椿いづみ「月刊少女野崎くん」1

椿いづみ「月刊少女野崎くん」1

男らしい風貌の野崎くんに憧れていた千代は、勇気を出してかれに告白する。好きだと言うのが恥ずかしかったのか、第一声は「ずっとファンでした」というものだった。何とか口に出したことで少し前進できた千代は言おうとした「付き合って下さい」という本題は、その前に野崎くんが行動に出たので言葉にならなかった。あろうことかかれはサイン色紙を渡してきたのだ。
いくらファンだと言ったにせよ、意味が分からない。しかしなんとか気持ちを伝えようとした千代は、「ずっと一緒にいたい」と言った。その愛の告白も野崎くんには通じず、というよりは文字通りに受け取られ、ならばとかれはさっそく家に来るように誘ってくる。硬派な見た目と違って軽い男なのかと思いつつもかれの部屋に足を踏み入れた千代は、そこでいきなりベタ塗りの手伝いをさせられる。次から次へと指示されるままに仕事をこなして夜になり、家に帰るにあたって、千代はようやく気づく。「野崎くんマンガ家なの!?」と。

ということで、人の言葉の裏や奥にひそむ気持ちを一切察することができない(のに)そこそこ売れてる少女漫画家である野崎くんと、ストレートに告白できなかったゆえにアシスタント志望のファンと思われた千代の日常を描いたドタバタ4コマ、である。
最初その設定で「乙男」の幸花ジュエルを思い出したんだけれど、橘と違って野崎くんは別に誰にも隠していない。ただ、誰にも信じてもらえないだけだ。面白い冗談だと思われて流される。でもまあ別にどうしても伝えたいわけでもないのだろう、自分の正体を知っている数名の友人(という名のアシスタント)とマンガを描きつつ、初恋もまだだと高らかに宣言する野崎くんは、今日ものんきかつ無神経に生きている。

すっとぼけた野崎くんとそれに振り回されつつも野崎くんを嫌いになれない千代のツッコミだけでも十分面白いんだけれど、それ以外のキャラもかなりいい味を出している。
千代よりもずっと前から野崎くんのアシスタントをしているプレイボーイ・御子柴がとてもかわいい。顔がよく、ほどよくだらしないかれは当然のようにモテる。女子を上からの物言いであしらったりからかったりするのだけれど、実はものすごい照れ屋で、いつも言った後に真っ赤になっている。そして絵が下手なのに、背景や効果だけが異様にうまい。ツンデレなんかよりもっと気の毒な感じのキャラクターなのだが、こいつがとっても可愛いのである。ずるいよみこりん!
そして野崎くんはそんな二面性のある御子柴を観察し、少女漫画のヒロインの性格に転用しているのであった。

少女漫画出身であり、現在も少女漫画を描いている作者ならではのエピソードも、うんちくにならない程度に織り込まれている。その中のひとつ、たとえ作品の中でも犯罪行為は駄目だ、という決まりを遵守する野崎くんは、二人乗り用の自転車を描こうとする。その自転車が公道を走れる都道府県が限られていることも調べて舞台設定に活かそうとするあたりのプロ根性がばかばかしくていい。しかもほぼずっと三白眼で表情薄め。それに一喜一憂してる千代も、真剣な野崎くんもかわいい。

あと野崎くんの編集担当二人がすごくいい。空気が全く読めず、野崎くんを苛立たせる自分大好き前担当と、野崎くんに好意があるとさっぱり感じられない冷たい態度をとるのに、野崎くんから圧倒的な信頼を得ている現担当。現担当の剣さんがすごくいい。オシャレ小太りで、野崎くんの目を見ようともしない。電話をかけても出ず、メールにしてくれとメールを送ってくるレベル。でも野崎くんは剣さんに非常に好意的だし、嫌われているとは微塵も思っていない。かわいい。

王子様キャラの女子生徒や、彼女に振りまわされる演劇部員、毒舌の友人など、個性豊かな面々に囲まれた日々。今更言うまでもないけれど絵がものすごく巧いので、ツッコミ役の千代をはじめとしたキャラの表情が雄弁で魅力的。普段そんなに4コマを沢山読むわけではないんだけれど、これは面白かった。
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posted by: まゆみ | 本の感想 | 21:19 | - | - |

夏目イサク「いかさまメモリ」1

夏目イサク「いかさまメモリ」1
新しい取引先に挨拶に行った中野は、高校時代の親友・津田と再会する。一時期恋愛関係のような状態にあった津田との仕事を非常に気まずく思う中野だが、津田は素直に十年ぶりの再会を喜んでいる。

