礫が父子の間に落ちてくる。そのままだったら命がなかったであろう楓を助けたのは、彼女が相棒の娘だなんて知るよしもないバーナビーだった。
石像はアイザックを攻撃する。不特定多数の市民ではなく、NEXTである自分を人間じゃない・気持ち悪いと罵って仲間はずれにしたかれ一人を標的にしようとする。この期に及んでもNEXTであるアイザックを否定するアイザックの言葉は、バーナビーやワイルドタイガーにも突き刺さる武器だ。けれどかれらは傷つかない。それが「市民の安全」「街の平和」を守るものでもあることを知っているからだ。
むしろバニーちゃんは見ず知らずの子供の意見なんかどうでもいい、と思ってそうだけど。
好きで手に入れた力じゃないと泣く少年・トニーに、ワイルドタイガーは自分の昔話を聞かせる。自分も悩んだこと、それを救ってくれたひとりのヒーローのこと。特に話がうまいわけでもない、崖っぷちのヒーローの言葉が、少年を救う。
そしてトニーは一切の攻撃を止めるが、かれが建物を壊したことにより、ある建物の上階部分が崩れ落ちてくる。落ちれば下にいる市民たちが潰されてしまう。ヒーローたちは慌てて現場へ飛び、能力を持つかれらでも到底支えられるような重さではない建物を支える。この二点、派手な必殺技や武器で凶悪犯罪者をとっちめるだけではない、言葉や心で人を救ったり、命を賭けて市民を守ったりすることもまた、ヒーローの大切な仕事なのだと示されているようで好き。
そして自分の100パワーが時間切れしたように見せかけてトニーの力を借りたワイルドタイガーは、市民を救っただけでなく、自分の力を呪うことしかできなかった少年の心をも救ったのだ。
コンビはいやだとこぼすバーナビーに、コンビにすることで目立っている、とマーベリックは言う。目立つチャンスを活かさなければ、本名を明かしている意味がない、とも。何らかの理由でバーナビーが顔を出していること、名前を晒していることがにおわされている。
そして一人の、広いけれど簡素な家に戻ったバーナビーは、小さな少年と両親という家族写真と、パソコンのモニターにうつるマークを見つめて「ウロボロス…」と呟く。
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