高校生のとき、かれらは別に付き合っていたわけではなかった。ただ三年の冬、津田の思いつきのような提案に流されるまま、関係を持った。そして直後に、津田は彼女を作った。それだけの話だった。
けれどそれは、津田に友情以上のものを感じていた中野にすれば手ひどい裏切りだし、端的に言えばヤリ逃げ以外のなにものでもなかった。心変わりとか、二股とか、そういうものではなかった。津田にとって中野とのことは、当時お互いフリーだった親友と利害が一致して一度寝ただけのことで、自分が彼女を作ることとは無関係のことだったからだ。謝罪も弁解もなかった。だから津田は笑顔で中野に彼女が出来た報告をして、メールでも彼女の話をし続けた。
中野にとってそれは二重に傷付けられた出来事だ。恋人か、それに近い関係だと思っていた相手に恋人が出来た。しかもその相手は、自分のことを全くそういう目では見ていなかった。津田の悪意のない残酷さに傷ついた中野は、高校卒業後距離があいたことを利用して、一切の連絡を絶った。津田が中野との(一方的に中野が感じていただけの)恋愛関係を無視したように、中野は津田との友情を無視した。

しかし二人は再会してしまった。中野が勤めるおもちゃ会社が新しく下請けとして取引することになったメーカーに津田がいた。津田と中野が同じ高校であったことを知った上司たちは好都合だと喜び、津田も再開を喜ぶ。しかし中野にしてみれば、ようやく過去にできた最悪の思い出が蘇ることになる。
かつてと同じように明るく前向きな津田に、中野の心はどうしても揺れる。感情表現が苦手でなかなか人の輪に入れない中野の気持ちを察してくれる、そんな中野が面白くて魅力的な人間であると評価してくれる津田の態度は、高校のときと同じだった。高校のときに興味を持って友人になり、誘われるがまま寝ようとするくらい惹かれていた津田と同じだったのだ。

かつてのようにずけずけと物を言い、パーソナルスペースを縮めてくる津田に中野は参ってしまう。しかし参ったまま耐えることも、大学生の時ように連絡を途絶えさせることもできない。耐えていれば仕事がうまくいかないし、連絡を絶つことは立場上絶対にできない。だからこそ中野は真実を告げることで、津田と距離を置こうとした。
高校生の時津田を好きだったから、津田に彼女が出来たショックで距離を置いたこと。ようやく薄れた傷が、この再会によって再び疼きだしていること。だから調子が狂って仕事に支障が出ている、と中野は言った。
それはかれにとっては勇気を出した本音だったけれど、津田にしてみれば十年越しの告白だ。あの時好きだった、のみならず、今も同じように心を乱されているのだと言ったも同然だ。中野の言葉に津田も動揺する。お互いがお互いに揺さぶられて、単なる仕事相手や友達ではいられない。

仕事でより良い物を作るためにふたりは和解し、友人関係に戻る。しかし中野は津田に心を乱されるし、津田もまた中野の言葉や態度の奥に潜む真意を知りたくてかれに執着する。
冷たくて愛想がないと思われている中野だが、実際は非常に隙だらけの分かりやすい人間だ。酔ったかれが漏らした言葉で、津田は中野の気持ちがまだ自分にあるのではないか、と確信に近い疑惑を持つ。そしてそのまま「お前がその気ならいい」とキスをする。勿論その態度と言葉に中野は怒る。自分の態度を見て行動する津田は、かれにしてみれば不可解だし不誠実だ。哀れまれているのではないか、とすら思えてしまう。けれど中野は津田を嫌いになれない。馬鹿にされている、また傷ついてしまうと思いながらも、津田を意識してしまう。

イサクさんのお得意属性・無神経、が今回もいい具合に炸裂している。津田のような人望のある、大事なところはしっかり抑える無神経に振り回されるのは、中野のようにまじめで融通が利かないタイプに決まっている。魅力的な無神経という、腹が立つのに惹かれてしまって憎みきれない、そして皆がそう感じているために永遠にそのままで改められることのない人物のタチの悪さ。
津田の行動には悪気がないから周囲は責めづらいし、寧ろ苛立ったり根に持っている自分が悪い人間なのではないかと思ってしまう。けれどそのかれの行動に実際に傷ついたり、必要以上に一喜一憂してしまう中野がいる。
津田は津田で、無神経なりに、大人になって、昔見えなかったものが見えてくる。自分の行動がどういう影響を及ぼしたのか、どういう傷をつけたのか。分かっていて、反省して、それでもやり直したいと思って行動に出られるのは津田の無神経さであり、強さ・誠実さでもある。腹が立つんだけど応援したくなる、そのバランスが絶妙。

津田が何を考えて行動しているのか、中野にはさっぱり分からないけれど、読者には分かるようにかれのモノローグが小出しにされている。中野を傷つけた自覚があるかれは、中野に良いように行動しようとしている。中野が望むように、中野が笑っていられるように。それは津田の最大限の譲歩であり、中野への友情と愛情から来る選択だ。
だから中野が友達でいたいのならば友達関係を続けようとした。けれど友達がいいと言った中野の行動はどう見ても自分を意識しているし、自分に恋をしている。それならば、と中野は友情を超えようとした。それが「お前がその気ならいい」の真意だろう。けれど当然中野には伝わらない。直感にしたがって、もしくは説明を省いて行動してきたツケが一気にまわってきた。これはもう、十年分頑張るしかないでしょう。
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posted by: まゆみ | 本の感想(BL・やおい・百合) | 20:08 | - | - |

森薫「乙嫁語り」4

森薫「乙嫁語り」4
劇的でなんとも後味のよくなかったスミスの失恋の次に描かれるのは、騒々しい双子の姉妹の結婚だ。スミスが初対面の時に実感したとおり、双子や彼女の家族は皆「直接的」で「ためらいがない」人々だ。派手に騒ぐ、派手に叱られる、派手に行動する、派手に失敗する、派手に叱られる。そのストレートさや常時ハイテンションな生き様が、前回のストーリーとの緩急をつけている。こんな世界もあればあんな世界もあるのだと、広くて面白い世界の広がりを教えてくれる。
アミルという、比較的直接的だが年齢や体格にコンプレックスもあった、今思えば非常にまっとうで共感しやすい乙嫁のあとに、タラスという非常に遠慮深く控えめで、ドラマティックな乙嫁が出てくる。そしてこの遠慮の全くない乙嫁(になる少女)が、しかも二人同時に出てきて、どよんとした空気を晴らしてくれる。メリハリも登場の順番も完璧だ。

我儘でお喋りで奔放でお転婆で、過ぎるほどに元気な双子の姉妹は、嫁入りする日を待ちわびている。運命の相手やドラマティックな恋を待っているのではなく、彼女たちの風習の通りに、家族が素敵な夫との結婚をセッティングしてくれる日を待っているのだ。
顔が良くて裕福な二人組の男を見れば結婚したいと親に申し出、周囲の既婚女性から結婚に至るまでのエピソードを聞けば真似をしようとする。行動も言動も思考も容姿も、なにもかもがまだまだ幼い二人だけれど、決して子供が将来の結婚に憧れているのではない。実際彼女たちの年齢は祖母が父を出産した年齢だし、周囲も彼女たちをそういう存在として扱う。脳直で行動しているような少女たちは、この世界では紛れもなく適齢期なのだ。

ドタバタ馬鹿なことばかりやっている少女たちは、父親同士が以前から気の置けない仲にある兄弟と結婚することが決まる。あまり口数の多くない兄弟はある程度昔から「そんな気はしてた」らしい。
取り立てて不満もないけれど、惚れる自信もない、と言う弟。ガッカリするのはお互い様なんだから、せめて大事にしてやろうと言う兄。兄は分別があって紳士的なように聞こえるが、弟に負けず劣らずの酷い言い草である…。
そして案の定、「そんな気はしてた」のも、理想と大分違うのもお互い様だった。やいやい言いつつも本気で抵抗するつもりはない姉妹と、適当に宥める兄弟。どっちがどっちと結婚するのかまで考えていなかった両家の家族の提案により、ひとまず二組に分かれてそれぞれデートすることに。この超適当な感じで進む本筋に対して、付随するドラマがどれもかわいらしくて胸キュンなあたりがいい。兄弟が物凄く兄属性と弟属性で性格がはっきり別れてて、それがそれぞれ双子と合ったのだろう。
どこに行きたいと自分から言うライラには呆れつつも合わせてくれる兄のサマーンが、相手が提案した行き先に即座に突っ込みつつも全力で楽しむレイリには負けん気の強い弟ファルサーミが、ぴったりだった。
いつだって一緒にいた姉妹は別々の時間を過ごした後、お互いに自分の相手の方がよかった、と内心ほくそ笑む。単純だけれど可愛い。初デートが結局二人の人生を決定した。
わたしは兄がいいです!

母親のスパルタ花嫁修業もコミカルだけど愛情に満ち溢れていていい。少々個性的ではあるけれど、順序を経て結婚に至るまでの過程は三人目の乙嫁で初めて描かれたことになる。散々色々言っておいて、最後に健康を心配するところがベタだけど好きだなあ。

結局スミスは目的地に辿り付けないまま、5巻へ。エイホン家に滞在する前から目指している目的地なのに、各地の風土と乙嫁がなかなかかれを送り出してくれない。
後書き・奥付のあとに4ページの漫画。前回タラスと引き裂かれたスミスが遠くへ投げてしまったあの時計を一人の男が見つける。口元しか描かれないその男が非常に驚いていたように見えるのだが、果たしてどういう理由なのか。かれが通り過ぎた恋と思い出は、いつかふたたび取り戻せるのだろうか。

娘を取り戻そうとするアミルの実家の画策も続く。スミスが見る日常が明るく元気なものである一方、きな臭い展開に入りつつある。心配するアミルのもとに伝えられる情報は今のところ穏やかなものばかりだけれど、いつまでも今のままの平和な毎日ではいられないようだ。
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posted by: まゆみ | 本の感想 | 16:31 | - | - |

うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVELIVE1000% シネマライブ

シネマライブという名の、DVD発売前上映会的なものに行ってきた。大きな画面で見られる、ぐらいの気持ちだったんだけど、公式が「ペンライト持ち込み可」「歓声可」と発表していることもあって、いざ行ったらコンサート会場のようだった。グッズのTシャツ着てる人も多かったし、ペンライトは誇張ではなく持っていない人の方が圧倒的に少なかった。曲終わりには拍手が起こるし、掛け声も上がるし。リアルタイムのライブビューイングでもないので、不思議な光景だった。いやあの会場からすれば腕組みして見てる方がよっぽどマイノリティなんだけどさ…。

映画にお馴染みの予告映像や、携帯電話の電源オフなどの注意事項映像もなく、時刻になったらすぐに始まる。2時間ほどかな。
冒頭のマジLOVEの盛り上がりがすごい。アニメ第一話の冒頭に流れて以降、その勢いで一クール走りきったような印象があるこの曲。良い意味で頭のおかしい完成度である。一部フリ再現もあってかわいらしい。

「BRAND NEW MELODY」、突っ込み所が多すぎる衣装も含めて爽やかな音也だった。アニメの音也って超あざといと思うんだけど、てらしー本人が出てきて歌うとあざとくない。あざとい音也のあざとさに翻弄されるのも楽しいけど、さわやか音也もいいね。「虹色☆OVER DRIVE!」で一部直立不動で歌っててかわいかった。サビなど、一部の予め煽りを用意してるところ以外は結構立ちつくしている。この音也はアニメの音也と違って、ちゃんとルールを守りそうである。
「BELIEVE☆MY VOICE」にせよ「七色のコンパス」にせよ、トキヤとマモのキャラがあまりに遠いので、宮野さんがうたってる、という感じがすごく強い。宮野真守自身として人前で歌うこと、が沁みついてる所為もあるんだろう。表情豊かだし体の動きも大きいし、トキヤから一番遠いところにいるような人である。でも歌が物凄く好きなんだろうな、と伝わってくるところがトキヤと同じ。寧ろ本人名義の「オルフェ」が格好良かった。OPで聴いたときから、いい曲貰ったなあ、と思っていたんだけれど、歌ってる姿がとてもしっくりくる。
レン様は衣装完コス?でご登場。マイクスタンドがバラで飾られていた辺りも含めて、さすがである。登場の仕方やパフォーマンスで感じたのは、諏訪部さんの中でのレンのイメージというのが、おそらくゆっくり歩く・急がない存在なのだろう、ということ。イントロがかかってから登場するとき、マイクスタンドを持って左右に移動するとき、レンは決して走ったりしない。ゆっくりけだるそうに歩いて、それでちゃんと曲にに合う。見ていると心配になるんだけれど、レンにとってはそれが普通なんだろう。曲間の「仔羊ちゃんたち」「レディたち」への言葉もさすがの貫禄。
真斗は後々MCで鈴村さんが言っていたように、キャラクターとライヴのテンションにどこで折り合いをつけるか迷っていたみたい。真斗は武士的なキャラで、けれどライヴというのは笑顔でハイテンションで展開するもので。バラードの「Knocking on the mind」はおとなしいままで済んだけれど、二曲目の「Mostフォルティシ モ」は迷いがちょっと見えたかな。無防備にはしゃげない難しいキャラクターだと思う。しかしこの曲一二を争うくらい好きなので聴けて嬉しかった。
砂月全開のきーやんはさすがの貫禄。マモもそうだけど、人前で歌うこと、表情やしぐさと言ったパフォーマンスを含めて歌を聞かせる・魅せることがきちんと身についている人の歌だった。オリオン〜の間奏でにやっと笑いながら「四ノ宮砂月で〜す」と言った時の余裕とか、マイクスタンド担いで階段登る時の雄弁な背中とか、ステージで歌い続けてる人の姿だった。自信と根拠と実力のバランスが凄くいい。まあはっきり言って歌ってる姿がだんとつでかっこよかったですよ。(だってわたしバンギャル)
服装もかなりキャラに近付けて、なんというか全体のイメージが最も近かった・親和性が高かったのは何と言っても下野さん。「Changing our Song!」のサビの低いジャンプと奇跡のようなボックスステップは何事…!いじりたくなる他メンバーの気持ちが超分かる翔ちゃんっぷり。というか皆下野さんのこと好きすぎ。ダンサー四人を引き連れての「Changing our Song!」のダンスがツボりすぎて、夜の部ではダンサーとして出演したいとまで言いだす面々。取り敢えず「男気全開Go!Fight!!」のサビではタオル持って全員が出てきて後ろではしゃいでた。時間のある人がわざわざ楽屋までタオル取りに行ったらしい。皆下野さんのこと好きすぎ。
そのあとが「オルフェ」だったので、直前の曲のラストまで参加してるマモすごいなー、でもDVDでは編集されてるだけで案外曲と曲の間に時間があるのかなーとか思ってたら、実際ギリギリだったらしい。それでも参加する必死さがばかで微笑ましい。

沢城さんからのビデオメッセージもあり。オーディションに至るまでの話とか、客席にいる皆一人ひとりが春ちゃんなんだ、とかそういう話。わたしは女性声優だとだんとつで沢城さんの芝居が好きなんだけど、この人のクレバーさと情熱がが非常によくでたコメントだと思った。そのあとはセシル役の鳥海さんが「今ロスにいる」「予定が合わなくて行けないけれど頑張って」「セシルのダイジェスト映像をご覧ください」と語ったビデオが流れて、そのままご本人登場。登場したことは既に知っていたんだけれど、実際生で見てたらびっくりしただろうなあ。でも実際の会場で緑のライト振っている人が沢山いて、さすがだと実感した。鳥海さん数年前に見たときより大分見た目が丸くなっててびっくりしたんだけど、相変わらず、キャラクターで歌う、ということがむちゃくちゃ上手い人である。

トークはその鳥海さんのドッキリの話とか、応募者の倍率の話とか、翔ちゃんのダンスとか、ライヴが楽しいとかいう話で殆ど時間がなくなってしまう。四つほどトークテーマがあったけれど残り時間が一分しかない、というマモに、無理やり四つとも答えようとする鈴村さん。こう言う時に生きるのが鈴村・谷山の瞬発的なボケが巧みな二人である。

ラストの「未来地図」や挨拶、アンコールあけのアニメ二期発表からフルコーラスの「マジLOVE1000%」まで、とにかくメンバーがむちゃくちゃ楽しそうだった。そりゃこれだけ人気が出て、驚異的な倍率を掻い潜って参加した客の熱気に包まれてライヴが出来たら楽しいだろうなあ。
アニメ二期の話のときに、てらしーが「まあこれだけ人気があるので…」的なことを言ってたのに納得してしまった。思い思いの発言をするメンバーの言葉にかき消されてしまったけれど、これだけ人気があってこれだけCDだのDVDだのが売れたらそりゃ二期やるよね、って話である。さっさと東京ドームでやるべき。
デュエット曲とか歌ってない曲沢山ある(からまたライヴがやりたい)というマモの言葉にも凄く首肯。100曲マラソンするといいよ。その時は那月と翔ちゃんは!マイクを交差するパフォーマンスを!やれよ!!!な!!!

アンコールのマジLOVEを歌い終わったあと、客席に手を振るメンバーたち。BGMに流れている「未来地図」のカラオケ。マモが歌いだしてしまったものだから、客もメンバーも歌う歌う。結局ワンコーラス歌いきってしまう始末。本人たちの充実感とか、だからこそもっとやりたいという気持ちとかが全面にでた良いシーンだった。人気があるからこそ、成功しているからこそできる余裕とか、だからこその渇望とかそういうものが出ていたと思う。むっちゃくちゃ楽しいだろうなあ皆。
二期も楽しみだなー。食費を削って楽器を買う、お肉につられる貧乏オッドアイ先輩に猛烈期待しています。天使。


マジLOVE1000%
BRAND NEW MELODY
BELIEVE☆MY VOICE
Knocking on the mind
悪魔のKissは炎より激しく
オリオンでSHOUT OUT
Changing our Song!
Eternity Love
七色のコンパス
アンドロメダでクチヅケを
Mostフォルテシモ
世界の果てまでBelieve Heart
虹色☆OVER DRIVE!
男気全開Go! Fight!!
オルフェ
未来地図

<Encore>
マジLOVE1000%
未来地図
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posted by: まゆみ | 映像作品 | 20:58 | - | - |

山中ヒコ「王子様と灰色の日々」2

山中ヒコ「王子様と灰色の日々」2

家を出た至はオカマバーで住み込みで働いていた。年季の入った先輩たちにこき使われながらもそれなりにかわいがられているようで、文句を言いつつも楽しそうだ。宮殿で暮らす王子様だったかれはにせもののセーラー服を着て、男に値踏みされることや男を翻弄することに快感を覚えている。
そんな至を立派な女装子になってきた、と評したのは同じバーで働くひとりだ。彼女が言う通り、至はいわゆるオカマやゲイではなく、「女装子」なのだ。可愛いものを着たい、女の服を着たい、女の格好をしたい男。体だけでなく心も男のまま、至は女の服を着る。

そもそも至が女装をはじめたのは、一時期付き合っていた恋人が自分の身に着けているものを置いて帰ったことによる。家に来るたび少しずつ足跡を残していった彼女のおかげで、気づいたら至の部屋には女性服が一式揃っていたのだ。
かれが何故女装をするようになったのか、という明確な理由は描かれない。その代わりに、部屋にある女物の服やアクセサリーにかれが衝動をおぼえて、理屈よりも早く本能がそれを欲したことが物凄く伝わってくる。そこに理由はいらなかった。
その衝動はひそやかな趣味や、一時の情熱で終わらなかった。時を同じくして、定められた自分の人生に不満や疑問を抱き始めていた至の背中を押したのは、自分と同じ顔をした女・敦子だったのだろう。敦子を見たかれは「同じ顔なのにあいつは好きな服が着られて」と思ってしまった。同じ顔なのに敦子は女で、大きな家を背負っていることもなかったから。
それは実際のところ至の大きな勘違いであり、恵まれたかれの傲慢さゆえの思い込みだった。敦子は決して「好きな服が着られ」る生活を送っていない。服を買う金など、彼女には全くなかった。
しかしともあれ至は家を出た。乃木の家を遼に押し付けたかれの望みは「好きに女の格好してお気楽に暮らしたかった」というものだ。お坊ちゃんらしい楽天的な行動だとは思うけれど、オカマバーでトイレ掃除をしたり使い走りをしている姿を見ると、かれの本気が分かる。かれは単なる高校生ではなく、あの宮殿にいた王子様、なのだ。王子様がトイレ掃除をしてでも手に入れたかったものがそこにあるのだ。
金がない敦子と自由がない至。実際敦子には自由だってないわけだが、二人のどちらが辛いのか、は多分比べようが無い。

バーの先輩が至に「綺麗」であることの指標を与えてくれる。それは手間隙をかけて自分を大切にすることで生まれるものだ、と彼女は言う。自分と周囲を大切にすることで、ひとはゆっくりと綺麗になっていく。それを今の至はもっていない、と彼女は言う。それができれば綺麗になる、とも。そして至は少しずつ実践しはじめる。
その美しさは敦子にもないものだった。自分を大切にする金も暇も心の余裕も持っていない彼女は、綺麗になる機会を逃して苦悩するばかりだ。そういう意味でも、至と敦子は似たもの同士だ。

声をかけてきた男たちのからかいに心を痛める至は、自分がかつての王様ではないことを知っている。何もかも持っていて、何も怖くなかった子供の頃の自分ではない。手に入らないものに焦がれて、逃げ出して、人の目を恐れる自分は、乃木の当主になれない、とかれは思う。
どうも家を出たのは女装ばかりが理由ではないようだ。

安西家からパーティに招待されたため、敦子はダンスの練習をすることになる。嫌だと言う彼女に、遼は自分の動かせる金で出来る範囲のことなら何でもするという「ボーナス」を提案した。何を願うかは口にしないけれど、敦子はそれを聞いていきなりやる気になった。
口が悪くて横柄な遼だけれど、ダンス指導は丁寧で根気強かった。二人きりのダンスは、敦子の中になんとも言えない感情を起こさせる。自分は至の身代わりで、これはそれを遂行させるための練習だと分かっているのに、遼が「自分」を見ているような気になってしまう。邪推だと分かっていながら、止められない。
至になるまでの敦子の暮らしは決して幸福なものではなかったけれど、彼女を嘲笑するクラスメイトも煙たがる教師も、援助交際しようとする男も利用しようとする父でさえ、きちんと敦子を見ていた。敦子を見て、敦子に対して何がしかの感情を抱いた。けれど今、敦子を見ている人はいない。至を、もしくは至の身代わりを見ているだけだ。誰も自分を見ていない、自分の前にいながら自分ではない相手に話しかけている。その孤独はどれほどのものだろう。満足に風呂にも入れない暮らしと、どちらが辛いだろう。

パーティ当日、敦子は至や遼の後輩にあたる安西家の長男・大悟を見かける。老婦人に紳士的に振舞うかれの姿は、ボランティアに精力的だというプロフィールの後押しもあってか、本物の王子様のようだ。敦子にしてみれば、傲慢だったり高圧的だったりする至や遼よりもよっぽどとっつきやすい人間に見えただろう。
だから彼女は、大悟の会話に乗ってしまった。広い家で孤独を感じることがあるというかれの会話に、共感の意を示してしまった。その瞬間に大悟は目の前にいる男が至ではないこと、寧ろ男ですらないこと、を知る。乃木家のスキャンダルを掴んだ大悟は遼に向かって、その秘密を守る代わりに一晩敦子を貸すように提案する。
そして遼はそれを飲んだ。
いつも一緒にいる所為か、ダンスの練習の所為か、敦子は遼に心を許し始めていた。好きなのは信也だろうが、遼にも好意を抱き始めていた。そして彼女の好意はやはり、踏みにじられる。
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posted by: まゆみ | 本の感想 | 21:55 | - | - |

坂井朱生「鳴らない電話が恋を伝える」

坂井朱生「鳴らない電話が恋を伝える」
家庭の事情から他人と親しい関係になることに抵抗のある恭二は、バイト先のバーの常連客・崇之に繰り返し口説かれているが相手にしない。しかしある日崇之に助けられた事がきっかけで、かれの誘いに応じて一緒に食事をした恭二は、そのまま崇之と付き合いはじめる。

ヤクザと密接な関係があることから、恭二の家庭は地元で白い目で見られてきた。戸籍を変えて苗字を変更し、地元から逃げるために大学進学と同時に家を出た恭二だが、それまでの経験が邪魔をしてうまく人間関係を築けないでいる。仲良くなった友人が自分の家の噂を耳にして離れていったり、ヤクザと友人づきあいをしている兄が抗争に巻き込まれて怪我をしたりする経験が、恭二に二の足を踏ませる。そうしているうちにかれは友人を作ること、誰かに恋をして付き合うことから距離をおくようになった。学びたいことがあるわけでもない大学にもろくに通わず、アルバイト三昧の日々を過ごしている。

18年間積み重ねられたトラウマで鬱屈としている恭二の性格や、崇之に対する憎まれ口は結構好き。店員を口説く客をいちいち相手にしていられないだろうし、正直店での崇之はかなり胡散臭いのでこんなものだろう。好き好き言われたって、素っ気ない自分の何が好きなんだ、と言いたくなるのも分かる。けれどその反面、マスター以外とろくに人間関係を築けていないかれが、崇之から受ける全力の好意を心地よく思ってしまうのも分かる。いやだと言いつつ本気で突っぱねられない、本気で拒否できないのは、本当にいやではないからだ。
ひねくれた性格とよくまわる口と常につきまとう孤独がかれを形成している。

恭二は常に苛立っていた。どれほど危ない目にあってもヤクザである友人との関係を辞めない兄に、心配させないために自分に真実をあまり話さない家族に、末っ子である自分に甘い家族に、優しい言葉がかけられない自分に。そして何より、自分のことをろくに知らないのに何かと口説いてくる上、自分にあしらわれてもめげることのない崇之に。
かれが常に戦っている苛立ちは、崇之と付き合い出してから変化する。家族に対する感情は大きな変化を見せないけれど、へらへらしている崇之に対する苛立ちとは別に、崇之に対して素直に感情を表すことができず、憎まれ口ばかりきいてしまう自分への苛立ちも生まれてくる。崇之の行動が優しさや思いやりからくるものだということ、その根っこには自分への愛情があるということを恭二は知っている。それでもなぜか素直に楽しさや喜びを表すことができず、生意気で意地の悪いことばかり言ってしまう。それを地元での不遇な人間関係や常に茶化したような物言いをする崇之の所為にしたところで、本当の原因が自分にあることが分かっているからすっきりしない。

恭二の苛立ちはいつだって、不甲斐ない自分自身への苛立ちだった。兄に心配していると言えない、崇之との時間が楽しいと言えない自分への。そしてかれ自身が苛立つかれの性格は、最後まで治る事がなかった。自分に苛立って自分を肯定できないこと、肯定できる自分ではないことがかれの問題だ。それはかれを幸福から遠ざけ、かれと親しくなろうとする人たちから遠ざけ、かれをいっそう孤独で苛立つものにする。だから恭二は、そういう自分を打破する必要があった。
その打破のきっかけになりうるのが、崇之に謝罪や感謝を含めた真意を伝えることだと思った。話せない事情があること・あんなに何度も念押しされた約束を直前で破ったことへの謝罪、常に言葉の足りない自分を許容してくれたことへの感謝、そして自分が崇之をどう思っているのか。それを自分から口にすることで恭二は不甲斐ない自分自身から脱却できるのではないか、と思っていた。しかし実際のところ恭二が口に出来たのは電話口での軽い「ごめん」と、「離れたくない」という言葉だけだった。これまでかれが重ねてきた苛立ちや不義理を昇華するにはあまりに小さな、見落としてしまいそうな一歩だった。
家族と向き合うことができたり、本当にやりたいことを見つけたあたりは立派な前進だけれど、どうも崇之に対してはすっきりしない。カタルシス不足な気がする。崇之は甘やかしすぎて相手を駄目にしちゃうタイプだなー優しい・大人・いい人の域を超えている。約束を破られた時にもう少し怒るか、せめて恭二が謝ってくるまで待つべきだったのでは。恭二を甘やかして、自分以外誰も面倒を見られない存在にすることがかれの願いなんだろうけれど、ちょっと不気味だ。
鳴らないままの電話では恋は伝わらない、と思う。恋を伝えたのは常に電話を鳴らしてくれる崇之であり、家族としての情を伝えてくれるのは定期的に電話を鳴らしてくれる兄であった。恭二はこれから電話を鳴らして、気持ちを伝えていくべきなのだ。
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posted by: まゆみ | 本の感想(BL・やおい・百合) | 19:14 | - | - |

原作:大場つぐみ、漫画:小畑健「バクマン。」18

原作:大場つぐみ、漫画:小畑健「バクマン。」18
エイジの王道漫画と亜城木夢叶の王道漫画は、無事WJ本誌に読み切りとして掲載されることが決定した。先に掲載されたエイジの作品「ZONBIE☆GUN」は予想通りのダントツ1位を獲得し、決定したと言っても過言ではない連載のための好スタートを切った。単なる1位ではなく、これまでの読み切り掲載における最多得票数をとったというのもさすがエイジである。重箱の隅をつつくけれど、ジャンプの発行部数が何度かあった黄金期に比べてかなり落ち込んでいる中で、「読み切りにおける」という条件があるとはいえ、歴代最多得票をとることが可能なのか、と思ってしまった。
ともあれエイジは「CROW」を終えたあとも絶好調である。その人気に慄きつつ翌週に掲載された亜城木夢叶の読み切り「REVERSI」は、なんとエイジの得票数を上回った。世界一を目指していたエイジはその結果に落ち込むけれど、実際かれはその結果を知る前から、自分の読みきりが亜城木の読み切りに劣っていることを分かっていたようだ。慰めも励ましも本当の意味では通用しないエイジは、こと漫画に関しては頭がキレすぎて生きづらいだろうなあ。

自分達の売りを最大限に詰め込んだ自信作であり、結果も大きく出た「REVERSI」を当然連載したい亜城木夢叶。しかし「CROW」を終えたエイジと違い、かれらには現在WJで連載中の「PCP」もある。決して不人気なわけでも、本人たちのモチベーションが下がったわけでもない「PCP」を辞めるつもりもない。二本やりたい、というのがかれらの主張だ。
いくら原作と作画が分かれているとはいえ、一本でも大変な週刊連載を二本やるなんていうのは無理だ。かつてサイコーは学業と連載一本で入院したし、漫画家一本に絞ったあとも同窓会で休みはない、と言っていた。でもかれらは二本やりたいし、二本やれると思っている。それは過信だ。けれど作家の希望を聞いた上で、なんとか打開策を見つけるのが編集者たちなのだろう。かれらは考え抜いた上で、「PCP」を「必勝ジャンプ」、「REVERSI」を「週刊少年ジャンプ」に掲載することに決定した。
「必勝ジャンプ」(おそらく元ネタは「最強ジャンプ」か)とか「赤マルジャンプ」とか、増刊号がありすぎてややこしいんだけれど、受け皿が多いとこういう利点があるんだなあ。

連載が増えたためにアシスタントも増やすことに。かつてアシスタントで入ってもらっていたプロアシ小河さんが再び参加することで、現在在籍しているアシスタントたちのと、何よりかれらを雇うサイコーの意識に変化が起こる。以前からいるアシスタント三人にしたら新参のくせに仕切るうえ、雇い主でありプロ作家であるサイコーにアドバイスをする小河の存在は煙たいけれど、小河には小河の事情がある。
漫画家として生計を立てるという目標を持ちながらサイコーの元で修行する若者たちと違い、小河には養わねばならない家族がいる。他の作家の現場にも籍を置くため、サイコーにかかりきりというわけにはいかない。他の作家の仕事を休むわけにはいかないし、そこに参加して仕事をこなすための体力や集中力を蓄えておく必要もある。体力や根性や情熱でなんとかしようとする、それを美徳とする三人とは違うし、目の前にある原稿を完成させることがすべてであるサイコーとも違う。
サイコーが今後二本の連載をきちんと両立させること、三人のアシスタントがいずれアシスタントを雇う立場になった時や、その夢が叶わずプロアシになった時に必要なことを、小河が示してくれる。仕事をする上で必要とされがちなものと、本当に必要なものが何なのかを端的に描いたいいエピソードだ。これを一話できっちりまとめて織り込んでくるあたりが凄い。

「ZONBIE☆GUN」から一週遅れで連載を開始した「REVERSI」は読み切りと同じく非常に高評価を得る。「REVERSI」が三週連続1位を獲るということは、新妻エイジが三週連続亜城木夢叶に負けた、ということだ。
しかしサイコーが危惧していた通り、そこで終わるエイジではなかった。連続して2位という順位をとりつつも、連載開始五週目でかれは敵キャラを殺した。今の敵が微妙ならば新しく魅力的な敵を作るまでだ。その狙いは成功し、エイジは見事首位に躍り出る。
一方、最初から主役と敵の戦いの骨子を固めて、「W主人公」として描いている「REVERSI」にはそれができない。最後までこの二人で行くしかない。そのことに気づいたとき、シュージンは揺れる。ジャンプでの人気作、アニメになる作品は長年に渡って連載されているものばかりだ。十巻もコミックスが出ているものばかり。その中に、このままでは「REVERSI」は入れない。バトルで間延びさせたところで限界はある。焦るシュージンに、サイコーは「一気に駆け抜ける」漫画があってもいい、と言う。当初の主題であるW主人公の対決を描いて、それで物語を完結してもいいじゃないか、と。
ジャンプで人気の漫画を連載して、アニメ化されて、ヒロインを亜豆が担当して、サイコーと亜豆が結婚する。それはサイコーと亜豆の夢であり、シュージンとカヤの夢でもある。ただ実際、最もそのことを考えて行動するのはシュージンで、一番焦っているのもシュージンだ。他人事だからこそ余計に焦るのか、自分の原作がすべてのきっかけになるから焦るのか。頭がキレるシュージンがお人よしの心配性で、根性論で突っ走るサイコーの方がキモが据わっているというコンビネーションがいい。相手を待たせすぎて結果的に結婚できなかった川口たろうの日記を読んでもなお、サイコーは漫画家として質の高い作品の提供を選ぶ。
そしてかれらは無駄な延長を一切しない漫画を描くことに決める。

ダークヒーローの主人公と、正義の思想を持つ敵の対決という「REVERSI」は「DEATH NOTE」と同じ構図を持っている。それだけでなく、最初の段階でラスボスが出ていること、敵を変えて延々に描けるバトル物ではないというところも「DEATH NOTE」を彷彿させる。何十年と続く連載も、何十巻と出るコミックスもないけれど、あれは確かに時代を「一気に駆け抜け」た漫画だった。アニメ化されたのも完結したあとだったし、倫理的にどうかといわれながらもアニメのみならず映画にまでなった。
シュージンは、最初からW主人公の結末は決まっているから、そのあと新しい敵を出すようなことはしたくない、と言った。「DEATH NOTE」はどうだったんだろうか。最初考えた通りの終わりに向けて、余計なものをひとつも入れずに走り抜けることができたのだろうか。そうだといい。

ともあれそういうものを目指して亜城木夢叶は前進する。
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posted by: まゆみ | 本の感想 | 20:31 | - | - |